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2012.06.20

音引きと促音をやめるとジャパニーズ・イングリッシュ臭さが抜ける

 昨日のついで英語の発音の話。このネタ、他所で見かけたことがないので、ちょっと書いておこう。どういうことかというと、音引きと促音をやめるとジャパニーズ・イングリッシュ臭さが抜ける、という話。何、それ?
 皆さんご存じだと思うけど、確認から。音引きというのは、伸ばし音。長音ともいう。たとえば、「おばーさん」の「ー」が音引き。そして、促音というのは、詰まる音。例えば、「がっかり」の「っ」のところ。
 これがどうして英語の発音に関係するのか。関係するんですよ。簡単にいうと、英語には長音も促音もないのに、日本人が英語で発音するとこれ無意識に入れちゃいがち。ちょっくら説明しみよう。

英語に長音はない
 車(car)は「カー」。The internetは「インターネット」。印刷機(printer)は「プリンター」。少女(girl)は「ガール」。「スポーツ」(sports)。というように、英語をカタカナで表現すると、音引きで長音になる。この長音というのは英語には、ない。
 なんとなく、"r"や"er"が長音っぽい印象を与えるけど、これらは"R-Controlled Vowel"といって、簡単にいうと、"ar"とかひとつの母音になっていて、長音ではない。
 "been"は「ビーン」みたいだけど、これ、"bin"と同じ発音。"bean"は長音ぽく聞こえるけど、これも母音が違う(同じになってしまうこともあるけど)。いずれにせよ、長音化ではなく母音の質が変わる。母音の質で覚えること。
 カタカナ英語で音引きのあるところは、音引きで読まないように注意。

日本語の長音は音程変化を示すことが多い
 日本人は「おばさん」と「おばーさん」の違いを、音引きの有無だと思っている。音の長さで区別されると思っているわけだが、これ、違うのですよ。この音引きは音の長さではなく音程変化を示している。「おばさん」のときは「ば」で音程が変わらないけど、「おばーさん」のときは、「ば」と「-」で音程が違う。わかる? これを意識すれば、逆に「おばさん」の「ば」の音を物理的に伸ばして、逆に「おばーさん」を伸ばさずに言うこともできる。
 日本人はこの長音の音程変化をカタカナ英語の音引きに反映しちゃうことが多い。こうした音程変化を英語でやっちゃダメ。

英語に促音はない
 "stop"をカタカナで書くと「ストップ」になる。英語発音の学習では、「ス」や「プ」に"su"や"pu"みたいな余計な母音を入れないようにという指導は多い。だけど、英語には促音がないということはあまり指導されない。ここが要点なのに。
 英語には促音がない。「ッ」にあたる音はない。では日本人は、この「ッ」でなにをしているかというと、喉の奥をくいっと軽く絞めていることが多い。"glottal stop"という。訳語は「声門破裂音」とかいう恐ろしげなもの。実態はおならするときの息みたいな感じなのに。
 別の言い方をすると、日本語で「ストップ」、「ストット」、「ストック」、というとき、「ストッ」まではまったく同じ発音ができる。"glottal stop"で息を止めているから。
 これが英語にはない。米国人はこういう発音ができない。おならはできるのに。
 米人はどうしているかと、"sto"(スト)と母音を発音したまま、喉を絞めず、"p"で唇を閉じる。あるいは、"t"で歯茎と舌で閉じるか、"k"で舌の奥で閉じるか、いずれも閉じるに任せる。英語には「ッ」にあたる音はないから。
 英語らしく発音するには、これを真似ればいい。"stop"というのを英語で発音するときは、カタカナで「ストップ」と思わないで、「スト」を"p"で閉じる。閉じた後、ちょっと息を残して"p"を少し吐く。"stock"なら"k"で閉じて、"k"を少し吐く。喉の奥で閉じないようにする。「少し吐く」のは、これ、弱い"s"が追加できるくらいということ(実はこれが"s"の正体)。
 このとき、「すとー」と音引きみたいに意識すると、日本人は音程を変えやすいのでご注意。
 例を挙げよう。"bread"は「ブレッド」ではなく、「ブレェ」を"d"で閉じる。"plot"は「プロット」ではなく、「プラァ」を"t"で閉じる。
 余談だけど、日本人は"glottal stop"が上手にできるから、「あいうえお」とはっきり言うことができる。「あ」と「い」の間にこっそりちっこい「っ」を無意識に入れているから。米人はこれができないので、「えいぉぉお」みたいにだらけた発音になる。

