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2012.05.03

盲目の人権活動家・陳光誠氏をめぐる事件

 中国当局によって自宅軟禁に置かれていた、盲目の人権活動家・陳光誠氏の奇跡の脱出、そして米大使館駆け込みの事件だが、最新の報道では、人権弾圧を続けている中国と人権擁護を一応は掲げている米国とで政府レベルの手打ちとなった。
 陳氏は米国亡命を求めたがかなわず、「米国に裏切られた」と発言したとの報道もあった(参照)。だが米国オバマ政権の高官は、「亡命を要請したことは一度もなかった」とまるで中国政府高官のようなことを述べて米大使館から陳氏を結局放り出した(参照)。
 事態の真相はよくわからないが、中国政府下に戻された陳氏に言論の自由などありようもなく、真相解明の大半は不可能になった。オバマ政権、グッジョブ。
 表立った報道からわかる範囲で経緯を見ると、中国政府がこの事件を嫌うのは当然として、オバマ政権もこの事件を嫌っていたようだ。クリントン米国務長官は5月3日、北京で開催された米中戦略・経済対話の開会式でこの事件については言及もしなかった。人権問題よりも外交や経済が重視されているのだ。
 米中両国ともに内政に大きな問題を抱えつつ、大きな政権交代または交代の可能性があるなか、やっかいな事を起こしたくない。それでも今回の事態は米国の大義である人権問題に触れるため、オバマ政権にイヤイヤ感が滲むのはしかたがない。
 なによりタイミングが良すぎる。クリントン米国務長官とガイトナー財務長官が、米中戦略・経済対話で北京入りする予定にドンピシャで北京の大舞台が大騒ぎが繰り広げられた。普通に考えると偶然なわけないだろうと思える。
 人権弾圧主義の中国の化けの皮が剥がれるし、山東省臨沂地区から遠く離れた北京の米国大使館に駆け込むところから見て、奇跡脱出劇に西側の人間が関与していたことは疑いないのに最後は米国大使館から放り出すという結末で、人権擁護国として米国の顔もつぶれた。
 陰謀論で見るのは避けたいが、どう見てもこれ、なんか裏はあるだろうと考えざるをえないような一幅の絵に仕上がっている。この絵を眺めながら、さてどうしたものかと考える。もちろん、中国の人権弾圧は非難されなければならない。これまでこのブログではなにかと批判を浴びながらも人権問題ををけっこう扱ってきたつもりだが、チベットやウイグル問題を見てもわかるように中国の人権弾圧はひどすぎて、どこから非難してよいかわからない。
 裏はあるだろうか。裏といっても英国タブロイド紙デーリーメールの記事みたいな愉快な話をこさえてもなあとは思う。一応経緯と日本であまり報道されていない情報をちょっとまとめてみますか。
 直接的な事件の経緯だが、陳氏が自宅軟禁から脱出したのは4月22日とのこと(参照)。情報は、実際に山東省から北京にまで560キロの道のりに自動車で陳氏を乗せた何培蓉(He Peirong)自身のツイートからだった。その後、彼女は南京にいたと確認されたが(参照)、直後、公安当局に拘束された(参照)。彼女は4月27日の時点で、「何が起こったか詳しいことは言えないが、われわれの勇気を見てほしい。米国務省にも接触するが、日本政府に支援の声明を出してほしい」と時事通信に伝えた。そういえば日本政府、中国の人権問題になんか発言しましたことってありましたかね。



 何氏から陳氏を引き取って北京の米国大使館に渡したのは、テキサス州に拠点を置く人権弾圧チャイナエイド(CHINAaid)(参照)のボブ・フー(Bob Fu)氏である。

 とりあえず表に立っているのは、何培蓉氏とチャイナエイドのボブ・フー氏である。これだけでも両者にはつながりがあると見て妥当だし、実際つながりはあった。だが今回の事件の立案者がどちらかであるかは、これだけではよくわからない。仮に何氏側が立案の主体であるとしても、彼女はいわば中国における人権と解放のジャンヌ・ダルク的なシンボルでもあり、さらに背景または支援があるかもしれない。
 他方チャイナエイドとはどのような団体か。もちろん非営利の中国における人権擁護団体であるが、そのミッション(参照)を読むとわかるように、信教の自由に力点が置かれている。設立者がボブ・フー氏である。
 フー氏自身、かつて北京でキリスト教徒として迫害に遭っていたが、チャイナエイドもキリスト教系の団体と見られている。MSNBCにもフー氏についての記事(参照)があるので気になる点をまとめておこう。
 フー氏は元はキリスト教徒ではなかった。1989年の天安門事件に加わり、その後の弾圧下で米国戦教団から英語を学び、彼自身も北京で英語教師となりながら、精神の自由をもとめてキリスト教徒となり、さらに地下教会の牧師となった。おかげで「違法な福音派」として投獄もされている。ということは福音派のようだ。
 1996年、妻と子供と米国に亡命し、2002年の中国でのキリスト教弾圧をきっかけに米国でチャイナエイドを創設した。近年の活動としては、劉暁波のノーベル平和賞受賞にも貢献した。中国の地下教会の支援金も多く集めている。陳氏もフー氏も中絶反対を求める米国福音派から支援を受けやすいし、フー氏の経験からすると陳氏も亡命が想定されていたのではないか。
 フー氏の米国亡命のきっかけは妻の妊娠だった。彼にとっては初子だったが出産には中国政府の許可が必要で、妻の妊娠が発覚すると中絶を強いられる状況だった。そこで地下教会の信徒の力を借りて二階の浴室窓から夫婦で逃げ出した。陳光誠氏の活動も中国の一児政策に違反した妊婦に対する、中絶や不妊の強制に戦うものだったし、必死の逃走という点でもフー氏には陳氏への共感が強くあっただろう。
 フー氏自身、今回の事件について4月30日、ワシントンポストに意見を掲載している(参照)。それによると事件は数か月前から立案されていた。当初、俳優のクリスチャン・ベールが陳氏に面会しようとし、その勢いで中国での活動を喚起しようとしたがうまくいかなかった。今回助けとなったのはネチズン(ネット市民活動家)だった。またそのなかで重視されたのが何培蓉氏だった。彼女は今回の脱出劇で、陳氏のような清い心をもった人のためには死んでもかまわないとの決意をもっていた。事件の時期については、陳氏救出に米政府を巻き込む必要性からだったようにも読める。
 心を打つ物語であるが、話は救出の後半部ということで前半部は別にある。山東省での陳氏救出はクリスチャン・ベール以外にも試みられていた。
 2011年10月5日、女性民主活動家の劉沙沙氏の呼びかけで、ネチズンら数十名が陳氏が拘束されていた村に集結しようと計画し、10人前後が拘束された(参照)。その後も試みられたようだが、今回の陳氏の脱出劇でもネチズンが陽動作戦に出たのだろう。
 そこで、劉沙沙氏やネチズンの思想や背景が気になる。
 劉氏もまた何氏のように運動の看板ということがあるかもしれないが、劉氏のツイッターでの発言を追うと、欧米などに多い人権活動家とさほど違った印象はうけない。むしろ、劉氏についてはチベットやウイグルの独立には反対の考えを表明している(参照)。


