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2012.09.23

対中武器禁輸解除問題を巡って

 ブリュッセルで20日に開催された欧州連合(EU)と中国首脳の会議における対中武器禁輸解除問題について日本での報道は少ないようだった。英語圏での報道は少なくはないがいまひとつ曖昧な印象を受けた。この問題は日本の将来にも関係すると思うので、少し言及しておきたい。
 とりあえず日本語で読める報道としては時事「中国、EUに武器解禁要求=「市場経済国」承認を」(参照)がある。概要の代わりに引用しよう。


【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)と中国の首脳会議が20日、ブリュッセルで開かれ、温家宝首相はEUが1989年の天安門事件を受けて導入した対中武器禁輸の解除を改めて求めた。また、中国を「市場経済国」として速やかに承認するよう呼び掛けた。
 同首相は会議冒頭のあいさつで、中国は両問題をめぐり10年にわたってEUに働き掛けてきたが、解決の見通しは立たず、「極めて残念だ」と強調。中国の要求が実現するよう、「EUが早期に率先して行動する」ことを望むと述べた。
 禁輸解除をめぐるEU内の賛否は割れており、「近いうちにEUが禁輸解除で合意することはない」(EU高官)という。(2012/09/21-00:49)

 英語圏ではBBC報道(参照)などがある。時事よりも多く伝えているはいるものの、要点はあまり明瞭ではない。簡単に言えば、中国はEUに対して経済支援をするからその見返りに武器を売ってくれ、という話だ。
 EUとしても本音のところでは中国に武器を売りたいが、時事にもあるように1989年の天安門事件をきっかけにした対中武器禁輸が解除されていない。
 会議での結果はどうなったか。面白いことにEU側としては中国との関係で和やかな演出をしたいのに、やっかいな武器輸出解除といった話を持ち出すんじゃない、ということだった。だがそこは中国、というか温家宝の粘りで珍妙な進行となり、会議の公式放送が事故なのか意図的なのか中断され、カラーバーが表示されるという椿事になった。結論からいえば、EUは中国が求める対中武器禁輸解除を拒絶した。
 中国が粘った背景には、中国が最新式武器を求めている実態がある。尖閣諸島で軍事衝突をしても中国は日本に勝てないが、このあたり、ちょっと斜め上の話をすると、当然ながら竹島で紛争が起きても韓国は日本に勝てない。そこで韓国からこんな報道が出る。朝鮮日報「尖閣:数では中国、先端装備では日本が上の海軍力」(参照)より。

 尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる日中の対立が激化しているが、専門家たちは、経済的問題や国際的な圧力などを考慮すると、両国が軍事的衝突にまで至る可能性は低いと語る。しかし日本側が中国漁船の操業を制止する過程で、意図せざる軍事的衝突が起こる可能性を排除できないと指摘している。
 日中間に軍事的衝突が起これば、海軍・空軍力を中心とする局地的衝突になる可能性が高いと分析されている。海軍力の場合、中国では東海艦隊が、日本では佐世保を母港とする第2護衛隊群が、それぞれ尖閣諸島海域を担当している。艦艇の数から見ると、中国の東海艦隊が日本の第2護衛隊群を大きく上回っているが、各種の電子装備など艦艇の性能面では、日本の方が上回っていると分析されている。


 翰林国際大学院大学のキム・テホ教授は「中国に比べ独自の訓練が不足している日本の方が、実際の戦闘では戦闘力を発揮できず不利になり得る」と語った。一方、米海軍大学のジェームズ・ホルムズ教授は先月、米国の外交専門誌『フォーリンポリシー』に「The Sino-Japanese Naval War of 2012(2012年の日中海戦)」と題する論文を寄稿した。ホルムズ教授は「戦力や艦艇の数という面では中国がはるかに優位。しかし実際の戦闘では、日本側が兵器や要員の質の面で優れており、尖閣や周辺の島に地対艦ミサイルを配備した場合、海上戦でも日本の優位が予想される」と分析した。