閉じる音は自体はほとんど聞こえない
 英語の聞き取りで難しいのは、語末の音がほとんど発音されないということ。これは歌を聴くとよくわかる。"stop"なら"p"は聞こえない。"stock"なら"k"が聞こえない。まったく聞こえないわけではないけど。
 じゃあ、"stop"と"stock"と同じじゃんと思うでしょ。日本語だと「ストッ」で同じだから。
 ところがそうではなくて、英語だと、"stop"と"stock"では、"sto"の部分の音の響きが違う。響きを変えるのは、この閉じ方。
 米国人は、"p"や"k"の息で聞き分けているのではなく、"p"や"k"の閉じ方によるその前の母音の音質で聞き分けている。
 だから、"stop"や"stock"の語末の発音を子音らしく、「ぷっ」「くっ」みたいにするのではなく、その前の母音の音質に注意することが聞き取りで大切。

まとめ
 日本人はどうしても英語がカタカナに聞こえてしまう。しかたないけど、音引きと促音はないのだというのを、意識しておくといい。
 

 

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2012.06.19

3分間でLとRの発音をテケトーにマスターする

 たまたま、はてなブックマークで「はてなブックマーク - 3分でLとRの発音を完璧にマスターできる5つの音声トレーニング | わいわい英会話」(参照)というのを見た。私が見たときは400くらいブックマークがついていた。人気が高いと言えるのではないかと思う。ネットとかで英語を学びたい人は多いのだろう。その程度の印象でいつもならこうした話題は通り過ぎて、元記事を開くことはないが、タイトルの「LとRの発音を完璧にマスター」を見てつい、そうだなあ、あれは意外に難しいんだよなと思ったので、どう教えているのか元ネタ(参照)を開いてみた。ざっと目を通して、え?と思った。
 簡単にいうと、ダークエル(dark L)の解説がなかった。このサイトの他の部分で説明されているのかもしれないが、英語のエル(L)の発音を学ぶときには、ライトエル(light L)とダークエル(dark L)を区別したほうがいい。いや、非英語国民の大半は区別しないからどうでもいいという意見もあるかもしれないけど。
 英語の発音なんか、どうでもいいか、とも思ったのだけど、「RとLの発音が両方含まれる英単語で発音練習をしてみましょう」という例文に「girl letter girl letter girl letter」とあって、うーむ、これはギャグサイトかもしれないので、ダークエル(dark L)がどうたらという野暮な話はなしってことかな。
 たいていの人は知っていると思うので、ごく簡単にいうと、英語のエル(L)の発音は、語頭にあるときはライトエル(light L)でそれ以外ではダークエル(dark L)になる。そうだなあ、ついでなんで私なりにLとRの発音をテケトーに説明しときましょうか。もっともよくブコメに書かれているように、極東さんは英語できないですから、なので、間違いも多いと思うので、テケトーに受け取ってくださいね。

