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2012.07.17

凍れるコミュニティー

 20代のころだったけどその状況ではその集団にとって重要な意思決定の会議みたいなものに若者の声代表みたいに出席したことがあった。発言を求められて、じゃあというので問題点を整理して回答を述べた。たぶん回答というより、解答だったのではないかと思う。で、どうなったか。ご意見承りました、次、という感じで会議は進んでいった。
 あれれ、と僕は思ったのだった。そりゃ。まあ、でもいろいろ課題があるんだろうと思って聞いていると、どうもこの会議が録画されているなら僕の発言部分をカットしてもなんら違和感がない。その先も同じ問題が蒸し返されている。それ、さっき僕が回答したじゃん、これが巻末の解答集、とかいう感じでもういちど発言しようかと思ったけど、恩義あるかたが馬鹿止めろ視線を投げかけてきたので、黙って置物になった。
 どういうことなんすか、とあとでその人に聞くと、君は会議の意味がわかってないねというのであった。会議の意味って、合理的な解答に合意することじゃないんすかというと、苦笑して若いねというのであった。若い意見が求められていたんじゃないんすかと再度聞くと、君は頭がいいけど馬鹿だねと言われた。怖い者知らずにはメリットとデメリットがあるんだがと言って会議の意味を教えてくれた。
 会議は、えんえんとやることに意味がある。参加者の腹の一物が透けてくるまでやる、というのだった。会議で意思決定なんてしても、どっかで必ず造反者が出るんだ。隙あらば状況は動く。誰がどう動くかという読みが重要なんだ。会議というのはそのためのストレステストだ。あいつは腹に一物ありそうだ。あいつはへたれそうだという顔色を確認する。できたら弱いヤツは潰していく、なんたら。
 合理的じゃないですよ、それ。そんなことしたら参加者全員が不利益になりますよ。対外的に弱体化するための集団行動なんて馬鹿そのものですよ、と僕は言った。彼は苦笑して、まあいいと言っていた。彼も結局、その後干された。
 会議について、うんざりする経験は他にもある。度重なり、僕もうんざりし、できるだけそういう会議に参加しないで年とってしまったのだけど、それでもちょっと前だったが、似たような会議に出席した。特に意見が求められるわけでもなく、僕は愚鈍なんで参加する意味もないんだけど、むしろこの年代のメンツの一人といったふうであった。そこで変な議題が出た。
 その分野については僕には知識があるので、それならこれこれのほうがいいですよと対案を発言をした。たぶん、合理的だろう。どうなったか。承りました、検討しますということだった。意見も言ってみるのだったなと思ったのだが、次回、検討結果が出て、僕の提言は否定されていた。否定された理由が項目になっていたので読んで、ははは、これは違うなと思ったので、これこれは違ってますよ、と発言したら、会議の場が気まずくなった。せっかくお前さんの顔を立ててやったのに蒸し返すんじゃないよ的な雰囲気なのである。でも、合理的な解決がのほうがみなさんのメリットですよと思っていると、これは検討されたものですし、なんたらということで結局僕の提言は否定された。採決ということで賛成しかねるなあと思ったら、僕のために全員一致とならず、それはなんか気まずいという空気だった。全体からすれば些細な話でもあるんで、どうでもいいじゃんと思うには思ったが、些細な話というのは問題が些細ということであって、会議としては些細だったのかよくわからなかった。
 似たような事例がもう一度あって。会議が凍ってしまった。僕が凍らせたということか。すまんな。深く反省した。と同時に、そういえば、こうやって若い頃随分嫌われたものだったなと思った。
 若いころひょんなことで、世界の平和のために、みんなの心を前向きにみたいな会合に参加したことがあった。宗教かよそれ、と思ったが、どうも参加者は、理想の世界のビジョンに、うるうるしているのである。そりゃ、世界がみんな善人になって正しい世界を目指せば世界はよくなるよ。中国みたいに頭のいい奴が政治権力を握って金融政策をすればその場その場では合理的な対応になる。でも、そういうのってそれほど現実的ではないだけなんだがなと、僕は置物化していったのだが、どういうわけか、決議でもないのに、挙手を求められた。僕はそんな宗教みたいな理想には賛同しませんよとじっとしていた。挙手しない人が一人くらいいても気がつかないでしょと高を括っていたのだった。見つかっていた。
 なぜなぜとうるうる組に発言を求められた。いや、みなさんの善意や正しい考え方が意味を持つためには、少しだけ悪い奴とか反論者がいたほうがいいんですよ。でないと何が善意で何が正義なのか、比較できなくなっちゃいますよ。なので僕は気弱な天の邪鬼の役です。かわいい悪魔の代弁者、なんちゃって、と答えた。凍った。
 まただ。時間が止まったように光がくっきりとしちゃうあの凍った時間。で、なんか僕へのバッシングが始まった。バッシングがどうも僕とは関係ない方向で盛り上がっていくみたいなんで、うわこれはご勘弁と思って、置物力を強化したのだった。
 その会合のトイレ休憩のときだった。君に賛成しているんだという人がぽつんぽつんぽつんといた。一人は気弱そうな人で、君くらい勇気があればいいんだけどと言った。別に勇気じゃないんですけどと思ったが、答えるのも可哀想な感じの人だった。一人はにへら笑いして、君は正論だけどこうなっちゃうとしかたないねえ、みたいな感じであった。僕もにへら笑いして、そういう君が最低だんだけどねと思ったが言わなかった。自分のほうが最低力において優るんじゃないかと思い直したのだ。っていうか、僕はいずれ、気弱になるか薄汚いなく状況に立ち回る人間になるのかな、いやはやと思ったものだった。
 