反对藏独和疆独的原因(1)对领土的眷恋,对“弱小”的恐惧。从小到大看到的地图都是这广袤的样子,失去西部三分之一甚至二分之一的领土,对我们来说,是一种难以承受的痛,这样的领土让我们感觉安全,只剩下一半的领土,让我们恐惧。RT @tengbiao RT @degewa:
lss007 2012/01/15 13:47:03 Content from Twitter
lss07 劉沙沙
チベット独立と新疆独立に反対する理由その1:領土への未練とはすなわち、“弱小になる”ことへの恐怖。幼いころから大きくなるまで見慣れた地図は全部この広大な面積の状態だったわけで、西側の3分の1ないし2分の1の国土を失うなんて、私たちに言わせれば、ある種受け入れ難い痛みなわけ。こういう(今のような広大な面積の)領土があって私たちは安心できているのであって、もし半分の領土しか残らなかったら、もう恐怖でガクブルよ。

 宗教についても基本的なところで嫌悪感を持っているようだ。

你们反抗中共,反抗什么?为何反抗?千万别提宗教,宗教对你们很神圣很美好,对内地民众则很奇怪。你们越虔诚越激烈,汉人看着越恐惧。也别提酷刑——我受的酷刑在一般网友面前都很少谈,因为离他们的生活印象太远,他们不会相信,越哭诉越不信。@degewa @tengbiao @kungat
返信する RTする ふぁぼる lss007 2012/01/15 21:28:18
Content from Twitter lss07 劉沙沙
あなたがたは中国共産党に反抗しているけど、いったい(共産党の)何に反抗しているの? 何のために反抗しているの? くれぐれも宗教を挙げないでくださいね、宗教はあなたがたにとっては神聖で美しいものかもしれないけど、内地民衆にとってはおおよそ怪しげで不気味に感じるものなんだから。あなたがたの信仰がより敬虔に、より激烈になるのを、漢人は見るほどに怖くなってくるの。それから、拷問も挙げないでくださいね――私も、自分が受けたひどい拷問について一般のネット友達の前で口にすることはほとんどありません。なぜなら、(拷問は)彼らの生活の中でイメージできることからかけ離れすぎていて、信じられないものだから。私が泣いて訴えれば訴えるほど、信用されなくなるんです。

 これらは案外気軽な発言ではなく政治的な発言なのかもしれない。だが、普通に読んでうけた印象では、劉氏のネチズンとしての活動は、チベットやウイグルの解放運動とも米国キリスト教徒の関連も見られそうにない。
 何氏や劉氏の背景から、なにか政治的な勢力が潜んでいるとは思えない。むしろ、陳氏の問題は基本的にフェミニズムの問題ではないか。これについて日本や米国のフェミニズムの思想家がどう考えているかはまるでわからない。
 結局、今回の大騒ぎに大した裏はないのかということだが、全体の利害の構図でいえば、陳氏による温家宝への糾弾発言(参照)からすると、この権力交代時に現政権側への反発を強めることは、共青団的な勢力への批判ともなる。すると、太子党的な富裕層による政治の動きかというと、そこまでも見られない。

 むしろ、中国の若い世代には、共青団的な勢力と近代化したネチズンとの対立があるのかもしれない。ただ、そのネチズンは概ね、ナショナリズムに彩られているとはいえそうだ。
 

追記(同日)
 19時24分のNHKニュースで陳光誠氏が米国出国の意向をNHKに明らかにした。「陳光誠氏 一転出国の意向示す」(参照)より。


 中国の盲目の人権活動家、陳光誠氏は、保護されていた北京のアメリカ大使館から病院に移ったあと、一転して出国したいという意向を示し、一応の決着が図られたかに見えた問題で、米中両国が再び対応を迫られています。
 北京のアメリカ大使館で保護されていた陳光誠氏は、米中両国の交渉の結果、3日、北京市内の病院に移され、アメリカ政府は、今後、中国国内の安全な場所に、家族と共に移されると発表しました。
ところが、陳氏は、NHKの電話インタビューに応じ、「中国を離れて体を休めたい」と述べ、中国にとどまりたいとしていた当初の希望を変えて、家族と共にアメリカに出国したいという意向を示しました。
 その理由について、陳氏は、母親が残っている山東省の自宅に新たな監視カメラが設置されていることや、自分の携帯電話の通話が制限されていること、それに、病院で友人との面会が許されないことなどを挙げ、「中国では人権が保障されないからだ」と述べました。
陳氏の扱いを巡り、中国との交渉に当たったアメリカのキャンベル国務次官補は、ラジオ局のインタビューで「陳氏は、中国で普通の暮らしを送ることができるかどうかが重要だと考えていた。亡命や訪米については一度も口にしていなかった」と述べています。
 ただ、別のアメリカ政府高官は「陳氏は意向が変わり始めたが、まだ考えが十分整理できていないようで、把握するためにも、本人と話し合いを続ける」と述べて、陳氏の意向を改めて確認していることを明らかにしました。
 一方、中国外務省の劉為民報道官は、3日の定例会見で「アメリカ大使館が、正常でないやり方で陳氏を大使館に連れ込んだことに、強い不満を表明する」と、従来の立場の説明を繰り返しました。
 陳氏を巡る問題は、いったんは一応の決着が図られたかに見えていましたが、陳氏が一転して国外に出たいという意向を示したことで、米中両政府は再び対応を迫られています。


