他に適任者がいないなら安倍首相でしかたがないかというのがフィナンシャルタイムズ
3年前、民主党への政権交代を勧めていたフィナンシャルタイムズは今度の衆院選挙をどう見ているのか気になっていたが、9日付け社説「帰ってきた安倍(Abe’s return)」(参照)に、表題のように安倍晋三の復帰として論じていた。概ね、他に適任者がいないなら安倍首相でしかたがないかという主張のように受け取れた。
フィナンシャルタイムズに言われると、戦争の歴史を恥じもせず「美しい国」とか掲げて無様に失態した安倍がまた出てくるなんて、想像できた人も少ないだろうと、いきなり、かます。
どうしちゃったんだ日本ということで、3点ほど理由が挙げられている。
まず、国際状況は変わった。尖閣問題である。こうした状況では、憲法改正や軍事費増強を狙う安倍の主張も理があるみたいだ(His view looks reasonable)と。
二点目は、政権交代した民主党がげんなりする出来だったこと(the lousy performance)である。日本国民は民主党は自民党よりはましだと思っていたと。
三点目は、安倍は、日銀改革を迫り、2から3パーセントのインフレタート政策を掲げ、デフレ克服にやる気満々であることだ。中銀の独立を脅かさないなら、大胆なインフレ政策は好ましい(his bolder stance on inflation is to be welcomed)。むしろ、リフレ政策の主張を今の時点で弱めたのは早すぎだ(If anything, he has backtracked a little too quickly.)と。
全体として安倍への評価はどうかというと、前回の手ひどい失態を思えば、幻想を抱かないほうがいい(No one should be under any illusion)とのこと。国内的には指導力もなかったし、対外的には、彼が誇る日本の戦時には性奴隷がいた恥ずかしいものだった、と(such as the Imperial Japanese Army’s routine use of sex slaves – was shameful and caused justified anger among neighbours.)。
では、安倍はやめとけということかというと、結語がなんとも奇妙なものである。
That Mr Abe now looks like the best candidate available is the result of two things: China’s misguided foreign policy, and the sorry state of a Japanese political system unable to produce someone better.安倍氏が首相候補として最善に見られるのは、二つの帰結である。一つは、中国の対外戦略の失敗であり、もう一つは彼よりましな人選ができない、日本政治の残念な状況である。
よく言うよねというか、これって裏を返せば、まずもって現在の野田首相けちょんけちょんということ。そして、自民党の石破幹事長もダメダメということだ。ましていわんやおやおやおやと。
総じて久しぶりに目の覚めるようなフィナンシャルタイムズのダメな社説の典型例みたいなものだったが、それでも共感できないでもない。
もう少しポジティブに書くなら、日本を追い込んだのは、中国だろうということになるが、そこはフィナンシャルタイムズらしいヘタレがあるわけで、日本へのクサシとどっこいどっこいでしかない。
それに中国の反日デモという事実上の謀略に引っかかったのは、民主党政権なのだから結局は民主党の自滅でもあった。民主党政権は中国との多面的な実チャネルを失い、メディアを通して事実上工作される「危険な国粋主義者・石原慎太郎論」にひっかかり、これを排することが中国政府への忠誠だと思い込まされて謀略を踏み、失態した。本来なら、中国の政変時期に日本政府は動いてはいけなかった。
これだけヘタレたフィナンシャルタイムズの社説ではあるが、安倍のインフレターゲットは実質支持していると読んでよいし、ようするに、それを打ち出せる、実力ある政党が不在であるということが残念な状況というのは、いたしかたない。
追記
JB Pressに全訳が掲載されていた。
「社説:安倍氏の首相返り咲きが意味すること」(参照)
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コメント
より良いものを選ぶんじゃなく、まだマシを選ぶ。それをやらずに民主党に夢を見たからこうなるんですよ。選んだ人にしてみれば、まだマシを選んだ結果が民主党による政権交代だったのかもしれませんけどね。
それにしてもうちの田舎では今回の総選挙はまったく盛り上がりませんね。選挙カーの静かなこと喜ばしい限りです。前回選挙では急場に駆り出された即席支持者さんが無茶やって良くなかったんですよね。
そういうのが無く落ち着いた状況=盛り上がりに欠ける、が日本の選挙のそれなりの部分を占める訳で、そこをどうにかしない限りは政治が駄目な状況は変わらないと思いますよ。騒ぐ人が来ると場がむちゃくちゃになってそういう人を排除したら陰険な人で暗決するのって、民主主義のやることじゃないですよ。公認のいじめですやん。
投稿: のらねこ | 2012.12.11 20:05
恥ずべき性奴隷ってまさかFTは
従軍慰安婦を信じているのか??
程度が知れるな
投稿: みかん | 2012.12.12 00:17
言葉は悪いですが、どんなバカでもマニフェスト(政党が用意した実現不可能なお題目)を丸暗記して、街頭演説で「みなさん、これでいーんですか!」と言っていれば当選できる。それが現在の日本だと思います。衆愚政治(人気取り内閣)の問題点は、アリストテレスの時代から指摘されて来ましたが、現在の日本はまさに衆愚政治。今風の言葉では「ポピュリズム」とカタカナで呼ぶらしいですね。どこかの評論家が、ある第三極の政党(選挙が近いので、あえて政党名は書きません。でも…明治維新)を「まるでファシストみたいだ」と表現しました。ファシズム、つまり極端な全体主義(要するに独裁)が水面下で顔を出しつつあります。いずれにしても、今回の選挙は自民党の単独優勝で決まっている「出来レース」ですよ。でも、政治・経済・社会の不安は、ますます強まっていく。『ゲーム理論』に精通なさっている極東ブログ様なら、「ま、日本が沈没するという選択肢もアリだよね」と考えてそうで怖い。衆愚政治は国を滅ぼす。やっぱりアリストテレスは正しかった?
