« 2012年6月17日 - 2012年6月23日 | トップページ | 2012年7月1日 - 2012年7月7日 »

2012.06.27

国会の壮絶な茶番の陰で繰り広げられている対決

 昨日の国会は壮絶だった。これまで国会の怒号・乱闘だの深夜の牛歩だとフルコースでひどいものを見てきたと思っていたが、昨日は格別の一品だった。そもそも国会の体をなしてなかった。定員削減の司法判断を反映しないからそもそも違法だという斜め上の話ではない。まずもって国会が国民代表の熟議の場になっていないのである。国会の議論でも民主党党内の議論でもなく、党間の密談でやっちゃえって、なんですか、これ。
 戦前の大政翼賛会ってこういうものだったのだろうなと感動を新たにしたのだった。
 マニフェストを自ら堂々とご破算にした民主党は今後どんな政策を打ち出してもギャグにしかならないから、もう二度と国政に復活する目はないと思う。麻生さんがあれだけ景気に配慮していたのにそれを忘れて、弾力条項打ち消した消費税増税をそのまま飲む自民党も、自滅。なにが野党だよ。政権受け皿になってないじゃん。
 こんな国会には参加できないとして賢者タイムを取った民主党原口一博議員や自民党中川秀直議員が実に賢者だったかというと、うっぷす、いやすまん、笑った。
 みんなの党もなんだかなと思うことがことが多いが、さすがにこの国会で唯一まともだったのは、みんなの党代表渡辺喜美議員だけだった。

 手間かけて書き起こしてもいいのかもしれないが、しかし、まあ、本当の対決はこんなところにはないんだよという意味では、昨日の国会は壮大な目くらましというか茶番に過ぎなかった。
 じゃあ、対決はどこにあるのか?
 国会の一部と日銀が対決しているのである。フィナンシャルタイムズが17日付けの社説「日本の対決(A Japanese duel)」(参照)が書いたとおりだった。


Like two samurai facing each other in a duel, the Bank of Japan and parts of the Diet, Japan’s parliament, are fighting over how to revive the country’s long-ailing economy. While growth was fast in the first quarter of 2012, this spurt was the result of several one-off factors which are unlikely to lead to a more sustained acceleration.

二人のサムライが決闘で向き合っているかのように、日銀と国会の一部が、この国の長期経済成長活性の方法について戦い合っている。2012年の第一四半期成長は速かったが、偶然が重なった結果であってこれ以上継続するはずもない。

To get the economy going again, some in Japan’s parliament would like the central bank to loosen its monetary policy even more than it has done so far. The BoJ should add to its existing Y70tn ($890bn) asset-purchasing programme and stretch it in ever more unorthodox directions. The International Monetary Fund has backed this position, arguing that the BoJ should buy long-term government bonds.

経済を再度推進させるために、中央銀行にこれまで以上の金融緩和策を望む国会議員がいる。日銀は、既存の70兆円の資産買い入れ枠を増強し、非正統な方向に拡張性すべきである。国際通貨基金(IMF)もこの立場を後押し、日銀は長期国債を買い入れるべきだと論じた。

Such calls have so far been ignored by the BoJ, which last week decided to leave its easing programme untouched. This may have been a way for the BoJ to keep its powder dry, were the situation in the eurozone to degenerate and cause financial turmoil. But the BoJ is also worried that bolder action may be seen as a monetisation of the country’s debt.

こうした提言を日銀は無視しづけている。日銀は先週、金融緩和策を放置すると決めた。もしかすると日銀としては火薬を湿らせまいとしたのかもしれない。ユーロ経済圏が悪化の状況にあり、経済混乱が起こす状況でもあったからだ。しかし、日銀は大胆な行動がこの国の債務の貨幣かと見られるのを恐れてもいた。


 国会で本当に争われていたのは、日銀と日銀に金融緩和を求める国会議員の対決だったのである。それに壮大な煙幕をはったのが、昨日の壮大な茶番だった。
 考えすぎ?
 実は昨日の茶番の陰で本当の対決は進展したのである。昨日6月26日21時16分のNHKニュース「金融機関の日銀預金 過去最高に」(参照)より。

