« ばか正直では首相は務まらない | トップページ | [書評]ちょっと早めの老い支度(岸本葉子) »

2012.11.16

不穏な中国の時代へ

 先日ニューヨークタイムズに、胡錦濤体制への批判と見てよいだろう温家宝の中国首相一族の資産リーク記事が上がった。また随分とえげつないことをするものだなと思った。胡錦濤・腹心の令計画の息子が女性二人を高級スポーツ車乗せて交通事故死した醜聞をネタに、令計画を中央弁公庁主任から降格した話も伝わってきた。政争の終盤に来て、これはだいぶ胡錦濤派が揺さぶられているな、と想像はしていた。が、中国共産党第十八回大会の映像の初っ端から江沢民(86)が現れ、その他ゾンビがゾロ並びの不穏な雲行きとなり、新体制の蓋が開くと想像以上にひどい顔ぶれだった。
 不穏な事件を起こした薄熙来を江沢民派は長老ゾンビが庇うなか共青団が厳しく追究していたので共青団には勢いがあると見えていたものだ。ここまでひどいバックラッシュになるとは想像していなかった。これから不穏な中国の時代がやってくるだろうと観念した。
 中国の指導部・政治局常務委員は、おそらく全体的には共青団を優勢にした七人体制に持っていくなかで、太子党や上海閥が「俺も入れろ」という流れで九人体制、あるいは通常はあり得ない変則的な実質八人体制、つまり胡錦濤による軍事委主席留任となるかもしれないと想像していた。
 が、胡錦濤は全面的に引退し、胡派の息のかかるのは事実上、李克強だけとなった(参照)。


政治局常務委員(現職)
1 太子党:習近平・国家副主席(59)
2 共青団:李克強・副首相(57)
3 上海閥:張徳江・副首相兼重慶市党委員会書記(66)
4 上海閥:兪正声・上海市党委書記(67)
5 中間派:劉雲山・党宣伝部長(65)
6 太子党:王岐山・副首相(64)
7 上海閥:張高麗・天津市党委書記(66)

 なお、兪正声は太子党と見ることもできる。劉雲山は共青団としてもよいが上海閥に近い。
 太子党は高級幹部子弟ということで明確な政治スタンスはないが、底辺から組織された共青団とは対照的になる。上海閥は概ね江沢民派であり、上海を中心とした利権的な組織であり、特定の政治的なスタンスが強いということではない。地方利権という点からすれば、他の地方利権と同構造と見てもよいだろう。
 有力視されていた李源潮・党中央組織部長と共青団から期待されていた汪洋・広東省党委書記は選出されなかった。
 なぜここまで上海閥が勢力を盛り返したかだが、江沢民一族の危機意識もあるだろうが、概ねゾンビ長老と地方利権のいわばコングロマリット的な勢力の危機感からだろう。露骨に言えば、この勢力が抱えている不良債権問題と見てよいと思う。
 だが、これらの潜在的な危機は、非民主主義国家で法が整備されていない中国では、むしろ共青団的な社会主義的な国家イデオロギーにまかせたほうが対処しやすいのに、そういう流れにならなかった。
 中国の潜在的な経済危機が、言わば、地方利権の私党の争いで、上手に調停されるかが今後の中国動向を決める。たぶん、ろくな事にはならないだろう。
 もちろん、危機が顕在化されたときに、共青団的な勢力がどう動くのかが重要になるのだが、その点では、常務委員の下部の25名の政治局員の動きにが気になる。ここは意外と共青団的な勢力が上手に温存されている。最後の砦として胡錦濤・温家宝が次世代のために残したということだろう。これらが、習近平と李克強のコンビでうまく機能すれば、中国は安定軌道に乗る可能性がないわけではない。期待はしたい。
 逆に今回、なぜここまで共青団が押し返されたかという視点でからすると、胡錦濤の対応から見て、日本政府による尖閣諸島国営化が引き金だっただったと見てよいだろう。
 民主党政府も欧米メディアも、中国から流されてくる「悪の右翼・石原慎太郎都知事」というお話に翻弄され、石原の動向を封じることで、中国政府の歓心を買おうとした。が、これが事実上、外交的な謀略だった。
 胡錦濤としては、石原の動向は困るが、日本国が大げさに動かれても、反日活動お得意の江沢民派からの弱みにつけ込まれることになる。
 実際、そのような展開になった。尖閣諸島についてはこうした中国政変時にはできるだけグレーな状態に保持するか、ごく内密にことを進めるべきだったし、実際、胡錦濤もそれを想定したのだろう。その意味では、胡錦濤にしてみると日本に寝首を搔かれたという思いがあるだろう。
 それでも、それだけの理由で胡錦濤派がここまで押し返されるとも思えない。薄熙来事件の駆け引きや、温家宝一族の資産リークも関連しているだろう。弱い形でブルームバーグから習近平の資産リークがあったが、ようするに、これらで脅しも政争の一端だったのだろう。ただし、こうした脅しはむしろ上海閥や地方勢力に効くようにも思えるのだが、ようは情報の流し方だろう。
 ニューヨークタイムズが江沢民派の事実上の謀略に荷担したということなら、このチャネルがまた反日活動でフル活動できる体制が整ったともいえるだろう。
 多少不吉なことを言うと、今回の政治局常務委員で上海閥が優勢とはいえ、年齢を見てもわかるように、次期常務委に留まることができるのは、現在50代の習近平と李克強で、残りの5人の任期は1期5年だけである。
 つまり、2017年には仕切り直しの政争が起きるだろうし、その前哨戦がまたまた反日運動の謀略とともにゴングが鳴ることになりそうだ。
 
 

|

« ばか正直では首相は務まらない | トップページ | [書評]ちょっと早めの老い支度(岸本葉子) »

「時事」カテゴリの記事

コメント

私としては中国に制御不能にならない程度に混乱し弱体化してもらって日本に対する経済的軍事的圧力が弱まってくれるという、まことに都合の良い将来を望むわけですが、日本国はどのような対応を取れば良いでしょうね。

投稿: tako | 2012.11.16 16:59

それから寡聞にして教えていただきたいのですが
「ニューヨークタイムズが江沢民派の事実上の謀略に荷担したということなら、このチャネルがまた反日活動でフル活動できる体制が整ったともいえるだろう。」
江沢民はそんなチャンネルをいつの間に築き上げたんですか?中国の軍事的圧力の対抗手段がアメリカ軍の抑止力である日本国としては由々しきことです。

投稿: tako | 2012.11.16 17:17

>江沢民はそんなチャンネルをいつの間に築き上げたんですか?

 日本のマスコミがよくやる「何となく相乗り」をアメリカがやったらチャンネル成立なんだそうですよ。へぇ~、そうなんだ。

投稿: のらねこ | 2012.11.16 18:16

>むしろ共青団的な社会主義的な国家イデオロギーにまかせたほうが対処しやすいのに、そういう流れにならなかった。

薄熙来が重慶でやったことをもうお忘れですか?彼がやったことこそ、社会主義的な国家イデオロギーを隠れ蓑にしたクーデタ未遂でしょう。

薄熙来が行ったことは、党中央によって明確に否定されました。つまり、毛沢東を持ち出して、イデオロギー闘争を行なった場合は、党中央に対する反逆として処罰されるという「前例」となりました。

投稿: | 2012.11.17 01:10

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 不穏な中国の時代へ:

« ばか正直では首相は務まらない | トップページ | [書評]ちょっと早めの老い支度(岸本葉子) »