ブログはどこまで嘘をついていいのか
まあ、話題の虚構新聞の「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」(参照)について、私も結局釣られるということなんだが、ネットでは話題といっても知らない人もいるだろうと思うので、概略から、で。
試しに、グーグルニュースでこの件を検索したらエックスドロイドというサイトの「「虚構新聞に怒る人はバカ」とひろゆき氏が断言」(参照)という記事があって、ざっと読んだら、それがわかりやすいように思えたので、概要の代わりに引用。
現実の事件や出来事のパロディ記事を配信するジョークサイトとして有名なのが「虚構新聞」。個人サイトとは思えないPVを叩きだしており、一昨年に今までのネタを集めた単行本『号外!!虚構新聞』(笠倉出版社)が発売されるほどの人気サイトだ。
記事には背景色に隠れた文字を反転させると「これは嘘ニュースです」と書かれており、虚構新聞というサイト名からもジョークであることは分かるのだが、「ありそうでないこと」をネタにしている上に新聞記事の体裁を模した書き方であるため、よく確認せずに事実と誤認してしまう人が絶えない。
5月14日、同サイトが「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」という記事を公開すると、これがTwitterなどで爆発的に拡散。ウソ記事であったことが判明すると、釣られた人々が「混乱させられて迷惑」「デマを流しているのと同じ」などと虚構新聞に怒りをぶつける事態となった。
簡単にいうと、「虚構新聞」が嘘記事を書いて人気を集めているブログだということを知らないで、記事のタイトルだけ見て釣られた人が、「ほら見たことか橋下市長は」と怒りだすということがあり、そしてその怒った人たちに対して、ひろゆき氏のように「バカ」だなと、あざけるという人がいたという話である。
「冗談と言っているのに、冗談だとわからない人は、バカで困るよね」というのがブログとかネットカルチャーでの一般的な受け止めかたなのだが、それでいいのかというのが当の問題提起である。
私はというと、いろいろ考えて、結論としては、これはいかんなと思うのでちょっと書いてみる、ということだが、この問題、いろいろ錯綜している。
まず、虚構新聞というのはこの手の嘘記事を書いて、それを嘘だとして面白がるブログなので、そう人だけで、つまり一部の人だけで楽しんでいるなら問題ないとは言える。
また、タイトルだけで釣られてしまう人というのは、ネットの情報を判断できない人なので、ひろゆき氏のように「バカだ」とまでは言えないものの、困ったものだなというのも言えるだろう。
後者については、私も昨日、JBPressの「国に期待する者はバカを見る、自分を磨きなさい 竹中平蔵・慶應義塾大学教授インタビュー」という記事の7ページ目(参照)を備忘にブックマークしてツイッターに流したところ、「よく言うね。竹中平蔵。裏切り者の売国奴が。本当に恥じを知らん奴だ」という反応があった。私は、さほど竹中氏自身には関心なく、7ページ目中央銀行について彼がこう述べていたところが気になったのだった。
そもそも、政府とは別にわざわざ中央銀行をつくる理由には2つあります。
1つは国会でやっていたらどうしても対応が遅くなること。スピーディに手を打たないといけませんからね。もう1つは金融が難しい分野だからです。専門家にしか任せられません。
オバマ大統領がFRBのポリシーボードに、マサチューセッツ工科大学の教授でノーベル賞も取ったピーター・ダイヤモンドを入れようとした。しかし議会に拒否されたということがありましたが、理由は単純です。彼は確かにノーベル賞を取りましたけど、金融で取ったのではないからです。
中央銀行のポリシーボードというのはそれくらい専門性が要求されるのに、日銀はPh.D.(博士号)を持っている人が少ない。しかもどこかの会社の社長とかジャーナリストとかが、いきなりポリシーボードに入ったりする。そんな国はほかにありませんよ。
日本の中央銀行はそういうもんだよなと思ったのだった。どうもツイッターでの反応はリンク先を読まずに、「竹中平蔵」で「裏切り者の売国奴」という反応が出てしまった。
私としてはその反応にちょっと驚いたのだが、まあ、ネットのカルチャーを見ていると「小泉純一郎」「TPP推進」とかいうキーワードにすぐにこの手の反応が出るのは知っているし、「石原都知事」「南京虐殺」「従軍慰安婦」「靖国神社」でも似たようなことになるのも知っている。「竹中平蔵」もそういうキーワードだったわけだ。
でだ、「竹中平蔵」はさておき、この手の発狂トリガーのキーワードに「橋下徹」が含まれているようになっていることは知っていた。私は彼にはほとんど関心はないのだけど。
