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2012.06.17

民主党・自民党・公明党の三党合意で描く日本の近未来

 報道を聞いているかぎり日本の政治はお先真っ暗という印象がぬぐえない。民主党の自滅はとうの昔に済んだ話だが、野党自民党も民主党の毒饅頭である三党合意を食って頓死してしまった。主要二政党が滅んで生まれ出たのが国民の血税を啜る増税翼賛会である。こんなろくでもない戦前政治の怪物みたいなものはさっさと滅ぼしてしまえと言いたいところだが、その後には「万人の万人に対する闘争」しかないだろう。国家の混乱である。それよりは隣国と仲よく独裁政治であれ国家に政治が存在しているほうがまだましかという気すらしてくる。これはもうどうしようもないなと落胆していたのだが、ちょっと気を取り直して事態を冷静に見てみようか。
 要は三党合意である。実際にはどのような合意だったのか。民主党サイト「社会保障・税一体改革で民主・自民・公明の3党実務者合意案まとまる」(参照)に歪んだスキャン画像として、次の3文書がある。(1)3党実務者確認書、(2)社会保障・税一体改革に関する確認書、(3)税関係協議結果、である。
 政策的に重要なのは、(2)社会保障・税一体改革に関する確認書、であり、具体的な項目が書かれている。


社会保障・税一体改革に関する確認書(社会保障部分)
 一、社会保障制度改革推進法案について
 別添の骨子に基づき、社会保障制度改革推進法案を速やかに取りまとめて提出し、社会保障・税一体改革関連法案とともに今国会での成立を図る。
 二、社会保障改革関連5法案について
 政府提出の社会保障改革関連5法案については、以下の通り修正等を行い、今国会での成立を図る。
 :(以下略)

 これを読むと、よくここまで詳細な合意ができたものだと感心したのだが、おっと、ここで(1)3党実務者確認書を見ると、がっちょ~んなことが書かれているのだった。

3党実務者確認書
別添の「社会保障・税一体改革に関する確認書」に加え、以下を確認する
1. 今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容などについて3党間で合意に向けて協議する。
2. 低所得高齢者・障害者などへの福祉的な給付に係る法案は、消費税率引き上げまでに成立させる。
3. 交付国債関連の規定は削除。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途、政府が所要の法的措置を講ずる。
平成24年6月15日

 「社会保障・税一体改革に関する確認書」に加え、「以下を確認する」とあるので、普通の日本語ならその後に追加的な内容が来るはずだが、この文書で後続しているのは、「その内容などについて3党間で合意に向けて協議する」ということだ。追加事項ではなく、「なーんちゃってね」である。「あ、今言ったのなしなし、これから話合って決めようね」という打ち消しの確認であった。かくしてこの二文書は相殺して意味が消えた。というか、政策なんて意味ないよねというのを民自公三党で確認したというのである。
 では具体的に何について合意したのかというと、税である。消費税増税と報道されている。実態はこの文書、(3)税関係協議結果、である。

