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2012.05.09

極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.3 (2012.5.9)

 とりあえず、前回と同じ方針で試作。この形式で続けていくかは未定。
 実は、一昨日できていたのだけど、最新情報の変化があるかと気になって遅れた。予想外のことはあまりなかった。


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極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.3 (2012.5.9)
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目次
[フランス] オランド新大統領の財政緩和策は失敗する
[ギリシャ] ギリシャの混乱は小休止しEUには緩和な危機が続く
[イスラエル] イスラエルはオバマ再選を織り込んだ
[ベネズエラ] チャベス大統領死去には政変の可能性
[アフガニスタン] アフガニスタン戦争敗戦に向けてアヘン利権が問われる
[米国] オバマ政権はエジプト支援でも失敗した
[書籍] 手づくり英語発音道場 対ネイティブ指数50をめざす (平凡社新書)
[テレビ] キティ・沖縄・アメ横
[コラム] Evernoteの中国データセンター建設でささやかれること
[コラム] オランド氏の恋人とフランスにおける少子化対策について
[コラム] 近視が増えるアジア人の子供
[コラム] 環境中の電子音が気になる
[コラム] 豆腐餻(とうふよう)

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[フランス] オランド新大統領の財政緩和策は失敗する
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 フランス大統領選挙の決選投票は、社会党のオランド前第1書記が得票率51.62%で、現職サルコジ大統領を48.38%に押さえて勝利した。オランド氏の勝利は予想通りだったが、決選投票が近づくにつれ予想の差は狭まり最終的には3.24%になった。オランド氏当選に危機感を抱いた層の動向と見てよい。オランド氏の勝利の結果が出ると、為替市場も織り込み済みだったのに、ユーロが売られ円が買われた。
 オランド氏は、ドイツのメルケル首相とサルコジ大統領が欧州連合(EU)の政策として推進してきた緊縮財政に反対し、「ユーロ圏共同債」発行などで財政緩和策を提唱している。実現にはユーロを融通する必要があるが、それ決めるのはドイツである。
 ドイツのメルケル首相も予想外ではないので、儀礼上オランド氏を立てる演技として経済成長も必要だという立場に立つだろう。欧州中央銀行(ECB)も同様である。具体的には、個々の国向けに「成長促進措置を推奨する」といった方針を出すことになる。だが、これは財政協定に付随する形になるだろう。
 「ユーロ圏共同債」については、ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行が現状では否定的だがいずれ、その方向を強いられるだろう。ドイツ国民の意識から、ECBが高めのインフレ目標を設定する可能性は低い。
 オランド氏もドイツを巡る困難な事情を知らないわけではないが、来月の下院選挙(国民議会)に向けた態勢固めとして、支持層を幻滅させないためにもったいぶった演技をしばらく続けるはめになる。
 その後だが、成長戦略を掲げながらも実質的な政策をもたず、反サルコジだけで選挙を過ごしたオランド政権は、日本の民主党のように内部から崩れ、未熟なオランド氏を取り残す形で実質サルコジ時代と同じ路線に戻るだろう。


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[ギリシャ] ギリシャの混乱は小休止しEUには緩和な危機が続く
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 ギリシャの議会選挙の結果、緊縮策を進めてきた連立与党の議席が過半数を2議席不足で割り込み、連立政権の樹立もまた困難になった。大統領令で再選挙が実施されることになるだろう。今回の混乱に懲りて緊縮策を進めてきた連立与党が再結成されれば、ギリシャのユーロ離脱と国家破綻は避けられ、当面はなんとか持ちこたえる。
 中長期的に見ればギリシャがユーロを維持できる見込みはなく、一定の時間をかけてユーロ離脱の方向を取ることになるだろう。欧州連合(EU)側にしてみると、ギリシャは歴史上名誉欧州国または欧州専属リゾート地といった位置づけで、国家経済の規模も小さく重要性も低い。むしろ、ギリシャのユーロ離脱と国家破綻が及ぼす他国への影響の懸念が大きい。
 このため、時間をかけつつ、多少のコストを払ってギリシャの痛みを軽減しつつ離脱を誘導することが合理的な選択になる。ギリシャにしても自国通貨を復活させれば金融政策もやりやすい。


