2012年末衆議院選挙雑感
総選挙が終わった。自民党の圧勝だった。まあ、前回の民主党圧勝も見たし、その反省から小選挙区制というもの仕組みも考えていたので、今回は自民党が圧勝はするだろう。ツイッターでも昨日の朝にちょっと呟いたように、自民党の絶対安定多数になるかが焦点かなと見ていた。
民主党がもう少し小選挙区で奮闘するのかとも思ったが、蓋を開けてみると、どぶ板が理解できない人が多かったという印象があった。落選したみなさん、それなりにわかってもいたのだろうが、例えば、菅直人元首相にしても、どぶ板に入ったのは遅すぎた。どぶ板に入れなかった藤村官房長官の落選は可哀想に思った。
どぶ板を理解していたはずの小沢一郎さんのグループはどぶ板の布陣が遅すぎたし、資金も足りなかった。反原発・反消費税の看板でなんとか戦えると思うほど、あの人は甘い人ではなかったら、子分の身の振りかたというか、就職斡旋みたいな気分だったのではないか。
私は長いこと小沢さんのシンパだったので、小沢さんが昔言ったことを覚えている。正確な言葉ではないかもしれないが、こう言っていた、「政権交代をやってみたら、本当にいいものだということがわかりますよ」と。
前回の民主党の政権交代には、ブログにも書いてきたように経済危機にあるときに政局に求められるのはモラトリアムだと思うので反対した。が、政権交代とやらが実施されて、昔小沢さんが言っていたように、いいものだと思えるだろうかというのは、心に引っかかっていた。
民主党政権になってみると、失望の連続だった。そのこともブログに書いてきたので繰り返さない。そして、小選挙区制というのは、ダメな制度じゃないですか、小沢さん、とすら思うようになっていた。
昨晩の選挙開票を見ながら、いや、昔の小沢さんが言っていたのはこのことかだったのかなと思った。政権がダメだったら、一気に潰して、反対党を安定多数に付けるという仕組みだったのだな、これはと。
理屈ではわかっていが、実感としてわかったのにはもう一つ理由がある。
私は比例は自民党に投票した。理由はすでに書いたとおりで(参照)、三党合意が問われる選挙で、名目成長率を上げることを実力ある政党が主張してきたのだから、まがりなりにも消費税増税を受け入れることができるだろう、という理由である。自民党を支持したわけではない。民主党が2%のインフレターゲットを明確に主張したら、民主党に入れた。
民主党はその点、ほんと、だめだめだった。選挙戦でテレビを通してだが野田首相の演説を聞くと、成長する分野に投資すると息巻いた。「ああ、野田ちゃんはほんと経済がわかってないな」と落胆した。
成長戦略分野がわかる政権というのは幻想だということくらい、社会主義計画経済の崩壊で僕らの世代が骨身に染みてわかったことだろ。しいて言えば、現在の中国が日本の昭和高度成長戦略の計画経済を強権で維持しているが、これができるのは発展途上の段階だけだ。
私は、どぶ板選挙というのが嫌いだった。理由はうるさいからだ。また地元の利権を優先する政治というのも今一つ好きになれない。ところが、今回の選挙では、できるだけ、どぶ板に配慮した。
比例は自民党に入れるとして、小選挙区のほうは自分が投票する人のツラを見て言葉を聞いておきたかったのだ。現実的には、小選挙区では民主か自民の二人しかない。そのどっちも何考えている人かわからない。
自分の一票などたいした意味はないにせよ、自分としては、「この人をそれなりに信頼したい」という確信が欲しかった。結果からいうと、どちらの候補を見ることもなかった。「こりゃ、困ったな」という感じして、「ああ、小沢さんが昔言っていた、どぶ板の意味というのはこういうことか」なとしんみり思った。
さて今回の選挙、蓋が開いていろいろ分析が出ている。自民党圧勝に目を向ける論者も少なくないが、私の見たかぎりでは、自民党が支持された兆候は、どぶ板への推測以外ない。
政党としての自民党が支持されているふうにはまるで見えない。
民主党へのげんなり感もあるだろうが、どぶ板の力のほうが大きかっただろう。自民党の候補者さん、前回落選したあと、私には届かなかったけど、それなりに地味にどぶ板に徹していたのではないか。
ぶっちゃけいうと、どぶ板というのは、地元の利権を吹きまくることだ。民主党は、国の視点で清貧を語りすぎたし、そのことに野田首相は酔っていた。
この点については、反原発・反TPP・反消費税を掲げていた政党も同じで、そんなものをどぶ板の現場では求めらない。どぶ板が直面しているのは、もっと具体的な困窮であり、カネ回してくれよ、仕事流してくれよ、ということである。庶民の現実の生活は、けっこう苦しいということが、国のレベルで理想を語る政治家さんや市民運動家さんはわかっておらんのです。