ツイッターとかして多数の人をフォローしているなら、「橋下徹」が発狂トリガーのキーワードとして、タイムラインが時として発狂ツイートだらけになるのは何度もあったはず。
で、ここが肝心なのだが、虚構新聞ブログの運営さんもそのことを知っていたと思う。
つまり、「橋下徹」は発狂トリガーのキーワードだから、「こいつぁネタになるぜ、しかも、その発狂ポイントはいかに彼が全体主義者みたいな言論を出すところだ、してみると、嘘ネタの方向性はこれだな」……というので、今回のネタが出来たというのは、まあ、ブログやネットカルチャーにいる人にはごく常識の部類。
だから、その常識の部類を口をぬぐってすっとぼけて「虚構新聞だから嘘を楽しむサイト」「嘘を嘘と楽しむのが自由だ」とか言うのは、まあ、私にしてみると、その態度というのが薄汚いじゃないですか、と思う。
別の言い方をすると、「橋下徹」を「全体主義者みたいな言論を出す」発狂トリガーのキーワードとして遊ぶというのが、極めて偏向した政治的な立場じゃないですか、それを明確にしてないならひどい話じゃありませんかね、と思う。
いや、政治家など公人を批判することができるのが、言論の自由であり、虚構新聞の今回のネタだって、そういう言論の自由であり、「橋下徹」批判として許されるものだという議論もある。米国でブッシュ元大統領だってお猿に模されて揶揄されていたものだったというのである。
一見、そんなふうに思えるかもしれないけど、では、と思う。
オバマ大統領を嘘ネタやデマで揶揄するとき、「オバマ大統領はイスラム教徒(ムスリム)だ」というのはどうだろうか。それも自由だろうか? もちろん、言論の自由。そう言うことはできる。では、それも嘘サイトと看板掲げておけば、嘘として楽しむサイトで言いまくっていいのだと言えるだろうか?
もちろん、言論の自由はある。
しかし、それは批判されなくてはいけない。
もうちょっという、「オバマ大統領はイスラム教徒(ムスリム)だ」という言論があるなら、それは間違いですよ、嘘を楽しむとかいって、そういう政治的な意図を込めたデマを飛ばすのは間違っています、と、誰かが対抗の言論を起こすところに、言論の自由の真価がある。
「オバマ大統領はヒットラーのような独裁者だ」というのなら、それは誰が見ても意見だとわかる。「オバマ大統領はイスラム教徒(ムスリム)だ」というのは事実言明のフリをしたデマでしかない(ここでめんどくさい余談をいうのもなんだが、イスラム教の解釈によってはオバマ大統領はイスラム教徒だと言えないこともないが、その話は別としますよ)。
だから、ちょっと、自分をいい子めかして言うことになるかもしれないし、おそらくそれゆえに私も批判を受けるだろうけど、虚構新聞の今回のネタについては、政治家に対してデマに基づく偏向した言論を流布させるのは間違ってますよと、私は批判しなければいけないし、私が信じる言論の自由というのはそういうもの。
嘘と看板を掲げるなら、なんでも言っていいのか? どこかの政治家が賄賂をもらっているとかいうデマ話も自由に書いていいのか? もちろん、書いていい。言論の自由だ。でも、言論が自由でありつづけるのは、誰かが「それはデマだよ」と対抗言論を起こして、読む人々にもう一つの視点を喚起する場合だけ。
虚構新聞の今回のネタについては、こういう画面の表現で「橋下徹」本人の写真を掲載していたのも同じく問題だと思う。これが虚構新聞のロゴのように、あははと笑えるような漫画イラストならまだ救いようがあっただろう。
デマ記事に本人の写真を貼られるというのも、公人としては許容範囲だろうか。違うと思いますよ。そして、ブログとかネットの世界で、こういうデマ記事に本人の写真を貼り込むのはよくないですよと私は思う。
で、私の言いたいことはそのくらいなんだが、いや、もう一つ。
今回、虚構新聞の記事はタイトルだけで流れて釣られた人が出て来た。ちなみに、同記事のタイトルをHTMLにそって取り出すと、「橋下徹市長 : 橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」となっていて、どこにも虚構新聞とも嘘ともデマとも書いてない。つまり、"http://kyoko-np.net/"というドメインを知らなければ、虚構新聞のネタだとはわからない。でだ、話はこの先。
虚構新聞というのは、こうしてタイトルだけ流して、人をひっかけるというのも、読者の楽しみの一つだった。「わー、また虚構新聞のネタにひっかかってら」というので笑うわけである。
これが、仲間内なら、いい。
仲間内を越えたら、「ひっかかってバカ」といって笑って済む話ではない。