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[イスラエル] イスラエルはオバマ再選を織り込んだ
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 イスラエルのネタニヤフ首相は、来年10月に予定されていた総選挙を今年の9月に前倒しにすると与党リクードの会合で発表した。9月4日が有力視されている。国内向けには政権の安定を求めるとのことだが、11月の米国大統領選挙で二期目を迎える米国オバマ政権への対応と見てよい。オバマ政権はイスラエルの対外活動に慎重な姿勢を求めているが、二期以降この傾向がさらに強まると予想されている。
 今回の決断はネタニヤフ政権として、米国共和党のロムニー大統領候補の敗北を織り込んだ動向とも読める。イスラエルロビーによるロムニー氏支援となるような仕込みも軽減され、イラン攻撃といった大きな決定も秋以降に延期されるだろう。
 それまでは一種のモラトリアムとも言えるが、このためパレスチナ和平交渉の再開も困難になる。その前提のようにイスラエルは4月24日、ヨルダン川西岸に建設された三つの違法ユダヤ人入植地を合法化した。こうしたイスラエル国内の動向はさらに続く。


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[ベネズエラ] チャベス大統領死去には政変の可能性
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 ベネズエラのチャベス大統領の健康を巡り不穏な話題が続いている。チャベス氏は10月7日に予定されている大統領選で4選を目指し出馬を表明しているが、現在癌治療中であり、それまで大統領職がまっとうできるのか疑問視されている。万一の場合、権力移譲がどのように実施されるのかについても重大な関心が寄せられている。
 チャベス大統領が4月13日から10日間ほどテレビから姿を消した際、死亡したとの噂が流れた。放射線治療でキューバに滞在して後、報道が絶えていたのが噂の元だった。チャベス氏は国営テレビの番組に電話を通じて出演して噂を否定した。
 現状、チャベス氏の健康状態と万一の際の権力移譲について明確な情報はない。噂は二分されている。チャベス大統領死去による圧政からの解放の期待と、チャベス大統領の死期に備えた特別体制が用意されているというものだ。
 独裁者にまつわる健康状態の噂は珍しいものではないが、今回の場合、10月7日という明確で正当な権力移譲の期限が設定されているので、期日に近づくにつれ、問題が可視になっていく。ベネズエラについて言えば、クーデターを含む、かなりやっかいな問題が起きる可能性は高い。


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[アフガニスタン] アフガニスタン戦争敗戦に向けてアヘン利権が問われる
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 アフガニスタン戦争の報道が散漫になってきた。再選を目論むオバマ政権の失態が浮上しないような配慮からだろう。
 オバマ米大統領が選挙戦時代から重視し、大統領就任後も注力してきた「オバマの戦争」ともいえるアフガニスタン戦争だが、2010年6月にマクリスタル司令官を事実上更迭した時点でベトナム戦争と同様な敗戦に向かっていた。大失態と言える事態なので、再選に向けての大きなつまづきにもなりかねない。1日、 野田首相と会談を形式的にそそくさと終了させ、アフガニスタンに電撃訪問したのもその懸念からだった。
 アフガニスタン訪問でオバマ大統領は、米国民には「撤退する」と述べ、アフガニスタン政府には「撤退しない」と述べた。この手の矛盾した話芸で彼にかなう人はいない。
 アフガニスタンの戦争はどのようになっているのか。米国防総省はタリバンが弱体化していると述べ、米民主党のファインスタイン上院議員は勢力を拡大していると述べた。実態はオバマ大統領流の修辞の問題ではなく、見解の相違によるもので、総じて見れば膠着状態にある。
 オバマ政権は和平交渉として敗戦処理を進めているし、タリバンの穏健派も同意しているため、たびたびリークされる米兵の侮辱行為についても、直接的な反感がアフガニスタンで沸き起こっているわけではない。
 和平工作の障害となっているのは、力の均衡というよりもアヘン栽培の利権の問題である。アフガニスタンにおけるアヘン生産は順調に増加していて、アフガニスタン政権を支える地方権力とタリバンとで上手に配分する必要がある。
 事態の危うい均衡を崩しかねないのは、アフガン駐留仏軍約3千300人の年内撤退を公約としていたフランスの新大統領オランド氏である。このため、オバマ政権は早々に米仏首脳会談の早期開催を打診した。米仏直接対話が、ワシントン郊外で開催予定の主要八カ国(G8)首脳会議の後に回るようだと両国関係は水面下にこじれているというメッセージになる。が、その事態は回避された。


