ヒメネスさんのキリスト画が優れたアートである5つの理由
北東部ボルハ(Borja)の教会でエリアス・ガルシア・マルティネス(Elias Garcia Martinez)による「この人を見よ」(Ecce Homo)と題するキリスト画を元に描かれたるセシリア・ヒメネス(Cecilia Gimenez)さん(80)のキリスト画が、優れたアートである5つの理由ついて考察したい。
「この人を見よ」(Ecce Homo)
1 斬新なインスタレーションでありストリートアートである
ヒメネス画は、教会という固定化された空間を作家の意匠によって異化させ新しい体験を促すインスタレーションであり、また既成権力によって形骸化された美術館やギャラリーといった閉鎖空間に圧殺された芸術の本質的な力を広い空間に解放し、人々のコミュニケーンを活性化させる斬新なストリートアートとして評価できる。
2 ルオーの精神性を現代に再現している
ヒメネス画は、素朴な筆致によって、作者の精神性のプロセスをなぞるように、逡巡しつつ、純真な信仰表現として、なんどもなんども上書きされていくという点から、ルオーのキリスト像、とくに同じタイトルの「この人を見よ」(Ecce Homo)との類似性が顕著である。その精神性は人々に感動をもたらす。
3 ベーコン風のデフォルメによって人間存在を描き出している
ヒメネス画は、激しいデフォルメによって歪められた具象表現によって、人間存在の根本を描き出したアイルランドの画家フランシス・ベーコンの作風にも似いる。人間とキリストの存在をその違和感の衝撃をもって新しく現代人の魂に呼びかける。
4 諧謔はアートの伝統である
印象派と深い関係にあったエドゥアール・マネの代表作「草上の昼食」(参照)はマルカントニオ・ライモンディの版画「パリスの審判」(参照)の一部をパロディにした作品でありながら、芸術作品として定着している。そのように画家が古典作品をベースに諧謔の作品を創作するのも芸術の伝統であることを、ヒメネス画は訴えかけている。
5 芸術とは本質的にスキャンダラスなものである
ヒメネス画は、現代世界に騒動とも言える大きな衝撃を与えたが、芸術はそもそもスキャンダラスな性質を持つものである。古典的な例としては、フランスの写実主義の画家ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)の「世界の起源」などがある。
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コメント
ジョーク記事にはジューク記事である旨を書かないと最近は叩かれるそうです。
そのような世知辛い世の中に挑戦するこの記事は実にアートです。
投稿: | 2012.08.27 13:56
キャー!早く塩昆布を貼ってください!
投稿: かえた | 2012.08.27 18:33
最終ヌクモリティ弁当
投稿: rabi | 2012.08.28 10:28
弁当爺はまだ50代だと思ったが、早くも老人性エロトマニアが発症したかw
投稿: 麿 | 2012.08.29 02:05
ヒメネスさんが列聖されるまで盛り上がって欲しいな。
投稿: | 2012.09.12 13:05