 

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「雑記」カテゴリの記事

コメント

やまもと氏やfinalvent氏は、バカに嫌われる典型ですよね。そこまではわかるんですけど、じゃあどうすれば良いのか私には、わかりませんなあ

投稿: rabi | 2012.07.17 11:48

これはオモロイ!
あるある!

投稿: tokyojoe_2008 | 2012.07.17 17:48

会議の話、すごく面白いです。延々とやるのは腹の中をさぐってる、というのは初耳でした。思い当たることばかり。続きの話があれば読みたいです。
招かれざる客というか、ああ僕っていらない子と気づくことはよくあり、特に人数の多い会議では、意見なんて求められちゃいないのがデフォですね。
コツは、ボスの側に座ってうつむいて静かにしていることなんでしょうね。

投稿: | 2012.07.17 22:01

弁当さんが場を凍らせたのは事実だとしても、弁当さんの主張が合理的だったというのは、単に弁当さんの個人的主観ですよね。実は弁当さんの主張が非合理的だったけど、周囲が気を使っていたのかもしれません。本人は気づかないでしょうが。

投稿: YT | 2012.07.17 22:34

>その会合のトイレ休憩のときだった。
>君に賛成しているんだという人が
>ぽつんぽつんぽつんといた。
>一人は気弱そうな人で、
>君くらい勇気があればいいんだけどと言った。
>別に勇気じゃないんですけどと思ったが、
>答えるのも可哀想な感じの人だった。
□ この、
「(公式の場では言わなかったけど、実は、)
君に賛成しているんだという人」たちが、
いろんなものをダメにしているんじゃないだろーか、
と強く思ったりする今日この頃。

投稿: 774 | 2012.07.18 00:28

や、合理的な(つもり)の回答に周囲が気を使っちゃ会議の意味無いでしょう。それが非合理であるなら理由を合わせて意見すればいいわけだし、そもそもそういったことを議論するのが会議ではないのかと思いますがね。
まあ会議にそんなに縁があるわけではないが、会議と言う会議まったく空気を読まないで意見だけしてる私みたいな者も疎まれているのであろうな…とは感じました。どのみち空気読めないのでどうでもいいことですが。

投稿: 鳥 | 2012.07.18 00:34

議論するとき、みんなの意見を順番に聞いていくのですが、最終的な落とし所でいつも悩みます

 俺が意見したの意味ないじゃん、次から黙っておこう。

私が取り仕切るときは、そう思われないように、みんなの意見を少しずつ反映しておきます
でも、これってみんなの納得感のためで、合理的な結論とは別の話になっちゃうのが悩ましい

投稿: 悩ましい | 2012.07.18 02:16

文部省や教育委員会の会議って多分こんな感じでしょ?本気でイジメ対策しようと思うなら、同和や在日とかヤクザとかのバックが出てきたらどうするのか、予めそれらと相談してモデルパターンに合わせて解決するようなテンプレとか作っておくとか、ケツを持ってくれるのか?
現場に丸投げすりゃ結局、広島の校長さんみたく玉砕するか、大津みたいに事件を握り潰す方向に行くもんじゃね?

投稿: ト | 2012.07.18 05:21

会議とは合理的な結論を出すものではなく皆で決めたという満足感を得るためにするものである

投稿: rin | 2012.07.18 21:42

こういう名ばかりの会議って
誰か偉い人の考えに、うんうんそうだ言うだけの
新興宗教のセミナーみたいな感じだよな

投稿: | 2012.07.19 11:38

日本の政治家がやってる会議の話かと思いました。
可愛いい悪魔の代弁者‥本当に言ったんですか?すごい。
でも、与党と野党とわかれてるのはその為なんですよね?私、頭悪いんでよくわからないんですが。
党の潰しあいしてるように見える‥、話しそれた。

投稿: | 2012.07.19 16:58

いじめの話をしよう回の続編ですね。会議に限らずあらゆる場で見られる現象でしょう。
子供のいじめが大人のシガラミとして継続し健在しているのにまだ大津、大津の馬鹿騒ぎにも合理的な意見は必要とされてないのですね。
愚かな政局は民主党内に限らず日本中にあるわけで阿Qのシガラミを断つには英雄的独裁者の誕生か?
いや、シガラミは日本の文化や社会であり無駄と分かりつつ正しい道と徳を言い続ける生け贄が常に必要なのかもね
臆病者が多いから生け贄不足な我が日本から英雄的な生け贄が誕生するか?

投稿: シーモンキン | 2012.07.19 20:58

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