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2012.02.02

国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)ウォルフガング・ワイス委員長の現時点でのコメント

 1日付けのロイター(英文)の科学記事で、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のウォルフガング・ワイス委員長による、興味深いともいえるコメントを見かけたので、日本でどのように報道されているか、関連記事を探してみたが見つからなかった。日本人にしてみるとそれほどニュース価値の高い話でもないのかもしれないが、日本メディアでこぼした話を拾っておくのもブログの役割かもしれないし、気になるといえば気になる話題でもあるので触れておきたい。
 前段となる話題は探すと、U.S.FrontLineというサイトに共同ソースとして掲載されていた。「住民の放射線影響を調査 専門家会議、福島事故で」(参照)より。


 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質が、同原発周辺の住民らの健康にどのような影響を与えたかを調査する各国の専門家による会議が30日、ウィーンで始まった。5月の国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)定例会議に中間報告を、来年の国連総会に最終報告をそれぞれ提出する。
 会議は5日間で、約60人が参加。日本が提供した放射線量などの測定データを基に調査する。議長を務める同委員会のワイス委員長は「データについて、さらに着目すべき点を見つけたい。パズルのピースを集めるような作業だ」と述べた。

 会議の名称はこの報道には含まれていないが、この会議の中間報告に含まれることになる、福島原発事故についての周辺住民への健康影響評価が、いずれ国連としての公式な見解に繋がるのではないだろうか。
 該当会議は現在も進行中なので、5日間の日程後には日本でも関連報道が出てくるかもしれない。
 だがその前に昨日付でウォルフガング・ワイス委員長のコメントがロイターで報道されていた。「No big Fukushima health impact seen: U.N. body chairman(国連機関の議長によれば、福島では大きな健康影響は見られない)」(参照)である。

The health impact of last year's Fukushima nuclear disaster in Japan appears relatively small thanks partly to prompt evacuations, the chairman of a U.N. scientific body investigating the effects of radiation said on Tuesday.

日本の福島原発災害による健康への影響は、機敏な避難もあってか、比較的小さいと、該当放射線影響を調査している国連機関議長は火曜日に述べた。



"As far as the doses we have seen from the screening of the population ... they are very low," Weiss told Reuters. This was partly "due to the rapid evacuation and this worked very well."

「該当者のスクリーニングから私たちが見た用量に限定すれば、その用量は非常に少ない」とワイス委員長はロイターに語った。理由の一端は「迅速な避難と避難が良好だったことによる」とも語った。



"What we have seen in Chernobyl - people were dying from huge, high exposures, some of the workers were dying very soon - nothing along these lines has been reported so far (in Japan)," he said. "Up to now there were no acute immediate effects observed."

「私たちがチェルノブイリで見てきたものは、人々が大量で高い被曝によって死んでいったことや、短期間に死んだ作業員がいたことであったが、(日本では)これまで報告されたところからはそれに類したものはない。現在までのところ、急性の影響は報告されていない」と彼は語った。


 国連放射線影響科学委員会ワイス委員長のこれらのコメントは、日本から提出された現状までのデータを元にしているので、その点では特段の違和感はない。が、国連の権威有る委員会の委員長の談話としてロイター報道になっていることで、他国にもこの認識が伝わることだろう。なお、国連放射線影響科学委員会によるチェルノブイリ事故についての放射線の影響評価はすでに公表されていている(参照)。
 該当のロイター報道だが、ワイス委員長による次のコメントは別の意味で気になった。

"We are putting together a jigsaw puzzle, evaluating the exposures of the general public, of workers, and radiation effects, and looking for the missing pieces," Weiss said.

「私たちは、一般市民と作業員の被曝と放射線の影響の評価で、見つからないピースを探してはジグソーパズルを組み立てているところだ」と彼は語った。


 事故の影響が現状では比較的軽微と見ているワイス委員長ではあるが、当然のことながらまだ今回の事故による影響の全貌が明らかになったわけではないという限定についてここで言及している。
 気になったのは、しかし、「ジグソーパズル」の比喩である。この比喩は先ほどの共同での、ワイス委員長談話にも重なる。もしかすると、共同とロイターとは同じソースの記事なのかもしれない。だとすれば、共同はロイター報道がメインとした、影響の少なさという点を落としたことになる。
 ワイス委員長の今回の発言だが、昨年4月6日時点のロイター報道「福島原発事故、スリーマイルより「はるかに深刻」=国連委」(参照)を読み返すと大きな違いはないことに気がつく。参考までに引用してしておこう。

 [ウィーン 6日 ロイター] 国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のウォルフガング・ワイス委員長は6日、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の事故について、現時点の情報では、人体に深刻な被害をもたらすとは考えられないと語った。
 ワイス委員長は、環境への影響という観点から、この事故が1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故より環境への影響が小さいものの、1979年の米スリーマイルアイランド原発事故に比べると、環境への影響が「はるかに深刻」との見方を示した。
 一方、福島での事故による健康への被害については、「現在分かっていることからすると、(放射能)レベルが低いため皆無だ。食物においても、年間1ミリシーベルトや5ミリシーベルトなどと話題にされているが、この程度では健康への大きな影響はない」と説明。

 健康面での影響についてのワイス委員長の認識は、新しいデータが提出されても、昨年の4月時点からほとんど変化がなかったと見てよいのだろう。もっとも、正式な報告は先にも触れたように来年のことになる。
 
 

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