英語のエル(L)の発音は、語頭にあるときはライトエル(light L)で語末ではダークエル(dark L)
 "list"のエル(L)は語頭にあるので、ライトエル(light L)。これはいちおう日本語の「リスト」の「リ」の音に近い。舌先が歯茎に付く。あと、母音が続く場合もライトエル(light L)になる。"slip"や"play"とか。
 これに対して、"people"のエル(l)は語末にあるのでダークエル(dark L)。なので「ピーポウ」。"battle"も同じで「バトウ」。あと、子音の前に来るときもダークエル。"milk"のエル(l)は子音前の語中にあるのでダークエル。米語だと舌先は歯茎に付かないので、「ウ」の音に近くなる。「ミウク」ですね。
 以前米人がエル(L)の発音を日本人に説明しているところに遭遇したことがあり、"Milk"を「ミ・ウー・ク」みたいに分けていて、エル(L)の発音がライトエル(light L)に近かったので、あ、それ、違いますよ、舌歯茎に付かないですよ、自然に発音してみてくださいよ、と言うと、米人さん、怪訝な顔して、なんどからつぶやいて、ほんとだ、と発見して驚いていた。米人のネイティブでも発音勉強したことない人は、ライトエル(light L)とダークエル(dark L)の違いを知らないもんです、きちんと発音できるのに。

"al"は「オー」
 "talk"や"walk"はエル(l)の字が入っていても、エル(l)の発音はしません。"al"で固まっていると思っていい。同じなのが、"au"で、これも「オー」。実際は「ア」に近い。"caution"は「カション」ですね。ちなみに、"u"は語末に来るとスペリング上は"w"なので、"saw"は「サ」。これでやっかいなのが、"also"で、辞書には「ɔ'ːlsou」みたく、ダークエル(dark L)を表記していることが多いのだけど、現代米語ではダークエル(dark L)なしが多い。

「ら」の正体
 LとRの発音をテケトーにマスターする上で大切なのは、日本語の「ら」の正体だと思う。これ、エル(L)でもアール(R)でもない、フラップ(flap)という子音。正確には、"Alveolar lateral flap"という子音。flapはパチンと叩くという意味があるように、舌で歯茎のあたりに軽くタップするように触れて出す子音。Tapとも言う。で、日本語の場合、「た」「だ」「な」も舌のタップと接触が近いので、似た音になる。このため、「ダメー」が「らめー」になるし、日本語勉強してない米人に「ただなら、もらう」と言うとうまく聞き分けできない。
 あと、英語のティー"T"の音が語中の特定の環境ではフラップになる。"water"が「わら」となる。

LとRの正体
 これに対して、ライトエル(light L)は、リクィド(liquid)という子音。液体というか、「ぐんにょり」するということで、音が母音のように流れる。このあたり、流れるからliquidなのか、詩の韻律上の用語なのか今一つわからない。簡単にいうと、ライトエル(light L)が歯茎に付いたまま舌の横から母音が流れ漏れる音なわけ。ただし厳密にはもうリクィド(liquid)という用語ではなく、"Alveolar lateral approximant"のはず。
 語頭のアール(R)はなにかというと、米語だと"Alveolar approximant"という子音。私が学校で学んだころは、"retroflex"とか言って「そり舌音」と訳していた。なので「舌を巻くように」みたいな説明だった。そういう発音もあるけど、米語は"retroflex"を使ってなくて、"Alveolar approximant"を使っている。うーむ、なんじゃ、それ。
 簡単にいうと、舌を巻くという意識なしに舌先を歯茎に近づける(approximate)する音。日本語のflapを寸止めにして少し母音を流す感じになるが、舌の奥も顎の内側で盛り上がるというかそのついで舌先が歯茎に近づく。この発音のとき米人は口をすぼめることが多い。"write"みたいに"w"がスペリングに付くからか、もともと米語の"Alveolar approximant"は口すぼめ(rounding)が附帯しがちだからなのかよくわからないが。日本人の感覚だと犬が「ぅぅぅぅ」と呻るような音。いずれにせよ、米語の語頭アール(R)というのは英語という視点からは奇妙な音で、たぶん移民の影響でドイツ語やフランス語のアール(R)がなまったんでねえの。