 金融機関が手元資金として日銀の口座に預けたままになっている資金の残高が、過去最高を更新し、日銀が続けている金融緩和による資金が、企業への貸し出しなどに十分回っていない実情を浮き彫りにしています。
 銀行や信用金庫などの金融機関は、企業に貸し出したり債券などの金融商品に投資したりしていない資金を、日銀に開いている「当座預金」の口座に預けています。
この当座預金の残高が、26日、前日に比べて9400億円増え、43兆4900億円に達したことが分かりました。
 これは東日本大震災のあと、日銀が市場の動揺を抑えるために大量の資金を供給したときの残高を上回って、過去最高を更新しています。
 日銀の「当座預金」は、預けても金利が低いため、本来、金融機関は、より高い金利が見込める企業への貸し出しなどに回し、「当座預金」の残高は少なくとどめようとするのが一般的です。
 しかし、この残高が過去最高を更新したことで、日銀がデフレからの脱却を目指して金融市場に供給した大量の資金が、貸し出しなどに十分回らずだぶつき、「当座預金」の口座に滞留している実情を浮き彫りにしたものと言えます。企業側が、財務体質の改善を優先し、貸し出しへの需要が弱いなかでは、金融緩和を強化して景気浮揚を図ることに、限界があるという指摘も出そうです。

 さすがNHK。これも感動すら覚える。煙幕に映し出されるイルミネーションだった。
 「金融緩和を強化して景気浮揚を図ることに、限界があるという指摘も出そうです」とか、あの国会のあとで、ドヤ顔で言っているのである。
 もうネット上から消えているが、フィナンシャルタイムズが伝えたIMFによる日銀への要請のときもNHKはものすごい報道をしていた。6月12日「IMF幹部 消費増税を支持」である。

 来日中のIMF=国際通貨基金のリプトン筆頭副専務理事は、安住財務大臣と行った会談で「日本の財政再建に重要なのは、消費税率の引き上げだ」と述べ、社会保障と税の一体改革で政府が目指している消費税率の引き上げを支持する考えを示しました。
 IMFナンバーツーのリプトン筆頭副専務理事は、日本の財政政策などについて定期的な調査を行うため、日本を訪れており、11日、安住財務大臣と会談しました。
 この中で安住大臣は「消費税率引き上げ法案の国会での議論がヤマ場にさしかかっており、よいときに来ていただいた」と述べました。これに対し、リプトン筆頭副専務理事は「財政再建に向けて重要なのは、消費税率の引き上げであり、IMFとして全面的に支持している」と述べ、社会保障と税の一体改革で政府が目指している消費税率の引き上げを支持する考えを示しました。
 会談では、このほかヨーロッパの信用不安の問題も取り上げられ、不良債権を抱えるスペインの金融機関の適切な情報開示と迅速な対応が重要であること。
 信用不安の拡大に歯止めをかけるため、今月18日からメキシコのロスカボスで開かれるG20サミットで、ヨーロッパに一段の対応を促していくことを確認しました。

 これだけだとなにがすごいかわからないかもしれない。でも、あれれ、さっきフィナンシャルタイムズが言ってことと違うんじゃないのと疑問が浮かぶでしょ。そのとおり。テレビ朝日「「日本は消費税15%にすべき」IMFが声明」ではこうだった。

 IMF=国際通貨基金は、日本経済に関する定例の審査を行い、日本政府の増税に向けた取り組みを支持する一方で、消費税をさらに引き上げ、15%にするべきだとする声明を発表しました。
 日本政府との年に一度の定例協議を終えたIMFのデビッド・リプトン筆頭副専務理事は、消費税の引き上げは「非常に重要なステップ」だとして、日本の財政再建の重要性を強調しました。声明は、消費税率について今の日本政府案に5%上乗せし、少なくとも15%にすべきだとしています。
 ただ、増税だけではなく、医療などサービス分野の規制緩和や女性の労働力を活用することなど、経済成長のための構造改革も求めました。また、金融政策については、日銀が掲げた1%のインフレ目標の達成に向け、一層の金融緩和や資産の買い入れに期待感を示しました。