どぶ板以外では今回の選挙の構図は意外とはっきりしている。NHKの報道で出口調査による前回と今回の支持政党のグラフがあった。左端が切れてしまったが、下が前回、上が今回である。
一目瞭然と言っていい。自民党の支持は35%から32%に減少している。つまり、国民が自民党を支持しているということはまるでない。
支持政党なしは21%から24%に増えているもの、大差と言えるものではない。公明党や共産党などほぼ組織票だけの政党も変化がない。
変化があったのは、民主党が32%から19%に激減したことだ。その意味では、国民は民主党にげんなりしたというのがはっきりわかる。
この民主党げんなり組がどこに流れたかも、はっきりしている。維新党など第三極である。特に維新党に流れた分で、公明党とためをはる政治勢力になった。
別の言い方をすれば、政治に期待した人々、また、民主もだめだが自民もダメ(自民党は前回のダメ出しのまま)という人々は、民主党から第三極に流れた。そのことが選挙制度上、逆説的に自民党を利したと言えるだろう。
選挙日までツイッターなどSNSでは「選挙に行きましょう、政治を変えましょう」運動を必死にやっていた人も目立ったが、投票率が増えても第三極が増えるくらいだっただろう。そもそも投票率が低かったのも、政治にげんなりが多かったからだ。
趨勢からすると民主党と自民党の支持が削れ第三極に流れるという傾向はあったと見てよく、この傾向を止めるという意味だけで見るなら、野田総理の自爆解散には効果があったと言えないことはない。が、普通自党の自滅を促す党首がいるのかというと、ありそうにもない。
民主党って最後まで変な政党だったなとも思ったが、昨晩遅く出て来た岡田克也副総理を見ていると、なにか憑きものが落ちたような顔していて、彼は案外ここまで読んでいたのかなとも思った。岡田さんが、一番、こんな民主党じゃなかったと思っていたのではないか。日本の現状の政治は全然ダメだ、とりあえず日本の政治の針を戻そう、としたのではないか。
そのあたり野田さんはどうだっただろうか。敗北会見で目元うるうる涙を堪えて声を詰まらせていた野田総理がどこまで、岡田さんの意図を汲んでいたかわからない。案外二人とも、純朴に民主党の再起を思ってて自爆しちゃったのだろうか。
圧勝した将の安倍晋三自民党総裁は、三党合意という言葉は出さなかったものの、民主党との合意を守る旨の発言があった。安倍さんはこの勝利に酔ってないし、三党合意という基本線が維持されていることは見て取れた。
話を出口調査に戻すと、これがどう比例に反映したかというと、そのままきれいに反映していた。
きちんと自民党という政党が支持されていないことが見て取れるし、民主党にダメ出しがあったことがわかる。
その意味で、自民党という政党が政策面で国民に支持されたということは全くない。今回の選挙を、自民党の勝利ゆえに右傾化であるとか言っている欧米のメディアとかは、頭悪いなあとしみじみ思うが、そもそも日本の政治に無関心だからでもあるのだろう。
今後の自民党政権だが、当面、実質面だけ見れば、一部、わけのわからない議員はいるにせよ、とりわけ右傾化につっ走るということはないだろう。参議院対応や参院選の抑えもあるが、公明党との連携がストッパーになっている。これが公明党を外して、自民党と維新党が連携すれ事態になれば、ちょっとそれはどうかなということにはなるだろう。だがそれ以前に、維新党は、選挙後の橋下さんと石原さんの意見の食い違いや、感情的な高ぶりなどを見ていると、調和してまともな政策を維持できるとも思えないので早晩、分裂するか自滅するのではないか。
むしろ自民党政権としては、金融・財政政策で比較的に短期間に、特にどぶ板に答えなくてはならない。
財政面では、ようするにバラマキをするだろう。残念なことにというべきだが、反原発の根幹的な問題はそれを使ったバラマキのシステムなので、いろいろ批判されるような泥まみれにもなりそうだ。
金融政策面では、日銀勢力の抵抗がかなりきついだろう。いわゆる反自民勢力もバッシングの支援に使うと予想されるので、特にマスメディアではろくでもない騒ぎになるだろう。マイルドインフレの兆候や局所的なバブルが発生するとマスメディアが発狂したような騒ぎを起こすのではないか。