後続するR
 母音に続くアール(R)、例えば、"car"とか。これは米語だと"ar"で一つの母音として扱う。発音としては舌を喉のほうに引き込むような感じ。ただし、これにさらに母音が続くと語頭のアール(R)のようなリエゾン(結合)が起きる。"for a few minutes"だと"ra"のように聞こえる。
 このあたり、米語ではなく英語だとリエゾンがないとアール(R)はないのに、後続に母音が来ると現れるという現象がある。で、これが意識化されるために、母音が続くときに"r"を挿入してしまう現象もある。"I saw a film"だと、"I saw-r-a film"になる。古典日本語でも、"村(mura)"に"雨(ame)"が続くと、途中に"s"が入って、「むらさめ」になるのと似た現象。
 ティー(t)やディー(d)に続くアール(R)は、子音の音色を少し変える。"tree"はツリーじゃなくて「チュリイ」"。日本人の感覚だと、"tr"という一つの子音があるような印象になる。
 ちなみに、"free"だと"f"と"r"の間は詰まるが、"flee"だと間が空いて分離した印象になる。ただし、日本語の「フリイ」のように"fu"のような母音は入らない。


 そんな感じ。
 なんか重要なこと書き落としているような気がするけど。ああ、発音だけ話して聞き取りのことを書いてなかったけど、まあ、いっか。
 この手の話は「手づくり英語発音道場 対ネイティブ指数50をめざす (平凡社新書)」(参照)が比較的詳しい。著者、専門家ではないけど、だからこそいろいろ疑問に思って調べたらしい。

cover
手づくり英語発音道場
対ネイティブ指数50をめざす
(平凡社新書)
 英語については、英語の発音や文法の専門家は教育の分野に手を出さないんですよ。正しいこと知っていても、英語教育には出てこない。なぜか説明すると長くなるんで、興味ある人がいて機会があったら書くかもしれないけど。心理学の専門家が人間心理について語らないと同じようなものなんで、特段に不思議なことでもないけど。
 
 

