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2011.10.22

中国人二歳女児ひき逃げ映像の背景

 すでに映像をご覧になっている人も多いと思うが、あまりに陰惨な映像なのでネットに溢れている動画へのリンクはしない。話は、中国南部、広東省仏山で13日、自動車にはねられ路上に放り出された二歳女児を道行く人は助けることなく無視し、そのため再度車に轢かれることになったことだ。女児の回復を祈りたい……と書いたものの、最新の状況を見るとすでに死んでいた。哀悼したい。
 この話、誰が見ても残酷な話ではある。この事件自体がやらせのはずはない。だが、この報道はといえば、中国共産党のやらせだろう。こんなことを書くのもなんだとも思うが、ちょっと考えるといろいろパズルが解けそうでもあるので、触れておく。
 報道の確認から。AFPがわかりやすい。「血まみれの少女を無視する通行人、ネットで怒りの声 中国」(参照)より。


【10月17日 AFP】中国南部、広東(Guangdong)省仏山(Foshan)で、車に2回はねられて路上に倒れ込んだ2歳の少女を通りかかった十数人の人びとが無視したと、国営の新華社(Xinhua)通信が17日、報じた。
 この出来事に中国の人気ソーシャルメディアサイトでは激しい怒りの渦が巻き起こった。防犯カメラは、親の店の前でバンとトラックにはねられたユエユエ(Yue Yue)ちゃんの前を通り過ぎる人びとの姿を記録していた。
 新華社によると、ごみ収集業者がようやく少女のもとに歩み寄り、路肩に運んで周囲に助けを求めたが、複数の買い物客が無視したという。最終的に少女の母親が気づき、病院に運んだ。
 この出来事について、中国版ツイッター「新浪微博(Sina Weibo)」のあるユーザーは「この社会は深刻に病んでいる。犬猫だってあんな薄情な扱いを受けるべきでないのに」と書き込んだ。

 中国のメディアを知る者というか、常識的に考えてもわかるが、中国共産党の息のかかった新華社が報道するというのは、共産党の意図による広報である。
 ではなんの広報かと言えば、その反応を見ればわかる。「この社会は深刻に病んでいる。犬猫だってあんな薄情な扱いを受けるべきでないのに」ということだ。中国社会はひどいことになっている。こんなことでよいのか、もっと人倫を、道徳を掲げ、それを鼓舞すべきだ、と。そう、共産党の基本テーゼである。中国共産主義青年団(共青団)の主張と言ってもいい。
 つまり、これは、共青団。つまり、胡錦濤・温家宝による現政権のキャンペーンの一環である。つまり、習近平で甘い汁を吸おうとしていた、太子党や上海幇の封じ込めといったところだ。
 わかんない人もいるかもしれないから、別の方向から説明すると、これ、かなり悲惨な映像だが、それはこの女児に焦点をあてて見るから、見殺しに見えるのであって、この白っと行きすぎる人を見れば、ああ、こういうことは普通に中国にあることなんだな、ということは察せられる。今回はたまたま映像で出しただけで、こうした惨事が日常茶飯事なんだろうとは察せされる。ただし誤解なきように言うと、中国人全体がこういう人情のない人々かというとそんなことはないのであって、むしろ、この映像が中国人にアピールするのは逆の心情が基底にあるからだ。
 AFPは先の報道では「以前、倒れた高齢の女性を助けようとした男性が、事故被害者への対応を定めた政府の規則に違反したとして起訴されたことがあった」としているが、その意識がどのくらい社会に浸透しているかはわからない。が、急患でも救急車を呼ぶには自腹を切ることになっている共産主義社会では、この状況で、人が過ぎ去るのはさして違和感はない。
 いずれにせよ、この映像が殊更に、しかも国家メディアから出たというのは、政治メッセージ以外はありえない。余談だが、カダフィー大佐私刑惨殺映像もNATOも米軍も噛んでいないという口実である(そんなわけなかろうに)。
 そこででは、その政治メッセージだが、当然時期というものが重要になる。そしてその時期については誰でもわかる。15日から18日にかけて、六中総会、中国共産党の第17期中央委員会第六回総会が開かれていたからだ。
 六中総会のテーマは表向き「文化」だが、日本でいう文化とは意味が違い、当然だが、来年の党大会で総書記に就任する習近平国家副主席新指導部への準備になる。
 六中総会はどうであったか。加藤青延NHK解説委員がさすがにきちんと読んでいる。時論公論「中国 改革の行方は」(参照)より。

 「文化」という言葉からは、漠然とした幅広い分野の印象を受けますが、実は、きわめて切迫した、社会体制の本質にかかわるテーマでした。
今回の総会で採択された決定。そのタイトルは実に長く、「文化体制改革を深化させ、社会主義文化大発展大繁栄を推進することに関する若干の重大問題の決定」というものです。このタイトルで重要なのは「若干の」というキーワードがついていることです。「若干の」というと、「いくらかの」というような軽い意味の印象を受けますが、実は、これまで、中国の政策転換やきわめて重要政策を打ち出すときに付け加えられてきた重みのある言葉です。

 加藤委員は中国の「文化」をここでは言い換えていないが、これは後の文脈からでもわかるように、日本の左翼が嫌がる道徳的な支配である。
 そしてこれが、中国語でいうところの「若干」つまり、日本語で言うところの「重大」な変更となるというのである。それはなにか。

では、その「文化体制改革」とはどのようなものなのでしょうか。実は、今回採択された文書そのものは、まだ公表されず、昨夜、発表されたコミュニケの内容から、その中身をさぐるしかありません。一般的には、中国という国を、経済と同様、世界屈指の大国、「文化強国」にすることをめざすものだと受け止められています。

 と、加藤委員は前振りで誤解を解いているが、つまりそういう表面的なことではない。

 私は、今回中国共産党が、「文化体制改革」を持ち出した本当の目的は、むしろ、中国共産党の支配体制を危うくしつつある、より根源的な問題、「モラルを失いつつある社会と荒廃する人々の心」にどう対処すべきかという点ではないかと思います。

 道徳的な性質を持つ強権を維持していこうということで、大衆にも国際的にもわかりやすく、女児の悲惨な映像を出したきたわけである。
 実際の方針はコミュニケに提示されるが、今回はこういう特徴があった。

 そのひとつが「道徳」という言葉です。「道徳」という文字が5回。また、「徳を持って国を治める」「徳と才」を兼ね備えた人材登用といった、表現まで含めると、「徳」つまり、モラルの重要性をうったえているところが7ヶ所もあります。比較的短い共産党のコミュニケの中で、「道徳」がここまで強調されていることは異例といえるでしょう。
 さらに、「社会主義核心価値体系」という、ちょっと聞きなれない言葉が5回も立て続けに出てくることも注目点です。この言葉は、高度なモラル社会、汚職腐敗のない社会を目指すときに使われるキーワードで、中国共産党が今回強調した文化体制改革の目標が、実は、高度なモラルによって構築される社会であるということがはっきりとわかります。