 こっちは日銀の金融緩和の話が入っている。
 NHKは会談を取り上げて、その会談には金融緩和の話はなかったということなのかもしれないけど、フィナンシャルタイムズの社説から見てもわかるように、IMFが伝えたかったという点では、重要点を見事にすっぽかした報道だった。
 ブルームバーグだと手短だったが明瞭だった。6月12日「IMFリプトン氏:介入は無秩序な為替市場の回避で活用可能」(参照

6月12日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)のリプトン筆頭副専務理事は、日本の金融政策が一段と緩和されるべきだと述べた。
・日銀の緩和拡大は物価目標達成を支援しよう
・日銀が物価目標達成のため行動することが重要
・日本の財政改革を支持
・消費税引き上げが日本政府の優先課題
・中国はしっかりと成長している

 これが日本ではきちんと報道されていないし、フィナンシャルタイムズのあの社説も翻訳されてないように思える。
 NHKの報道なんかが典型だけど、メディアも一丸となって、この部分の情報に偏りが起きている。なぜかって、そこが、本当の政治の論点だから。
 情報が国民にうまく伝えられていない。これもまた、へなへなになるくらい戦前と同じ大政翼賛会の風景である。
 話を先のフィナンシャルタイムズの社説に戻すと、この先、日銀の懸念はさして根拠がないことや、日銀を攻める国会議員もそれを安易なスタンスにしてはいけないという、なにやら日本風喧嘩両成敗みたいな話が続くが、割愛。
 そして、消費税についてだが、フィナンシャルタイムズもそれ自体を問題にしているわけではない。
 では何が日本の政治に必要なのか。

These include measures to raise women’s labour force participation, as well as incentives to get corporations to invest more. Then there is the issue of stabilising the country’s public debt, the second largest in the world. Parliament is raising the consumption tax from 5 per cent now to 10 per cent in 2015. This could be complemented by wealth taxes targeted at the cash-hoarding elderly, which would help fiscal consolidation with a lesser impact on consumption.

これに含まれるのは、女性の労働力増強であり、企業にもっと投資をもたらす動機づけである。その後、世界第二の規模の国家債務の安定化も問題になる。国会は2015年までに消費税を10%に上げようとしているが、この増税は、カネを貯め込んだ高齢層への富裕税で補えるし、それによって消費低迷を抑えて財政再建を助けるだろう。


 重要なのは、なんかよくわからない謎の「一体改革」よりも、女性の労働環境を整備し、企業投資ができる環境が必要だということ。消費税は消費低迷として打撃を与えることになるから、これを緩和するために、カネを貯め込んだ高齢層への富裕税を強化しないといけないということ。
 ごくあたりまえの提言だけど、このあたりまえが、どんだけ日本の現状から乖離しているかというあたりで、くらくらしてくる。
 消費税はいずれ上げなくてはならないのはわかる。しかし、名目成長率が2%も越えないでやろうというのはむちゃくちゃだし、消費を活性化させる施策がなんらこの政府にはない。消費がなければ生産もない。
 あと、左翼と自称するかたが「消費税増税はいかん、無駄はこんなにある」論を展開しているのも見かけたけど、それは重要な論点ではない。
 もともと欧州的な左翼の感覚でいえば、消費税を上げることは国家を肥大させる点で左翼万歳であって、個別の減税に心を砕くというところなんだが、そういう方向性も日本には見えない。いわゆる左翼終了の風景でもあった。
 国政に批判勢力が見えなくなる、これも大政翼賛会の風景。
 じゃあ、絶望的なのか。国家があるだけましだと思えよということなのか。
 フィナンシャルタイムズ社説の締めはなかなか明るい。

The BoJ should not dig its heels in and avoid the further monetary loosening that is beneficial to the economy. But if politicians want to prompt the BoJ to act, showing commitment to reform is more helpful than a series of pep-talks.