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2012.06.18

高橋克也容疑者、逮捕

 地下鉄サリン事件に関わったとされた高橋克也容疑者が15日逮捕された。その前日のこと、私事だが出先の駅の改札で警官が通行人にビラを配っていた。ああ、あれは高橋克也容疑者逮捕のためのビラだろうと察しがついた。警官は配るべき人を見極めているようでもあったので、彼が配ろうと思えば届くゾーンへ歩いてみた。彼はもちろん、私を見ただろう。高橋克也容疑者と同じ年齢のおっさんなのだから。そして比較的痩身という体型も似ているはずだ。だが彼は私を無視した。おお、そうか。まあ、いいや。そう思って通り過ごしたが、どんなビラを配っているのか、ちょっと気になって、引き返し、それもらえますか、と素直に警官に言った。彼はそっけなく私に渡した。私に不審を抱くふうもなかった。ビラはテレビなどでもこの数日見かける、つまらない代物で、こんなものを配っても意味はないから、退屈な捜査のノルマみたいなものだったのだろう。
 その翌日、高橋克也容疑者が逮捕された。知らなかったのだが、前日に逮捕の噂は流れていたらしい。警察としてはそれなりに動向を把握していたのかもしれない。その後、通報者の話をメディアで聞くと、通報しても警察は取り合わず、危うくまた逃すところでもあったという。何が本当なのかよくわからない。逮捕劇の内実もいまひとつわからないところがある。
 高橋克也容疑者について私はほとんど知識がない。同い年なんだと思うくらいで、どこの生まれでどこの大学を出たのかも知らない。調べてみると、神奈川県横浜市港北区に生まれ、最寄りの高専を出たあと1979年に電機会社に務めたとのこと。大卒ではなかった。私も中学生のときは高専に行きたいなと思っていたので親近感を感じる。私はたまたま自分が思っているよりも成績がよくて普通科しか進学できなかった。
 高橋克也容疑者がオウム真理教の前身、オウム神仙の会に入信したのは1987年のことだったという。29歳。30歳直前。おそらく結婚もせず30歳を迎える男であった。その点も私と同じ。現代だと30歳で未婚というのはなんの不思議もないが、私の世代、女性はクリスマスケーキと呼ばれ、25歳を過ぎると売れ残りとされていた。男性からすると嫁さんが2歳くらい下というのが多く、つまり男性は27歳、28歳には結婚するものだった。私の友だちもそのころばたばたと結婚したので、ふーん、私の番はいつだろうかと思った。なんということはなく30歳を迎えたころ、あれれ、このまま私は独身なんだろうかと思った。高橋克也容疑者もそう思ったのではないか。
 高橋克也容疑者は、麻原彰晃教祖(松本智津夫死刑囚)の身辺警護で10歳近く年下の井上嘉浩死刑囚の補佐役となった。世間を離れても出世に取り残されていくタイプの男だが、そのことに違和感も感じてはいなかったのではないか。1995年の公証人役場事務長逮捕監禁致死事件では拉致の実行犯であり、地下鉄サリン事件ではサリン散布役の豊田亨の送迎を務めたらしい。サリン事件ではいかにも下っ端っぽい仕事でもあり、監禁致死事件ではその名前のとおり殺人罪ではなく逮捕監禁致死罪でもある。伝え聞く容疑が固まっても死刑となるものでもないだろう。もし私が彼の境遇なら、刑を換算して世間の空気を察し、さっさと逃走をやめてさっさと刑に服しただろう。いや、そもそも私のようなひねくれた心情の男が、10歳年下の補佐役が務まるわけもない。そもそも麻原教祖への反感もじくじくと秘めていただろう。高橋克也容疑者はそういう私みたいな嫌ったらしさはない男だったということになる。
 捕まった高橋克也容疑者の風体は54歳とは思えないほど若々しいものだった。生まれつきの要素もあるだろうが、こりゃ、オウム真理教修行の御利益かもしれないとふと思い、まさかねと思い直して苦笑したが、その後の報道を聞くに、麻原彰晃教祖を今も崇拝し、オウム真理教の修行を続けているらしい。捜査員との雑談では、彼はオウム真理教の呼吸法や禅定などで「修行を積むとパワーがみなぎる」と話しているらしい。留置場では蓮華座も組んでいる。平田信容疑者も長い逃亡生活でマントラを唱えていた。
 私も蓮華座を組むことができる。保つのは10分くらい。ヨガの呼吸法も最近はしないが、一通り知っている。高橋克也容疑者がどういう修行をしているかわからないが、蓮華座で行うこととオウム真理教にはそれほど深い修行の体系はないので、ごくそこいら辺のアラフォーおばさんのヨガ教室などで学べる程度のものではないだろうか。それでも、きちんと継続すれば健康効果はあるのだろう。
 愚かしいものだなと思う。愚かだからそんなことができるのだろうなと思う。そう思いつつ、自分も平時、あぐらよりも半跏趺坐で座っていることが多く、気がつくと、キリエ・エレイソンとかつぶやいている。そんな自分のことは忘れている。愚かさというのはそういうものである。先日読んだ「詩篇を歌う」(参照)に、修道院の近代化で聖務日課が省略されて病気になる僧侶の話があった。試しに昔通りの厳しい聖務日課に戻して未明から深夜まで定期的にグレゴリアン・チャントとか歌わせる生活にしたら、病が癒えたそうだ。
 高橋克也容疑者が逃走生活に入ったのは1995年である。その前年私は沖縄へ出奔した。凡庸なる私には反社会的な意味合いはなく、ただ自分の人生の都合にすぎないが、それでも心の中では、逃げたと言ってもいいだろう。私もそのころ自分の逃亡生活を始めた。そして17年経った。で? いや私は別に逃げ続けたわけではないと心の中で言ってみる。それに今年が転機というわけでもないだろうとも言ってみる。それはそう。でも、どこかにちょっと心に引っかかることはある。そろそろお前も自首するころじゃないのかと誰かが言う。誰だよ。何を自首しろって言んだよ。そう答えても、何か心が晴れるわけではない。
 
 