で、ここが肝心なのだが、こういうふうにタイトルを流して人をひっかける人というのは、仲間内を意識してやっていたのか? 違うでしょ。最初から、このネタを使って、仲間内以外をひっかけようとしたのだし、今回の虚構新聞の事例では、「橋下徹」という発狂トリガーのキーワードなら誰かひっかかるだろうと思ってばらまいたのだ。
ひどい話。
なにがひどいかというとそういう意図があるのに、虚構新聞にひっかるのはバカだとか言う悪意のバラマキである。
ただ、率直に言って、こうした悪意のバラマキという点でいうなら、ネット文化にどっぷりつかった私も無罪だとは思えない。ちょっと思いつかないが、すでにいくつか結果的にやっているじゃないかと思う。
自分も投石できないしょぼん団に加えて、それでも教訓はなんだろ? というなら、一つには先にも挙げたように「釣られたやつバカ」とか言ってすますのはアカンだろ、であり、もう一つは、発狂トリガーのキーワードの扱いには気をつけたほうがいいということだ。
なにがその発狂トリガーのキーワードにノミネートされているかは、曖昧なこともあるし、それを全面的に避ければいいというわけでもない。
発狂トリガーのキーワードの臭いがするときは、人気ブログを運営しているなら、政治的な立場を明確にしているというのでもなければ、ちょっと引いとけよとは思う。
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コメント
『発狂トリガー(のキーワード)』っていいネーミングですね。
今のネットを上手く表現している気がします。
投稿: 六条御息所 | 2012.05.17 19:17
ページの上にははっきりと目立つように「虚構」と明言しているのになぜ騙されるのか不思議で仕方ない。釣られた人は「虚構」という単語の意味を知らないのか、その単語を読めないのか。小学生ならそれでもいいが、大の大人がそんな当たり前の単語を知らずに騙されているとは情けなさすぎる。「うそ新聞」と書かないとわからないのだろうか。まったくもって今の日本人が低能化しているという事実に悲しくなる。
投稿: | 2012.05.17 21:02
政治の分野でも本物の新聞が事実のような顔をして嘘をついているのに、虚構新聞が嘘をついてはいけない理由はないと思います
投稿: 鳥 | 2012.05.18 00:54
全く同意です
良くないですよねこういうの
ネット上では情弱(この言葉も嫌い)は嘲笑われて当然
嘲笑われる方が悪い みたいな雰囲気があります。
むしろそれが大多数で、いってみればコモンロウのようにになっていて。
その歪な部分、人の心を波立たせて、目を引いて
それに企業も乗っかって 広告出して
どうなっちゃうんだろうって思いますねー
投稿: | 2012.05.18 02:00
まず
毎日新聞の日本変態報道やNHKの反日台湾報道などなど
朝日新聞、毎日新聞、東京新聞…
お金貰ってデマ記事売ってる人達から規制すべきじゃありませんかね?
デマ=意図された誤報になんらかの罰則を科すのには賛成ですが
いきなり素人ネットよりまずプロの新聞デマ屋を規制してというのが私が目指すものです
まず模範とする新聞アレじゃね~ジャーナリスト(笑)は記事に無記名、PNで素人かと…苦笑
投稿: シーモンキン | 2012.05.18 06:59
ひっかかって顔真っ赤にしたんですね?判ります。
投稿: | 2012.05.18 11:13
実害があるか、ないかじゃない? あと人気サイトがなんらかの利益を得てるなら世間の常識は守った方がいいと思う。まぁ、サイト運営者とアフィリエイトや広告会社との間の判断だから、私自身は利益不利益に関係ないし、ただの気持ちの問題だけど。
ツイッターの義務化というのは、国歌斉唱にひっかけているのだろうけど、間違った認識があるから、つまらないと思う。義務化するとしたら、校長や教員に対してでしょう。こっちなら炎上しなかったと思う。つまり、筋違いだから炎上したんだな。
あと、ひっかかる人がいても、そういう人はすぐ忘れるから気にしないでも・・・
投稿: | 2012.05.18 12:22
↑
こういう書き込みこそ、タイトルだけ見て本文を読まないという、まさに虚構新聞に「ひっかかって顔真っ赤にした」人と同じことをやっているんですが、自分ではそれに気づかないんでしょうかね。
投稿: | 2012.05.18 12:47
”発狂トリガー”の引き金が羽毛のように軽い人…と書くと個々人に帰せられそうですが、結局こういう事例の積み重ねが何かしらの空気になっていくのが日本なのかなと。もちろん悪い方向で。
投稿: ストロン | 2012.05.18 18:14
「虚構」新聞だっつってんだろハゲ
投稿: あ | 2012.05.18 18:27
でも、この主張
コメント承認制にしてる極東ブログとしては通らないかもしれないですよ?