 いま中国共産党が一番抱いている危機感。それこそ、モラルの欠如によって人々の心が荒廃し、社会そのものが崩壊の瀬戸際にあるという現実でしょう。
 人々が安心して暮らせる社会でなければ、いくら経済が発展しても意味がありません。はたして文化体制改革をすすめることで、どこまで社会の大きなゆがみを正せるのか、中国共産党は、いままさに一党支配体制の真価を、根底から問われる大きな難題に直面しているといえるでしょう。

 NHKとしてはこのくらいのまとめに納めるしかないが、これは先にも振れたように、共青団のイデオロギーである。排日運動や帝国主義的な軍拡で人心を掌握しようとてきた江沢民派のそれではない。上海幇や太子党的な方向性への挑戦である。
 とすれば、おそらく習近平を立てる体制は表向き維持したとしても、かなり、共青団的な勢力が来年以降も残ると思われる。日本としてみれば、胡錦濤時代のように比較的外交しやすい状況になる可能性はある。
 しかし、上海幇や太子党的が抑え込まれたのではなく、共青団的な動きが最後の足掻きと読めないことはない。そこがまだはっきりとは見えてこないが、おそらく前者であろう。
 議論が粗くなるが、共産党が焦っているのは、実際には道徳の荒廃ではなく、経済の国家集権である。これは、「中国の高速鉄道事故についてさらに気の向かない言及: 極東ブログ」(参照)にも重なる。
 わかりやすいのは、ちょうどロイターからレポートが出たが、「中国で膨張する地方債務、経済の「地雷原」に」(参照)にあるように、上海幇や太子党、また地方行政などが私腹を肥やしてきた地方債務が危険な状態にある。

 中国における地方債務の拡大が深刻化の一途をたどっている。景気対策の名の下に行われた野放図ともいえる建設ラッシュの結果、地方政府が抱える債務は2010年末で10兆7000億人民元(1兆6700億ドル)に達し、少なくとも3割近くに不良債権化の恐れが出ている。
 中国経済の「地雷原」ともいえる借金バブルの膨張。だが、地方当局者の危機意識は薄く、投資収益が細る中で、事態がさらに悪化する懸念が高まっている。

 問題はこの、「地方当局者の危機意識は薄く」の部分で、要するにここに粛清をかけるために、日本の戦前のような道徳的な圧力で、国家の全体支配に、中国共産党が持ち込もうとしているのが現状である。
 ただ、この構造は共産党が善で、私腹を肥やす上海幇や太子党が悪という単純な図式ではない。中国共産党のシステムにも問題がある。

 中国の地方官僚は、共産党の評価を得るために、雇用や成長を促すプロジェクトを通じて好調な経済を維持することが求められる。不動産バブルを防止するために融資が引き締められれば、住宅・不動産市場の低迷につながりかねず、その使命は果たせない。そこで登場するのが「影の銀行」だ。
 彼らは闇の融資・信用業者として、正規の融資では不適格とされた個人や企業に信用を供与。供与した信用を細切れに別の投資商品に紛れ込ませる役割を担う。いわばアメリカの銀行がサブプライムローンで行っていたのと同様の手法だ。

 現状の大きな歪みは共産党そのものが関与したシステム的な結果であり、これらは簡単に是正させることはできない。だが、少なくともこの問題を扱うためには、さらに現政権側に強権を集中させる必要があり、かなり強行な変化が進展していく。
 
 

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2011.10.18

イランによる駐米サウジアラビア大使の暗殺計画疑惑

 イランが関与したと米国が告発する、駐米サウジアラビア大使の暗殺計画だが、非常に不可解な話である。結論からいうと、大きな枠組みで見るなら、イラン包囲網というより、サウジアラビアへの米国からの宥和策とイラン内部の問題の反映とではないかと思うが、オバマ政権の延命策として出されたなら非常に危険な火遊びとなりかねない。
 日本ではあまり話題になっていたふうはないが、報道がないわけでもなかった。NHK報道から確認しておこう。12日付けNHK「米 イラン関与の暗殺計画摘発」(参照)より。


 アメリカ司法省は、イランの革命防衛隊で特殊任務を担う部隊に所属する男が、駐米サウジアラビア大使の暗殺を企てたとして、イラン人の男など2人をテロ未遂などの罪で起訴したと発表しました。
 アメリカのホルダー司法長官は11日、記者会見し、「イランの政府機関の指示を受けて、アメリカ国内で他国の大使の暗殺を計画していた2人を起訴した」と述べました。起訴状によりますと、暗殺計画は、イラン革命防衛隊の特殊部隊「コッズ部隊」に所属する男が、アメリカ国籍を持つイラン系アメリカ人の男に指示していたもので、2人はテロ未遂などの罪で起訴されました。この2人は、ことし春以降、アメリカ国内で駐米サウジアラビア大使を暗殺することを企てていたということで、イラン系アメリカ人の男は、150万ドル(日本円でおよそ1億1500万円)の報酬を受けていたものの、先月、ニューヨーク州でFBI=アメリカ連邦捜査局に逮捕されました。暗殺計画の指示を出していたイランの特殊部隊の男は、今もイラン国内にいるということです。暗殺計画は、首都ワシントンで爆弾などを使って実行する筋書きになっていたということで、司法省は、裁判を通じてイラン政府が暗殺計画にどの程度関与していたかを解明し、イラン政府の責任を追及するとしています。
 アメリカ政府の発表について、イラン外務省のメフマンパラスト報道官は11日、声明を出し、「アメリカによって、でっちあげられたシナリオで、我々は強く否定する。この滑稽な見世物は、我々の分断をもくろむアメリカとイスラエルによる陰謀にすぎない」として全面的に否定したうえで、強く批判しました。また、イラン国営メディアも、「アメリカ政府は、イランを敵視する新たなプロパガンダを始めた。自分たちの国内問題から市民の目をそらすために、ねつ造したものだ」などと報じています。
 アメリカのクリントン国務長官は、11日、記者団に対し、「こうした行為は国際的に許されず、直ちにやめるべきだという強いメッセージを国際社会と協力して打ち出していく。国際社会が団結してイランをさらに孤立化させる必要がある」と述べ、イランへの圧力を強める姿勢を強調しました。一方、アメリカ政府の発表を受けて、サウジアラビア政府はワシントンにある大使館を通じて声明を発表し、「国際条約に違反し、人道にもとる卑劣な行為だ」としてイランを厳しく非難しました。また、サウジアラビアの政府高官は、ロイター通信の取材に対し、「看過できない事態であり、イラン駐在のサウジアラビア大使の召還はもちろんのこと、報復措置を検討するだろう」と述べました。サウジアラビア政府は、イランで主流を占めるイスラム教シーア派による反政府デモが国内で頻発したことから、イランによる内政干渉だと非難していた経緯もあり、両国の関係のさらなる悪化は必至とみられます。