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2012.06.17

民主党・自民党・公明党の三党合意で描く日本の近未来

 報道を聞いているかぎり日本の政治はお先真っ暗という印象がぬぐえない。民主党の自滅はとうの昔に済んだ話だが、野党自民党も民主党の毒饅頭である三党合意を食って頓死してしまった。主要二政党が滅んで生まれ出たのが国民の血税を啜る増税翼賛会である。こんなろくでもない戦前政治の怪物みたいなものはさっさと滅ぼしてしまえと言いたいところだが、その後には「万人の万人に対する闘争」しかないだろう。国家の混乱である。それよりは隣国と仲よく独裁政治であれ国家に政治が存在しているほうがまだましかという気すらしてくる。これはもうどうしようもないなと落胆していたのだが、ちょっと気を取り直して事態を冷静に見てみようか。
 要は三党合意である。実際にはどのような合意だったのか。民主党サイト「社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案まとまる」(参照)に歪んだスキャン画像として、次の3文書がある。(1)3党実務者確認書、(2)社会保障・税一体改革に関する確認書、(3)税関係協議結果、である。
 政策的に重要なのは、(2)社会保障・税一体改革に関する確認書、であり、具体的な項目が書かれている。


社会保障・税一体改革に関する確認書(社会保障部分)
 一、社会保障制度改革推進法案について
 別添の骨子に基づき、社会保障制度改革推進法案を速やかに取りまとめて提出し、社会保障・税一体改革関連法案とともに今国会での成立を図る。
 二、社会保障改革関連5法案について
 政府提出の社会保障改革関連5法案については、以下の通り修正等を行い、今国会での成立を図る。
 :(以下略)

 これを読むと、よくここまで詳細な合意ができたものだと感心したのだが、おっと、ここで(1)3党実務者確認書を見ると、がっちょ~んなことが書かれているのだった。

3党実務者確認書
別添の「社会保障・税一体改革に関する確認書」に加え、以下を確認する
1. 今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容などについて3党間で合意に向けて協議する。
2. 低所得高齢者・障害者などへの福祉的な給付に係る法案は、消費税率引き上げまでに成立させる。
3. 交付国債関連の規定は削除。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途、政府が所要の法的措置を講ずる。
平成24年6月15日

 「社会保障・税一体改革に関する確認書」に加え、「以下を確認する」とあるので、普通の日本語ならその後に追加的な内容が来るはずだが、この文書で後続しているのは、「その内容などについて3党間で合意に向けて協議する」ということだ。追加事項ではなく、「なーんちゃってね」である。「あ、今言ったのなしなし、これから話合って決めようね」という打ち消しの確認であった。かくしてこの二文書は相殺して意味が消えた。というか、政策なんて意味ないよねというのを民自公三党で確認したというのである。
 では具体的に何について合意したのかというと、税である。消費税増税と報道されている。実態はこの文書、(3)税関係協議結果、である。

