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2012.07.20

米国英語と英国英語の発音の違い

 英語を意欲的に学ぶ人が多いみたいだが、米国英語と英国英語の違いはどうしているのだろうか? たまに疑問になる。インターネットを使って英語を学ぶという話題に、よくBBC(英国放送協会)やNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)が出てくるけど、BBCは概ね英国英語、NPRは概ね米国英語。英語国民ならどっちも聴けるだろうし、違いは東京弁と大阪弁くらいなものかとも思うこともあるが、英語を学ぶ日本人としてはどっちかひとつに基点を置いたほうがいいのではないかな。どうしてるんでしょうかね。
 問題意識を浮かび上がらせる意味で、ちょっと○×クイズをしてみたい。発音に絞った。


1 英国英語で"car"の"ar"と"father"の"a"は同じ音?
2 英国英語で"car"の"ar"と"aunt"の"au"は同じ音?
3 英国英語で"sport"の"or"と"door"の"oor"は同じ音?
4 英国英語で"sport"の"or"と"talk"の"al"は同じ音?
5 英国英語で"hot"の"o"と"stop"の"o"は同じ音?
6 英国英語で"hot"の"o"と"want"の"a"は同じ音?
7 英国英語で"teacher"の"er"と"umbrella"の"a"は同じ音?
8 英国英語で"teacher"の"er"と"her"の語末の"er"は同じ音?
9 英国英語で"famous"の"ou"と"America"の語頭の"A"は同じ音?
10 英国英語で"nurse"の"ur"と"work"の"or"はは同じ音?
11 米国英語で"car"の"ar"と"father"の"a"は同じ音?
12 米国英語で"hot"の"o"と"father"の"a"は同じ音?
13 米国英語で"good"の"oo"と"full"の"u"は同じ音?
14 米国英語で"sure"の"ure"と"poor"の"oor"は同じ音?
15 米国英語で"Europe"の"ur"と"plural"の"ur"は同じ音?
16 米国英語で"come"の"o"と"lunch"の"u"は同じ音?
17 米国英語で"teacher"の"er"と"umbrella"の"a"は同じ音?
18 米国英語で"nurse"の"ur"と"work"の"or"は同じ音?
19 米国英語で"teacher"の"er"と"her"の語末の"er"は同じ音?
20 米国英語で"hot"の"o"と"son"の"o"は同じ音?

 クイズの解答は文末に記した。解答が間違っていたらごめんなさい。でも、すぐに答え合わせするのではなく、できたら、以下の議論を読んで再度やりなおしてみるといいと思う。とはいえ、ちょっとややこしい話。
 英国英語と米国英語。学校ではどういう指導をしているのだろうか。たまに気になる。概ね米国英語が多いようだが、それほど違いは意識されていないようにも思える。どっちで学んでも英語力が付けばよいという印象である。
 それでいいのかもしれないが、たとえば、オックスフォード大学の出版部(Oxford University Press)は各種英語学習教材を販売しているが(参照)、簡単に音声で確認できるものを聞いてみると英国英語だった。聖公会系の学校だとこういう教材を使っているのかなと思ったものだ。他方、米国のESL(English as Second Language)だと米国英語が中心のようだ。
 考え方によって米国英語と英国英語の違いはそれほど問題でもなく、最初の決めごとかもしれない。そう思っていたが先日、オックスフォード大学の出版部のELT(English-language teaching)教材の"English File Pronunciation"という発音学習のアプリを見ていたら、英国英語と米国英語の切り替えができる。それはいいなと見ていて、ちょっと驚いた。

 驚いたのは、母音の組織の提示方法だった。英国英語と米国英語の発音が違うのはよく知られていることだが、母音組織として異なる体系にあることが最初に提示されていたのだった。