 NHKが簡素に伝えようとしていることは理解できるが、この事件のうさんくささは、うまく表現されていない。12日時点ではNHKとしても判断しづらかったのかもしれないが、この事件にはメキシコの麻薬組織を偽装するといった奇妙な背景があり、これが実に、ばかばかしい印象を与える。12日のAFP「イランによるサウジ大使暗殺計画、米当局が阻止と発表」(参照)がそのあたりを上手に伝えている。

■「ハリウッド映画ばり」の暗殺計画
 9月29日にニューヨーク(New York)のジョン・F・ケネディ国際空港(John F. Kennedy International Airport)で身柄を拘束されたアルバブシアル容疑者は11日、ニューヨーク連邦地裁に出頭した。当局によると、アルバブシアル容疑者は、イラン政府筋の関与を供述したという。
 もう1人のシャクリ容疑者は逃亡を続けている。
 ある米高官が「ハリウッド映画ばり」だと表現した暗殺計画は、米当局に雇われた人物が「おびただしい数の」暗殺や殺人で知られるメキシコの麻薬組織のメンバーを装って容疑者らに近づき発覚したという。訴状によると容疑者たちは、サウジ大使を攻撃するための爆発物をこの麻薬組織から入手できると信じ込んだ。
 別の米高官によると、イラン当局はサウジ大使暗殺に続いて、その他の「人命に対する」攻撃も計画していたという。未確認だが、ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるサウジアラビア大使館とイスラエル大使館が標的となる可能性があったとの報道もある。 
 メキシコ当局は、米捜査当局と緊密に連携して協力したと発表した。これによると、アルバブシアル容疑者はメキシコに入国拒否され、ニューヨークへ空路で送り返されたところで米当局に拘束された。

 米国政府がメキシコの麻薬組織を装っておとり捜査をしたというのである。ありえないことではないし、麻薬関連ではおとり捜査は日常的にやっているだろうなとは思うが、こんな大きな話を釣り上げるものなのか、疑問が残る。
 通常、大きな外交問題に発展すと予想されれば、釣り上げても、対応を慎重に検討するだろう。その点、今回の米政府の発表は唐突であり、さほどの説得力もなかった。「なんなんだこれは?」というのが欧米ジャーナリズムの最初の反応であり、私もいくつか様子を見ていた。
 ワシントンポストも懐疑的なスタンスから入った。「Alleged assassination plot serves as a warning about Tehran」(参照)より。

THE OBAMA administration’s charge that senior Iranian officials plotted to kill the Saudi ambassador in Washington was greeted with a considerable amount of skepticism in some quarters of Washington and the Middle East.

イラン政府高官がサウジアラビア駐米大使殺害を目論んだとするオバマ政権による嫌疑は、オバマ政権内でも中近東でも場所によっては、かなりの疑念を投げかけられた。

Iran, argued some pundits, was unlikely to have undertaken such a brazen attack; it had little to gain by killing the ambassador; and, anyway, its clandestine operations were known to be far more skillful than the seemingly bumbling attempt to contract the assassination to a Mexican drug cartel.

そのような恥知らずの攻撃をイランが引き受けることはないだろうと指摘する評論家もいる。大使を暗殺しても得るものはほとんどなく、イランならメキシコの麻薬組織に下手を打ちそうな暗殺依頼するより、はるかに巧妙な秘密行動ができる。


 普通の反応としては、「なんだそのジョークは」という話である。
 ニューヨークタイムズも普通の反応を当初はしている。イランによる暗殺計画について、「The Charges Against Iran」(参照)より。

This plot appears extraordinarily brazen — the first major Iranian attack on American soil — and almost laughably sloppy.

イランによる最初の主要な米国本土攻撃となりえた、この陰謀は、恥知らずもにもほどがあるといったもので、ばかばかしくて笑っちゃうといったものである。


 ところが、ニューヨークタイムズはオバマ・マジックに目眩ましされいるというか、オバマ真理教に帰依してしまっているせいか、おかしな理解になる。

It is a relief that Mr. Obama will be the one to weigh the evidence and make the decisions, not his predecessor. He has proved his mettle with the raids that killed Osama bin Laden and other Al Qaeda leaders.

オバマ氏が、証拠を考慮し決定を下す。彼の前任者ではないので安心できる。彼は、オサマ・ビンラディンや他のアルカイダリーダーを急襲して殺害することで気概を示した。


 ニューヨークタイムズは、自分たちがブッシュ支持派だったら物事をどう見たかという他者への想像力を欠いている。オバマ大統領がすでにテロリストと化していることにも気がついていない(参照)。
 ブッシュ前大統領の決断の是非は歴史が審判すればよいが、その背景は歴史の進展とともに可視化してきている。
 今回の事件でも、暗殺の標的とされたアデル・ジュベイル駐米大使はサウジアラビアのアブドラ国王の外交政策顧問であり、2008年のウィキリークス公電で、サウジアラビアのアブドラ国王命で米政府に「蛇の首をへし折れ」として、イランへの軍事攻撃を要請した(参照)人物である。
 ここから当然、類推されることだが、公電のような半公開の情報ではないにせよ、実質ブッシュ政権を支えていた、サウジアラビアのお小姓役チェイニー元副大統領にも、同様にイラク攻撃はサウジアラビア側から示唆があっただろう。
 つまるところ今回の事件の大枠は、サウジアラビア対イランの緊張でもあり、この手のばか話を外交にまで持ち込めたのは、そもそもサウジアラビアの認可があったはずだ。実際、今回のオバマ政権の発表でもスンニ派諸国は、サウジアラビアに気遣ってすんなりと米政府支持側に回っている。
 サウジアラビア側は懸念だが、オバマ政権の現状ではイラクに軍事的空白ができかねないこともある。ウォールストリート・ジャーナルのふかし記事と言えないこともないが、「サウジとイランがイラクで代理戦争か―米軍撤退後に」(参照)が興味深い。