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[米国] オバマ政権はエジプト支援でも失敗した
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 中国の盲目の人権活動家・陳光誠氏の事件では、米国オバマ政権の人権問題棚上げ外交が大きな失態を招いた。同様の失態がエジプトでも展開されている。
 米国外交は表向き人権擁護を掲げるが、現実にはキッシンジャー流外交を典型とするように、他国の人権問題には目をつぶる。オバマ政権もその方向で優等生的な外交を展開してきたことが裏目に出た。
 外貨準備が減少し経済が困窮しているエジプトの軍事政権だが、オバマ政権は3月23日、民主化を条件にせよとする議会を押し切って、年次13億ドルの軍事・経済援助を延長した。オバマ政権としては、軍事援助を停止すれば、エジプト情勢のさらなる不安定が懸念されるとした。
 だがその後の動向を見ると、援助によってエジプト軍政はむしろ悪化した。エジプトで活動している人権団体への弾圧は強まり、イスラエルに対しても天然ガス輸出契約を破棄した。


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[書籍] 手づくり英語発音道場 対ネイティブ指数50をめざす (平凡社新書)
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 英語の発音について、いわゆる音声学といった専門書を除けば、これほど徹底的に議論した本はないのではないか。著者は大学で英米学を学んだ経歴はあるが、その筋の専門家ではなく、自力で英語を学習していった人。その苦労の過程が独自の体系としてまとめられている。読本的であるが、実習書としても使える。つまり、この本を読んで口ずさめば、基本は米語発音であるが、その回数分だけ英語の発音が向上する。
 例を上げよう。発音してみてほしい。やさしいものからというと、これ、"internet"。「インターネット」と聞こえるようではダメ。「ター」の音は聞こえない。どう聞こえるかというと、「え」にアクセントを置いて、「えなね」。言われてみると、実際米人はそう発音していることに気がつくだろう。
 第二問。"Israel"。「イスラエル」は当然ダメ。「イズラエル」かな。いえいえ、「ラ」とか聞こえる時点でアウト。どう聞こえるか。「え」にアクセントを置いて「エズリアゥ」。本書はこれを「エズイウ」としている。いずれにせよ、そんな音。
 英語の発音をきびしく矯正した人なら、本書は不要かもしれないし、多少音声学を学んだ人にも疑問は残る。それでも、え?そうだったのと思えるような指摘がいくつかあるはずだ。
 興味深い主張もある。私にとって意外だったのは、フォーニックス教育を否定しているところだった。本書の説明を読むと説得力はあった。
 雑談的な話も楽しい。TOEICへの批判やコウビルドやロングマンなどを含めた辞書論なども納得できる。
 本書の、いわば日本人向け発音矯正論は、きちんとした教育メソッドにまとめ上げることができそうにも思える。だが、私の知る限り類書は見当たらない。[ http://goo.gl/RtH9O ]


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[テレビ] キティ・沖縄・アメ横
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 5月15日は沖縄の本土復帰記念日ということでその特集番組が2点ほどあった。「テレビが見つめた沖縄」を見たいと思っている。他に、イラン生まれのタレントさんが「アメ横」の紹介をするという番組にも関心をもった。一時期エスニック料理に凝って、アメ横通いをしたことがあり、懐かしく思う。

◆NHKスペシャル「追跡!世界キティ旋風のナゾ」
NHK総合5月12日(土) 午後21時00分~22時13分
 世界の情報を見ていて、ときたまあらぬところで「ハローキティ」に出会う。アラブ圏や社会主義国。いったいどうなっているのかと疑問に思っていたが、そのライセンスによるビジネスの実態を紹介する番組 [ http://goo.gl/D9ebE }

◆テレビが見つめた沖縄 アーカイブ映像からたどる本土復帰40年
Eテレ5月13日(日) 夜10時
 沖縄の本土復帰40年をテレビはどのように描いてきたか。映像を掘り出し、現地での証言を交えて構成。ちょっと偏向した内容になるのではないかと懸念するけど、気になる番組。 [ http://goo.gl/jMqhc ]

