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2012.04.05

マリ共和国で起きていること

 西アフリカのマリ共和国で3月22日、軍部のアマドゥ・サノゴ大尉が率いる兵士らによってクーデターが発生した。「民主主義と国家の再建のための国民委員会」(CNRDR: the National Committee for the Return of Democracy and the Restoration of the State)と称する兵士らは首都バマコの大統領府を攻撃し、国営テレビも占領した。

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外務省
 CNRDRのコナレ報道官は国営テレビを通して「マリ国軍は、現政権にテロと有効に戦う能力がないことを考慮し、憲法上の権利を行使して他の治安部隊とともに無能なトゥーレ政権に終止符を打つ責任を果たすことを決意した」と述べた(参照)。
 CNRDRの発表からうかがえることだが、北部独立を掲げるトゥアレグ人勢力との戦闘にあたる軍部は、トゥーレ大統領政権の対応に業を煮やしていたのだった。なお、トゥーレ大統領も将校として1991年に当時のトラオレ独裁政権をクーデターで倒したが2002年に選挙で大統領となり、2007年に再選した。今年に退任する予定だった。クーデター時には行方不明だったが、首都バマコに潜伏しているらしい(参照)。
 クーデーターの混乱に乗じて、トゥアレグ人勢力は攻勢を強め、北部ガオ州の州都ガオを掌握。さらに世界遺産の都市であるトンブクトゥ制圧し、北部の主要都市を掌握した。
 国連安全保障理事会は4月4日、クーデターを起こした軍兵士を非難する議長声明を出したが(参照)、それ以前にクーデターによる政府の弱体化が決定的となった。
 攻勢を強めるトゥアレグ人勢力だが、北部に「アザワド」という国家の独立を求める遊牧民トゥアレグ人の武装組織「アザワド国民解放運動(MNLA: National Movement for the Liberation of Azawad)と、アルカイダ系イスラム過激派「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」のニ系があり(参照)、トンブクトゥではアンサール・ディーンがMNLAを追い出して支配下に置いた(参照)。ごく簡単に言えば、マリ共和国はアルカイダの新しい拠点となりかねない事態となったのである。
 なぜこのような事態になったのか。これも簡単にいえば、カダフィのリビアを西側が潰したことの余波だった。リビアのカダフィ大佐の傭兵が大量の武器をもってトゥアレグ人勢力に荷担したのである。この状況は、さらに同じくリビア南に接するニジェールとチャドに伝搬する可能性がある。
 カダフィのリビアを潰せばこうなることは西側にわかっていなかったのか、特に米国は。いや、わかっていたのだった。フィナンシャルタイムズ「Libyan aftershocks(リビアの余震)」(参照)より。

This is just the scenario US-led support to the state was meant to avert. Mali is a vast, porous and ethnically heterogenous territory.

この事態は、米国指導によるこの国家(マリ共和国)への支援で回避しようとしていたシナリオそのものであった。マリ共和国は広大で、外部から侵入しやすく、多様な民族で構成されている領土である。


 米国はマリ共和国の持つ脆弱性を理解し支援していたのだが、反面、カダフィのリビア崩壊に実質的に関与してマリ共和国を苦境に追い詰めた。ざっと見れば、またも米国の失態、つまりオバマ政権のヘマとも言えるし、この事態がわかっていたから、表向きはオバマ米政権はカダフィのリビア攻勢に関与することに億劫な素振りを見せていたのかもしれない。いずれにせよ、予想されたこの事態を看過していたことには変わりない。
 であれば、現況についても米国が実質的に強力に関わるしかないだろうが、またしても宗主国であったフランスとの関係の調整が必要になる。オバマさんもサルコジさんも、今年は選挙の年であって、大きな動きは取りにくいし、アルカイダはメドベージェフさんのように「選挙の後まで待ってくれ」とこっそり言って通じる相手でもない。
 やっかいなことになったが、やっかいなことはマリ共和国だけの問題でもない。世界の各種の問題という視点で見れば、他が深刻すぎてマリ共和国の崩壊は比較的重要ではない位置に落ち着くのかもしれない。
 
 

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コメント

いつも興味深い記事、ありがとうございます。冒頭の部分、「南アフリカのマリ共和国」とありますが、マリは西アフリカです。お気を付け下さい。finalventさんのご関心が低いからなのでしょうか?いつも楽しみに読ませていただいておりますが、残念です。

投稿: | 2012.04.06 10:08

ご指摘ありがとうございます。え?と思ったらそう書いてました。誤解なきよう地図も加えました。アフリカについては他エントリーもご参照ください。

投稿: finalvent | 2012.04.06 10:28

私などは感覚的にも北アフリカの地中海寄り、南アフリカくらいしかピンと来ません。地域大国リビアの崩壊が近隣に波及するのは当たり前のことなのに、考えもしませんでした。本稿を読み、アフリカがバルカン化(中東化)してしまったら? と考えてしまいました。

投稿: ボンボン太郎 | 2012.04.07 08:50

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