 サウジアラビアとイランとの間の緊張の高まりを受けて、今年末に米軍の少なくとも一部撤退が予定されているイラクで、サウジとイランの代理戦争が再発するのではないかとの懸念が強まっている。
 アラブの春の思わぬ影響の一つが、中東におけるサウジの支援国とイラン支援国との間の力の均衡が崩れたことだ。サウジはイランがバーレーンやイエメンで政情不安をあおっていると非難する一方、イランは反政府抗議行動を弾圧しているシリアを支援し、中東地域の民衆のイラン支持の低下に見舞われている。
 スンニ派が支配するサウジとシーア派のイランは、イラクでそれぞれの宗派を支持してきており、サウジとイランはイラクで新たな対立を引き起こす可能性が大きい。
 米政府が先週、イランが駐米サウジアラビア大使の暗殺を企てていたと明らかにしたことは、アラブ世界を震撼させた。スンニ派のアラブ諸国は、イランがイラクやレバノン、シリアなどで影響力を強めていると懸念を抱いている。イランは米政府の発表について、イランとサウジの緊張を呼び起こすためのでっち上げだと否定している。
 サウジは近年、イランによるシリアやレバノンに対する影響力の拡大を阻止しようと努めてきているが、成果をあげていない。サウジはイラクについては、シーア派主導の政権ではあるものの、米軍の大規模駐留がイランの影響力浸透の防波堤になっているとみてきた。
 サウジは、イラクでシーア派とスンニ派との宗派紛争が最高潮となった2006、07年にはイランが歴史的にはサウジの裏庭であるイラクに影響力を強めようとしているとみて、イラクのスンニ派武装勢力に対し積極的に資金援助を行った過去がある。
 アラブの当局者は、イランからイラクのシーア派への支援のパイプラインは強化されている一方、サウジによるイラクのスンニ派への支援網も簡単に復活するものだと指摘する。あるアラブの外交官は、「米軍が撤退すれば、イラクがサウジとイランの新たな競技場になる可能性がある」と述べる。

 言うまでもないが、湾岸戦争ではイラクはサウジアラビアに手を出していた。イラクのフセイン元大統領の野望はサウジアラビアを手中に収めてアラブ世界の盟主となることだったからである。サウジアラビアがそれを許すわけもない。また、サウジアラビアの絶対的な力はその圧倒的な原油埋蔵量にあるのだが、イラクにはそれに準じる原油が眠っており、その支配をサウジアラビアが看過するわけにはいかなかった。
 こうした大きな要因が、ブッシュ政権によるイラク戦争の背後にあり、ニューヨークタイムズがブッシュ大統領をコケにして済む話ではない。
 今回の暗殺疑惑だが、オバマ政権によるでっち上げだろうか。
 おそらくこれだけの威信を持って行われたことや、カネの流れの追跡やその後の経緯からも、まったくのでっち上げとは思われない。
 そうであれば、イランは何を考えているのかだが、端的に言えば、イラン内部の権力闘争の反映は想定されるだろう。この点については先のワシントンポスト社説も指摘していた。
 権力闘争という点で、もっとも大きな線に関係するのは、イランの最高指導者ハメネイ師である。日本語で読める記事としては日経「イラン最高指導者「大統領制変更も可能」(参照)がある。

イランの最高指導者ハメネイ師は16日の演説で、現在の大統領制度を変更し、議会の多数派政党が権力を握る議院内閣制などほかの制度に移行することも可能との考えを示した。イラン国営テレビが伝えた。アハマディネジャド大統領をけん制する狙いとの見方もあり、同大統領の立場が一層不安定になる可能性がある。


 ハメネイ師は今年に入り頻繁に閣僚を交代させようとしたアハマディネジャド大統領を批判。議会も大統領非難を強め、大統領は孤立する局面が目立っている。今回のハメネイ師の発言は、自らが選挙で選ばれた大統領より上位にあり、指導者選出の制度改革を決める力があることを改めて示す狙いがあるようだ。

 話を戻して、オバマ政権が、なぜここまで大きな話に吹かし上げたかについては、むしろ、この騒ぎ立て自体がオバマ政権の外交戦略と見るべきだし、サウジアラビアとの関連が明確である。
 と同時に、オバマ大統領再選の文脈も否定しがたい。その線で見るなら、ロビーに対する演出効果として対イスラエルの関連があるかもしれない。イスラエルはイランの核化を断固阻止する構えを続けている。
 いずれにせよ、今回の事態にオバマ政権の自己保全の意図が含まれていると、純然と扱うべき外交問題を混乱させる懸念が残る。この点は、フィナンシャルタイムズ「Bomb plots in Washington」(参照)の指摘が妥当である。

The alleged Iranian plot to assassinate the Saudi Arabian ambassador to the US is straight out of the pages of a spy thriller. Yet the allegations, while unproven at this stage, are deadly serious. If mishandled they could be explosive, not just in the US but also across the Middle East.

イランによるサウジアラビア駐米大使の暗殺疑惑、スパイ・サスペンス物語のまんまである。にもかかわらず、その意味合いは、現状では証明されたとは言い難いが、ひどく深刻である。適切な扱い方をしなければ、米国を吹っ飛ばすのみならず、中東をも吹っ飛ばすだろう。


 オバマ政権が対応を誤れば、ブッシュ政権がイラクに戦争を仕掛けた以上に、危険な事態にもなりかねない。
 
 

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2011.10.17

「ウォール街占拠」運動の背後にちらつくソロス氏

 日本の国際ジャーナリストさんとかがぶちまけるヘタな陰謀論のような図柄でもあるが、「ウォール街占拠」運動にはどうも、うさんくさい影がある。本当に自然着火なのだろうか。
 欧米では「これってソロスが後ろで糸を引いているのではないか」という噂があり、しかも、リンボーあたりが気炎を吐いているならば、苦笑して通り過ぎるのが常識人だし、お利口さんならクラウトハマーのように「馬鹿なスケープゴート運動やりやがって」(参照)とかするのが定番だが、どうもそれで納めるにはなんとも、嫌な印象が残る。
 と思っていたところに、ロイターが直球に見せかけてクセ玉を投げ込んだ。13日付け「焦点:格差是正求める反ウォール街デモ、背後に富豪ソロス氏の影」(参照)である。長いがジャーナリズム検証の意味もあってあえて引用したい。