投稿: 大東亜 | 2012.12.12 04:09
自民党が勝利しても、所詮は、「ゆり戻し」ですよ。
かつての安定した自民党政権の時代になんて戻りません。
漫然としていても目に見える変化より、目を凝らしても見えにくいところでおきている、あるいはみんなの心の中で起きている、恒久的ともいえる根本的変化を探るほうが大切な時期だろうと思います。
社会が、資本主義社会から、明らかに情報化社会に変わってしまったんですよ。
もう、官僚も、政界と財界(と暴力団)を操って、世の中を実質支配することなんかできなくなります。石原さんが官僚批判をしようが、誰かが官僚擁護をしようが、この流れは変わりません。
社会成立の中心機構が大規模工場や銀行店舗や商業店舗や物流倉庫や道路や航空機から、光ファイバー、あるいは無線でつながれた、コンピュータネットワークにほぼ完全に移行してしまったんです。物財中心から、半導体に駆動される情報中心に、仕組みまではともかく、社会のあり方が完全に変わってしまったんです。こうなったらもう元には戻れません。この現実に対して、まだ、どの政党も、役人も、適切に対処できていないのが現状でしょう。
投稿: enneagram | 2012.12.12 06:29
なぜ安部さんなのか?
あそこあたりからおかしくなったからあそこから時計を戻してやり直したい、という"国民の気分"が安部人気だと思います。
投稿: うおずみ | 2012.12.12 19:29
うおずみさん(↑)
って事は本当のところ国民は小泉さんまで時計の針を戻したいって事ですかね?
安倍さんはどうなんでしょう?お腹の調子が悪くならなければいいんですが、治療の経過ぐらい公開してくれてもいいと思うんですがね。
投稿: ナナシたぬき | 2012.12.12 22:38
一番悪いのは菅直人とか鳩山由紀夫を小選挙区で当選させ続ける有権者でしょ。クズ政治家を多選させるから、日本がおかしくなるわけで、今の自分の住む地域の代表が代表に値するか、ちゃんと見極めてダメなら首をすげ替えないと。毎回入れ替えていけば、いつかはまともな候補者がでてくるでしょ。
投稿: なんつうか | 2012.12.15 09:18
選挙予想と今後の日本経済シュミレーション。自民党圧勝!安倍新内閣の誕生。しかし、何も変わらない。ますます厳しくなっていく。凄まじい超高齢化、子どもがいない。消費増税、社会保障の国民負担増。非正規雇用増。減るものは?年金減額、給与減額、正規雇用減少、円安・通貨価値下落。給与減額なのに物価上昇。だから、ますます生活が厳しくなる。もの作り、なし。国内産業が空洞化して無いんだから。税収、なし。国債発行、厳しい。だって、発行上限額に近づいているし、少子化で未来がないから、格付け機関が国債ランクを下げるから。国債、売るに売り切れない。国債暴落。若者、しらけ世代、ゆとり世代、敬語は使えません。若者の潜在的ホームレス化が大問題。中央官庁、全て先送り。事実上の未解決。何でもカネで解決してきたツケが来た。世襲議員、全ての職種で実質的な身分制の復活。日本全体が貧乏に。まあ、ようやく地獄がやってくるんですね。「和をもって尊し」ではなく、ずっとなれ合い文化だったから。平和ボケは治りません。国民的健忘症が日本の文化でしたから。悪いのは全て政治家か軍人なんです。敗戦直後に全て他人のせいにした文化なんですから。私は悪くない。全て他人のせい。軍隊?必要なんだけど、戦うの怖いからな。どうせ他人が何とかしてくれるから、と今までは来れたけど…。原爆実験してくれたアメリカさんの後ろ盾がないと自立できない国ですから。銀行は担保主義から脱却できないし、サラ金と銀行は持ち株会社になっちゃったし。もうプライバシーなんてゼロ。預金通帳、全て情報共有されてます。救い主?まあ、ロシアと中国の紛争がもうじき起きるから、それに乗じて…。拉致を解決できない国民性だからムリか…。未来は地獄、まさにバラ色の未来です。携帯依存で会話できません、結婚できません。アジア系外国人にどんどん占拠されています、住居も仕事も貯金通帳も。郵貯、狙ってますよアメリカさんが。資源なし、食料自給率30パーセント。封鎖されたら餓死?農家、バカにされて衰退しました。ハードもソフトも韓国や中国にカネと技術を奪われた。絆?あるわけないだろ、んなもん(キムタク『プライスレス』風に)。今年の漢字は『金』。そう、まさにカネがないんです。貯金はあっても使いこなす頭脳と度胸がない。だから貯金がアメリカさんに奪われる。アメリカは意図的にドル安政策をしたんですよ。債務減少のために。バカだから日本人は気づかない。
投稿: 大東亜 | 2012.12.16 00:42