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2012.08.28

英語の「現在完了形」は、現在時制(テンス)+完了相(アスペクト)と考えると理解しやすいし、未来表現も相(アスペクト)が利用できる

 昨日だったか、はてなブックマークで「直感で学べる!英語ネイティブの11個の現在完了の使い方 - 大人気美女ブロガーミカエラさんの動画で英語学習」(参照)という記事に、644のブックマーク(参照)がついて目立っていたので覗いてみた。コメントが異常なほど多く付いているというわけではない。英語学習関係のブックマークは1000を越えるものも多いので、どっちかというとそれほど話題というものでもないだろう。ただ、アスペクトを教えているのかなと興味を持ったのだった。
 該当のエントリーだがそれなりに面白いし(女性がカワユス)、説明が間違っているというものでもないが、アスペクトの話はなかった。
 そういえば、学校英語ではいまだに「現在完了形」というのを教えているのだろうか。現在完了形というのは、現在時制(テンス)+完了相(アスペクト)と考えると理解しやすいのだが。と思って気まぐれに完了「相」のことをツイートしたら、どの文法書にありますかと問われた。

cover
文法がわかれば英語はわかる!
NHK新感覚・わかる使える英文法
 簡単に答えると、田中茂範著「文法がわかれば英語はわかる!」(参照)に詳しく説明されている。
 この本は、以前、NHKでやっていた語学番組「新感覚☆わかる使える英文法」を元にしている。番組では和希沙也さんが出ていて楽しかった。ツッコミのネイティブ役にはダリオ戸田さん。なかなかの才人だとも感心した。番組ではちょっとシュールなコントもあって、マイケル・ネイシュタットさんとSHELLYさんが演じていた。
 というわけで、「完了相」など「相」については先の本を読めばわかりやすく書かれているので、それで話はお終いでもあるのだが、簡単に要点をまとめると、五点ある。

  1. アスペクト(相)はテンス(時制)と組み合わせる。
  2. テンスは動詞の活用形に表れる時間で、現在と過去の二つがあり、英語には未来のテンスはない。
  3. アスペクトには、動作・状態のありようを示すもので、単純アスペクト、完了アスペクト、進行アスペクトの3つがある。
  4. 動詞のチャンク(まとまり)は、「助動詞+完了相+進行相+態」をテンスが支配して動詞に結合する。
  5. 動詞チャンクは必要情報を補い、構文を形成する。

 そこで、動詞の文法の要点は三点になる。

  1. テンス・アスペクトの調整を含む動詞チャンクをどう表現するか?
  2. 話し手の態度を表明するときどのように助動詞を使うか?
  3. 動詞チャンクを補う構文をどう表現するか?

 学門めいているのだけど、これは厳密には文法というより、学習者に英語をどのように教えるかという便宜を整理したもので、学門として文法と言えるかについてはまた別の話。ちなみに、イェスペルセン文法などでは時制を7つとしている。
 そんなことを学んで具体的にどうなのか?
 例えば、「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」(参照)にある次の問題などはすっきり理解できる。

A-11 His father writes scientific novels.

 これにこう解説がある。

英語の時制で一番誤読・誤訳が多いのは現在時制。理由のひとつは「~いる」という日本語に引きずられて進行形と混同するから。

 先の田中文法なら、これは現在テンス単純アスペクトなので、現在テンス進行アスペクトとは区別され、こうした解説は不要になる。
 似たように田中文法が活用できる例としては。

I'm leaving for New York tomorrow.

 現在テンス進行アスペクトなので、今この時間、話者は「leaving」の相にある。つまり旅立ちの状態にある。機能的には未来表現になってもいる。
 こんな感じですかね。

単純アスペクト: (゚Д゚)
進行アスペクト:((((゚Д゚))))

 とはいえ。

A: What time are you finishing?
B: I'm finishing at six tonight.