◆おふっ、「サヘル・ローズ わたしの街“アメ横”」
BS3 5月15日(火) 19:30-20:00
 イラン生まれのタレントのサヘル・ローズさんお気に入りの「アメ横」の紹介。中学時代からの親友とアメ横へ出かけるという番組。きっと大津屋とか出てくるのではないかと期待。


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[コラム] Evernoteの中国データセンター建設でささやかれること
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 Evernote(エバーノート)は、スマーフォンなど各種の装置で作成した個人データをインターネット上に保存して、いつでもどこでも参照できるようにするというサービス。日本でも人気が高い。というか、日本で人気が高くてこのビジネスが復活した。当初は、手書き文字認識技術の会社で、創設者は懐ゲーのテトリスの関係者だった。
 インターネット上に保存するといっても、実際にはデータセンターに保存する。それはどこにあるのか。利用者は気にしなくてもよい、ということになっているのだが、中国となると話は別。言うまでもなく中国語に「自由」はない、ということはないが、中国政府はいかようにも個人の自由を蹂躙できる。陳光誠氏の事件でも明らかだった。かくして、Evernoteの中国進出も問題となった。
 ネットビジネスにとって、多数の人口を抱えている中国は魅力的な市場だが、同時に「危ない」市場でもある。公正なルールはない。中国政府は身勝手に行動するので利用者の権利も守れない。妨害行動だってしちゃう。Googleが苦渋の決断で撤退したものだった。そこにがっつりEvernoteである。なんでも記憶するEvernoteは、Googleの困難を忘れている。
 Evernoteの言い分はというと、リスクはわかっているが中国だって無法なわけじゃない、心配しすぎはよくないよ、である。ツイッターやフェイスブックはこれまで中国政府にブロックされてきたけど、Evernoteは大丈夫だった。それって安心に聞こえますか?
 中国人のネット利用者はどう受け止めているか。これを話題に取り上げたBBCの記事で読んだ声だと、普通の利用者が個人上を蓄積するにはいいじゃないの、とのこと。でも、活動家とかなら蓄積したデータが安全だと過信しないほうがいいよ、という感じ。
 日本人利用者のデータが中国のデータセンターに蓄積されるということは、現状のニュースからはなさそうだが、この話題、英語圏ではいろいろ取り沙汰されている。なぜか日本では話題に上ってない。ちょっと不気味なほど。

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[コラム] オランド氏の恋人とフランスにおける少子化対策について
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 フランスの新大統領はオランド氏に決まった。彼は1954年生まれ。エリート中のエリートを養成するフランス国立行政学院を卒業した。そのエリート校で、前回の大統領選挙でサルコジと争った候補ロワイヤル氏と熱愛。二人は二男二女、四人の子をもつに至った。
 それだけ聞くと、今回の大統領選挙、前回のカミさんのカタキを今回はダンナが取ったようにも思える。が、二人は2007年に関係を解消している。
 離婚? 婚姻関係がないと離婚とは言いがたい。事実婚だったのか。そうでもない。PACS(パクス: 市民連帯協定)という婚姻に近い関係にあった。PACSは元来は同性愛者のための事実上の婚姻制度として進められたようだが、婚姻よりはゆるく、一方的に破棄できるので普及した。さて、オランドとロワイヤルどっちが破棄を言い出したか。
 きっかけは、オランドの浮気である。ロワイヤルが社会党公認の大統領候補に選出されて話題になったころ、取材に来た社会党担当の美人記者ヴァレリー・トリエルヴィエールにオランドが夢中になる。で、ロワイヤルは嫉妬。こんな女性記者は外せ、とトリエルヴィエール記者の上司に圧力をかけた。
 ロワイヤルはオランドとの関係が最悪の時期に前回サルコジと戦っていた。負けた。選挙戦が終わって、関係が終わったことを書籍「敗北の舞台裏」で明かした。オランドは今回、若い恋人とウキウキして勝利した。かくしてファーストラヴァーとなるトリエルヴィエールだが、離婚経験もあり、子供も三人とのこと。
 関係する子供、えーと、都合七人。少子化対策ってこういうものなんですね。