 [ニューヨーク 13日 ロイター] 米国でニューヨークから各地に広がっている「反ウォール街デモ」は、平均的な国民が生活に苦しむ一方、富裕層がますます裕福になっているとの抗議がメインテーマだ。しかし、デモ参加者らは間接的に、世界有数の富豪からの恩恵を受けているかもしれない。
 過去4週間にわたって続く反ウォール街デモを、背後で資金的に援助しているのは一体誰か。さまざまな憶測が流れる中、常に名前が取りざたされるのは、米フォーブス誌の「2011年版米長者番付」で初めてトップ10入りを果たした著名投資家ジョージ・ソロス氏だ。
 ソロス氏とデモ主催者は、双方ともに関係を否定する。しかしロイターは、反ウォール街デモを仕掛けたカナダの反資本主義団体「アドバスターズ」とソロス氏の間に、間接的な資金的結びつきがあるのを発見した。さらに、ソロス氏とデモ隊の間には、イデオロギー的な立場でいくつかの共通点もある。
 ソロス氏は先週、反ウォール街デモについて記者団に「彼らの感情は理解できる」と述べていた。「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」と銘打った抗議運動はシカゴやボストンなどにも飛び火しており、15日には世界主要都市で一斉にデモを行うことも呼び掛けられている。
 ソロス氏自身は反ウォール街デモに関する踏み込んだ発言を避けているが、保守派ラジオホストのラッシュ・リンボウ氏は先週、番組内で「(デモの)背後にはジョージ・ソロスの資金がある」と語っていた。
 ソロス氏は現在81歳。フォーブス誌の米長者番付400人では、資産総額220億ドル(約1兆7000億円)で7位に入っている。個人資産は生前に半分、残りを死後に寄付するという。
 デモ参加者らと同様、ソロス氏は2008年の米政府による金融機関救済と、その後の不良資産救済プログラム(TARP)への多額の資金投入には賛成していない。
 反ウォール街デモでは、平均的な国民が高い失業率に苦しめられている一方、税金投入で命拾いした金融機関が巨額の利益を享受していると不満の声が強い。また、1%の富裕層が米国の富を独占しているとして、格差是正も叫ばれている。 

 <銀行の生命維持装置>
 ソロス氏は2009年に執筆した論説で、金融機関の不良資産を購入するのは「納税者の多大な負担で銀行に生命維持装置を与える」ことになると指摘。オバマ政権に対しては金融機関の国有化など大胆な措置を求めていたが、そうした提言は無視された。
 2008年の米大統領選では、ソロス氏は早くからオバマ大統領を支持。オバマ大統領は来年11月の次期大統領選で再選を目指す。
 ソロス氏が会長を務めるオープン・ソサエティ財団が公開した2007─09年の報告書によると、同財団はサンフランシスコを拠点とする非営利団体(NPO)「タイズ・センター」に350万ドルを援助。同センターは、ほかのNPOのための決済機関的な役割を果たしており、フォード財団やゲイツ財団とも協力している。報告書によれば、そのタイズ・センターからは、2001─2010年にアドバスターズに総額18万5000ドルが支払われている。タイズ・センターからのコメントは得られていない。
 ソロス氏の側近は、そうしたつながりの一切は根拠に乏しいとしており、ソロス氏はアドバスターズのことを聞いたこともないと説明。ソロス氏自身はコメントを差し控えている。
  バンクーバーを拠点に活動するアドバスターズは、「企業が力を行使する方法を変え」、「既存の権力構造を打倒する」ことが目標だとしている。アドバスターズ誌はパロディー広告で有名で、発行部数は約12万部。共同創業者のカル・ラスン氏(69)は、チュニジアやエジプト、リビアで政権崩壊につながった中東・北アフリカの民主化運動「アラブの春」を目の当たりにし、反ウォール街デモを思いついたとしている。
 「アドバスターズでのブレインストーミング中にアイデアが出てきた。チュニジアやエジプトで起きたことに感銘を受け、米国でも機が熟したと感じた」と語るラスン氏。「米国でも本物の怒りが積み上がっていると感じた。その怒りを表現するための火付け役になろうと考えた」という。
 アドバスターズは運営費の95%を購読料に頼っており、ソロス氏については「彼の考え方の多くは非常に良い。少し寄付して欲しいが、一銭もくれたことがない」と語る。
 反ウォール街デモを支援しているのはほかに、募金サイトの「キックスターター」が7万5000ドル以上を集めたほか、社会派ドキュメンタリー作品で知られる映画監督のマイケル・ムーア氏も寄付を表明している。
 (Mark Egan記者;翻訳 宮井伸明;編集 本田ももこ)


 さっと読むとロイターも面白いネタを掘りますなというところだし、ソロスを疑っていそうな文脈に道化のリンボーを配して逃げ口上にもしているのだが、意外と事実の線は抑えているので、日本の国際ジャーナリストさんのレベルではない。
 事実というのは、「しかしロイターは、反ウォール街デモを仕掛けたカナダの反資本主義団体「アドバスターズ」とソロス氏の間に、間接的な資金的結びつきがあるのを発見した。」という点だ。つまり、事実の線からすると、カナダの「アドバスターズ」とソロス資金の関係を追えばよいということになる。
 もう一点、ネタ臭いとはいえ、「さらに、ソロス氏とデモ隊の間には、イデオロギー的な立場でいくつかの共通点もある。」は、見逃せない。
 現状ではこの事実と、ソロス氏のこの件についての思惑の2点以上のソースはない。なので、思惑とソロス氏のこのところの挙動を傍証的に振り返るというくらいしかできないのだが、その前に、この日本版のロイター記事の出所に疑問がある。端的なところ、原文はどこにあるのか?
 その前にこの日本版ロイター記事には別バージョンがある。asahi.comのサイトに掲載されている、「再送:格差是正求める反ウォール街デモ、富豪ソロス氏は支援否定」(参照)である。

 [ニューヨーク 13日 ロイター] 過去4週間にわたって続く反ウォール街デモを、背後で資金的に援助しているのは一体誰か。さまざまな憶測が流れる中、常に名前が取りざたされるのは、米長者番付で今年初めてトップ10入りを果たした著名投資家ジョージ・ソロス氏だが、ソロス氏側は強く否定している。
 保守派ラジオホストのラッシュ・リンボウ氏は先週、番組内で「(デモの)背後にはジョージ・ソロスの資金がある」と発言。また、ソロス氏自身も、反ウォール街デモについて記者団に「彼らの感情は理解できる」と述べていた。
 しかし、ソロス氏の広報担当を務めるマイケル・バション氏は、ソロス氏が「デモ参加者に直接的にも間接的にも資金提供していない」と憶測を強く否定。「全く違うことを主張するのは、デモに反対する人たちが運動の信ぴょう性に疑問を投げ掛けるために行っている行為だ」と語った。
 「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」と銘打った抗議運動はシカゴやボストンなどにも飛び火しており、15日には世界主要都市で一斉にデモを行うことも呼び掛けられている。
 ソロス氏は現在81歳。フォーブス誌の米長者番付400人では、資産総額220億ドル(約1兆7000億円)で7位に入っている。個人資産は生前に半分、残りを死後に寄付するという。
 デモ参加者らと同様、ソロス氏は2008年の米政府による金融機関救済と、その後の不良資産救済プログラム(TARP)への多額の資金投入には賛成していない。
 反ウォール街デモでは、平均的な国民が高い失業率に苦しめられている一方、税金投入で命拾いした金融機関が巨額の利益を享受していると不満の声が強い。また、1%の富裕層が米国の富を独占しているとして、格差是正も叫ばれている。 

