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2012.12.01

今回の選挙の、自分なりの基本構図

 今回の選挙くらい気の乗らない選挙もないなと思う。あまり関心もない。
 どうなるかという観点で予測をざっくりすると、民主党与党が自民党与党になるだろう。ただ、自民圧勝となるかが読めない。あるいは民主党が解党的に壊滅するかも読み切れない。
 勘で言うとそのどっちにもそうなりそうもない。ある程度第三極も伸びるだろう。
 だととすると、事実上の大連立と維持ということになるのではないか。
 ニュースで流れる程度の党首の意見などを聞いていると、自民の安倍さんも民主の野田さんも、事実上の大連立を前提にしているように受け取れる。
 以下、簡単に自分なりの俯瞰をメモ書きしておきたい。

問われるのは三党合意
 この選挙で問われるのは、三党合意を継続するかということ。その頭に自民が来るか民主が来るかは、よって、二義的なことになる。なお、公明党はキャスティングボート以上の意味はない。
 三党合意を継続しないという考えであれば、いわゆる第三極に流れるということになるのだろう。
 私はいわゆる第三極にはあまり関心ない。前回の政権交代でこの手の幻想から国民がどのくらい目が覚めたのかというのが、しいていうと今回の選挙への関心である。
 当の三党合意だが、これは二つ柱があって、(1)消費税増税、(2)社会保障は党派を越えた有識者会議に任せる、ということ。
 まず明確なのは二点目で、前回の政権交代で民主党がごちゃごちゃやったマニフェストの事実上の大半は、もう棚上げになる。別の面からいうと、未来の党や維新、みんなの党のように、この部分をいじくり直してもろくな結果にはならないだろう。
 もっというと、有識者会議というのは、実質官僚丸投げとなるだろう。
 私は震災以降の日本の維持を見ながら、なんとか日本がもったのは官僚のおかげだと思うし、政党より信頼できた。
 我ながら、自分の政治観と転倒しているとは思うが、これが日本の現実なのだと思うといかんともしがたい。

焦点は2パーセントインフレターゲット
 三党合意の(1)消費税増税だが、私は、基本的には反対。
 だが、政権が安定しない状態となった今、単に反対というわけにもいかないし、長期的には消費税増税は避けられない。
 するとそこでの一番の問題は名目成長率を上げることで、最低でも2パーセントのインフレターゲットが欠かせない。
 その点で安倍自民党は、この間の話を聞いていても信頼に足るように思えた。ただし、自民党の他の政策はというと、相も変わらぬ状態。それでもその部分は次期参院選で、以前の安倍政権のように是正されるだろうし、実質三党合意以上の政治に手を出す余裕など日本にはないだろう。
 ごく個人的にいえば、改革の舛添さんの考えが自分に一番近いが、彼は、三党合意的な現状へのビジョンを欠いているので、支持しても実質政治的なナンセンスになる。

TPPと反原発については争点になりえない
 「原発もTPPも消費増税も争点であるべきでない」というのがジャーナリストの竹田圭吾さんのツイートにあった(参照)が、同意。ただし、彼はここに「消費税増税」も加えているが、そこは微妙に異論があり、先の名目成長率の件でまとめた。
 TPPについてはいろいろ議論があるし、反対の人が息巻いているが、私の考えでは、反TPPこそ、TPP推進派の思うつぼである。このことはウィキリークスで暴露されたとおりなので、日本の立場が不利であっても、今から苦しい交渉の戦いに挑むほうがよい。
 別の言い方をすると、TPPについては、「反TPPかTPP推進か」というのは間違った問いかけで、国益を守るなら、世界の趨勢に対して、日本国の国益を対外的に示していくしかない。後になってABCD包囲のように囲まれて暴走するという愚はさけたい。
 反原発についてだが、現在世界のエネルギー事情から見ていくと、米国が産油国化する、北極海航路ができるといったといった大変化の兆しを含めていくと、原子力の推進は、潜在的な核保有という以上の意味はなく、経済的な利点は乏しくなっていく。経済的な最適戦略を採っていっても、現行の原発政策は縮小していくことになる。
 つまり原発問題は、日本のエネルギー政策に従属して考えていくべき問題なので、従属側を突出させる争点化は、潜在的な核保有へのイデオロギー的な反発や前世紀的なエコロジーさらには単なる反政府主義みたいなものだろうが、たいした意味はない。反原発を杓子定規に進めていっても、困窮した大衆の反発でひっくり返されるのがオチである。
 この問題は、福島原発事故補償とは別の問題だし、実際のところ、地域へのバラマキとして推進されてきた原発推進とも別なので、問題の切り分けが必要になる。その点でも、反原発という雑駁なくくりは実際的な政治の推進に役立たない。

外交・軍事を大きく変えない
 政権交代でよい教訓となったことでもあり、実際今回の選挙でお灸が効いているなと思われるのは、外交・軍事の話題を大きな政党が引っ込めたことである。政権交代は基本内政なので、対外的な相貌を大きく変えるものではない。
 ただし、その副作用ということで、今回の選挙では、憲法改正問題は出て来ても、沖縄問題にどの政党も触れなくなった。
 そもそも沖縄問題というのは、沖縄に問題を被せているが、日本全土の安全保障問題であり、国家全体から見て基本的な問題だが、事実上、今回の選挙ではほとんど問われなくなってしまった。しかも、これが三党合意にさえ含まれていないというのは、今後の大きな火種になるだろう。