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[コラム] 近視が増えるアジア人の子供
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 先日ネットで「近視の原因は日光に当たる時間の短さという研究結果」という話題を見かけた。ネタ元は定評ある医学誌「ランセット」とのことなので、該当論文の概要(http://goo.gl/KJpkd)を読むと、アジア都市部の子供に見られる近視に関係するのは、「戸外で過ごす時間が減少してきたという生活習慣の変化に伴う教育のプレッシャー」とある。戸外で当たる光も関係あるが、論文の要旨としては、過剰な教育の問題とされていた。
 ネットで話題となったネタはAFP通信の記事からだった。そちらの英文を読むと、太陽光に当たることでドーパミンの産出がよくなり、これが近視を妨げるという話が強調されている。「近視の原因は日光に当たる時間の短さ」と伝言ゲームにしてしまうのはしかたがない面はありそうだ。
 この話題、BBCも拾っていたが、現代のアジア人の子供が置かれている状況に重点が置かれていた。いわく、アジアの主要都市の子供の近視は90%にも上るが、英国だと20-30%ほどという。アジアの子供たちがまだ現代的な生活様式でない時代には、近視の率は英国と同じだったという指摘もある。イギリス人に言われると、ちょっとね。
 近視を正すのに、どの程度の光が必要なのかというと、明確にはわからないが、1万から2万ルクスとルックスとのことだ。曇の日の多い英国でも満たされる光量になる。それだと、英国と日本の子供とで、それほど環境差はないようには思えるのだが。


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[コラム] 環境中の電子音が気になる
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 昨年の震災以降、緊急地震速報の電子音に敏感になった。電車の中や人混みで、例のピロリンピロリンという音が鳴ると身構えてしまう。そういうふうに反応してしまう自分もとてもいやだ。やがて来る恐怖に束縛されているような気がする。
 もちろんあの音は、そういうふうに身構えるためにある。それは理解している。でも、と思う。私が身構えたいために、私が用意した音ではない。
 気にしすぎかもしれない。緊急地震速報以外にも、この手の電子音が増えたように思うのだ。ピー。ピロン。ピロロン。注意を払え。注意を払え。電子音が環境に増えているように感じられる。誰の関心が欲しいのだろう。私?
 繰り返すけど、人によっては有益な注意喚起の音声なのはわかる。それでも電子音が環境にだだ漏れという感じがしてならない。
 このだだ漏れという感じは他にも影響しているんじゃないか。テレビのニュース速報でもそう感じる。突然、ニュース速報が出る。なにかと思うと、東電の社長に誰が決まった、ということ。それって重要なニュースなのか。30分、1時間待って聞いたら遅いニュースなんだろうか。
 これは勝負の世界なのかもしれない。聞くんだ、ジョー! メディアで勝つというのは、聴衆者の気を引いてその時間を奪うことだ。
 いろいろ工夫して気を引かせるようにするのはわからないではないが、自分については電子音が溢れてくるのは耐えがたくなっていく。音量としてはそれほどでもないけど、なにか、ごく基本的なゆるい規制というか、ルールみたいなものはできないものだろうか。
 この提言にそれほど賛同が得られるとは思っていない。この手の音に困ったなあと感じている人をあまり見かけないからだ。若い人ほどそうみたいだ。なぜ? 生まれたときからあったとかゲームで慣れたとか。
 ひとつわかったことがある。若い人たちとだらっと過ごしたときに、わかった。ケータイとかスマートフォンのメールの通知音が、しょっちゅう鳴る。彼らはいやだなという感じはなく、自然に反応している。アライグマがいる。ピロロン。芋も落ちている。ケータイを見る。小川が流れている。返信を書く。芋も洗う。自然な反応。
 機械的な音で呼び出されるというのは、私は身体の深いところから不愉快だ。歩道を歩いていて、後ろから自転車でチンとかされるのもいやだ。どけ!とか声をかけてもらうほうがまだいい。そこで人間と向き合える。