税関係協議結果
 政府提出の税制抜本改革2法案については、以下の通り修正・合意した上で、今国会中の成立を図ることとする。
 (注)*は法改正に関わるもの
○第4条(所得税)について
・(*)所得税に係る規定(第4条)は削除するが、最高税率の引き上げなど累進性の強化に係る具体的な措置について検討し、その結果に基づき平成25年度改正において必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を付則に設ける。
 具体化に当たっては、今回の政府案(課税所得5000万円超について45%)および協議の過程における公明党の提案(課税所得3000万円超について45%、課税所得5000万円超について50%)を踏まえつつ検討を進める。
○第5条、第6条(資産課税)について
・(*)資産課税に係る規定(第5条、第6条)は削除するが、相続税の課税ベース、税率構造等、および贈与税の見直しについて検討し、その結果に基づき平成25年度改正において必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を付則に設ける。
 具体化に当たっては、バブル後の地価の大幅下落等に対応して基礎控除の水準を引き下げる等としている今回の政府案を踏まえつつ検討を進める。
○第7条(消費税率引き上げに当たっての検討課題等)について
・消費税率の引き上げに当たっては、低所得者に配慮した施策を講ずることとし、以下を確認する。
(1)(*)「低所得者に配慮する観点から、給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含めさまざまな角度から総合的に検討する」旨の条文とする。
 また、「低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含めさまざまな角度から総合的に検討する」旨の条文とする。
(2)(*)簡素な給付措置については、「消費税率(国・地方)が8%となる時期から低所得者に配慮する給付付き税額控除等および複数税率の検討の結果に基づき導入する施策の実現までの間の暫定的および臨時的な措置として実施する」旨の条文とする。
 その内容については、真に配慮が必要な低所得者を対象にしっかりとした措置が行われるよう、今後、予算編成過程において、立法措置を含めた具体化を検討する。簡素な給付措置の実施が消費税率(国・地方)の8%への引き上げ条件であることを確認する。
・(*)転嫁対策については、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法・下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を追加する。
・医療については、第7条第1号ヘに示した方針に沿って見直しを行うこととし、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時までに、高額の投資に係る消費税負担について、医療保険制度において他の診療行為と区分して適切な手当を行う具体的な手法について検討し結論を得る。また、医療に関する税制上の配慮等についても幅広く検討を行う。
・住宅の取得については、第7条第1号トの規定に沿って、平成25年度以降の税制改正および予算編成の過程で総合的に検討を行い、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時および10%への引き上げ時にそれぞれ十分な対策を実施する。
・自動車取得税および自動車重量税については、第7条第1号ワの規定に沿って抜本的見直しを行うこととし、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時までに結論を得る。
・(*)扶養控除、成年扶養控除、配偶者控除に関する規定を削除する。
 ただし、成年扶養控除を含む扶養控除および配偶者控除の在り方については、引き続き各党で検討を進めるものとする。
(*)歳入庁に関する規定を「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施する」とする。
○附則第18条について
・以下の事項を確認する。
(1)第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2)消費税率(国・地方)の引き上げの実施は、その時の政権が判断すること。
・消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
・(*)「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、わが国経済の成長等に向けた施策を検討する」旨の規定を第2項として設ける。
 原案の第2項は第3項とし、「前項の措置を踏まえつつ」を「前2項の措置を踏まえつつ」に修正する。
○その他
(*)上記の見直しに関連し、題名と第1条について以下の修正を行う。
 題名 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律案」とする。
 第1条(趣旨規定) 所得税、資産課税の見直しに係る箇所および「により支え合う社会を回復すること」を削除する。「わが国が」を「わが国の」に修正する。
・国分の消費税収の使途のうち年金、医療、介護に係るものについては、平成11年度以降、国分の消費税収は高齢者3経費に充当されてきた経緯等を踏まえるものとする。
・上記の国税改正法の修正に伴い、地方税改正法についても所要の修正を行うものとする。
 以上、確認する。
平成24年6月15日

 税制全般にわたり、けっこう詳細に書かれているではないか……よく読め。
 所得税も資産課税も検討課題であり、税制改革の根幹である歳入庁も検討課題に過ぎない。実質、合意されているのは、消費税である。「低所得者に配慮」のために「簡素な給付措置」として低所得層向けのバラマキをしたら、「消費税率(国・地方)が8%となる時期」が決まるというのである。まあ、バラマキはお手盛りだからそれほど高いハードルではないので、消費税増税が三党で合意できたということになる。
 だが、実際の増税時期については「その時の政権が判断する」とのみで合意文書にはない。8%以上への増税の言及もない。10%という話も含まれていないのである。
 このあたり、報道とは印象が違う。例えば読売新聞記事「一体改革、3党合意…会期内の採決目指す」(参照)ではこう書かれている。

 民主、自民、公明3党は15日、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案を修正し、今国会で成立させることで合意した。
 消費増税に慎重だった公明党が容認に転じた。税制、社会保障それぞれの合意内容を確認する文書に、3党の実務者が署名した。これにより、2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費税率引き上げ関連法案は成立に向けて大きく前進した。民主党内には増税に慎重な意見が根強く、野田首相は民主党の了承を取り付け、21日までの今国会会期内の衆院採決に全力を挙げる。