追記(2012.5.5)
 陳氏は留学が名目で亡命可能。NHK「NY大学 陳氏迎える用意ある」(参照)より。

 盲目の人権活動家、陳光誠氏は、保護されていた北京のアメリカ大使館から市内の病院に移されたあと、家族と共にアメリカに出国したいという意向を示し、中国政府は4日、留学を目的とする形であれば、出国を認める考えを示しました。
 こうしたなか、ニューヨーク中心部、マンハッタンにある私立大学の「ニューヨーク大学」は4日、声明を発表し、「陳氏を客員研究員として迎える用意がある」として、本人に伝えたことを明らかにしました。

 何培蓉さん、釈放。個人的にはこの報道に安堵した。これが重要な問題だった。時事「陳氏の自由「うれしい」=拘束の女性活動家釈放-中国」(参照)より。

中国の盲目の人権活動家・陳光誠氏の脱出を支援し、先月27日以降拘束されていた女性人権活動家・何培蓉さん(40)が釈放され、4日、時事通信の取材に「陳氏が自由を得られたことが最も重要でうれしいことだ」と語った。

 事態の転機は、陳氏による米議会直訴だったのだろう。CNN「陳氏、渡米支援を米議会に直訴 米中対話では人権が議題に」(参照)より。

 中国の人権活動家、陳光誠氏(40)は4日、入院先の北京の病院から電話を通じて米議会の委員会で証言し、中国を出て米国へ行きたいとの要望を伝えた。

 今回の事件だが、当初エントリーに書いたように、オバマ政権の大失態と見てよい。ロムニーが言うように「オバマ政権の恥」と言ってもよいだろう。オバマ政権も事実上議会を握る共和党側に押された形になった。その意味では、共和党的な勢力の勝利ともいえるし、やや選挙戦絡みの陰謀めいた読みが含まれることは否定しがたい。
 陳氏の今後の活動だが、氏に強いビジョンがあるふうでもないので、率直なところそれほど期待できるものではないだろう。だが、大きなシンボルとはなりうる。
 報道での分析はないが、経緯の詳細を見ると、キリスト教福音派や中国ネチズンもだが、天安門事件のネットワークがいろいろ動いていたようには思えた。
 
 
 

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2012.05.02

みなさん中央銀行について何かご存じですか?

 みなさん中央銀行について何かご存じですか? 「中央銀行ですよね。山梨県?」なるほど山梨中央銀行ってありますね。ほかのみなさん、どうですか?「あたし知ってます。偉い人が使う銀行です」 みなさんが使ってるんですよぉ。「使ってませ~ん」ほかにお答えはありますか?「お札刷っているところです」そうです。はい、この千円札をよく見て下さい。カメラさん寄って。日本銀行券って書いてありますよね。日本の中央銀行である日本銀行が刷ったからんです。「あ、ほんとだ。書いてある。知らなかった」そうなんです。「銀行ってお札刷るんですか?」いえいえ。「中央銀行だけはいいんですよね。でもなぜいいの?」いい質問ですね。では中央銀行ついてご説明いたしましょう。
 中央銀行は英語でセントラバンクといいます。パネルを見てください。中央に英語で"Central bank"とありますね。そしてまわりに銀行があります。

 「やっぱり偉いんじゃないですか」偉いというより、銀行を相手におカネを貸す銀行なんです。銀行のなかの銀行と言う人もいます。「さっきの説明だと、貸すおカネは、お札として刷ったものなんですか?」いいとろこに気がつきましたね。中央銀行はお札を刷って貸すことができます。「いいなあぁ、あたしも欲しーい」ははは。できたらいいですよね。
 「質問いいですか?」はい、どうぞ。「日本はおカネが足りなくて困って消費税を上げようとしてますよね?」それで?「中央銀行がお札を刷れるなら、じゃんじゃん刷ればおカネが足りるんじゃないですか?」実にいい質問ですね。どうすか、みなさん。「変! そんなことしていいわけなーい。働かないでおカネなんてラメー」もちろん勝手にお札を刷っていいわけではないんです。「犯罪ですよ、それ」
 では、次の絵を見て下さい。なんの絵かわかりますか?

 「おじいさん、目が行ってる」なにをしているかわかりますか。「頭がおかしくなって飛び降りたいんでしょ」お札、見えますか?「これ、お札なのぉ?」そうです。お札をヘリコプターでまいているところです。「ひどーいっていうか、ほしーい」この絵の人は……「孫さんでしょ。ソフトバンクの」いえ。アメリカ人。「原発の人ですよね」あー、名前はバーナンキさん。アメリカの中央銀行で一番偉い人です。「仕事がきつくて、頭がおかしくなった人ですよね」いえ。でもこんなふうにみんなにおカネを配りましょうということです。「ほしーい!でも、いいのぉ?」
 では、説明しましょう。次の写真を見て下さい。