そんななか上手に、安倍自民党政権が、安定政権として維持できるかだが、冷静に考えると難しいと思う。財務省側が、意外と今回は安倍政権のフォローに入るかもしれないし、それが一番、政権を支えることになったりするかもしれない。
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コメント
final先生、皮肉ばかり言うのよしましょうよ。政治の話だといつもだけれど。
民主党がこの世から消えてなくなるか、まるっきり新しく生まれ変わって出直すか、どちらかしかなくなったし、日本維新の会だって、同様の先行者の新自由クラブや日本新党の失敗を参考にしてこれから歩いていけるわけだし、考えようによっては今度の選挙の収穫は大きいかもしれませんよ。
これからは、自民党だって、戦後の高度成長時代のままの「ザ・自民党」ではいられませんよ。そもそも自民党だって、これからの時代、いつまで存続できるやら。
投稿: enneagram | 2012.12.17 11:55
各小選挙区の得票率を2009年のやつと比較すると自民の得票率はあまり変化ないね、要するに民主の自滅
全国的にチェックしてみたら、自民は前回2位落選の得票率そのまま(+-2%ぐらいはあるけど)で今回1位当選しているケースが多数
維新は勝てそうにない地区でも構わず全国的に出馬したから各地の民主大ダメージ
みんなの党や未来も浮動票を食いとってるが、全国展開した維新が民主最大の敗因でした
前回は民主が独占していた浮動票を維新に食い取られて共倒れ、各地で自民当選ラッシュ、THE漁夫の利
浮動票を勝ち取って大きく伸びた自民党議員は小池百合子などごく限られた少数でしたね
浮動票をとりこめる期待が持てないなら、来年の参議院選にそなえて自民は公明党とまだ連携せざるをえないでしょう
投稿: 政治も経済も素人ですがコメント | 2012.12.17 12:30
次の総選挙は、自民党が大敗北ですね。解散せず、粘りに粘ってくれれば、まったく違う、政治家が今度こそ登場する予感。
とにかく、嘘は敗北、非現実的なのも敗北、もう政治ドラマの演出は通用しないでしょう。つまり、真実一路の政治家が現れるってことだろうな。
もし、そうならなければ、ぶっ壊れて、カオスからやりなおすことになるんだろうな。弱肉強食の世界だ。バベルの塔だw
投稿: | 2012.12.17 12:42
> 現実的には、小選挙区では民主か自民の二人しかない。そのどっちも何考えている人かわからない。
同じくです。結局どうやって選びましたか?
私は選ぶ理由が見つけられず、白票としました。
投稿: | 2012.12.17 12:57
私は自民も民主も嫌だったので、かといって白票だと意味がないと思い、共産党に入れました。そっちのほうが強い意思表示として効果あると思いましたので。
共産党の人が当選するとは全く思ってなかったですし、消去法ではまだマシという感じです。
小選挙区制度はほんとだめですね。自民党が中選挙区に戻すとは思えませんが。
投稿: | 2012.12.17 13:43
ドミニオン:繁栄もありますが繁栄はあったんでしょうか。出合った事はないですねぇ・・・
でもこれをプレイするためには「ドミニオン」基本セットまたは「ドミニオン:陰謀」に含まれる“勝利点"、“財宝"、“呪い"カードが必要だそうで、なんだよ!と思いながらウィンドウを閉じました。
投稿: rabi | 2012.12.17 14:36
極東ブログ様が「小沢一郎さんのシンパだった」と書かれるとは驚きました。ある情報筋の話し。記者が小沢さんにインタビューした。「小沢さんが総理になれば良いじゃないですか」。小沢さんはこう言ったそうです。「なれるわけないだろ。オレはズブズブなんだから」。もちろん、オフレコ(公表しない)を前提とした暴露話ですけれど。小沢さんは田中角栄さんの側近でしたけど、田中角栄さんと決定的に違うのは、小沢さんはプッツンしやすい(キレやすい)のでは、と推察します。田中角栄さんは復興・高度成長期の流れに乗れたことも強かったと思いますが、人柄を見てカネを出す眼識があったのではないかなーと私は思っています。自民党が圧勝して、今朝のメディアが報じた内容では、「世論が安倍新内閣に最も期待すること。景気回復」らしいです。あるわけないだろ、んなもん(キムタク『プライスレス』風に)。老人が3割を超えて、子どもが極端にいないんだから。産業そのものが空洞化して、もはや日本経済は衰退しかあり得ないのに。もう中国バブルが崩壊しているし、東西ドイツ以上に北朝鮮と韓国統一が壊滅的な今後20年になることが分かっているはずなのに、日本だけが1人勝ちするわけないのに。第一、もはや中小企業のシンボル・大田区は絶望的でしょ。技術ある優秀な零細は海外に移っちゃったし。それでも世論は「安倍新内閣に期待します、景気回復を」。あるわけないだろ、んなもん。