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[コラム] 豆腐餻(とうふよう)
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 沖縄の郷土料理に豆腐餻(とうふよう)というものがある。沖縄の豆腐(島豆腐)を米麹、紅麹、泡盛に漬けて発酵させ、熟成させた食品で、麹と泡盛の甘い香りに、チーズのような、たんぱく質の発酵食品らしいこってりとした味わいがある。赤い色は紅麹の色素である。苺を模したお菓子の成分に着色で紅麹を使ったものがたまにある。毒性はないとされている。ここからコレステロールを抑える薬剤の開発が始まった歴史もある。
 豆腐餻は琉球時代、明から伝わった腐乳が元になっていると言われる。京都、宇治、隠元禅師開祖の黄檗山万福寺の普茶料理にも豆腐羹がある。同種のものだろう。
 沖縄の豆腐餻は、現在中華食材屋で安価に購入できる腐乳とは味が違う。こちらは塩味の調味料だ。現在の沖縄の豆腐餻が出来たのか。あるいは腐乳のほうが変化したのか。それとも最初から豆腐餻のような腐乳があったのか。疑問になる。はっきりとはわからないが、沖縄の豆腐餻は、辻(遊郭)で饗される珍味ではなかったかと私は思っている。
 珍しい食品ということもあって自作しようとする人もいる。沖縄の豆腐を入手し、塩をして干し、麹と泡盛に漬ける。豆腐を風晒しに陰干しするというのが奇妙な、秘伝の手順のようにも思える。
 干した段階で出来るものが「るくじゅう」である。漢字は「六十」または「六条」と充てる。するとこれは、六条豆腐のことではないかと私は推察している。六条豆腐もまた豆腐に塩をまぶして陰干しにする。酒に浸したりまたは吸い物の具にしたりもする。京都六条に由来すると言われる。月山にも同種の六浄豆腐がある。
 六条豆腐はかちかちの乾物のようなものなので、沖縄の「るくじゅう」とは異なるかのようだが、そうでもない。沖縄染色工芸「紅型(びんがた)」で彫りの台座に「るくじゅう」を使うが、これがやはり固い。同じ物である。紅型は13世紀に始まる。そのころ「るくじゅう」を使用していたのだろうか。
 こうしたことから、沖縄の「るくじゅう」は六条豆腐に起源をもつ本土の文化ではないかと私は思っている。沖縄の文化は、中国的に覆われた部分を除くと本土の室町時代の文化が起源と見られるものがいくつかある。

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極東ブログ・メールマガジン 試作品 No.3 (2012.5.9)
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コメント

エッ!チャベスが死ぬかもしれないのですか。いやいや日本のメディアは国内の下らない事しか報道せず困ったものですね。というかチャベスの存在すら報道された事はないでしょうね。

投稿: ヒロ | 2012.05.09 14:28

フランスの少子化対策についてですが、全国仏家族手当金庫でも、同金庫の目的は「出産奨励」ではなく、「仕事と出産両方をかなえたいという現代の女性たちの希望に沿う」ことだと言ってます。さらに言えば、個々人の希望や状況によってフレキシブルな選択肢があること。仕事やめて子育てに専念したい人向けにももちろん援助や制度があり、途中で仕事に復帰したいという人にもきちんと制度と援助を整備。さらに、子どもを預けるのも、自宅で、託児所、保育ママ宅、おじいちゃんおばあちゃんになど、いろいろな選択肢があって、そこから、アラカルトで選べるという細やかさがポイントとか。
「出産奨励」ではなく、「お金も稼ぎたい、キャリアも欲しい、でも、子どもも生んで育てたい」、という現代女性の「欲張りな」希望に沿う政策を行っていたら、結果がついてきた、ということですと。日本政府も考え方を見習うべきでは?
オランドさんたちの周辺はまさに好例ですよね。

投稿: 通りすがり | 2012.05.09 17:34

いつもお疲れ様です。常日頃愛読しています。メルマガ拝読。確かに、多くのトピックについて短いコメント、そのうち特定のものについて突っ込んだ論評、というスタイルはとても好ましいと思います。私ならたとえ有料であっても読みたい、とすら思いますが、まあそうでなくても、多くの読者の便宜にかなっているんじゃないでしょうか。

投稿: KYY | 2012.05.10 03:40

私もあの地震速報のぴろぴろ音だけは何とかしてほしいと思う一人です。しかも一回の地震で何回もなるし、大きめの音に設定している人が多いので恐怖倍増で却って体が動かなくなります。

投稿: Tammy | 2012.05.10 10:24

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