 「知ってます。クルーニー。映画俳優ですね」いえ。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンです。彼は子守り組合という例え話をしています。赤ちゃんの面倒を見る組合サービスです。「それ、あったらいいです。うちの姉なんかもう誰か子守りしてくれないかっていつも言ってます」そうですよね。そこで子守り組合は、子守りをするポイントの券を作って組合員で分けて、他の子の子守りをしたらポイントが貯まるような仕組みにしたんです。「他の子の子守りをしたらそのポイントが増えて、それで誰かに子守りが頼めるんですよね」そうです。理解が早いですね。正確には利子とかの話なんですがちょっとアレンジしました。「それが中央銀行に関係があるんですか?」
 こう考えてください。子守り組合の人がポイントあまり使わなくて、貯めることに熱心になったら、どうなるでしょう?「たくさん貯めておくと、いざというときに便利」そうですね。でも子守り組合の活動はどうなりますか?「暇になる」そうです。暇になるとすると……「サービスがうまくいかない」そうなんです。
 「わかったー! お札も子守りポイントの券と同じなんだ」どうですか。「わかんないです」お札というのもいつか使うためのものですよね。ということは、それなのにみんなが貯め込むとどうなりますか。「サービスが暇になる」そうです。サービスが暇になるということは仕事が減るということです。お札が行き渡れはもっとサービスも行き渡るはずなのに、出回るお札が足りないとサービスも行き渡らない。困りました。
 「わかったー! だからヘリコプターでお札をまこうとしてたんだ」そうです。もっとお札を使ってくだいってお札を増やせば、サービスが受けやすくなりますね。
 「ちょっと待ってください。そんな話は変です」どう変ですか?「ただでお札が増えたということは、以前のお札の価値が減ったということにならないですか。せっかく貯めたのに、ただ券が増えたら、もとの券の価値が下がりますよ」いいところに気がつきましたね。そうです。するとどうなりますか?「どうなるって? えーとどうなるんだろう?」お札の価値が下がるとサービスの値段は?「上がる」そうです。物価が上がります。「困るじゃないですか。お札をまいたら、物価があがりますよ。やっぱりダメですよ」でも、サービスが利用しやすくなり働く人も増えますよ。
 「わかったー! あまり物価が上がらない程度にお札をまけばいいんじゃないですか」そのとおり。そこで物価の上昇率、これをインフレ率というのですが、これを2%くらいすればちょうどいいということなんです。
 「2%じゃなくて1%じゃないんですか。ニュースで言ってましたよ」そうです。日本の中央銀行である日本銀行は、なぜか1%と言っているんですね。「どうしてぇ?」
 はい。では、次のパネルを見て下さい。これはフィナンシャルタイムズといって国際的に有名な経済新聞の一部です。経済の専門家なら誰でも読んでいます。


ヨーロッパの中央銀行のジャン・クロード・トリシェ総裁は任期終了のとき、この10年間のインフレ率は1.98%だったと指摘した。これは目標の2%以下だが非常に近い値で、これ以上に目標に近づけることはできない。

 ヨーロッパのユーロという通貨、お札ですね、これを刷ることができる中央銀行で一番偉い人だったトリシェ総裁が、自分の実績は目標をほぼ達成したことだと誇っているのです。この目標は、インフレ目標、または、インフレターゲット、というんですけれど、それが理想の2%にほとんど近かったというのです。ヨーロッパでも中央銀行は、2%のインフレ目標を掲げているわけです。
 もう少しフィナンシャルタイムズを読んでみましょう。中央銀行の仕事で一番大切なのは、インフレを行きすぎにしないこと。物価がどんどん上がるようではいけないということです。そして二番目に大切なことがこれです。

第二番目は、インフレ目標を下回ることは、上回ることと同様に悪いということを、明確にすることだ。ユーロを使う国々の経済の健全性にとってデフレが深刻な脅威となっているとき、インフレ目標を下回って安心しているとしたら、上回るよりもスキャンダルである。

 経済がデフレの状況にあるとき、中央銀行が2%のインフレ目標以下で手を打たないでいるというのは、スキャンダルだというのです。わかりますか? 手を打つというのは、お札を刷るということです。実際には、いろいろな手法を使ってお札を刷るのと同じ効果があるようにします。
 「え-?でも、日本の中央銀行は2%ではなく、1%のインフレ目標を掲げているんでしょ。それじゃ、最初からスキャンダルじゃないですか?」いいところに気がつきましたね。ヨーロッパよりも深刻なデフレが続けているの、なぜ日本の中央銀行である日銀は1%のインフレ目標と言っているのでしょう。
 はい。最後にもう一箇所、フィナンシャルタイムズを読んでみましょう。

中央銀行の独立性とは、政治家が決めた目標を達成するのに、政治家自身がするよりも、中央銀行が自律的にしたほうが上手する能力があるということだ。民主主義の社会では、中央銀行の目標が社会の経済の健全性に合っていないと人々が感じるようだと、中央銀行の能力も実行できない。

 これはどういうことかと申しますと、まず、中央銀行の目的は政治家が決めるということ、そして決めた目標を実行するときに、政治家が口をはさむとうまくいかないので、まかせてください、というのが中央銀行の独立性だということです。わかりますか?よく誤解されるのですが、中央銀行の目的を中央銀行が定めてしまうのが中央銀行の独立性ではないんです。
 次に、中央銀行がきちんと仕事をすること、具体的には2%のインフレ目標に努力するためには、みなさん、日本の国民がひとりひとり、ああ、中央銀行がいい仕事をしているなあ、と理解する必要があるということです。
 「しつもーん!」はい。「わたしたちは、日銀はいい仕事をしていると思っているのに、なぜ1%のインフレ目標なんですか?」はい。そこがむずかしい問題です。というはですね。中央銀行のいい仕事というのは、2%のインフレ目標に努力するということなんですが、日本銀行がそうしてこないのは、日本人がそうしないほうがいい仕事だと思っているからなんです。「わかりませーん。だって、それだと日本人はデフレが好きみたいじゃないですか?」ええ、そうなんです。
 はいっ、時間が来たようです。ではまた。

参考
FT "A job description for Frankfurt"(Apr 29, 2012)


At the end of his ECB presidency, Jean-Claude Trichet liked to point out that inflation averaged 1.98 per cent in the euro’s first decade. It is impossible to come closer than this to the target of “below, but close to two per cent”.


Second, they should make absolutely clear that undershooting the target is as bad as overshooting it. At a time when deflation is a real threat to the eurozone’s economic wellbeing, it is a scandal that the ECB should be more comfortable below the target than above it.


The value of independence is that an autonomous central bank is better able to achieve goals set by elected leaders than those leaders themselves. In a democratic society, this ability cannot be sustained if the population feels that the central bank’s goal is at odds with their economic wellbeing.