 韓国としては懸念の表明でもあるのだろう。
 問題をシンプルに問うとすると、中国に武器輸出を禁じる必要はあるだろうか、となる。自明のようだが真面目に答えようとすると意外に難しい。
 なぜ難しくなるかというと、日本の言論では、米国主導による対中武器禁輸は米国の覇権の問題という短絡的な議論になりがちだからである。また武器輸出という点では米国のほうがはるかに量が多く、米国の主張はダブルスタンダードと非難される。
 しかし問題は、武器輸出の透明性の問題である。この件に関連して世界が中国に不審の目を向けているのは、中国の小型武器輸出の実態に問題があるからだ。特にアフリカへの武器輸出が問題になっている。
 8月26日付けでワシントンポストに掲載された署名記事「中国が輸出した武器がサハラ以南に溢れている(China’s arms exports flooding sub-Saharan Africa)」(参照)では、中国が自国製の安価なアサルトライフルと銃弾を大量にサハラ以南のアフリカに輸出し、これらが国連制裁決議に違反して紛争地域で活用されている実態を描いている。中国は国連会議でもこの事実を明らかにしていないうえ、武器輸出の規制強化にも実質反対しつづけ、イランや北朝鮮なども利している。ダルフール危機も深刻化させた。

In May 2011, a team of U.N. arms experts collected several high-explosive incendiary cartridges in the Darfur town of Tukumare, where Sudanese armed forces had recently battled rebels, according to a confidential report that was produced by three U.N. arms experts and first publicly disclosed by the London-based newsletter Africa Confidential.

2011年5月、国連の武器輸出専門員チームがダルフールの町ツクマレで爆破性能の高い焼夷弾の薬莢を数点発見したが、その地域は、最近スーダン軍が反抗勢力と戦闘があった。このことは国連の武器輸出専門員三名のレポートに記載され、ロンドンに拠点とする「アフリカコンフィデンシャル」ニュースレターで初めて公開された


 中国は呆れた国だという印象があるが、それなりのご事情もある。

Council diplomats said that while Chinese diplomats in New York recognize the futility of their response, they have been hemmed in by hard-liners in Beijing, particularly within the People’s Liberation Army, which oversees China’s arms exports. Council diplomats also say they remain unsure how much control China’s diplomats have over China’s arms trade.

国連安保理事会の外交員によれば、ニューヨーク在の中国外交官は自国の対応は国際社会への応答になっていないことを理解しているものの、彼らは人民解放軍を中心とし中国政府の強硬派に取り囲まれている。また、中国の武器輸出をどの程度中国外交官が制御しているか不明である。


 中国の武器輸出は人民解放軍が独自に行っていて、中国の政府側としてもそれを制御できていないようだ。シビリアンコントロールがなっていない。
 現状、反日暴動中、雲隠れしていた習近平氏が姿を現し、概ね次期政権で人民解放軍の権力は維持されたと見てよさそうなので、今後も中国の武器輸出の状況は変化がないだろう。
 日本としては、国連を通じて、国際的な武器管理を強化する活動を深めたほうがよいだろう。実際日本は、武器貿易条約(ATT)国連会議を6年間にわたり主導してきたが、7月の会議で失敗した(参照)。主要な失敗要因としては、土壇場にきてオバマ米国大統領が国内からの突き上げをくらって消極姿勢に転じたこともあるが、規制では国際人権法などが規制の基準となるため、国内に人権問題を抱えた中国も条約反対に回っていた。
 
 
 

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コメント

EUが認めるわけがないでしょうよw

ロシアの最新鋭「艦上戦闘機」SU-33の違法コピー事件以降、ロシアでさえ中国に対する武器輸出に対してする気がありません。中国に武器輸出したって試作機だけで後は違法コピーする、新幹線のようなことを武器でさえ平気で行い、しかもアフリカ諸国にダンピング輸出するような国に対して相手にするのは現状ではイスラエル(さすがユダヤ商人!)だけです。

投稿: F.Nakajima | 2012.09.23 16:47

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