投稿: | 2012.05.18 20:03
騙される経験こそが大切であり、それだけで虚構新聞は十分存在意義があると思いますけどね。
投稿: bywordeth | 2012.05.18 23:25
情報(事実・創作含む)を発信する側に、ある程度求められる視点だと思います。
良くも悪くも、「ネットカルチャーや情報の扱いに不慣れな層」も広く取り込むことで成立している現在の状況では、
今後もこういう『認識の行き違い(冗談としての記述/判断に慣れてない人が本気に)』みたいな事態が出てくるような気がします。
今回に関しては、見出しのみで早合点して拡散した側にも問題はありそうですが(情報の発信元の確認で誤認を防げた人も多いと思いますし)。
今回の一件は興味深いなと思っていましたが
どちら側に問題があるのかというより、
「情報を安易に扱い過ぎていないか?」と、ちょっと我が身を振り返る記事でした。ありがとうございます。
投稿: | 2012.05.19 18:24
周知の事実ですが・・・・
数年前なら善意にあふれた人が態々虚構新聞のサイトを検索してまで見に行くことは無かっただろう
虚構新聞のごときサイトをアフィブログが重複し拡散させうるというシステムも少なかった
すでに、ネットに投稿するということは完全な閉鎖している会員制サイトでもない限り天下の公道で声を張り上げ主張しているということなのでしょうか
虚構新聞が紙媒体で内輪の配布であれば問題も少なかっただろうけれど、フリーライダーが時の人を記事にし号外を道で無作為に撒いているとなれば古の火星人が来たと勘違いした人を責められないなのだろうか
勘違いさせうるように仕向けている(2chと2chマトメサイトとアフィ・PV)問題もあるかなと
投稿: | 2012.05.20 00:15
どこかの政治家が賄賂をもらっているとかいうデマ話も自由に書いていいのか?とかかれていますが、「橋下氏が賄賂をもらった」と「橋下氏がツイッターを義務化した」を同じ意味を持つ記事だと捉えているんでしょうか?
たとえば虚構の記事のひとつに「岡田副総理、若者の自殺増に満足感」とあります。こういうみるだけで不快感を示すものこそ取り上げるべきで、今回の件なんて元をたどれば明らかに嘘と公言してるところを含めてかわいいものです。
この話題ではよく嘘ならなんでもいいのか?と極論に飛ぶ人がいますがそうではなく、これは許せる嘘これは許せない嘘と柔軟性を持ちたいですね。またリテラシーの低い層が安易に情報発信でき、それを信じてしまう層がいることの怖さが一番見るべき点だと思います
投稿: | 2012.05.22 13:29
今更ですが、思うことがありましたので、コメントいたします。「悪意」が先生のご意見のポイントのようですが、読者としてその表現から悪意を読み取ったとしても、制作側の虚構新聞に悪意があったと明言できるような内容でしたでしょうか?
確かにサイトに写真を使っていたり、タイトルに発信者を表す記号がなかったりと、その表現のやり方には読者規模にあわせた見直しがあってもよいかもしれません。ただ、その表現内容は最近珍しくユーモアのあるまともな風刺であると思いますし、ネットの世界で成長してきたユニークなメディアであるとおもいます。個人的には今回のことにめげずに、頑張ってほしいのが正直な感想ですが、当の虚構新聞がその風刺性をなくしてしまうようでしたら、なくなってしまってもよいとも思います。
最近、話題の某学費支援サービスや芸人親族の生活保護についても、批判側は相手に悪意を勝手に読み取っている場合が多々あるようにも思えます。確かに責められる側には考慮すべき点があると思います。しかし、問題解決の意思なき批判こそ悪意のバラマキになってしまうのでしょうね。そして、それが大きくなると否定の力となる。日本は今、この否定する空気感が満ち満ちているように思えるのです。ですから、悪意のバラマキをなくそうというご意見には大賛成です。
投稿: | 2012.05.30 15:32