 
 

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2012.05.01

極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.2 (2012.5.1)

 というわけで、試作品その2。少し方針を変えようかと思ったのだけど、やってみるとなかなかうまくいかない。前回よりちょっとコラムというかボケネタを増やした。個人的にはインフォ系のネタを増やしたいなという感じはあるけど、うまくいかない。で、うまくいかなとやっていくと結局、進まないので現状は進めてみる。
 そういえば、「finalventさんはメルマガに向かないのでは」という指摘もいただく。そうかもしれないとは思っているし、それほど意気込んでいるわけでもない。実際のところ、取り組むスタンスが続くかなという要因のほうが大きい。
 書きながらブログと違うなという実感はあって、それはそれなりにまだ面白い(きついなという感触もある)。書き方の面では、さらりとではあるが踏み込んだ解釈を出すようになった。実際のメルマガということであれば、さらに踏み込むかもしれないなという感じはある。いいのか悪いのかわからないけど。
 成功しているメルマガ例という話を聞いたのだけど、自分から見ると、意外とトンデモが多い。それも商品価値ということなのかもしれないし、エンタテイメントかなとは思う。で、自分でも試作品を作っていて思うは、そういうトンデモ傾向に引っ張られる感じはちょっと共感するなとは思った。
 情報ソースが少ないなか、面白い話を書こうとすると、トンデモにはなりそうだ。ただ、普通のトンデモなら自然に淘汰されそうなものだけど、そうでもないというのは、むしろ、メルマガとしてはトンデモというのが正しい道なのかもしれない。ブログというのが、ゴミになりがちなのと同じように。
 では。


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極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.2 (2012.5.1)
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目次
[南スーダン] 中国を脅してケニア側パイプラインを建設
[北朝鮮] 核実験のニュースは権力の混乱を示している
[EU危機] オランダが押したユーロ自爆ボタン
[エジプト] 本命はムスリム同胞団追放のアブールフトゥーフ氏
[中国] 薄煕来失脚は太子党への締め付け
[書籍] 英語となかよくなれる本 (高橋茅香子)
[テレビ] おじゃる丸15周年特番がこどもの日に
[コラム] 観光に来た外国人が日本で知ったこと
[コラム] 自分より若い医者にあって年を取ったなと思う
[コラム] 讃美歌を聴きたくなった
[コラム] 島らっきょうのてんぷらを塩で


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[南スーダン] 中国を脅してケニア側パイプラインを建設
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 日本が国連平和維持活動(PKO)として陸上自衛隊を派遣している南スーダンは現在、スーダンとの軍事的に衝あるが、この事態が進展するなか、南スーダンのキール大統領は23日から中国を訪問していた。交渉である。28日に「道路などインフラ整備」の名目で今後2年間中国から総額80億ドル(約6400億円)の融資を受ける合意に達した。なぜこの時期に? またインフラ整備だけなのか? BBCを含め西側報道では、ケニアを経由する石油パイプライン計画との関係を指摘している。
 南スーダンから産出される原油は、北側で敵対しているスーダン国内のパイプラインを経由して輸出される。このためスーダンは原油産出を南スーダンが停止することを恐れ、南スーダンはパイプラインを理由にスーダンに譲歩しなければならない関係にある。
 南スーダンの原油がスーダンを経由しない南側のケニア側から輸出できれば、南スーダンはスーダンへの依存関係は解消できる。すでに今年の1月24日、南スーダンとケニアのパイプライン建設は合意に達していて、あとは資金や建設受注企業の選定が問題となっていた。日本政府もこの建設に関心を寄せ、そのために南スーダンにおける日本の存在感をPKOで示す必要があった。
 中国は南スーダンの分離独立前からスーダンの原油事業に多額の投資を行っているので、スーダンと南スーダンの間で戦争が再開されれば原油調達も投資回収もできなくなる。この弱みを突いて、南スーダンはキール大統領の訪中前にスーダンと軍事衝突を起こし、原油生産を停止させたようだ。つまり、南スーダンが中国を脅して資金提供を飲ませたものだろう。
 スーダンとしてはケニア側パイプラインは許し難い。紛争の再燃につながるだろう。


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[北朝鮮] 核実験のニュースは権力の混乱を示している
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 北朝鮮が3回目の核実験をすると見られ、国際原子力機関(IAEA)の元事務次長オリ・ヘイノネン氏も高濃縮ウラン型を使用するとの見方を示している。韓国メディアは21日、実験坑道の土砂が埋め戻され、準備は完了した可能性があるとも伝えている。本当だろうか。
 大方の見方では、核実験は2週間以内に実施されるとのこと。ロイターも2006年の核実験を事前に伝えた筋から情報を受け、正確な予想だろうと見ている。NBCは北朝鮮の軍創設80年記念式典に合わせて核実験を実施するとの予想を立てていた。だが、これはすでに外はずれている。
 米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、27日に公開した、北朝鮮北東部の核実験場衛星写真の分析を示し、核実験の実施時期は判断できないとしている。
 北朝鮮内で核実験に向けたなんらかの動きがあることは確実だろう。報道は錯綜している。奇妙に思えるのは北朝鮮自身からの公式なメッセージがないことだ。それ以前に、核実験をするメリットが明確になっていない。
 代わりに北朝鮮「特別作戦行動小組」は23日、韓国政府や韓国メディアを標的とした「革命武力の特別行動がまもなく開始される」と発表した。北朝鮮の窓口機関「祖国平和統一委員会」は26日、「特別活動」は一昨年の延坪島砲撃を越えるとしている。
 「特別行動」の内実も「特別作戦行動小組」の実体も不明だが、軍最高司令部や総参謀部報道官ではなく、情報とその経路は錯綜している。
 核実験や「特別行動」が今週も延期されているなら、こうした混乱は北朝鮮権力の内部に対立によるものと推測してよいだろう。おそらく、表立ってきた張成沢国防委副委員長と軍部の対立だろう。


