ボードゲーム 「カルカソンヌ」日本語版
「カルカソンヌ」も今となっては古典的なドイツボードゲームである。2001年に「ドイツ年間ゲーム大賞」と「ドイツゲーム大賞」を受賞した。「カタンの開発者たち」に次ぐエポック・メーキングな作品でもある。非常に面白いし、私の印象だが、ゲームとして数学的に美しい。特にiPadへに移植された版は、音楽、ビジュアル、操作性においても、ワンダホ!の美しさである。
![]() カルカソンヌ 日本語版 |
ローマ時代にすでにこの地に要塞都市が建設されていた。その後、4世紀のフン族移動に圧迫された西ゴート族(Visigoth)が5世紀にこの地に侵入し、この地をセプティマニアとした。
453年にテオドリック1世が、現在のカルカソンヌに西ゴート王国の北部の前線の要塞都市を建設した。508年にパリを首都と定めたフランク国王クロヴィス1世が同年、この要塞都市を攻撃したが不落であった。
725年、バルセロナから侵攻してきたサラセン帝国がこの地を制圧したが、ピピン3世(小ピピン)は759年に奪還した。以降カロリング朝の下、ベローがこの地の領主(伯爵)となり、ベロニド朝としてこの地に君臨する。
カルカソンヌという地名は12世紀に作成された伝説で説明されることがある。その一例よると、サラセン帝国統治下の時代、カール大帝(シャルルマーニュ)はこの要塞都市を攻め、都市の王バラアチを倒したが、難攻不落の要塞はその王妃カルカス引き継つがれ籠城戦が続いた。カール大帝は要塞の食糧が切れることを期して持久戦に持ち込んだ。5年にわたる包囲戦で要塞内の食糧が枯渇したが、カルカスはそこで一計を案じ、最後に残る小麦で肥えさせた豚を一頭、城外のカール大帝軍に投げつけた。これを見て大帝は城内にはまだ食糧があると思い込み、撤退を決意する。かくしてカルカスは勝利の鐘を打ち鳴らしたという。これで「カルカス(Carcas)が鳴らす(sonne)」で「カルカソンヌ」という地名となったというのである。駄洒落である。伝説には他にカラカスをキリスト教徒に擬すものもあるようだ。実際の名称の由来については「小城」を表す"Castellone"の音変化と見られている。
近代に復元された城壁都市部は1997年にユネスコ世界遺産として登録された。以降国際的に著名な観光地となり、ボードゲームもそれにあやかったものではないかと思う。
ゲームはというと、プレイヤーが七並べよろしく、また坊主めくりよろしく、正方形の地形の厚紙タイルを捲ってはルールに従って敷き詰め並べて、カルカソンヌ地方の地形を形成し、その地形の道や都市などに専有の印を置いて得点を得るというものだ。
得点は、道が繋がることや、城壁都市や修道院を造ること、さらに草原を得ることがある。取得部分には各プレーヤーの駒を置き、得点完成時には印を戻す。各プレーヤーは7つの駒を持つ。タイルが全部敷かれたら終わり。得点は、クリベッジから模倣されたと思われる得点ボードで表現される。
ルールは「カタンの開拓者たち」などにくらべると易しいともいえるし、一度ルールを理解すれば小学生低学年でもできる。ただそれでも、ルールを読んで理解するのは難しいかもしれない。特に、「草原ルール」は囲碁にも似た雰囲気があり、最終になるまで得点が見えないことが多い。このため最初にするときや、初心者や低学年の子供を含めるときは、「草原ルールは、なしにする」ということもある。
カルカソンヌには、追加キットがいろいろあるが、私はやったことがない。だが、追加キットとはやや異なる別バージョンの「運命の輪」は持っていて、たまにする。こちらは日本語化されてないらしく、ドイツ語版を購入した。地形が複雑で意外な結果になるというのと、ボード中央の「運命の輪」がゲームに加点や減点の要素を追加する分、複雑になる。
この「運命の輪」だが、輪を回す役割をするのがピンク色の豚の駒なので、さてはカルカソンヌの伝説の豚を模しているのかとも思うが、そうでもなさそうだ。というのも、「運命の輪」のドイツ語版には同タイトルのヘレネ・ルイーズ・コペルという作家のペーパーバック小説が同梱されているが、伝説をノベライズしたものではなさそうだ。これは別途「Das Gold von Carcassonne」(参照)として出版されている小説と同じものらしい。
私の購入した版には同梱されていなかったし、同梱されていてもドイツ語の小説は読めない。調べてみると物語は、13世紀を舞台とした歴史恋愛小説のようだ。まあ、修道院なども重要な要素になるのだから、その時代だろうとは思う。
カルカソンヌは、カタリ派とも関係深く、その要素も物語に含まれているようだ。いや、それはそれで読みたいぞ、その小説。
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