左が米国英語の母音、右が英国英語の母音

 米国英語の場合、母音組織は、(1)特徴付けなしの母音、(2)R音性母音、(3)二重母音、の3つの範疇で構成されている。
 対して、英国英語の場合は、(1)shortの母音、(2)longの母音、の2範疇が対立してあり、さらに(3)二重母音、の3つの範疇になる。
 そんなことは当たり前ではないかと言う人もいるだろうが、これは「音」としての差違というより、音素体系として提示されている点が重要。母音組織そのものが違うことになる。普通に考えれば、別の言語のようでもある。だが、どちらもラテン語文字という類似の表記法を使っているうえ、それを発音に事実上紐付けしている。その対応がどちらも異常なくらい複雑になっている。
 別の言い方をすると、米国英語ではshortの母音とlongの母音といった組織対立はなく、英国英語では米国英語を特徴付けるR音性母音がない。それでいながら、米国英語のlongの母音は、米国英語を特徴付けるR音性母音と関連がありそうに見える。
 学習者にしてみれば、どちらか決めておいて他方は無視してもよいようなものだが、それでも発音とスペリングの関係をルール化する場合、たとえば、"Silent e"といったフォニックス(Phonics)的なルールを採用する場合、英語がスペリングに使うラテン語の母音文字との関連で、shortとlongの関連が意識されることになる。つまり、米国英語でも、スペリング学習との関連で、shortの母音とlongの母音の関係は暗黙に理解が求められることになる。このことは、言語として見た場合、米国英語学習者にとっても英国英語の母音発音組織が暗黙に意識されることでもある。このあたりに大きな問題が潜んでいる。
 そこでまず、英国英語のshortの母音とlongの母音の組織だが、調音的には次のようになっているし、先のオックスフォード大学教材も暗黙にこの組織性を提示している。


 short  long
 ɪ    iː
 æ    ɑː
 ɒ    ɔː
 ʊ    uː
 ə    ɜː
 e
 ʌ

 これを"Silent e"からラテン語母音字に対応させるフォニックス(Phonics)的なlongとshortに分け直すと次のようになるはずだ。おそらくこれが英国英語ネイティブの発音意識に対応している。簡単にいえば、longはアルファベットの読み方と同じである。

  short  long
I  ɪ    aɪ
E  e    iː
A  æ    eɪ
O  ɒ    oʊ
U  ʊ    uː

 このラテン語母音字の表で短母音として抜けているのが、/ʌ/と/ə/である。後者は英国英語でもschwaと見ていいだろう。つまり、無アクセントの母音が/ə/だろう。こう整理して体系的に残るは、/ʌ/である。これはスペリングから見ると、Uのshortに対応していることが多い。これはあとで再考察する。
 英国英語の調音体系とスペリングとの母音意識体系の差をラテン語母音字に対応で見てきたのは、英語は元来、このラテン語母音字に近い発音だったからだ。それが現在の英語のように大きな変化をしたのは、中世期のグレート・ヴァウエル・シフト「大母音推移」(Great Vowel Shift)のせいである(参照)。チョーサーとシェイクスピアの間で起きたというイメージになる。
 それ以前の英語の場合は、概ね、longの母音は、shortの母音を伸ばしたものだった。日本語の音引きみたいなものである。"name"はそれゆえ、「なーめ」であった。
 グレート・ヴァウエル・シフトをラテン語母音字で整理すると、先のフォニックスのlong/shortの表に近くなる。ただし、以下の説明は正確ではなく。便宜である。ラテン語母音字の5字に"oo"を加えたのは、グレート・ヴァウエル・シフト以前のshortの母音は5母音を越えていたからだらだ。また当時の異スペリングは括弧に補った。

    旧long   現long
I(y)   iː     aɪ
E(ee)   ɛː, eː   iː
A(aa)   aː     eɪ
O    ɔː     oʊ
U(ou)  uː     aʊ
oo    oː     uː

 調音的には舌の位置が構造的に上顎方向にずれた。また、調音的にはみ出した部分は二重母音化した。その他にも段階的に変化した。以下の図は、米国英語ふうに変化を簡略化したもの。

