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2012.02.10

バーレーン、2012年2月

 深刻化するシリアのデモ弾圧の中止を求める安保理決議案が、拒否権を持つ常任理事国の二国、ロシアと中国によって否決された。これで国連としてのシリア対応は不可能になり、有志連合を形成する構想が現在模索されている(参照)。有志連合とはいっても、当面の目的は食糧や医薬品などの人道支援となり、軍事的な介入にならないだろう。
 国家による深刻なデモ弾圧という点ではシリアと同じで、しかも日本ではほとんどニュースとして見かけないのが、バーレーンである。日本語でバーレーン関連のニュースを検索するとF1レースやサッカーが多く、デモを弾圧しているニュースはほとんど見当たらない。
 昨年は日本でも、「アラブの春」の一環として報道されたバーレーンの争乱(参照)だったが、その後どうなったか。二つの面で深刻化している。
 現状だが、弾圧による最初の死者を出した昨年2月14日の「怒りの日」(参照)から一周年を記念し、デモ活動が盛り上がっている(参照)。アルジャジーラの報道もYouTubeで見ることができる。

 日本の外務省もこの現状を熟知していて、9日付け「バーレーン:2月14日に向けた治安情勢(注意喚起)」(参照)を出している。


2月14日は,2011年の反政府大規模デモ活動の発生から,ちょうど1年を迎えます。同日の前後には,シーア派の反政府政治団体である「ウィファーク」がバーレーン当局の許可を得てデモ集会を予定しています。また,非合法妨害活動を行っているグループも,当日に向けて様々な反政府活動を呼び掛けており,特に「旧真珠広場」に向かってデモ行進を行う可能性もあり,注意が必要です。
 過激なグループが,タイヤを燃やす等の非合法妨害活動が各地で活発化する可能性もあり,デモ集会が行われる地区周辺では,一時的に道路封鎖されたり,交通渋滞が発生するおそれがある他,デモ参加者と治安部隊との間で小競り合いが発生することも予想されます。

 ただし、外務省の情報に「当局は治安維持活動を強化させており,デモ等が2011年のような大きな混乱に繋がる可能性は低いと思われます」とあるように、大きな混乱は想定されていない。逆にいえば、それだけ弾圧が強い状態にある。
 つまり深刻化の一面は、現状を含めバーレーン政府によるデモ弾圧緩和の兆候が見られないことだ。
 この点ではシリアの現状と同じだと言える。また、少数が多数を弾圧しているという構図もシリアとバーレーンは同じである。
 ではなぜシリア問題は国際問題となり、バーレーン問題はさほど話題にならないのか。また日本ではさしたる報道もないのか。理由の一端は、弾圧の規模があるだろう。シリアでは弾圧による死者が7000人を超えているが、バーレーンでは40人ほどと見られてる。
 深刻化の別面は、米国を筆頭に西側社会およびアラブ連合のダブルスタンダード(ダブスタ)が露呈してきていることだ。単純な話、なぜシリアの反抗勢力に西側が荷担し、バーレーンのそれにはないのか。
 これは実際的にはごく簡単な理由である。バーレーンには米国の第五艦隊司令部(ホルムズ海峡への対応が含まれる)があること、弾圧している少数派はサウジアラビアと関係が深く、弾圧される多数派が親イランのシーア派が多いことだ。単純に見れば、西側諸国は親イラン派のシリア現政権には厳しくあたり、親イラン派のバーレーンのデモには目をつぶっているという状態である。
 しかし、「アラブの春」が名目上であれ民主化という看板を添えていることや米国を含め西側のシリア政府への批判が人道を名目にしているのなら、現状のバーレーンへの対応は見事なダブスタにしかならない。9日ロサンゼルスタイムズ「Bahrain should stop prosecuting protesters, U.S. envoy says」(参照)もそう見ていた。

Bahrain is a sensitive spot for the United States: It has long been an ally against Iran, but police crackdowns there have spurred charges that the U.S. has a double standard on human rights.

バーレーンは米国にとってセンシティブな場所である。そこは、対イランの同盟国だが、米国が人権についてダブルスタンダードを持っていると非難されてきた警察弾圧がある。


 米国がこの状況の認識をまったく持っていないということではない。9日付けでマイケル・ポスナー米国国務次官補は人道的見地からバーレーンへの非難を述べていた(参照)。また、1月27日米国国務省声明(参照)では、バーレーンが改革されるまで米国による武器売却を控えるとしている。

Question: Has the State Department sent a revised Bahrain arms sale package to Congress?

質問: バーレーン向け武器売却包括案を議会に送ったか?

Answer: We are maintaining a pause on most security assistance for Bahrain pending further progress on reform.

回答: 改革のさらなる進展まで、私たちは、バーレーン向けの安全保障援助の大半を休止している。


 この質疑には、オバマ政権らしいダブスタの背景がある。7日付けワシントンポスト「U.S. must bring pressure to bear on Bahrain」(参照)が指摘していた。

The United States has exceptional influence in Bahrain, in part because the U.S. Navy’s 5th Fleet is based there. But the Obama administration has mostly refrained from using that influence. It tried to go forward with a $53 million arms sales package last year until it met stiff resistance in Congress.

米国はバーレーンに例外的な影響力を持っている。一つには、米国がそこに第五艦隊を置いているからだ。しかし、オバマ政権はたいていの場合、その影響力の行使を控えてきた。この政権は昨年、議会での強固な抵抗に遭うまで、5300万ドルの武器販売を推進しようとしていた。


 オバマ政権は、バーレーンがこうした状況にありながら、議会の抵抗がなければバーレーンに向けて武器販売を実施しようとしていたのだった。それが「休止」しているという意味である。
 ということは、議会抵抗前にもオバマ政権は武器売却を進めていたということでもあった。このことは、先の質疑にこう続くことからもわかる。

During the last two weeks, representatives from the State Department and Department of Defense briefed appropriate Congressional staff on our intention to release some previously notified equipment needed for Bahrain’s external defense and support of Fifth Fleet operations.

この二週間、国務省と国防総省からの代表者は適切な議会スタッフに向けて、バーレーンの対外防衛と第五艦隊支援に必要であるとして、事前通知した備品提供についての私たちの意図の概要説明をした。



This isn’t a new sale nor are we using a legal loophole. The items that we briefed to Congress were notified and cleared by the Hill previously or are not large enough to require Congressional notification.

これは新規販売ではないし、私たちは法の抜け穴も使っていない。私たちが議会に概要説明した品目は事前に議会に届けて問題なしとされたものか、あるいは議会通知を要するほど大きくはなかったものである。


 つまり、共和党多数の議会から突き上げがあってから、民主党から出たオバマ大統領の政権はバーレーンへの武器売却を見直した。また議会に指摘されるまでは、違法ではないということで、昨年来バーレーンでのデモ弾圧下でもこっそりと開始していたのだった。
 繰り返すが、デモを弾圧しているバーレーンへ、共和党多数の議会が抵抗を表明しなければ、民主党オバマ大統領の政権はこっそりと武器売却を続けていた。
 米国はダブスタだが、民主党のオバマ大統領の政権のダブスタには見事なものがある。
 
 

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