 <銀行の生命維持装置>
 ソロス氏は2009年に執筆した論説で、金融機関の不良資産を購入するのは「納税者の多大な負担で銀行に生命維持装置を与える」ことになると指摘。オバマ政権に対しては金融機関の国有化など大胆な措置を求めていたが、そうした提言は無視された。
 2008年の米大統領選では、ソロス氏は早くからオバマ大統領を支持。オバマ大統領は来年11月の次期大統領選で再選を目指す。
 ソロス氏が会長を務めるオープン・ソサエティ財団が公開した2007─09年の報告書によると、同財団はサンフランシスコを拠点とする非営利団体(NPO)「タイズ・センター」に350万ドルを援助。同センターは、ほかのNPOのための決済機関的な役割を果たしており、フォード財団やゲイツ財団とも協力している。報告書によれば、そのタイズ・センターからは、2001─2010年にアドバスターズに総額18万5000ドルが支払われている。タイズ・センターからのコメントは得られていない。
 ソロス氏の側近は、そうしたつながりの一切は根拠に乏しいとしており、ソロス氏はアドバスターズのことを聞いたこともないと説明。ソロス氏自身はコメントを差し控えている。
 バンクーバーを拠点に活動するアドバスターズは、「企業が力を行使する方法を変え」、「既存の権力構造を打倒する」ことが目標だとしている。アドバスターズ誌はパロディー広告で有名で、発行部数は約12万部。共同創業者のカル・ラスン氏(69)は、チュニジアやエジプト、リビアで政権崩壊につながった中東・北アフリカの民主化運動「アラブの春」を目の当たりにし、反ウォール街デモを思いついたとしている。
 「アドバスターズでのブレインストーミング中にアイデアが出てきた。チュニジアやエジプトで起きたことに感銘を受け、米国でも機が熟したと感じた」と語るラスン氏。「米国でも本物の怒りが積み上がっていると感じた。その怒りを表現するための火付け役になろうと考えた」という。
 アドバスターズは運営費の95%を購読料に頼っており、ソロス氏については「彼の考え方の多くは非常に良い。少し寄付して欲しいが、一銭もくれたことがない」と語る。

 反ウォール街デモを支援しているのはほかに、募金サイトの「キックスターター」が7万5000ドル以上を集めたほか、社会派ドキュメンタリー作品で知られる映画監督のマイケル・ムーア氏も寄付を表明している。

*14日配信した記事にソロス氏側のコメントを加え、見出し・本文を更新して再送します。
 (Mark Egan記者;翻訳 宮井伸明;編集 本田ももこ)


 さっと読むと同じ記事のように見えるが、こちらの記事の文末にあるように、こちらの記事では、ソロス氏側のコメントを加えている。
 普通に考えれば、これらのバージョンに対応する原文があるはずなのだが、これがよくわからない。前バージョンと思われるのは「Soros: not a funder of Wall Street protests」(参照)であるが、タイトルから直接的に読み取れるのはそのまま「ソロスはウォール街抗議者運動の設立者のひとりではない」ということになる。つまり、ソロスが背景にいることを否定している。だが、その記事は、やはり、ソロスとアドバスターズの関係をより詳細に伝えている。
 この英文記事だがざっと見ただけで、日本語訳とされる記事と長さが違うし、"Michelle Nichols"記者も加わっている。

By Mark Egan and Michelle Nichols
NEW YORK | Thu Oct 13, 2011 9:35pm EDT
(Reuters) - George Soros isn't a financial backer of the Wall Street protests, despite speculation by critics including radio host Rush Limbaugh that the billionaire investor has helped fuel the anti-capitalist movement.

Limbaugh summed up the chatter when he told his listeners last week, "George Soros money is behind this."

Soros spokesman Michael Vachon said that Soros has not "funded the protests directly or indirectly." He added: "Assertions to the contrary are an attempt by those who oppose the protesters to cast doubt on the authenticity of the movement."

Soros has donated at least $3.5 million to an organization called the Tides Center in recent years, earmarking the funds for specific purposes. Tides has given grants to Adbusters, an anti-capitalist group in Canada whose inventive marketing campaign sparked the first demonstrations last month.

Vachon said Open Society specified what its donations could be used for. He said they were not general purpose funds to be used at the discretion of Tides -- for example for grants to Adbusters. "Our grants to Tides were for other purposes."

Tides declined to comment.

According to IRS disclosure documents from 2007-2009, the latest data available, Soros' Open Society gave grants of $3.5 million to Tides, a San Francisco-based group that acts almost like a clearing house for other donors, directing their contributions to liberal non-profit groups. Among others the Tides Center has partnered with are the Ford Foundation and the Gates Foundation.

IRS disclosure documents and reports from Tides also show that Tides gave Adbusters grants of $185,000 from 2001-2010, including nearly $26,000 between 2007-2009.

The Vancouver-based Adbusters publishes a magazine with a circulation of 120,000 and is known for its spoofs of popular advertisements. It says it wants to "change the way corporations wield power" and its goal is "to topple existing power structures."

Adbusters co-founder Kalle Lasn said the group is 95 percent funded by subscribers paying for the magazine.

"George Soros's ideas are quite good, many of them. I wish he would give Adbusters some money, we sorely need it," he said. "He's never given us a penny."

Adbusters may have sparked Occupy Wall Street but it is by no means in control of the disparate movement, with the protests now in their fourth week and spreading to cities across America. President Barack Obama, BlackRock Chief Executive Laurence Fink and Soros himself are among those who have expressed sympathy for the protesters' frustration with high unemployment.

SHARED FRUSTRATION

"I can understand their sentiment," Soros told reporters last week at the United Nations about the Occupy Wall Street demonstrations, which are expected to spur solidarity marches globally on Saturday. He declined to comment further.

Soros, 81, is No. 7 on the Forbes 400 list with a fortune of $22 billion, which has ballooned in recent years as he deftly responded to financial market turmoil. He has pledged to give away all his wealth, half of it while he earns it and the rest when he dies.

Like the protesters, Soros is no fan of the 2008 bank bailouts and subsequent government purchase of the toxic sub-prime mortgage assets they amassed in the property bubble.

The protesters say the Wall Street bank bailouts in 2008 left banks enjoying huge profits while average Americans suffered under high unemployment and job insecurity with little help from Washington. They contend that the richest 1 percent of Americans have amassed vast fortunes while being taxed at a lower rate than most people.