 この記事だが、よく読むと、消費税増税については「向けて大きく前進した」ということであって、「2014年4月に8%、15年10月に10%」は合意文書で表面的に確認できる部分としては三党合意には含まれていない。16日付け産経新聞社説「3党合意 社会保障抑制は不十分だ 「決められぬ政治」回避したが」(参照)でもこの数値と期日が入っている。

 平成26年4月に8%、27年10月に10%と消費税率を2段階で引き上げることは民主、自民両党間で早々に合意された。

 16日付け日経新聞社説「首相は消費増税の実現へひるむな」(参照)も同様である。

 3党は現行5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げることで一致した。日本経済にかかる負荷を和らげるため、2段階で税率を引き上げるのは妥当である。

 他方、同日の朝日新聞と読売新聞の社説にはこの期日と数値への言及はなかった。
 二段階消費税引き上げの話はどこから出て来たかといえば、合意文書にある「政府提出の税制抜本改革2法案について」ということで、その法案「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」(参照)が前提となる。そこには、以下のようにきちんと期日と増率が記されている。

2.消費税法の一部改正
(1) 平成26年4月1日施行(第2条)
○消費税率を4%から6.3%に引上げ(地方消費税1.7%と合わせて8%)。
○消費税の使途の明確化
(消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする)
○課税の適正化(事業者免税点制度の見直し、中間申告制度の見直し)
(2) 平成27年10月1日施行(第3条)
○消費税率を6.3%から7.8%に引上げ(地方消費税2.2%と合わせて10%)

 この「第2条」の扱いが、今回の三党合意でどういう扱いになっているのかだが、よくわからないのである。単純に考えれば、そもそも合意事項には含まれていないようだが、政治的な文脈からすれば、「第2条」は異論がないから最初から合意されていたとも理解できる。
 だがそうであっても論点は「第2条」を問題化する「7.附則」であることは合意文書からでも明白である。ここは法案ではこうなっている。

7.附則
○消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18条)
消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

 この部分に対応する合意文書をもう一度対比のための引用しよう。ここが消費税増税論のキモである。

○附則第18条について
・以下の事項を確認する。
(1)第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2)消費税率(国・地方)の引き上げの実施は、その時の政権が判断すること。
・消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
・(*)「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、わが国経済の成長等に向けた施策を検討する」旨の規定を第2項として設ける。
 原案の第2項は第3項とし、「前項の措置を踏まえつつ」を「前2項の措置を踏まえつつ」に修正する。

 さて、消費税率の引上げにあたっての措置という「附則第18条」と今回の合意文書の対応部分はどのように理解したらよいのだろうか。
 まず明白なのは、法案の「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は合意文書で「政策努力の目標」となったことだ。つまり、どうでもよくなった。「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は無効になってしまった。消費税増税よりひどい話である。率直にいって、この時点で日本のデフレは終わることはないということが、民主党・自民党・公明党で合意されたのである。
 次に、消費税増税時期は「その時の政権が判断する」ということで、いかにも民主党後の政権が受け持つかのようだが、これはようするに、民主党・自民党・公明党がどのような組み合わせで政権を取っても、その政権がガチで消費税を上げますよという話である。増税翼賛会宣言であった。
 この増税翼賛会はどのような日本を目指すのかというと、「財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」というのだが、つまり、消費税増税で財政にゆとりができたら、その分を成長戦略や社会保障に回すというのだ。それも「わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ」というのは、「デフレだったらやめます」というわけでもない。
 現実的に見れば、「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」の放棄を三党で合意した時点で日本の未来のデフレは確定になり、そのなかでいくら消費税を上げても財政のゆとりなんか生まれるはずもない。日本はじわじわと地獄図へと変わっていくというのがこの三党、民主党・自民党・公明党の合意の描く未来であった。
 冷静に政治を見つめ直してもショボーンな日本であったとさ。
 

 
 

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