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[EU危機] オランダが押したユーロ自爆ボタン
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 国債格付けトリプルAのオランダがユーロの自爆ボタンを押してしまったようだ。
 深刻な財政問題を抱えるギリシャの財政赤字GDP比は9.1%、同じく問題視されるイタリアだが3.9%と少ない。フランスは5.2%、英国は8.3%。オランダはというと、4.6%で少ない部類になる。EU諸国と比較して差し迫る問題ではないのに、財政規律の面から3%以下を義務づけたEU協定に従おうとしてオランダ政府は、財政赤字削減策の問題を引き起こし、政権を崩壊させてしまった。
 中道右派・自由民主党ルッテ首相は、キリスト教民主勢力(CDA)と右派・自由党の閣外協力で連立政権を維持してきたが、財政赤字削減政策を自由党に拒否され、内閣は総辞職し議会は解散した。現状はベアトリックス女王の要請でルッテ氏が首相代行となっている。
 総選挙は9月12日に予定されているが、EU財政規律を維持しようとする政権は生まれそうにない。解散前の水準で見ると、自由民主党とCDAの議席数は52で、財政緊縮策を可決する過半数にはさらに24議席足りないが、EU規律に反発している自由党からの議席は得られない。
 自由党ウィルダース党首は「総選挙は欧州連合やオランダの主権に関する国民投票になる」と主張しているが、これにオランダ国民が賛同すればユーロ危機が再燃する。
 なお、自由党ウィルダース党首は2008年、イスラム教を批判する短編映画「フィトナ(Fitna)」をネットに公開し国際的な批判を招いた経緯があり、極右と警戒されている。


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[エジプト] 本命はムスリム同胞団追放のアブールフトゥーフ氏
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 エジプト昨年2月にムバラク政権が崩壊して以降、はじめての大統領選挙が5月23日から25日にかけて実施が予定され、6月末に結果が出る。現状の段取りである。どのようになるだろうか。
 23人が立候補の届けを出したが、選管当局が出馬を認めたのは13人。この過程で有力候補が失格となり混戦となった。イスラム勢力と軍が双方、強権を行使しそうな有力候補を相殺したと見てよい。
 議会選挙の勢いからすると第一党「ムスリム同胞団」傘下の自由公正党が擁立するモルシー氏が有力に思えるが、すんなりとは決まらない。事実上、4氏の争いとなる。

 ムハンマド・モルシー氏(ムスリム同胞団傘下・自由公正党党首)
 アブドルムネイム・アブールフトゥーフ氏(同胞団元幹部)
 アムル・ムーサ氏(アラブ連盟前事務局長)
 アハマド・シャフィーク氏(ムバラク前政権の閣僚・空軍出身)

 モルシー氏とアブールフトゥーフ氏がイスラム票を割る。モルシー氏はイスラム法に基づく国家を求めている(女性や非イスラム教徒の権限を縮小する)。イスラエルにも敵対的である。保守的なイスラム教徒の支持があるが反発を買う原因になっている。
 対する同胞団元幹部のアブールフトゥーフ氏はイスラム教徒だが、国家運営は寛容であるべきだとしてムスリム同胞団を昨年事実上追放された。
 ムーサ氏は非イスラム教徒やリベラル派の支持を得ると見られるが、割れたイスラム票に優る支持は得られない。
 シャフィーク氏は、失格したスレイマン前副大統領支持を多数食うと見られている。
 現下のエジプトの最大問題は困窮していく経済であり、その点からすれば、経済問題を重視するムーサ氏が魅力的に見える。また、エジプト最大権力者・軍最高評議会のタンタウィ議長も、元ムバラク派のシャフィーク氏を排除する意味からも、75歳の高齢で御しやすいムーサ氏を内心支持している。なお、タンタウィ議長にしてみれば、アブールフトゥーフ氏も御しやすい部類であり、2氏いずれであっても安全なポジションをすでに固めている。
 浮動票が大きいので予想が難しいが、全体動向としては、ムーサ氏の支持が伸びず、アブールフトゥーフ氏あたりに落ち着き、タンタウィ議長の思惑どおりに「アラブの春」という体裁が整えられる。
 同時にこれはモルシー氏を担ぎ出した同胞団側の失態にもなる。そのため、大統領選挙以前に失態部分の先取りが起きれば、同胞団と軍の対立は深まる。


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[中国] 薄煕来失脚は太子党への締め付け
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 謎が謎を呼ぶ薄煕来・前重慶市党委書記の失脚事件だが、細分化された謎こそが真相を曖昧にするトリックとも言える。全体から見れば事件の構図はむずしくない。なによりこの事態が最高指導者の転換期に起きたことは、次期中国の最高指導者習近平氏に関係した事件であることを示している。習近平氏を含めた太子党を巻き込む権力闘争であることは明らかである。
 太子党は共産主義青年団のように政治理念をもった政治集団ではないため「党」と呼ぶのは適切でないと言われるが、力の源泉は親の代から築いた資金源なので、攻撃理由も資金源になる。薄煕来氏の資金源を解明する過程で太子党が依存している闇の資金源を潰すことは、次期中国の最高指導者習近平氏を含め太子党の権限を縮小することにつながる。
 中国では政府の各部門で不正が拡大している。特に国家事業は不正蓄財の温床である。象徴的なのは2011年7月浙江省温州市で発生した高速列車追突だった。前鉄道相や運輸局長が不正蓄財に問われた。
 さらに闇融資や銀行不良債権問題が重く中国にのしかかっている。2009年に償還を迎えた国債は借り換えによって一時的に隠蔽されているだけだし、銀行は危険性のあるローンを闇市場に移している。これらが手に負えなくなる事態に備えるには、中央に一枚岩となる強力な権力を集中させる必要があり、権力移譲問題もこの方向で推移していく。