税関係協議結果
 政府提出の税制抜本改革2法案については、以下の通り修正・合意した上で、今国会中の成立を図ることとする。
 (注)*は法改正に関わるもの
○第4条(所得税)について
・(*)所得税に係る規定(第4条)は削除するが、最高税率の引き上げなど累進性の強化に係る具体的な措置について検討し、その結果に基づき平成25年度改正において必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を付則に設ける。
 具体化に当たっては、今回の政府案(課税所得5000万円超について45%)および協議の過程における公明党の提案(課税所得3000万円超について45%、課税所得5000万円超について50%)を踏まえつつ検討を進める。
○第5条、第6条(資産課税)について
・(*)資産課税に係る規定(第5条、第6条)は削除するが、相続税の課税ベース、税率構造等、および贈与税の見直しについて検討し、その結果に基づき平成25年度改正において必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を付則に設ける。
 具体化に当たっては、バブル後の地価の大幅下落等に対応して基礎控除の水準を引き下げる等としている今回の政府案を踏まえつつ検討を進める。
○第7条(消費税率引き上げに当たっての検討課題等)について
・消費税率の引き上げに当たっては、低所得者に配慮した施策を講ずることとし、以下を確認する。
(1)(*)「低所得者に配慮する観点から、給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含めさまざまな角度から総合的に検討する」旨の条文とする。
 また、「低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含めさまざまな角度から総合的に検討する」旨の条文とする。
(2)(*)簡素な給付措置については、「消費税率(国・地方)が8%となる時期から低所得者に配慮する給付付き税額控除等および複数税率の検討の結果に基づき導入する施策の実現までの間の暫定的および臨時的な措置として実施する」旨の条文とする。
 その内容については、真に配慮が必要な低所得者を対象にしっかりとした措置が行われるよう、今後、予算編成過程において、立法措置を含めた具体化を検討する。簡素な給付措置の実施が消費税率(国・地方)の8%への引き上げ条件であることを確認する。
・(*)転嫁対策については、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法・下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を追加する。
・医療については、第7条第1号ヘに示した方針に沿って見直しを行うこととし、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時までに、高額の投資に係る消費税負担について、医療保険制度において他の診療行為と区分して適切な手当を行う具体的な手法について検討し結論を得る。また、医療に関する税制上の配慮等についても幅広く検討を行う。
・住宅の取得については、第7条第1号トの規定に沿って、平成25年度以降の税制改正および予算編成の過程で総合的に検討を行い、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時および10%への引き上げ時にそれぞれ十分な対策を実施する。
・自動車取得税および自動車重量税については、第7条第1号ワの規定に沿って抜本的見直しを行うこととし、消費税率(国・地方)の8%への引き上げ時までに結論を得る。
・(*)扶養控除、成年扶養控除、配偶者控除に関する規定を削除する。
 ただし、成年扶養控除を含む扶養控除および配偶者控除の在り方については、引き続き各党で検討を進めるものとする。
(*)歳入庁に関する規定を「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施する」とする。
○附則第18条について
・以下の事項を確認する。
(1)第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2)消費税率(国・地方)の引き上げの実施は、その時の政権が判断すること。
・消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
・(*)「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、わが国経済の成長等に向けた施策を検討する」旨の規定を第2項として設ける。
 原案の第2項は第3項とし、「前項の措置を踏まえつつ」を「前2項の措置を踏まえつつ」に修正する。
○その他
(*)上記の見直しに関連し、題名と第1条について以下の修正を行う。
 題名 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律案」とする。
 第1条(趣旨規定) 所得税、資産課税の見直しに係る箇所および「により支え合う社会を回復すること」を削除する。「わが国が」を「わが国の」に修正する。
・国分の消費税収の使途のうち年金、医療、介護に係るものについては、平成11年度以降、国分の消費税収は高齢者3経費に充当されてきた経緯等を踏まえるものとする。
・上記の国税改正法の修正に伴い、地方税改正法についても所要の修正を行うものとする。
 以上、確認する。
平成24年6月15日

 税制全般にわたり、けっこう詳細に書かれているではないか……よく読め。
 所得税も資産課税も検討課題であり、税制改革の根幹である歳入庁も検討課題に過ぎない。実質、合意されているのは、消費税である。「低所得者に配慮」のために「簡素な給付措置」として低所得層向けのバラマキをしたら、「消費税率(国・地方)が8%となる時期」が決まるというのである。まあ、バラマキはお手盛りだからそれほど高いハードルではないので、消費税増税が三党で合意できたということになる。
 だが、実際の増税時期については「その時の政権が判断する」とのみで合意文書にはない。8%以上への増税の言及もない。10%という話も含まれていないのである。
 このあたり、報道とは印象が違う。例えば読売新聞記事「一体改革、3党合意…会期内の採決目指す」(参照)ではこう書かれている。

 民主、自民、公明3党は15日、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案を修正し、今国会で成立させることで合意した。
 消費増税に慎重だった公明党が容認に転じた。税制、社会保障それぞれの合意内容を確認する文書に、3党の実務者が署名した。これにより、2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費税率引き上げ関連法案は成立に向けて大きく前進した。民主党内には増税に慎重な意見が根強く、野田首相は民主党の了承を取り付け、21日までの今国会会期内の衆院採決に全力を挙げる。

 この記事だが、よく読むと、消費税増税については「向けて大きく前進した」ということであって、「2014年4月に8%、15年10月に10%」は合意文書で表面的に確認できる部分としては三党合意には含まれていない。16日付け産経新聞社説「3党合意 社会保障抑制は不十分だ 「決められぬ政治」回避したが」(参照)でもこの数値と期日が入っている。

 平成26年4月に8%、27年10月に10%と消費税率を2段階で引き上げることは民主、自民両党間で早々に合意された。

 16日付け日経新聞社説「首相は消費増税の実現へひるむな」(参照)も同様である。

 3党は現行5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げることで一致した。日本経済にかかる負荷を和らげるため、2段階で税率を引き上げるのは妥当である。

 他方、同日の朝日新聞と読売新聞の社説にはこの期日と数値への言及はなかった。
 二段階消費税引き上げの話はどこから出て来たかといえば、合意文書にある「政府提出の税制抜本改革2法案について」ということで、その法案「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」(参照)が前提となる。そこには、以下のようにきちんと期日と増率が記されている。

2.消費税法の一部改正
(1) 平成26年4月1日施行(第2条)
○消費税率を4%から6.3%に引上げ(地方消費税1.7%と合わせて8%)。
○消費税の使途の明確化
(消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする)
○課税の適正化(事業者免税点制度の見直し、中間申告制度の見直し)
(2) 平成27年10月1日施行(第3条)
○消費税率を6.3%から7.8%に引上げ(地方消費税2.2%と合わせて10%)