 グレート・ヴァウエル・シフトの全体像は複雑だが、ここではスペリングとの関係だけに絞ってみたい。繰り返すが、そのため、学問的に厳密な話ではなくなる。しかし実際のところ、発音とスペリングに利用されているラテン語母音字との対応が、母音組織というより、英語学習上の問題になるだろうと思う。
 先に残した問題、"oo"と"u"の扱いだが、先ほどは、Uのラテン語母音字に/ʊ/と/uː/ を充てた。現在の英語では、これは"oo"に対応している。そこを整理しなおすと先に余った/ʌ/が当てはまることが多い。例えば、"up"や"nut"など。しかし"put"は異なる。また、/ɔː/の位置がないので、これに対応するスペリングとして"au, al"を含める。/ɑː/も対応しづらい。仮に"A"のlongに併記しておく。次のようになる。


  short  long
I  ɪ    aɪ
E  e    iː
A  æ    eɪ, ɑː
O  ɒ    oʊ
oo ʊ     uː
U  ʌ    uː
au,al 欠  ɔː

 "U"のshort/ʌ/に対応するlongは/uː/としたのでここは重複する。
 以上のように整理してみると、現代英国英語は母音は大きな変化を経たが、ラテン語母音字に対応する母音の構造意識で見ると、古代からの英語の構造をけっこう保持しているとも言えそうだ。おそらく、グレート・ヴァウエル・シフトはlongの母音で顕著でshortの音が保持され、それとスペリングの対応にlongの意識だけ付随したからではないだろうか。
 米国英語ではどうか。スペリングとの意識対応は変わらないので、構造的な違いはないと思われる。だが、米国英語にはlongが音声上は存在しないので、longとして意識されているとして当てはめてみる。

  short  long意識
I  ɪ    aɪ
E  ɛ    i
A  æ    eɪ
O  ɑ    oʊ
oo ʊ    u
U  ʌ    u
au,al 欠  ɔ

 以上の対比から、英国英語と米国英語の母音意識の構造上の差違は、英国英語から見た場合、/ɑː/と/ɔː/に大きく現れている。
 当然これは、英国英語のlong母音と米国英語のR音性母音とに関わり、ラテン語母音字から見ると対照の構造が存在しそうだ。しかし、"ir"と"ur"は英国long母音の対応はない。

ラテン語的表記  英国long母音  米国R音性母音
  ir      欠     ɪr
  ar      ɑː     ɑr
  or      ɔː     ɔr
  ur      欠     ʊr
  er      ɜː     ɜr
〈schwa〉     欠     ər

 米国R音性母音に対応する英国二重母音で見ると対応がはっきりする。グレート・ヴァウエル・シフトでlongが二重母音化したのと類似の構造がある。

ラテン語的表記  英国二重母音
  ir       iə
  ar       ɑː
  or       ɔː
air/ere/ear/are   eə
  oor       ʊə
  er       ə

 簡単にいうと、英国英語の場合、米国英語のR音性母音は、上顎に近い調音の"ir"と"ur"ではschwa(/ə/)を後置する意識となり、"ar"と"or"ではlongとして扱われることになる。ただし、無音でありながら意識の上では存在しているとも言える。
 というあたりで、冒頭のクイズを見直してみると、なんとなく議論の意図が汲んでいただけるのではないか。

[クイズの答え]1○2○3○4○5○6○7○8×9○10○11×12×13○14○15○16○17×18○19○20×
 
 

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コメント

final先生は、音声学の体系的な訓練も受けているんですか。

科学としての言語学って、英語については、すごく進歩しているんでしょうね。日本語なんかは、漢字を用法制限して、かなづかいをめちゃくちゃに改悪したことで、言語の科学が成立しにくくなってしまったけれど。

現代英語でも、古英語や中英語のしっぽって、ずいぶんついていますか。現代英語は、ラテン語化が著しいと思うんですけど。ITは、それをさらに加速しているような気がします。日本語は、まだ、なんだかんだいいながら、古事記と万葉集の日本語が結構保存されているような気もするけれど。

いっそのこと、ラテン語を回復させてしまえばいいとさえ思うんですよ。そのほうが、フランス語やスペイン語やポルトガル語やイタリア語の学習に応用が利くし、どうせ、現代ドイツ語や現代オランダ語も英語同様、ラテン語化が進行しているはずなんだから。ロシア語だって、たぶん、どんどんラテン語化していると思いますよ。

投稿: enneagram | 2012.07.21 05:52

英語ってやっぱり難しい‥。
テストは前の記事からの抜き打ちテストですか?
全然‥‥わからない。(涙)

投稿: 出来の悪い生徒 | 2012.07.21 17:27

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