Soros in 2009 wrote in an editorial that the purchase of toxic bank assets would, "provide artificial life support for the banks at considerable expense to the taxpayer."

He urged the Obama administration to take bolder action, either by recapitalizing or nationalizing the banks and forcing them to lend at attractive rates. His advice went unheeded.

The Hungarian-American was an early supporter of the 2008 election campaign of Barack Obama, who will seek a second term as president in the November, 2012, election. He has long backed liberal causes - the Open Society Institute, the foreign policy think tank Council on Foreign Relations and Human Rights Watch.

SLOW START

Adbusters, which publishes a magazine and runs such campaigns as "Digital Detox Week" and "Buy Nothing Day," came up with the Occupy Wall Street idea after Arab Spring protests toppled governments in Egypt, Libya and Tunisia, said Lasn, the 69-year-old co-founder of the group.

"It came out of these brainstorming sessions we have at Adbusters," Lasn told Reuters, adding they began promoting it online on July 13. "We were inspired by what happened in Tunisia and Egypt and we had this feeling that America was ripe for a Tahrir moment."

"We felt there was a real rage building up in America, and we thought that we would like to create a spark which would give expression for this rage."

Other support for Occupy Wall Street has come from online funding website Kickstarter, where more than $75,000 has been pledged, deliveries of food and from cash dropped in a bucket at the park. Liberal film maker Michael Moore has also pledged to donate money.

The protests began in earnest on September 17, triggered by an Adbusters campaign featuring a provocative poster showing a ballerina dancing atop the famous bronze bull in New York's financial district as a crowd of protesters wearing gas masks approach behind her.

Dressed in anarchist black, the battle-ready mob is shrouded in a fog suggestive of tear gas or fires burning. Some are wearing gas masks, others wielding sticks. The poster's message seems to be a heady combination of sexuality, violence, excitement and adventure.

Former carpenter Robert Daros, 23, saw that poster in a cafe in Fort Lauderdale, Florida. Having lost his work as a carpenter after Florida's speculative construction boom collapsed in a heap of sub-prime mortgage foreclosures, he quit his job as a bartender and traveled to New York City with just a sleeping bag and the hope of joining the protest movement.

Daros was one of the first people to arrive on Wall Street for the so-called occupation on September 17, when protesters marched and tried to camp on Wall Street only to be driven off by police to Zuccotti Park - two acres of concrete without a blade of grass near the rising One World Trade Center.

"When I was a carpenter, I lost my job because the financier of my project was arrested for corporate fraud," said Daros, who was wearing a red arm band to show he was helping out in the medic section of the Occupy Wall Street camp.

Since its obscure beginnings, the campaign has drawn global media attention in places as far-flung as Iran and China. The Times of London, however, was not alone when it called the protests "Passionate but Pointless."

Adbusters' co-founder Lasn dismisses that, reeling off specific demands: a tax on the richest 1 percent, a tax on currency trades and a tax on all financial transactions.

"Down the road, there will be crystal clear demands coming out of this movement," he said. "But this first phase of the movement is messy and leaderless and demandless."

"I think it was perfect the way it happened."

(Recasts with comment from Soros aide, adds new details to clarify. The original version can be found here)

(Additional reporting by Cezary Podkul in New York and Cameron French in Toronto, writing by Mark Egan, editing by Claudia Parsons)


 もう一点、この記事で重要なのは、文末にあるが、この記事はソロス側のコメントを加えてリライトされているという記述があり、これは日本側の後バージョンとも対応している。だが、その原文の第二バージョンもまた日本版とは異なっている。「Who's behind the Wall Street protests?」(参照)がそれである。煩瑣だが資料のため引用しておく。

(Reuters) - Anti-Wall Street protesters say the rich are getting richer while average Americans suffer, but the group that started it all may have benefited indirectly from the largesse of one of the world's richest men.

There has been much speculation over who is financing the disparate protest, which has spread to cities across America and lasted nearly four weeks. One name that keeps coming up is investor George Soros, who in September debuted in the top 10 list of wealthiest Americans. Conservative critics contend the movement is a Trojan horse for a secret Soros agenda.

Soros and the protesters deny any connection. But Reuters did find indirect financial links between Soros and Adbusters, an anti-capitalist group in Canada which started the protests with an inventive marketing campaign aimed at sparking an Arab Spring type uprising against Wall Street. Moreover, Soros and the protesters share some ideological ground.

"I can understand their sentiment," Soros told reporters last week at the United Nations about the Occupy Wall Street demonstrations, which are expected to spur solidarity marches globally on Saturday.

Pressed further for his views on the movement and the protesters, Soros refused to be drawn in. But conservative radio host Rush Limbaugh summed up the speculation when he told his listeners last week, "George Soros money is behind this."

Soros, 81, is No. 7 on the Forbes 400 list with a fortune of $22 billion, which has ballooned in recent years as he deftly responded to financial market turmoil. He has pledged to give away all his wealth, half of it while he earns it and the rest when he dies.

Like the protesters, Soros is no fan of the 2008 bank bailouts and subsequent government purchase of the toxic sub-prime mortgage assets they amassed in the property bubble.

The protesters say the Wall Street bank bailouts in 2008 left banks enjoying huge profits while average Americans suffered under high unemployment and job insecurity with little help from Washington. They contend that the richest 1 percent of Americans have amassed vast fortunes while being taxed at a lower rate than most people.

BANKING LIFE SUPPORT

Soros in 2009 wrote in an editorial that the purchase of toxic bank assets would, "provide artificial life support for the banks at considerable expense to the taxpayer."

He urged the Obama administration to take bolder action, either by recapitalizing or nationalizing the banks and forcing them to lend at attractive rates. His advice went unheeded.

The Hungarian-American was an early supporter of the 2008 election campaign of Barack Obama, who will seek a second term as president in the November, 2012, election. He has long backed liberal causes - the Open Society Institute, the foreign policy think tank Council on Foreign Relations and Human Rights Watch.

According to disclosure documents from 2007-2009, Soros' Open Society gave grants of $3.5 million to the Tides Center, a San Francisco-based group that acts almost like a clearing house for other donors, directing their contributions to liberal non-profit groups. Among others the Tides Center has partnered with are the Ford Foundation and the Gates Foundation.

Disclosure documents also show Tides, which declined comment, gave Adbusters grants of $185,000 from 2001-2010, including nearly $26,000 between 2007-2009.

Aides to Soros say any connection is tenuous and that Soros has never heard of Adbusters. Soros himself declined comment.

The Vancouver-based group, which publishes a magazine and runs such campaigns as "Digital Detox Week" and "Buy Nothing Day," says it wants to "change the way corporations wield power" and its goal is "to topple existing power structures."

