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2012.01.14

がんばれ、野田ちゃん改造内閣

 野田佳彦首相が13日、改造内閣を発足させた。理由は、参議院で問責決議を受けた一川保夫防衛相と山岡賢次国家公安委員長をすげ替えないと、野党と協調して国会運営ができないからだが、つまり政局がらみということだ。一川さんは防衛相には素人すぎて使えないし、山岡さんは合法とはいえマルチ商法推進みたいで困り者。小沢派と輿石東(75)氏へのメンツを立てるという党内人事もわからないではなが、普通に考えて人選ミスだった。ここは穏便に二氏をすげ替えたほうがいい(参照)。だから、すげ替え自体には違和感はない。
 何にすげ替えたか。国家公安委員長に松原仁副国土交通相をすげ替えたのは悪くないが、防衛相に田中直紀・民主党総務委員長は、まいった。仲井真弘多沖縄県知事が「田中真紀子さんは有名な方だから知っている。ご主人でしょう?」「今は民主党にいたんですか。確か…お名前しか知らないんですよ」(参照)と言ったが頷けてしまう。
 田中直紀氏は、田中角栄の娘・田中真紀子の旦那さんで、奥さんが自民党から民主党に鞍替えしたあとで追って自民党から民主党に鞍替えした人、というくらいしか普通知られていない。経歴を見てると外交防衛委員長の経験はあるが、素人去ってまた素人という印象が強い。輿石東(75)氏が推したのだろうが、あれだなあ、これはこれで強い意思表示だ。沖縄問題、非吾事。それ以外に、次期主力戦闘機、南スーダン国連平和維持活動派遣、武器輸出三原則緩和といった話題で田中氏は素人力を発揮しちゃうんだろうな。
 一川・山岡両氏をすっこめる程度で留めておけばいいのに、他もいじった。小沢派や輿石東(75)氏への手前か、単純に野田ちゃん本人の意気込みなのか、どうせいじるなら小宮山洋子厚生労働相もすげ替えて舛添さんを三顧の礼で招けばいいのに。
 文科相は中川正春氏から平野博文国対委員長。これは、ようするに使えない平野博文国対委員長のすげ替えと言ってもいいだろう。法相は平岡秀夫氏から小川敏夫・同党参院幹事長。法相のすげ替えはオウム事件の死刑執行がらみもあるのだろうか。
 改造内閣の目玉は、岡田克也前幹事長の副総理兼社会保障と税の一体改革担当相への起用だった。簡単にいえば、野田ちゃん内閣の消費税増税への意気込みを示すということ。報道を見るに岡田さんもう増税にお熱を上げている。
 野田ちゃん改造内閣は、消費税増税内閣と言ってよいだろうし、本当にそれに突入するなら野田ちゃんには力量不足なので、実質は岡田内閣ということになるしかないだろう。つまり、岡田さんお得意の熱血空回りが始まることになるのか。
 鳩山さんといい菅さんといい、そして野田ちゃんまでも自滅にまっしぐらというのは、なんとかならないのか。受け皿の野党の自民党がしっかりしているなら、さっさと民主党政権は終了にしてもよいかが、自民党もぼろぼろになっていて、消費税でもTPP問題でも政策の統一はできない。そこで政界再編成を望むという期待も出て来てはいるのだろうが、それって民主党の政権交代のときの期待と同じことになるだろう。
 再考するに、一川・山岡両氏を事実上更迭したのはよいとして、消費税増税に意気込んでしまったマイナスをどうしたらいいのかということだ。
 だが、野田ちゃん首相がいくらがんばっても、衆院解散前に消費税増税はできないだろう。そう考えてみると、逆に今回の改造内閣の意図は、衆院解散に向けた土台作りと見てもよいのかもしれない。あたかも日本の課題は「税と社会保障の一体改革」と天下布武の旗を揚げて奮迅する絵が描ければいいということだろう。それはありかもしれない。
 すると実際に天下布武の旗の下での決戦は、(1)国会議員定数削減、(2)公務員給与削減、(3)子ども手当を自民党時代に戻してやりなおし、(3)郵政改革、といった分野になる。
 率直にいうと、復興の公共投資を拡大し日銀に復興国債買い取りさせ円安に誘導するほうを最優先にするほうがいいと思うけど(参照)、現下の情勢ではまったく不可能に見える。となれば、先の4分野とかについて、自民党を巻き込んで民主党がぼろぼろになるまで戦うというのは悪くないのかもしれない。
 国会議員定数削減は、まず議員から身を切るということで前提の前提だし、公務員給与削減は実際にはさしたる意味がないけど、こういう危機のときは、「日暮硯」(参照)や「二宮翁夜話」(参照)、はたまた上杉鷹山の経営学(参照)ではないけど、お役人様が民衆とともに困苦に耐えるパフォーマンスをしないと日本はどうにもならないものだ。
 子ども手当を自民党時代に戻してやりなおす件については、実際には小手先の対応を積み重ねていくしかないし、郵政改革は小泉改革の状態に戻すにはもう手遅れなので、最悪の事態を避ける手は必要だが、それも早急にというものでもないだろう。
 麻生内閣路線のような成長戦略は取れないが、国会議員定数削減と公務員給与削減ならあと二年でなんとかなるんじゃないか。がんばれ、野田ちゃん改造内閣。
 
 

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コメント

シニカル杉といふ批判はあろーかと思われまするが、ゆってることはグーではないのかえ?永田町もマスメディアも怪文書化した付けぢゃい。

投稿: | 2012.01.15 00:33

民主党政権が最重要課題として取り組まねばならない基地問題を扱うポストに2代続けて比較的軽い人物をつけることの異常さは強調されてよいと思います。総理が自分でやるので、あえて意のままになる軽量の人をつけたというわけでもないようですし。あるいはもうこの問題は諦めて惰性に任せるという意思表示?ヒラ議員や副大臣にはもう少しマシな人材がいるだけに、参院枠といっても彼をあえてこのポストにもってきたことには謎が大きいです。

他の主要閣僚も確かに軽いですが、一応若手中堅でそれなりに嘱望されている人が多いですからね。

投稿: kky | 2012.01.16 02:30

早速、防衛大臣の角栄さんのお婿さんが「犬のクソ」を踏みましたね。沖縄の方向をいつも拝んでから寝たほうがよいようです。くわばら、くわばら。

投稿: enneagram | 2012.01.17 08:42

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» 野田内閣改造〜早くも政権末期感〜 [虎哲徒然日記]
野田内閣が発足4か月にして改造された。 今回は5閣僚の交代ということで、中規模の改造である。 直接的な引き金は、一川防衛相・山岡国家公安委員長に対する参院の問責決議。こ ... [続きを読む]

受信: 2012.01.14 17:34

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