 以上、ざっくり見ると、三党合意を是認するという前提で見ると、民自公のどの頭を選ぶかということであり、公明党を外せば、野田民主か安倍自民かというくらいのチョイスしかない。どちらか?だが、三党合意を実質推進するのであれば、明確に2パーセントインフレターゲットで金融政策を打ち出すほかはないので、以上の流れで見るなら、安倍自民党という選択しか残されていない。
 小選挙区については、それぞれの地域の問題があるから、なんともいいがたい。
 
 

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コメント

ツイで少しつぶやかれてたのを拝見しましたが、
1票の格差についてはどうお考えでしょうか。

定数削減は財政節減の観点からだと微々たるものでどうでもいいことですが、
最高裁ガン無視で選挙の争点にもならず(党首討論でもほぼ話にあがらない)ってのはいくらなんでも、、、と考えてしまうのですが。

投稿: 名無し | 2012.12.01 14:54

違憲状態の「議員定数」問題は、三党合意のうちだと理解しています。

投稿: finalvent | 2012.12.01 15:02

極東ブログ様の『世界一美しい数学・ゲーム理論』の解説を拝見して以降、このブログを拝見しています。本当は極東ブログ様も充分に分かっていらっしゃるのではありませんか。次の総理が誰になろうと、日本はもう衰退しているし、ますます厳しい時代になる、と。「反原発」議論を例に見ても、日本が仮に「原発ゼロ」にしても、中国やロシア、近隣諸国には原発があります。日本だけ「原発ゼロ」にしても、他国が原発ゼロにしていないんだから、日本の原発をゼロにしても良いんですか?私は、たぶん中国とロシアの間で、紛争(戦争?)が生じると思います。日本人は本当にバカですよ。日米安保条約で「アメリカが日本を守る」と本当に信じている。ふざけるな、と言いたい。アメリカは日本の再軍備化を防ぐために日本安保を結んだのだし、中国の軍事力を抑制するために、日本に米軍基地を設置しているんですよ。日本安保は、アメリカが日本を守ることが目的ではなく、日本の再軍備化を防ぐため、日本を利用するための条約なんですよ。沖縄で反米デモが生じて、アメリカ軍の基地を移転しろと。沖縄の心情は理解できますが、政治迷走、経済低迷、軍人蔑視。そんな国が世界大国になるはずがないのは明らか。安倍さんが前回の総理を突然辞任したのは、「小沢一郎さんが会談に応じてくれないから」という無責任な理由でした。今回の党首会談で野田さんが「解散します」と言ったら、安倍さんは「本当ですか?本当ですか?」と狼狽した。あれじゃ、次期総理は無理です。北方領土、竹島、尖閣。日本は「なめられている」。アメリカは日本を守るために日本安保条約を結んだのではありません。日本の再軍備化と中国の軍事力が迷惑なんですよ。日本はますます「厳しい時代」に入ります。そもそも、今の日本では、中国の富裕層が日本の土地を買っているじゃないですか。銀座だって、実質的には、中国の富裕層が買ってくれるから儲かっているだけ。経済的には、もはや日本は中国の属国なんですよ。沖縄で「アメリカ軍よ、出ていけ!」とデモをやっている。間違いなくアメリカ兵は思っています、「もう日本を守る必要なんてないよ」。中国は日本のお金と技術が必要なだけ。亡国、国外逃亡、もしくは厳しい時代を我慢して過ごすか。徹底したポピュリズム(人気取り政治)。安倍さんの無責任な発言で、日本の株価が上がった。また実質を失ったバブル経済の復活ですか?要するに、日本人は国民性が低いんです。私も含めてね。

投稿: 大東亜 | 2012.12.02 02:13

>>北極海航路ができる

事を前提として考えるという事は
地球温暖化が避けられないって事ですよね?
四方を海に囲まれる日本は相対的に悪影響は少ないかもしれませんが、ユーラシア大陸はドえらい事態になるのでは?

逆に温暖化対策として原発が必要になるのでは?

投稿: ナナシたぬき | 2012.12.02 18:25

又、いつもの貸し借り論で話を展開させていますか。

でも、この話は一見3党にとって悪い話ではないように見えますが、実際には最悪でしょう。

今回の総選挙が終わった後、(おそらく勝つであろう)自民と公明が、最初に考えなければならないことは何でしょう?来夏の参院選での勝利とそのことによって「捩れ」を解消し、民主党や第3極を完全にパージできる体制を整えることです。ここで民主党と徒党を組んでも、自らの票は増えず、却って官僚政治の打破を唱える第3極の台頭を許すことになるでしょう。

逆に民主党の側を考えて見ましょう。
政権をずり落ちても、一定の権力を維持できるのですから、3党合意は一見悪いようには見えません。しかし、それは有効期間は1年(次の参院選まで)に過ぎません。例を挙げれば、旧社会党が3党連立後、崩壊してしまったのと同じことになるでしょう。この場合は次の参院選とその次の総選挙で民主党は今の社民党のように1桁まで落ちることになります。

後、第3極が現在、脱官僚を「旗印」にしている以上(実際に出来るか否かは別ですよ)支持する人が一定数以上いることを忘れてはいけません。たとえfinalventさんが3/11以降の官僚の仕事振りを評価していたとしても、国民全体を見ればそうじゃないことをはてなユーザーを含めて知っておいて欲しいと思います。

投稿: F.Nakajima | 2012.12.02 20:20

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