SLOW START

Adbusters, whose magazine has a circulation of 120,000 and which is known for its spoofs of popular advertisements, came up with the Occupy Wall Street idea after Arab Spring protests toppled governments in Egypt, Libya and Tunisia, said Kalle Lasn, 69, Adbusters co-founder.

"It came out of these brainstorming sessions we have at Adbusters," Lasn told Reuters, adding they began promoting it online on July 13. "We were inspired by what happened in Tunisia and Egypt and we had this feeling that America was ripe for a Tahrir moment."

"We felt there was a real rage building up in America, and we thought that we would like to create a spark which would give expression for this rage."

Lasn said Adbusters is 95 percent funded by subscribers paying for the magazine. "George Soros's ideas are quite good, many of them. I wish he would give Adbusters some money, we sorely need it," he said. "He's never given us a penny."

Other support for Occupy Wall Street has come from online funding website Kickstarter, where more than $75,000 has been pledged, deliveries of food and from cash dropped in a bucket at the park. Liberal film maker Michael Moore has also pledged to donate money.

The protests began in earnest on September 17, triggered by an Adbusters campaign featuring a provocative poster showing a ballerina dancing atop the famous bronze bull in New York's financial district as a crowd of protesters wearing gas masks approach behind her.

Dressed in anarchist black, the battle-ready mob is shrouded in a fog suggestive of tear gas or fires burning. Some are wearing gas masks, others wielding sticks. The poster's message seems to be a heady combination of sexuality, violence, excitement and adventure.

Former carpenter Robert Daros, 23, saw that poster in a cafe in Fort Lauderdale, Florida. Having lost his work as a carpenter after Florida's speculative construction boom collapsed in a heap of sub-prime mortgage foreclosures, he quit his job as a bartender and traveled to New York City with just a sleeping bag and the hope of joining the protest movement.

Daros was one of the first people to arrive on Wall Street for the so-called occupation on September 17, when protesters marched and tried to camp on Wall Street only to be driven off by police to Zuccotti Park - two acres of concrete without a blade of grass near the rising One World Trade Center.

"When I was a carpenter, I lost my job because the financier of my project was arrested for corporate fraud," said Daros, who was wearing a red arm band to show he was helping out in the medic section of the Occupy Wall Street camp.

Since its obscure beginnings, the campaign has drawn global media attention in places as far-flung as Iran and China. The Times of London, however, was not alone when it called the protests "Passionate but Pointless."

Adbusters' co-founder Lasn dismisses that, reeling off specific demands: a tax on the richest 1 percent, a tax on currency trades and a tax on all financial transactions.

"Down the road, there will be crystal clear demands coming out of this movement," he said. "But this first phase of the movement is messy and leaderless and demandless."

"I think it was perfect the way it happened." (Additional reporting by Cezary Podkul in New York and Cameron French in Toronto, writing by Mark Egan, editing by Claudia Parsons.)


 日本版のように改版の英文記事もソロス側のコメントを加えているのだが、この記事の重要性は前の記事にあった、事実とされてた「Soros has donated at least $3.5 million to an organization called the Tides Center in recent years, earmarking the funds for specific purposes.」が欠落していることだ。普通に考えれば、その部分はロイターの勇み足で誤報のようにも思えるが、良く読むとわかるが、この改版の記事で訂正されているわけではない。
 むしろ改版記事の「Aides to Soros say any connection is tenuous and that Soros has never heard of Adbusters. Soros himself declined comment.」は、ソロス氏の関係は薄く、ソロス氏はアドバスターズを知らないとしているのだが、ソロス氏自身がこの点にコメントを避けていることと、改版記事のタイトルが「Who's behind the Wall Street protests?(ウォール街抗議者運動の背後には誰か)」として、修辞的な逆説に見せかけながら、背景のカネの動きに焦点を充ててきていることがわかる。
 ウォール街抗議者運動を裏で糸を引いている者や組織があるのか?
 直接的にはないと見るのが妥当だろう。
 ではこの運動はまったく組織的なカネの裏打ちなく手弁当で実施されているのか? 後から加わった労組や各種の主張のゴミ的団体にはそれなりの背景はあるのだが、ウォール街を狙うという中心的な抗議活動部分での、背景のカネを動きがないとまで見るのはむしろ不自然だろうし、間接的にはであるが、カネによってそれがソロス氏の思惑に繋がっていると見るのも妥当だろう。
 現状言えるのはこのくらいで、ロイターもやるなという印象ではあるが、ソロス氏の背景を考えると、さらにうさんくささは増す。
 ソロス氏はこの春に自己の保有金を売却していた。豊島逸夫ワールドゴールドカウンシル日韓地域代表による5月時点の記事「ソロス氏が保有金を売却 バブルに警戒感か」(参照)が日本語で読みやすい。一部、引用する。

 既に米ウォール・ストリート・ジャーナルの観測記事で著名投資家のジョージ・ソロス氏が保有金を売却していたことが伝えられていたが、日本時間17日早朝に発表された米証券取引委員会(SEC)への運用資産情報開示により、保有金約15トンのほぼ全量が売却されていることが確認された。


 なお最も大量に金ETFを保有しているので注目されているポールソンは売らず。前期も今期も3150万株(約97.6トン)保有継続である。
 ソロスは昨年のダボス会議で「金はバブル」と発言して警戒感を表していたが、ポールソンは「米国の量的緩和政策がインフレをもたらす可能性があるのでヘッジとして金を戦略的に保有する」と公言していた。

 ソロス氏の思惑をどう見るかなのだが、豊島氏はバブルの懸念としているが、今回の抗議運動の文脈に置くと、奇妙な図柄に見えるのは避けがたい。
 7月のMarket Hackブログ「ジョージ・ソロスが他人のお金の運用を止める理由」(参照)も類似の話ではあるが、こちらは投資規制から推測している。

ジョージ・ソロスが他人のお金の運用を止めると発表しました。
なぜか?


三番目の理由は法的規制で法務コストが嵩むという点です。これには運用資産や顧客数によって数段階のハードルがあると思います。ソロスの場合も米国証券取引委員会のルール変更で嫌気がさしたという事を投資家へのレターの中で言及しています。
 
ただ僕が考えるにソロス・ファンドくらいの規模になると法務コストをファンドの経費の中で落とすことはカンタンなので、これはファンドを閉じる「表向きの理由」でしょう。

 私は投資の素人なので基本を理解していないのかもしれないが、春時点でのこのソロスの奇妙な挙動についてはその後もよくわかっていないようだ。だが、これらが今回のウォール街抗議運動への賛同と調和していること、むしろ、カネが動いて調和していることは、薄気味悪い印象を強く残す。
 
 
 

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