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2012.11.23

[書評]十分読み切れなかった本など

 書籍関連のエントリーのタイトル頭に[書評]と入れているため、こんなものが書評かと嘲笑されるかたがまたにいるが、当初ブログを「はてな」で始めたときのタグの都合が今でも残ってしまったという以上ことはない。それでも書評らしいものは書いてみたいと思うことはあるし、最近では有料サイトのcakesで自分のスタイルの書評というものも開始してみた(参照)。
 本を読めばどのような本でもそれなりに思うことはあり、読後の記録を残しておきたいもので、このブログでたらっと書くことがあるが、それでもどうにも思いがエントリーとしてまとまらない本もある。最近のものをいくつか、メモ代わりに残しておきたい。

天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡

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天使はなぜ堕落するのか
中世哲学の興亡
 先日「中世哲学への招待 「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために(八木雄二)」(参照)を読んだおり、入門書を越え、もうすこしリジッドに描いた中世哲学の書籍を読みたいものだと思い、同じく八木雄二の大著にも見える「天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡」(参照)を読んでみた。
 これは筆者の意図でもあるのだろうが、「中世哲学への招待」と同じく、エッセイ的なスタイルが量的に拡張されていて、中世哲学の要点や論点をまとめて理解するというわけにもいかなかった。むしろ、本書の縮約版的な意味が「中世哲学への招待」だったのかもしれない。
 テーマはやはりスコトゥスであり、「中世哲学への招待」よりも深く考察されいて、特にキリストのペルソナの議論には驚愕するものがあった。また、アンセルムスへの記述も多く、中世の終わりに位置づけられるオッカムについても興味深いものがあった。
 それでも、どうにも読後、なにを自分を知り得たかというのが曖昧のまま残った。私の読解力の限界もあるのだろうが、もうすこしすっきりとしたスキームが提示された中世哲学の入門書が読みたかった。

ファインマンさんの流儀

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ファインマンさんの流儀
 たぶん来週の火曜日、11月27日、cakesの「新しい古典を読む」で、「ご冗談でしょ、ファインマンさん」の書評が掲載されるはずだが、本書はその資料として読んだものだった。ファインマンについては、その存在自体がおもしろく、かつその人生についても映画を含めて多様に語られているのだが、意外なことに定番と言えるような評伝がない。もちろん、異論があるだろうが、どうしてもファインマンがおもしろすぎてそこに関心が引っ張られてしまうし、ノーベル賞からの視点に固定される傾向はある。
 その点、本書は、自身も物理学者であり生前のファインマンにも会ったことのあるローレンス・M・クラウスが、ファインマンの全論文を読み直して書かれただけあって、物理学者としてのファインマンの業績がしっかりと押さえられている。シュウインガーやダイソンについての言及はさすがと言ってよい。
 とはいえ、サイエンスライターとしても力量のあるクラウスだが、ポピュラーサイエンスのスタイルになじみがないのか、当の業績の解説があまりわかりやすいとはいえない。また、ファインマンには生物学や化学方面の研究もあるだが、その部分は省略されている印象もある。
 さらに、ファインマンはどうも「脳」に関心を持ち、後年、彼の拠点カリフォルニアのニューエージ運動にも関わっているのだが、そうした側面の記述はない。
 ファインマンに関心がある人には必読書なのだが、それでも隔靴掻痒感が残る。

増補版・幻滅論

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幻滅論 [増補版]
 2001年のとき前版を読んでどうもピンとこないなと思っていたので、今年増補版が出たので読み返してみたのだが、同じ印象が残った。むしろ、この分野に対する自分の興味が愕然と後退しているのではないかとさえ思った。古澤平作などはずいぶん興味を持ったものだったが。
 もちろんと言うべきだが、本書がつまらないということではまったくない。「北山修」という文脈は表面的には排除されているので、それを求めるべきでもない。
 が、むしろ、その側面が強調されている書籍を読んだほうがいいのかもしれないと思えた。

ウェブで政治を動かす

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ウェブで政治を動かす!
 Kindle Paperwhiteが届いたので、なにかそれっぽい本でも読んでみようかな。そうだ、話題の津田大介「ウェブで政治を動かす」(参照)ということで、新書より361円ほどお安いKindle版で読んでみた。
 論旨は理解できる。説明は過不足なく行われている。主張も明確である。だが、受け付けないというのではないが、どうにも心というのか脳というのか、入ってこない。たぶん、一番基本的な主張であり、表題でもある「ウェブで政治を動かす」を私が信じていないからだろうと思う。かたくなになるつもりはないが、ITを使った民意形成といったものも私はまるで信じていない。
 ではお前はどうなのだよと問われそうだが、私は政治の大半は技術に帰していると考えつつある。その意味で、むしろ、「実践 行動経済学」(参照)の「リバタリアン・パターナリズム」のための補助技術としてITやウェブを位置づけるほうがよいのではないかと思っている。まあ、結論が出たわけではないが、本書の方向性に希望が見えるものでもないと個人的には思った。

教科書では教えてくれない日本の名作

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教科書では教えてくれない
日本の名作
 先日Kindleサービスが始まったおり、アンドロイドのアプリで読みかけただった本書をKindle Paperwhiteで読んだ。本書の内容には関係ないが、引用部分の文字に色が付いているため、Paperwhiteではかえって読みづらかった。
 内容だが、悪くないし、文学が好きな高校生には向いているかと思う。選ばれた作品が、夏目漱石「こころ」/芥川龍之介「地獄変」/谷崎潤一郎「春琴抄」/川端康成「伊豆の踊子」/太宰治「女の決闘」/三島由紀夫「憂国」ということで、日本文学にそもそもこの傾向があるとも言えるのだが、変態趣味的なものが多くて、個人的には辟易感があった。この方向ではないと日本文学では倫理的な方向に流れるのかもしれないので、日本文学というものがそういう傾向があるのかもしれない。いわゆる近代文学はむしろ中年以降になってから読んでもよいのではないか。
 
 

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コメント

例を挙げれば、
中川純男/加藤雅人(編)中世哲学を学ぶ人のために
山内志朗 普遍論争

但し、分厚いので入門書と言いかねますが、個人的に一番わかりやすかったのは、
中世の覚醒 アリストテレスの再発見から知の革命へ(ルーベンスタイン)でしたね。

投稿: F.Nakajima | 2012.11.24 00:48

ファインマンさんの映画があったのか。知りませんでした。題名を調べてアマゾンで探したが、ももクロのDVDしか出てこない。本国でなら出てるかな、DVD。

投稿: タヌキ52 | 2012.11.25 16:30

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