金融緩和は日本の経済にメリットをもたらすのだから、日銀は、自身の考えに固執すべきではないし、金融緩和を避けるべきではない。国会議員が、日銀に仕事をするように促したいなら、叱咤激励をくだくだ言っているより、改革への関わりを示すほうが役立つ。


 政治ブロガーさんや経済ブロガーさんみたいに、威勢のいいことをくだくだ言い続けているより、国家議員さんは、きちんと日銀改革に手を染めてくださいなということである。
 まあ、そういうことなんで、総選挙の際には、そのあたりを指針にして見ていこうと思う。
 
 

| | コメント (9) | トラックバック (1)

2012.06.24

曖昧母音が英語発音のポイント。"April"の発音は「エイプリル」ではないよ

 もひとつだけ英語発音の話。曖昧母音が英語発音のポイントということ。これはけっこうあちこちで言われていることだけど、ちょっと書いみたい。
 ちなみに、"April"の発音は「エイプリル」ではないよ。「米国英語だとそうだけど英国英語だと……」という人は英国英語も確認してみるといいけど、違うよ。"April"の"ril"のところは曖昧母音になる。米語だと「エイプラ」に聞こえる。英国英語だと「エイプゥ」みたいになる。いずれにしても、「リル」みたいな「i」の音はない。でまあ、それはなぜなのかという話なんだが。たぶん、ややこしいので、この手の話がお好きなかたは、どうぞ。

マイクロソフトの"Surface"は「サーフェイス」?
 久しぶりに曖昧母音のことを考えたのは、先日、マイクロソフトが"Surface"という新端末装置を発表したのがきっかけ。これ、なんて発音しますか? 英語に詳しそうな人が「サーフェイス」みたいに発音していて、え?と驚いて、ちょっと考えこんでしまった。
 ちなみに、私はといえば、「サーフィス」だと思っていた(音引きのところはR母音だけど)。つまり、"face"ところは「イ」に近い音ということ。
 「プログレッシブ英和中辞典」(参照)を見ると発音として[sə'ːrfis]とあり実際の音声も確認できる。聞くと「サーフィス」のように、つまり「フィス」のように聞こえる。Dictionary.comでは、発音は[sur-fis]とあってはやり「サーフィス」のように聞こえる。まあ、そうじゃないかと思っていたのだが……。
 ま・て・よ。

"Surface"の発音は「サーフィス」でいいのかな?
 さすがに、"interface"みたいに「サーフェイス」みたいに発音はないとしても、これ「i」じゃないんじゃないかと思いなおした。「プログレッシブ英和中辞典」やDictionary.comが間違っているとまではいわないが、違うんじゃないか。
 手元のロングマンの英英を見ると、やっぱり、['sɜːf'əs]だった。曖昧母音だ。 すると、発音的には「サーファス」に近いはず。辞書には音声もついているので聞いてみると、たしかに曖昧母音で「サーファス」に近い。
 ただ、聞きようによっては「サーフェス」に聞こえないでもない。これはあれだ、マクガーク効果(参照)ではないけど、単語的ないし日本語母語のフレームワークの意識が先行しているイルージョン現象かもしれない。

"Surface"の発音は……わからん
 すると、この"Surface"の"face"の部分の音は現在、曖昧母音化が進んでいる途上かとも思って、他の辞書と、たまたまロングマンの英和を見たら、[səː(r)fIs]だった(最初の/ə/の上にアクセントが付くが)。日本語だと「え」に近い「い」の音。
 ロングマンの英英と英和で扱いが違うのもなんだろうか。疑問に思って英和のほうの発音を聞いたら、英英と同じ。実際には['sɜːf'əs]だった。なんじゃ、これ。
 ちなみに英辞郎Proも見たら[sə'ːrfəs]とあり、曖昧母音にしていた。音があるので聞いてみると、これはかなり「サーフェス」のように「エ」に近い音に聞こえる。
 Cambridge Dcitionaryを引くと、/ˈsɜr·fəs/ (参照)と /ˈsɜːfɪs/ (参照)が混在。とはいえ、この前者は米語、後者は学習者用。ここには英国発音もあり、それを聞くと、「サーフィス」に近く、けっこう「イ」に聞こえる。