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[書籍] 英語となかよくなれる本 (高橋茅香子)
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 文春文庫の「英語となかよくなれる本」の後書きに、「この本を読んで、自分の好きなことを窓口にして英語と親しんでいくヒントを見つけてくださると嬉しい」と意図が書かれている。「『英語は苦手』という人にこの本をささげたい」ともある。
 読んだからといって英語が上手になるという本ではない。英語の先生が英語を説明して書いた本でもない。でも、英語が楽しいと思えるようなヒントがこれほど溢れた本はめずらしい。
 著者、高橋茅香子さんは、朝日新聞に入社し企画部に配属された当時、仕事の合間には好きなミステリー小説を読んでいた。すると年配の人から「英語で読むべきだな」と勧められ、そのまま素直に丸善に行ってアガサ・クリスティのペーパーバックを一冊買った。毎ページに知らない単語が10個も20個もあったが、好きで読み通した。気がつくと60冊に及んだ。後に、彼女は朝日ウィークリーの編集長になった。
 本書には、いわゆるお勉強やビジネスといった固さのない英語の世界が展開する。「ハウツー書をあなどるなかれ」という章には、英語の実用書の面白さが紹介されている。私もけっこうそのタイプの英書が好きなので、とても共感できた。
 本書は最初、晶文社から出た。その後文春文庫になった際「オンラインを上手に使って」としてインターネットの話が追加された。もう一度増補されるときは、キンドルの話がきっと追加されるだろう。[ http://goo.gl/PWSDp ]

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[テレビ] おじゃる丸15周年特番がこどもの日に
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 ご紹介が遅れた。4月30日21時からBS3で映画「かいじゅうたちのいるところ」をやっていた。すでに見ていた人もいるだろう。iTunesでも配信されている。原作はモーリス・センダックの有名な絵本。映画は絵本のイメージをけっこう忠実に再現していた。
 以下今週の予約予定番組。

◆ 5月5日(土)NHK総合 映画「ウォーリー」
 「ファインディング・ニモ」のアンドリュー・スタントン監督が、人間が住めなくなった29世紀の地球に取り残されたロボットの愛と冒険を描く。アカデミー長編アニメーション映画賞受賞作。気になっていたアニメである。

◆ 5月4日(金)NHK Eテレ午前9:00 「おじゃる丸でおじゃる!放送開始15年」
 アニメ「おじゃる丸」15周年記念特番。名場面やなつかしい映像や小ネタなど。いろいろ面白い裏話などが出てくるのではないかと期待している。[ http://goo.gl/1WQXF ]

◆ 5月5日(土)NHK Eテレ19:00 地球ドラマチック・選「トカゲもヘビも空を飛ぶ~マレーシア“滑空”動物の森~」
 2011年9月12日の再放送。トカゲやヘビやヒヨケザルが木々の間を「滑空」するという。通常ありえないような動作をする生物というが、どうにも魅力的に思えてしかがたない。そういう人はよいかも。[ http://goo.gl/A5bQF ]


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[コラム] 観光に来た外国人が日本で知ったこと
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 いわゆる観光とはちょっと違った観光がしたいという人が利用する「Gアドベンチャー」という観光サービスがある。これで日本を旅して外国人がメモした「日本について知った61の事実」という話を見かけた。日本を詳しく知らなかった外国人さんの、日本発見という話である。日本でなにを興味深く思ったのか。
 その前に、メモの元になった日本旅行だが、14日間で東京、京都、広島・宮島、金沢・高山を巡るというもの。費用は4万99ドル(33万円)から。すると1日2500円くらい。それでよく宿泊できるもんだなと思う。食費も入っているのかと見ると、朝食2回、ディナー1回とある。朝食2回の意味がよくわからないが食事も「込み」のようだ。私の安い旅行の感覚だと、格安ホテルは一泊3000円で食事は1000円ほど。
 日本についての61の事実だが、大半はつまらない。「日本は米国、中国に続く世界第3位の経済大国である」そのとおりなのだが、つまり、それまでそうは思われていなかったわけだ。以下、ツッコミを入れてみる。
 「日本の人口は1億2700万人」ええ、そのとおり。「日本の建国は紀元前660年。その記念日は2月11日」それは伝説ですよ。「日本国土の7割は山岳地帯」言われてみればそう。「火山が220個もある」まあね。「一番高い山が富士山でこれは活火山」いや休火山だなのだが。「仏教では禅がもっとも普及している」曹洞宗は浄土心真宗に次ぐけれど禅とはやや言い難い。「文字は4種類ある」これは外国人さん、よくびっくりますね。
 つまらない話が続くのだが、なんだろう?と思う話もある。「日本はジャマイカのコーヒーの85%を輸入している」本当かと調べるとそうらしい。「日本で野球が人気なのは戦後の米国の影響」そうかなあ。「ずるずると音を立てて食べるのは美味しくて調理人に感謝するという意味だ」違います。「馬刺しはよく食べられている」微妙。「日本はアマゾンの材木を世界で一番輸入している」そうかも。「日本人は米国人より4年長生き」まあね。「カラオケは、空っぽなオーケストラの略語」伴奏が録音だから演奏者のオーケストラはいないという意味なんだけど。
 考えさせる話もある「日本のATMは外国のカードを受け付けない」しかたがないのだけど観光立国を目指すなら便宜を強化したい。「レストランでは食事前におしぼりとお茶をくれる」これには感動している外国人さんが多い。チップ不要というのに感激する人もいる。こうした面を強調してもいいかも。
 メモを読んでいると、この外国人さん、多分、旅先でこの手の説明を受けて、ふんふんと聞いている姿が目に浮かぶ。だとすると、もうちょっと面白い説明とかもあってもいいし、もっと日本人の実生活に近い側面を見る旅行者が増えると、日本の国際理解に役立つだろう。[http://goo.gl/sH4yn]