投稿: 大東亜 | 2012.12.17 14:37
うーん、finalventさんが前回の選挙で指摘していたので、前回オザーさんが手を突っ込んでぶっ壊した
日本医師会とかの基盤はどこを支持するのだろう?と注意していましたら、選挙直前に、全国郵便局長会まで自民党支持を表明していたと読んで驚いたのですが、
別にもうそれらは大した要素ではなくなってしまったのでしょうか。
オザーさんがそれらへの歓心を惹きつける力が無くなったこととか、もう民主だろうが自民だろうが前回彼らが得た利権は脅かされることもなくなった、とか。
考えてみたら国民新党と「大樹」の関係も、良くなったとも悪くなったとも報道を見ることがありませんでした。
投稿: てんてけ | 2012.12.17 14:44
日本人の勘違い(平和ボケ健忘症)はもはや末期、救いようがない。安倍元総理が前回、総理を辞めた理由。「小沢一郎さんが党首会談に応じてくれないから」。体調不良なんかじゃなかったのに、国民はさっぱりと忘れている。また竹中平蔵さんの再登場ですか。あの人、任期中に「大臣、やーめた」という前代未聞の無責任な辞任をした人ですよ。日本人は、これもさっぱり忘れている。何より、新自由主義って何ですか?金融、雇用など、全ての分野で「徹底した市場原理を完徹して、自由競争をする」ってことでしょ。完全なる弱肉強食ってことですよ。郵政民営化?郵政事業の大赤字を、政府の責任にしたくないから、単に民間に押し付けただけじゃないですか。なんで郵貯だけが民間の破綻保証額の2倍(2千万円まで保証)なんですか?みんなの預金・退職金を「郵貯」に移すためでしょ。その郵貯をアメリカさんが傘下に納めるわけですよ。このゼロ金利で、どれだけの預金が海外銀行に移ったんですか?全て、日本円が外国に奪われたんでしょ。現在、安倍さんは「株価が上がってきましたよ!」と無責任な放言を言っている。単に、マネーをたくさん増発して、バブルが一時的に作られただけでしょ。だいたい、北朝鮮の金正日さんが死去された時、政治家が「そのニュース、テレビで知った」と言えるような国なんですよ(徹底した害務省の無能っぷり)。産業が空洞化している中で、一体どんなアイデアで景気回復をするんですか。もっと早く日本円を増発していれば、極端な円高にならずに済んだのに。今の産業の力は、がむしゃらに働いた団塊世代のお陰でしょ。子どもがいないのに、どんな産業で日本経済を立て直すんですか?(徹底した罪務省の無能っぷり)。第一、マンガが愛読書だと言い切っちゃう人間が、今度の副総理らしいですよ。「小沢さんが会ってくれないから」辞任しますの安倍新内閣、マンガが愛読書の麻生副総理。任期中に「オレ、やーめた」の竹中平蔵さん。弱肉強食の新自由主義を徹底的に貫いた小泉内閣の時、世論のおばさまたちは「純一郎さんス・テ・キ」と、外見だけしか見なかった。要するに、日本の未来は『地獄』ですよ。新自由主義だから、ますます非正規雇用が激増しますよ。どうして日本人は、ますます厳しくなることが分からないんだろう?アメリカの日米安保は、中国の軍事力の監視と、日本の再軍備防止が目的ですよ。第一、ゆとり世代のふやけきった若者が軍人になれるわけないやん。
投稿: 大東亜 | 2012.12.19 00:32
良いんですか?こんなコメントばかりで
いい年した大人達が反対、反対であれも駄目これも駄目で駄々っ子みたいに拗ねて見せている
みっともないたらありゃしない
自虐教育とはこんな情けないオッサン達を大量生産してるわけだ
駄目と思うなら対案くらい出せよ
まあ無理か?次の世代に早く道を譲れここいるような(精神的な)年寄りどもは邪魔だわ
投稿: シーモンキン | 2012.12.21 20:10
まあ自民にしても民主にしても国民をなめたら大鉄槌が落ちるのが解ったんじゃないの。しかし小選挙区って言うのは問題あるよね。
投稿: | 2012.12.24 17:16
小選挙区制は、右に左に振れ振れで面白いじゃないですか。
中選挙区制は同じ顔ぶればかりでげんなりでした。貴族制かよ。
国民が主権を実感できるのは嫌な奴を落選させたときなので、その意味で小選挙区制がグッドです。
投稿: よもくぼ | 2012.12.29 13:15