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2012.11.07

[書評]ただ坐る 生きる自信が湧く 一日15分坐禅(ネルケ無方)

 ネルケ無方さんの名前をよく見かけるようになった。アマゾンを見たらけっこう本も出されている。外人さんで禅に入れ込むというのは、けっこうよくある話だからなとあまり関心ももたなかった。いや、この「外人さん」という言い方も差別的でひどもんだなとは思うが「外国人」とも違った微妙に親しみの含みがあって難しい。もう少し言うなら、日本人以上に日本を熟知する外国人が出現してきたことの含意もないわけではない。

cover
ただ坐る 生きる自信が湧く
一日15分坐禅
 いすれにせよ、外国人や知識人が関心をもつ禅、あるいはメディアや書籍とかで著名な禅のお坊さんの説教などは、道元を敬愛する私にしては、もうどうでもいい存在である。ところがどうも、ネルケさん、道元の徒らしい。え?と思った。いやそう思うことがまったくもって失礼な話なのだが、あの正法眼蔵の正法の禅を理解する外人さんがいるのか、いやいるのだろう、という予感がして、まず一つ、わかりやすく坐禅の話を読んでみた。
 率直に言うと、公案とか無だとか数息観とか丹田とか出て来たら、呵呵と笑って放り投げようと思っていた。ところがどっこい。全然違っていた。ネルケさんの禅は、まごうかたなき道元の禅そのものだった。びっくりした。しいていうと、沢木興道が出てくるのは安泰寺だからしかたないかなという感じはしたけど。
 これだけ禅についてしっかり描かれた現代の本というのを想定していなかったというか、私自身、このネルケさんの本で、半眼や足の組み方など、ああ、そうだったのかと長年の疑問なども解けた部分がある。なにより、本当に禅に取り組んでいる僧がいるのだということ、道元の教えが今もきちんと継がれていることに心温まる感じがした。篤く三宝を敬えという感じがした。
 想起するまでもなく、如浄にとって道元も外人であった。如浄の禅をすべて受け止めたのがこの外人の道元であった。道元の禅のなかに、すでに普遍性への信頼が込められている。そして現代に如浄の禅が残るのは、道元によると言ってもよい。日本に本当の意味で世界に伝えるものがあるなら、道元だけでよいかもしれないし、いや、その道元にして空手還郷であるといえばそうだが。
 ネルケさんの言葉はやさしいが痛切でもある。

 釈尊の教えが禅という純粋な形で日本まで伝えられているのに、日本人がどうしてそれに関わろうとしないのでしょうか。禅宗のお坊さんですらなかなか坐禅をしないという事実こそ、私に言わせれば非常に珍しいというよりも、はっきり言って情けないことです。人間に生まれて、この一生を何も分からないままでぼんやりと過ごすのはもったいないことではありませんか。生と死の問題、自己のあり方、生命そのもの生きる方法、それらの問題に無関心ではいれらないと思うのです。人生を坐禅という形で追究し極めようとする私を「もの珍しい外人」では片付けないで、あなたも「一度トライしてみよう」という気持ちになっていたければ嬉しいです。

 引用しながら、これはまるで正法眼蔵随聞記そのものだと思った。
 日本の仏教についても。

 私が問題にしているのは、日本人の仏教離れではありません。問題は、正しい仏教が説かれていないということです。

 「正しい仏教」と言おうものなら、百家争鳴となるのがおちだが、ネルケさんのこの本でも展開されているが、「正しい仏教」は道元の「弁道話」を背景としている。
 ここに道元が現在もいきいきと生きている。なんてことだと思う。
 そして、ネルケさん自身の個性も躍動している。そのもとから、また僧も育つだろう。仏教というのは千年の単位できちんと息づいているのだと感慨深い。自分が生きている同時代に、信頼できる僧がいるだけで嬉しいと思う。
 
 

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コメント

こちらの書評で興味を持ち買って読みました。
ネルケさんの飾らない文章と真摯な態度に感銘を受け、座布を買って坐禅を始めております。
毎日15分、初めて1か月も経っておらず坐禅が坐禅をしているような状態には全く至っておりませんが、姿勢には慣れてきました。
たった15分ですが、普段の姿勢も良くなり副次的に肩こりが改善されています。(笑)
ずっと続けていくことになりそうな習慣に出会わせてくれたこの本と、こちらでの紹介に感謝いたします。

投稿: haya | 2012.12.11 18:09

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