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[コラム] 自分より若い医者にあって年を取ったなと思う
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 自分も年を取ったなと最初に思ったのは成人式のときだった。小学校や中学生の同級生と再会したら、みんな大人になっていた。特に女がね。
 それから、年を取ったと思ったのは、25歳を過ぎたとき、30歳を過ぎたとき。30歳を過ぎたときは、ウソだろと思った。それからはもう、35歳とか40歳とかで思う。でも、そういう年齢とは違って、ああ、年を取ったなあと実感するのは、自分より若いお医者さんに診察してもらうときだった。
 なんかバイトのようなお兄さんが出て来て、「この人、医者なのか?」と疑問に思った。白衣を着ているし、周りを見回すと、そのようだ。というか周りをつい見回してしまった。それから考える。インターンが終わった若い医者がいても不思議ではない。医者の経験が足りないから医療の質が低いというわけもないだろう。思いがぐるぐる回る。医者のほうは、患者の私がそんなことを思っていると気がつくふうはない。若い医者だなと思われることにも慣れているのだろう。そこでまた気がつく。この医者さん、私を自分より年上と見ているんだろう。それはそうだ。
 こういう経験をなんどか繰り返していくと、いやもう、45歳も過ぎると見るからに自分はおじさんなので、若いお医者さんからすっかり中年の人に接するように、接してもらうようになる。こういうのを受け入れていくのが人生というものかと思う。50歳を過ぎたら、もうけっこうな年だし、普通にお医者さんも自分より若い。若い女医さんとかだとなんとなく、年寄りとしていたわってもらえることもある。微妙な感じだ。
 先日だったが、医者に行くことがあり、出て来た医者がおじいさんだった。おおっ、これは立派なおじいさんのお医者さまだ、と感動した。
 問診はよぼよぼとしているので、この年で診察できるのかと疑問に思うこともないではないが、心なごませるものがある。問診で不調をたずねられ、ちょっと気になる略語を言ってみた。勉強してないお医者さんだと知らない略語なのだが、おじいさん医師は知っていた。研究医だったことがあるらしい。
 年を取るというだけで、なんとなく社会に安心を与えるような職業というのもあるのだろう。仕事と人格が年齢相応になって円熟する。若い頃にそういうのを知っていたら、もっとマシな大人になったかなと反省もした。
 本当に反省したんだよ。反省しかできないし、今だと。


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[コラム] 讃美歌を聴きたくなった
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 教会に通っていたことがあるから有名な讃美歌なら歌える。教会に通わなくなってからは歌ったことはない。クリスマスシーズン、街に讃美歌のメロディが流れると、ふと歌詞を口ずさむことはある。季節が季節だしと、心のどこかで許している。許している? 振り返って考えると、信仰儀礼めいたことはいつからか、できるだけしないと決めていた。
 なにかがゆるんだのか、先週だったか、讃美歌が聴きたくなった。CDでも買いに行くかと思ったが、それってiTunesにもあるんじゃないか。
 ありました。いくつかある。どれにしようか。試聴してわかったのは、私みたいな思いで讃美歌を聴きたいという人が少なからずいることだった。
 「懐かしの讃美歌BEST40」というのを買った。新日本合唱団という人たちの声はバランスが取れていて聞きやすい。「懐かしの」がまさに自分の心情にぴったりくる。
 私みたいな人もいるから「懐かしの」とついているのかというと、そうではない。文語の讃美歌ということらしい。現代の教会で、口語の讃美歌を歌っている人もいるんだろう。
 購入した40曲はiPodに入れた。しばらくして、クリスマスの歌は季節感に合わないので抜いた。寝る前とかに聞くと安らかな心になる。文語の響きが美しいなと思っている自分がいる。そう思う自分を不思議に思う。
 私は古典は好きだったが、明治時代以降の文語はきらいだった。大正訳聖書と言われる文語の聖書も好きでなかった。でも今、文語の讃美歌を美しいと思う自分がいる。もしかしてと、大正訳聖書をこの年になって開いてみたら、美しかった。
 このところ毎日iPodで聞いているせいか、ぼんやりしていると、「わーがーしゅイエース」とかつぶやいている自分がいる。素直なクリスチャンにもなったような気分。ひょっこりひょうたん島のマシンガン・ダンディになったような気分だ。
 そういう自分もまあいいんじゃないかと思っていたら、136番の「血しおしたたる、主のみかしら」が受け付けない。ちょっと、グロいな、と思っている。辛子粒にも満たない我が信仰!


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[コラム] 島らっきょうのてんぷらを塩で
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 島らっきょうがたまに食べたくなる。島らっきょうとは、沖縄を示す「島」が「らっきょう」についたものだから、沖縄特有のらっきょうという意味だ。植物としては本土のらっきょうと変わりはないらしい。野菜として見るとずいぶん違う。見た目が違う。根の球が細く、葉の青みも見える。エシャロットのようだ。
 本土のらっきょうといえば、カレーに添えるような甘酢漬けにする素材だが、島らっきょうは、そのまま生で食べたり(味噌は付けるけど)、塩で浅漬けにしたりして食べる。塩をふって二、三日漬けおいて食べるのだ。これがうまい。調べたことはないが、たぶん日本でも中世くらいまでは、らっきょうはこうして食べていたのではないか。
 島らっきょうの外観はエシャロットに似ていると書いたが、日本ではエシャレットという根ラッキョウも売られている。ご注意。「ロット」ではなく「レット」である。らっきょうを早獲りにしたものだ。エシャロットをシャレてエシャレットとにしたのだとも言われる。ではこのエシャレット、島らっきょうとは同じものなのではないのか。
 いまだに判別ができないでいる。だから、エシャレットが売られていたら、島らっきょうとして買って食っている。軽く塩漬けにしたり、てんぷらにしたりする。てんぷらもうまい。
 沖縄のてんぷらは、あれはフリッターというべきではないか。衣がぼってりとつく。魚の切り身とかも、ぼってりとてんぷらにする。そしてウスターソースで食う。後に知ったが、中華料理にそういうものがあった。甘酢やケチャップをつけたりもしていた。
 島らっきょうのてんぷらは、本土風の衣がいいと思う。そして塩で食う。

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極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.2 (2012.5.1)
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訂正
 (1)コメント欄で指摘していだきましたが、日本旅行の金額の理解が一桁間違っていました。
 (2)現在では「休火山」という分類はないようです。
 ご指摘ありがとうございました。
 
 ブログだと、訂正が楽ですが、メルマガだと、出してしまうと訂正が難しいので、そのあたりも難しいものなだと実感します。もちろん留意してないほうがよいのですが、間違いは出てくると思います。そのあたりの対応も今後の課題です。


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