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2012.12.04

最先端癌治療の費用対効果の話題

 昨日NHK報道に触れて癌医療の話題を書いた。NHKとしては癌治療の最新の話題を伝えるという趣旨から「新治療が期待される」というまとめで終わり、それが現行の臨床にどのような意味を持つかについては言及されていなかった。ニュースの範囲を超えるとも言えるが、臨床との背景でニュースの意味があると言えないこともないのではないか、とも思われた。
 癌治療で臨床との関係で欧米で近年問われているのは、保険料や公的補助との関わりである。特に英国では癌最新医療について公的補助が認められないというニュースをこの数年よく見かけた。
 「なにが最新治療か」という観点からではなく、「癌の最新治療において、臨床と公的補助はどうあるべきか」というのはやっかいな問題なせいか、日本ではNHKを含めてあまり見かけないように思う。

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Newsweek (ニューズウィーク日本版)
2012年 11/28号 [雑誌]
 そうしたなか、Newsweek日本版の今週号に邦題で「癌患者が買うわずかな余命の高すぎる値段」との記事が掲載されていた。英語は「FOR LIVING JUST A LITTEMORE」あるが、今年8月に出された元記事はネット上では現在、「The Cancer “Breakthroughs” that Cost Too Much and Do Too Little」(参照)となっている。この手の記事は抄訳化されることが多いので、原文と付き合わせたが、大きな変更はなかった。癌新治療と公的補助の関係について関心のあるかたは読まれるとよいだろう。
 翻訳記事は抄訳とは言えないもの、治療費についてはドル表示のままで、他分野の記事ならよくあるように日本円でいくらという補足はなかった。意図的なものでもないだろうが。
 記事は今年米国で認可された分子標的薬「パージェタ(Perjeta)」から切り出される。

 だがベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)の癌病棟を率いるシュニッパーにはわかっていた。パージェタで癌が消えるわけではない。同様な分子標的薬「ハーセプチン」と併用しても、平均的なケースでは半年もすればまた癌細胞が暴れ出すだろう。
 その程度の効果なのに値段は驚くほど高い。たいていの場合、ざっと18万8000ドルは掛かる。「誰だってゾッとする」金額だ、とシュニッパーは言う。

 抄訳されているわけではないとしたが、原文の含みは多少違うので参考にあげておこう。

As the chief of oncology at Beth Israel Deaconess Medical Center in Boston, Schnipper knew Perjeta was not a cure: added to a standard treatment with Herceptin—another targeted therapy that was hailed as a breakthrough in 1998—Perjeta gives the average woman only about six months more of calm before her disease starts to stir again. Given the limited benefit, the price was startling. For most women, a full course of the drug combination will cost $188,000—enough, he says, “to give anybody a cold sweat.”

ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)の腫瘍部長シュニッパーはパージェタが治療ではないことを知っていた。それを、標準治療として1998年に画期的として歓迎されたもう一つの分子標的薬「ハーセプチン」に追加することで、平均的な女性の場合、その病気が再発するまでもう6か月の平穏が得られるだけである。利点は限定されるが、価格は驚くほどだ。たいていの女性の場合、この医薬品の組み合わせは18万8000ドルもかかる。「誰だって冷や汗が出る」と彼は言う。


 日本円にしてだいたい1550万円ほどである。
 他はそこまでいかないが高額である。

 癌治療は高くつく。しかも新薬の価格はうなぎ上り。保健会社ユナイテッドヘルスケアによると、肺癌治療に使う標準的な薬の価格は、以前なら月額1000ドル程度だった。しかし今は、約2カ月の延命に6000ドルから1万ドル掛かる。

 お金持ちが医療費に糸目をつけないというはわかるが、こうした最先端の癌治療の費用はどうしても保険や公的補助の関係で論じられることになる。特に、医療に対して公的補助の厚い国では、日本は例外のようではあるが、議論課題として公的に出されるし、報道される。
 英国では、乳癌に対するアバスチンの保険適用が認められないことになった、と同記事にはあるが、米国ではFDAは私の記憶ではこの適用をそもそも認可していないはずだ。また英国では大腸癌についての適用も外される方向だったはずである。
 記事の結語は、ユナイテッドヘルスケアのリー副社長の言葉が引かれる。

 「持続可能な医療保険制度を築くつもりなら、社会全体の問題として議論すべきだ。あと15年もすれば、保険料支払いのために現在の1年分の給料に等しい額を稼がなくてはならなくなる」と、彼は言う。「もう議論を先送りしている余裕はない」

 最後の一言の原文は、“We’re going to have to have the discussion”なので、普通に「私たちはこの議論を開始すべきだ」ということである。この議論とは、癌最先端医療に対する保険料、また公的補助の限界ということである。
 おそらく日本でもそうした状況にあるだろうし、政党はこれらのビジョンを持たなければならない。
 という観点から今回乱立した政党を見るのだが、どこかで、何か示唆されるべき見解があっただろうか。
 
 

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コメント

いつも楽しみに読ませていただいております。揚げ足ではないんですが、18万ドルの円換算が違っているような・・・

投稿: | 2012.12.04 11:35

ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2012.12.04 11:40

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