マイクロソフトは"Surface"をなんて発音してるか?
 そういえば、オリジナルはどうかな。マイクロソフトのプレゼンテーションを聞いてみる。
 最初の入道の発音は「サーフェス」っぽいが、二番目の雲水の発音は「サーファス」に近い。

 他のビデオを見ると「サーフィス」ふうの発音もあり、どれが正しいというものでもないそうではあるが、概ね、曖昧母音化していく途中とは言えそうな感じ。

日本のメディアは「サーフェス」ってことで、ここはひとつ
 日本のメディアは"Surface"をどう伝えるのか。
 マイクロソフト自身のサイトをみたら日本語表記の情報が見当たらなかった。
 日本語版ウォールストリートジャーナルや日本語ロイターはどっちも「サーフェス」としていた。他のメディアで「サーフェイス」や「サーフィス」はなかったので、日本のメディア的には「サーフェス」で定着したもよう。知らなかったが、"Surface"で「サーフィス」と読む男性歌手ユニットがあった。

/fəs/の/ə/っていうのが、シュワ
 この曖昧母音、英語では、schwa(シュワ)と呼ばれる。
 日本語の「あいうえお」でいうと、「う」や「お」に近い音でもあり、「サーファス」というほど「あ」に近くはないが、じゃあ、「サーフス」かというとそこまで「う」ではなく、じゃあじゃあ、というと「え」にも近い。
 「サーファス」と表記すると「あ」が強調されかねないし、「サーフェス」あたりが日本語に近いのかもしれない。

"face"の発音はその部分の意味理解に関係していそう
 さて、なんで"surface"の"face"がシュワ化したのか?
 これ、言語学的には、音声学でも音韻論でもなく形態論な問題かな。あー、簡単にいうと、その部分をネイティブが意味としてどう理解しているかに関わってくるという話。
 たとえば、"interface"の場合は、「顔(face)」を付き合わせるという意味の意識があるから、「フェイス」がくずれない。「インタフェス」っていうのはない。
 "typeface"なんかも活字の「面(face)」だから「フェイス」。
 ところが、それらと形態素として区別される"preface"の"face"なんかだと、"surface"と同じ現象が起きる。これも、「プリフィス」から「プリファス」へシュワ化が起きているみたいだ。

"Surface"の"face"のシュワ化はなぜ?
 次に問題なのは、['səːfIs]が['səːfəs]へというように、変化しちゃったのはなぜか。つまり、「サーフィス」と「サーフェス」どう違うかということ。
 まず、人によって違うというのはある。それでも、「サーフィス」という発音の場合は、シュワ化はしていない。なぜなのか?
 これは、別の視点を取ると、アクセントの問題なのだな。

アクセントが消えると母音字はみんなシュワ化する
 英語の辞書だと、2シラブルの語にはアクセント位置を示す記号が付く。4シラブルだと第2アクセントの記号も付く。
 "anniversary"は5シラブルのan·ni·ver·sa·ryで、[æ`nivə'ːrsəri]のように、第1アクセントが「ヴァ」で、第2アクセントが冒頭の「ア」になる。まあ、ここまでは学校とかでも教える。
 あまり教えられていないのが、英語っていうのは、アクセントを失うと、みんなシュワになっちゃうということ。
 これがさ、どんなスペリングであっても、シュワになるというのが英語のすごいところ。ウィキペディアにいい例があった(参照)。


like the 'a' in about [əˈbaʊt]
like the 'e' in taken [ˈteɪkən]
like the 'i' in pencil [ˈpɛnsəl]
like the 'o' in eloquent [ˈɛləkwənt]
like the 'u' in supply [səˈplaɪ]
like the 'y' in sibyl [ˈsɪbəl]