 みたいに進行アスペクトによる未来形を会話ですらっとは出て来ないんじゃないかな。ある未来の時点から現在の進行アスペクトとして未来を表現するということで、こうも言える。

I'm graduating in two years.

 未来表現の意味合いの違いはこんな感じ(参照)。

A: I’m graduating from the nursing program next semester.
B: After I graduate, I’m going to apply for nursing jobs.
C: I will probably find a good job at a hospital.

 使い分けだが、進行相は"arrangments(スケジュール上)"、"be going to"は"plans&intentions(計画)"、"will"は"predictions&hopes(期待)"といった感じ(参照)。
 BBCの学習サイトにも例文があったが、これが面白い。

  • be going to: I'm going to visit my cousins in Leeds over the coming weekend.
  • future progressive: I'll be visiting my cousins in Leeds over the coming weekend.
  • present progressive: I'm visiting my cousins in Leeds over this coming weekend.

 ご覧のとおり進行相が"will"と結合している。BBCのサイトでも"polite enquiries about people's plans"とあるように、これは実は、英語の敬語。なぜ、これが敬語になるかについては、先の田中文法の本にも説明があるので気になるかたはご参照を。
 未来表現のほうに話題が移ったが、英語は未来テンスを持たないので、アスペクトを駆使してこういうことになる。

cover
越前敏弥の
日本人なら必ず誤訳する英文
 話を戻して、英語圏での英語学習者にはどうアスペクトについて学んでいるのか、ざっと見回したが、はっきりとしない。「Collins Cobuild Active English Grammar」(参照)を見ると、日本での英文法書と同じだし、未来を表現する進行相などについての言及はない。ネットをざっと見回すと、ないわけでもない。"Understanding English Grammar"(参照)というサイトでは、4つのアスペクトを上げている。

A. The simple (infinite) aspect
B. The perfect (complete) aspect
C. The progressive (continuous) aspect
D. The Perfect Progressive (continuous) aspect

 田中文法の単純相を"simple (infinite)"として、"infinite"を強調しているのが興味深い。テンスについては"future"を設定しているので、機能・意味論的な傾向になっている。
 ESL(第二言語学習)関連のサイトでもこの4分類は見かける(参照)が、"Perfect Progressive"を単独の相として取り上げるかは議論が分かれるだろう。
 他、"The Internet Grammar of English"(参照)では、単純相を設定せず、テンスとアスペクトの2×2のマトリックスに単純に納めている。

 全体的には、英語圏の英語学習者ではアスペクトを学ぶという流れはありそうだ。が、日本の英語学習も明治以来長い伝統と歴史があるので、それはそれで日本独自の伝統として大切にしていきたいところ。
 
 

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コメント

英語ではテンスとアスペクトがこうであるといっても、それだけでは日本人話者が学習するためには残念ながらわかりづらいので、日本語のテンス・アスペクトはこうなってて英語とこう対応しているという説明が必要ではないでしょうか。
 
猪野真理枝ほか『英作文なんかこわくない』はとても良くできた本で、その中ではこのように言っています。
 
テイル形は「食べている」「知っている」のように動詞に付けて使われ行為が進行中であることも、状態が継続していることも表します。これはテイル形が継続を表すアスペクトだからです。テイル形は次のような場合に使います。
(1)現在の状態…私は彼を愛している
(2)現在進行中の行為…テレビを見ている
(3)現在の結果状態…財布が落ちている。
……そして、それぞれが英語のアスペクト・テンス(現在完了形など)とどのように対応するかの記述が続きます。

投稿: 通りすがり | 2012.08.30 07:57

田中茂範さんのことだから、そんなわけないと知った上での教育上の配慮なのでしょうけれど、テンスを動詞のmorphologyに限定してしまって、英語に未来のテンスが無いと言い切っているのが乱暴ですね。

せめて「英語の動詞に未来形は無い」としてほしいところです。

投稿: | 2012.09.03 18:02

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