 この「第2条」の扱いが、今回の三党合意でどういう扱いになっているのかだが、よくわからないのである。単純に考えれば、そもそも合意事項には含まれていないようだが、政治的な文脈からすれば、「第2条」は異論がないから最初から合意されていたとも理解できる。
 だがそうであっても論点は「第2条」を問題化する「7.附則」であることは合意文書からでも明白である。ここは法案ではこうなっている。

7.附則
○消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18条)
消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

 この部分に対応する合意文書をもう一度対比のための引用しよう。ここが消費税増税論のキモである。

○附則第18条について
・以下の事項を確認する。
(1)第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
(2)消費税率(国・地方)の引き上げの実施は、その時の政権が判断すること。
・消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
・(*)「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、わが国経済の成長等に向けた施策を検討する」旨の規定を第2項として設ける。
 原案の第2項は第3項とし、「前項の措置を踏まえつつ」を「前2項の措置を踏まえつつ」に修正する。

 さて、消費税率の引上げにあたっての措置という「附則第18条」と今回の合意文書の対応部分はどのように理解したらよいのだろうか。
 まず明白なのは、法案の「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は合意文書で「政策努力の目標」となったことだ。つまり、どうでもよくなった。「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」は無効になってしまった。消費税増税よりひどい話である。率直にいって、この時点で日本のデフレは終わることはないということが、民主党・自民党・公明党で合意されたのである。
 次に、消費税増税時期は「その時の政権が判断する」ということで、いかにも民主党後の政権が受け持つかのようだが、これはようするに、民主党・自民党・公明党がどのような組み合わせで政権を取っても、その政権がガチで消費税を上げますよという話である。増税翼賛会宣言であった。
 この増税翼賛会はどのような日本を目指すのかというと、「財政による機動的対応が可能となる中で、わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」というのだが、つまり、消費税増税で財政にゆとりができたら、その分を成長戦略や社会保障に回すというのだ。それも「わが国経済の需要と供給の状況、消費税率の引き上げによる経済への影響等を踏まえ」というのは、「デフレだったらやめます」というわけでもない。
 現実的に見れば、「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」の放棄を三党で合意した時点で日本の未来のデフレは確定になり、そのなかでいくら消費税を上げても財政のゆとりなんか生まれるはずもない。日本はじわじわと地獄図へと変わっていくというのがこの三党、民主党・自民党・公明党の合意の描く未来であった。
 冷静に政治を見つめ直してもショボーンな日本であったとさ。
 

 
 

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コメント

大変わかりやすい整理だったのですが、もうちょっとあなたの生産的な提言も聞きたいと思います。

海外誌の社説を引用しながら、国内の主要誌の論調を叩くというパターンにもいささか食傷気味なんです。あなた自身の描く、ショボーンでない未来の展望を知りたいです。

投稿: のぶ | 2012.06.17 23:23

合意というか修正合意、修正しないものは書く必要がないでしょ

投稿: | 2012.06.18 02:33

いつも興味深く読ませていただいております。
相殺により打ち消されたいるのは『今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革』の2点だけかなぁと思いました。
社会保障制度に関するその他の部分についてはまぁ、ちょっとだけ前進している気もします。
(間に合うかどうかは不明ですが)

投稿: catche me! | 2012.06.18 23:02

「名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」の放棄を三党で合意した時点で日本の未来のデフレは確定になり…

の下りを、もう少し拝聴したいです。

投稿: kansatsusha | 2012.06.19 07:40

ほらみろ、やっぱり日本終わってたwwwwww
もうこうなれば社会保障額をドカンと減らすために老人に集団自決してもらうしかない!!
ある意味戦中戦前の時期より嫌な空気だろう。老人はどう責任とってくれるの?「若者が行動しないのが悪い」というなら、もう能動的に死んでもらうしかないよね。

投稿: rabi | 2012.06.21 14:07

 >ほらみろ、やっぱり日本終わってたwwwwww
 自分の頭で考えずに付和雷同するのは放射脳カルト信者と同じ。
 リンク先を観て頭でも冷やしたら?尤もそこまで考えが回れば、の話だけど(爆笑)。

投稿: | 2012.07.07 03:30

グリーンスパンの「謎(コナンドラム)」と並ぶナゾが日本のデフレだと思います。石油資源の高騰以来ずっと物価が下がっているナゾは何でしょう? 400兆円ともいわれる社内留保金がそのヒントかなとも思うし、311以降急激に留保金が積み上がってるようなのも異常だと思いますが…。どこかに何か見解がないかと彷徨ってます。w

投稿: tokio | 2012.07.14 10:15

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