 スペリングからだと、発音が想像付かないのが英語の面白いところ。
 "April"なんかも。[e'iprəl]、つまり、「エイプラゥ」になってしまう。日本語で料理の「レシピ」とかいうあれ、"recipe"は[re'səpi]、つまり、「レサピー」。
 さらに、シュワは流音に結合するとき消えちゃうんで、ウィキペディアには、 "pencil"に[ˈpɛnsəl]とあるけど、これは実際には[pe'nsl]になる。「ぺぬそぅ」ですな。エル(l)の音はシュワを吸収しちゃう。
 「ライトノベル」とかの"novel"は、[nɑ'vl]、日本語っぽくいうと「ナヴォ」。
 鼻音もシュワを吸収することがある。"student"は「スチューデント」じゃなくて、[stju'ːdnt]となって、これ、日本語で書きづらいが、「スチューウン」になる。
 で、こっからがさらにややこしい。

シュワ化されないのはアクセントがあるから
 "surface"を[sə'ːrfis]のように、「サーフィス」と読むということは、実は「フィス」の部分になんか微妙なアクセントがあるということだ。(なお、英国英語だとshwaはR母音と同じ発音表記になるけど、これは音韻としては、schwaではなくR母音とみたほうがいい、と思う。)
 どういうことなのか?
 "surface"のような2シラブルの単語だと、第1アクセントは必ず存在するが、それ以外は、辞書には表記されないが、そのシラブルのアクセントは、第1ではないけど、無アクセントでもないかもしれないということ。
 なんか奇妙なことを言っているみたいだけど。
 例えば、"accident"という単語、第1アクセントは冒頭のaにある。これが"accidental"だと、第1アクセントは"den"に移り、冒頭のaは第2アクセントになる。アクセントが残るから冒頭の"a"はシュワ化されない。

そこにあるのは、ステルス・アクセント!
 そこで、"ambassador"だが、辞書には、[æmbæ'sədər]のように、第1アクセントしか表示されない。けど、冒頭の"a"がシュワ化されていないということは、ここに、なんかアクセントがある。これをなんと言うのか知らないので、ステルス・アクセントとしときます。
 "surface"の発音に戻ると、「サーフィス」として発音されているときは、話者の意識に、「フィス」のところにステルス・アクセントの意識が残っている。
 これが、"interface"のように「面(face)」という意識なら、「サーフェイス」になるのだけど、そうじゃないんだろうなという意識がある。
 しかし、「じゃあ、そのフィスってなんだよ、僕にはわかんないなあ、どうでもいいや」に意識が変わると、意味を担う形態としての意識が薄れてシュワ化する。
 ただ、この部分はなかなかシュワ化しづらいのかもしれない。
 「しかし、いや、どうでもよくないんじゃないの」という意識を"sur"が引っ張っている。「"sur"は"surrealism"(サーリアリズム)のように、"over"という意味あるよね、"face"がなんだかわからないけどさ、面かなんかの上だよ」みたいな意識が、シュワ化を押しとどめるのではないか。
 余談だけど、"sirloin"(サーロイン)というのは、語源的には、この"sur"が付いた"surloin"、つまり、"loin"の「上(sur)」の部分という意味。でも、無教養なのか洒落なのか、"loin"の尊称(sir)のように意味が勘違いされて、"sirloin"になってしまった。

まとめ
 なんかひどくめんどくさい話になってしまったけど、要点は2つだけ。ついでに1個付け足してとく。

  1. 英語は綴りを見てローマ字風に発音しちゃだめだよ。アクセントがなければ、なんでもシュワ(曖昧母音)になっちゃうから。
  2. RやLなど声が続く子音の前にシュワ(曖昧母音)がくると、シュワも消えちゃうよ。
  3. 英単語の聞き取りに一番重要なのは、シュワの聞き取りだよ。もちろん、発音するときも大切だけど。
   

| | コメント (5) | トラックバック (0)

« 2012年6月17日 - 2012年6月23日 | トップページ | 2012年7月1日 - 2012年7月7日 »