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2012.02.07

アフガニスタン戦争、西側諸国敗戦のお知らせ

 公式には言われていないし、非公式に言うのは少し早いという印象もないわけではないだが、全体動向からしてもう確定と見てよいだろう、「アフガニスタン戦争、西側諸国敗戦のお知らせ」である。負けましたね。
 大本営風味の西側報道を見ていても、おや?と疑問に思うような話が増えてきた。たとえば4日付けNHK「アフガン 民間犠牲者が過去最悪に」(参照)では、表題通り最悪の現状を告げている。


 アフガニスタンで去年1年間に戦闘やテロに巻き込まれて死亡した民間人の数は3000人を超え、2001年にアメリカが軍事作戦を始めて以来最悪となりました。
 これは、国連アフガニスタン支援団が4日発表したもので、アフガニスタンで去年1年間に戦闘やテロに巻き込まれて死亡した民間人は3021人で、前の年に比べて231人増えました。2001年の同時多発テロ事件を受けてアメリカがアフガニスタンで軍事作戦を始めて以来、最悪の犠牲者の数です。

 どうして最悪の事態になったのか。

 全体の77%に当たる2332人が、タリバンなどの反政府武装勢力によるテロや攻撃が原因で死亡し、このうち、道路などに仕掛けられた爆弾が女性や子どもなど最も多くの人の命を奪ったと国連は指摘しています。
 一方、アフガニスタンの治安部隊や国際部隊の攻撃に巻き込まれて死亡した民間人の数は全体の14%に当たる410人で、前の年より若干減ったものの、空爆による犠牲者が増えているとして、国際部隊に対して対策を取るよう強く求めています。

 タリバンが弱体化したようすもないことや、惨状がすでに昨年から続いていたことがわかる。ではどうするのか、という先の暗示も報道にある。

 アフガニスタン情勢を巡っては、アメリカ政府が水面下でタリバンと接触を重ね、和平に向けた糸口を探ろうとしていますが、タリバンは対話に応じる姿勢を示す一方で、アフガニスタン国内で依然テロや攻撃を繰り返していて、今回の国連の報告は治安が一段と悪化している現状を浮き彫りにしています。

 この話だが、常識をもって読み返すと、あるいは太平洋戦争末期の日本を例として思い出してもわかることだが、「和平に向けた糸口を探ろう」という「和平」とは「終戦協定」という意味である。タリバンが優勢なので、敗戦側の西側諸国が終戦の条件を探しているというのが現状である。つまり西側諸国はアフガニスタン戦争で敗北したのである。
 このことは先日の、アフガニスタン駐留海兵隊たちがタリバン戦闘員の遺体に放尿する映像の流出事件の後日経過からも顕著だった。13日付け毎日新聞「アフガン:遺体に放尿 米高官、相次いで批判 和平交渉への悪影響懸念」(参照)より。

アフガニスタン駐留米軍兵士とみられる男たちが旧支配勢力タリバン戦闘員の遺体に放尿する映像が流出した問題で、オバマ米政権の高官から12日、兵士らの行為を非難する発言が相次いだ。アフガン安定化に向けタリバンとの和平交渉再開を準備している米政権は、反米感情の悪化に危機感を強めている。

 重要なことは映像の内容ではなく、「タリバンとの和平交渉再開を準備している米政権」という背景で流出したことだった。
 もちろん映像内容からはタリバンに対する米国の侮蔑と受け止められてもしかたがないので、報道時にはタリバンと米国がさらに緊張するかとも見られていた。しかし、タリバンはそのように反応はしなかった。それどころかタリバンと米国の交渉はこの機に前進した。同日毎日新聞「アフガン:遺体に放尿「罪のほんの一例」 タリバン「米対話に影響せず」」(参照)より。

 アフガニスタン駐留米軍の複数の兵士が旧支配勢力タリバンの戦闘員の遺体に小便をかける映像が流出した問題について、タリバンのムジャヒド報道官は12日、「米兵が過去10年間にアフガン人に対して犯してきた罪のほんの一例に過ぎない」と切り捨て、近く再開が伝えられている米国との対話には影響しないとの見解を示した。AFP通信などが伝えた。

 するとあの映像の流出元はタリバン側であるとは想定しづらいし、交渉にあたっている部分の米政府側でもないだろう。いずれにせよ流出をしかけた勢力が失敗したと見てよい。
 その後、タリバンと米国の交渉は前進した。23日付けNHK「米 タリバンとの交渉働きかけへ」(参照)では、タリバンと米国の交渉窓口の成立を伝えている。

 アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが中東のカタールに窓口となる事務所を開設する見通しとなったことを受け、アメリカ政府の高官は、アフガニスタン政府とタリバンとの和平交渉につながるよう働きかけていく考えを明らかにしました。
 アフガニスタンを訪れているアメリカのグロスマン特別代表は、カルザイ大統領らと会談したあと22日、記者会見に臨みました。
 この中で、グロスマン特別代表は「アメリカとアフガニスタンの両政府は和平プロセスを進めていく」と述べ、反政府武装勢力タリバンとの対話を通じてアフガニスタンの和平を目指す立場を改めて示しました。
 そのうえで、アメリカとタリバンとの水面下での対話の結果、タリバンがカタールに事務所を開設する見通しになったことについて、「事務所の開設は和平に向けたアフガニスタン人どうしの対話の促進につながらなければならない」と述べ、アフガニスタン政府とタリバンとの和平交渉につながるようアメリカとして働きかけていく考えを示しました。
 一方で、タリバン側が求めているアメリカ軍のグアンタナモ収容所に収容されている幹部の釈放について、グロスマン特別代表は「まだ決まっていない」と述べ、タリバン側の要求に応じるかどうかは、明らかにしませんでした。

 具体的な協議も開始されたとの報道もある。30日付けAFP「タリバンと米国、和平交渉に向けてカタールで協議」(参照)より。

 アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)が、10年におよぶ米国との戦争を終結する和平交渉に向けた米国側との協議を、カタールで始めたことが明らかになった。
 元タリバン幹部のマウラビ・カラムジン(Mawlavi Qalamuddin)氏が29日、AFPに語ったところによると、タリバンと米国側は交渉の前段階としての信頼醸成を図っており、このプロセスにはしばらく時間がかかるという。

 この報道はタリバン側からは否定されているようだ(参照)。
 どたばたと実質的な終戦協定へ向けた動きが進んだのは、北大西洋条約機構(NATO)が、それぞれの国内事情から白旗を掲げていた要因が大きい。簡単にいえば、フランスも米国がどちらも今年の大統領選で、アフガニスタン戦争の戦死者累積に耐えきれなくなってきた。
 4日付けNHK「NATO アフガン撤退方針を確認」(参照)より。

 NATOの国防相会議は2日、ブリュッセルにある本部で始まり、初日は、アフガニスタン情勢について協議が行われました。NATO加盟国は、再来年2014年末までにすべての治安権限をアフガニスタン側に移譲することで合意していましたが、フランスのサルコジ大統領が27日、計画を1年前倒しして来年2013年末までに部隊を撤退させる方針を示し、アメリカのパネッタ国防長官も1日、来年半ばにも軍事作戦を終了させる方針を示しました。

 同報道ではそれでも、当初どおり「2014年末までに権限移譲を完了」させるという方針は堅持されたが、実際の軍事力の裏付けはないに等しいことはパネッタ国防長官が言明している(参照)。
 さらにこの文脈で1日、BBCがNATO内部報告書のリークを行った(参照参照)。リークの重要点は、パキスタン3軍統合情報部(ISI)がタリバンを支援しているというものだ。もっともこの指摘はすでに国際的に想定されていたので驚きで迎えられたというものでもないが、パキスタンが問題に深く関わっている以上、アフガニスタンの問題として切り離し、従来のようにな軍事態勢で解決できるものでもないことも明らかになった。
 アフガニスタン戦争は「オバマの戦争」(参照)でもあった。その失態の兆候はマクリスタル司令官の事実上の更迭で暗示されていた(参照)。
 イラク戦争もアフガニスタン戦争も開始したのはブッシュ元大統領であり、日本のジャーナリズムやネットの議論では、戦争を開始させたブッシュが諸悪の根源のように言われている。しかし、第一期のオバマ政権時代を振り返るなら、イラクを再び混乱に落とし込み、アフガニスタン戦争を敗戦に導いたのは、オバマ大統領ではないのかと思われるが、そうした議論は見かけない。
 
 

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コメント

提示された情報から、最後がなんでそうつながるのかが分からん。
イラクもアフガンも、ブッシュが戦争はじめた当初から言われていた通りになっただけじゃん(「終戦」後にfinalventさんが紹介していた統治の楽観論とは逆に)、というのを覆す話にはなってないのでは。
なんつーかオバマはそもそも始めっから徹頭徹尾敗戦処理をやっているわけですよね。戦争だめでした、撤退します、という公約で当選したわけだから。

投稿: 欣 | 2012.02.08 08:45

アメリカも、この汚職と覇権争いにまみれた部族国家(アフガニスタンやイラク)が、異常に従順だった敗戦国の日本とは根本的に違うということが身に沁みたと思います。放尿ビデオに対するタリバンの反応は、何となく納得できるものがあります。彼らだって、違う方法で相当な非道を日常的にしているわけですから、死体に放尿くらいでは驚かないのでは?特に自国の女性や子供に対する暴力は惨いものがあります。私は心から「あーこんな国に生まれなくて良かった」と思います。

投稿: みなみ | 2012.02.10 18:46

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