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2011.08.03

BLOGOSへの転載をやめた理由について

 たまにBLOOGSさんからエントリーの転載を求められることがあって、次の新エントリーが上がった時点で「該当エントリーの転載、OKですよ」ということにしていた。だだ漏れ的に転載するのもなんなので、転載時にはエントリの新旧差を付けていた。
 転載を求められるエントリーはBLOGOS編集部から評価を頂いたものだと思うし、どういう基準で評価されるかはわからないでもなかった。
 そのうち、これは転載しないほうがいいなと思うエントリは、転載に不向きなような下品なギャグをわざと撒いておいたりもした。極東ブログというブログをそれなりに読んできた人や、それなりに読む価値があると思っていただける人でないとわからないエントリというのもあり、転載に向かない内容もある。その場合には自分なりの配慮をしていたつもりでもあった。口調が下品であることと内容の深みには関係ないが、広く公開される文章というのは逆の関係にあり、内容の深みがなくても口調がそれっぽいと多く支持されるものである。別の言い方をすれば、発表媒体がわかって合意しているなら、それっぽい文体に直して書くことはさほど難しいことでもない。
 その点で、「中国の高速鉄道事故についてあまり気の向かない言及: 極東ブログ」(参照)は、まあ、このブログをそれなりに読まれたことのあるかたにしてみると、レトリックだけ見れば、またやってらの類で、広く公開されるエントリーというタイプの趣向ではない。そこがわかればレトリックに拘泥もしないでしょ。
 はてなブックマークのコメントにryokusaiさんというかたが、「翁が韜晦しておきながらわかつてくれないと愚痴るのはいつものこと。韜晦した以上わからない奴が続出するのは当然だらうと私がブコメするのもいつものこと。」(参照)と書かれていたが、愚痴っているとか見るのは穿ちすぎだが、ああまたかの部類でしかないのはたしか。
 そうは言っても、BLOGOSのコメントのlparさんというかたが「すごい記事だな、新聞記事を並べただけで自説があるわけでもなく、理解できないって自分の馬鹿さをカミングアウトしてるだけ・・・」(参照)というのもしかたがないかとは思う。あー、馬鹿さをカミングアウトは毎度のことだけどね。
 同様、はてなブックマークコメントのA_Kamoさんの「なぜ人は自分の文章を読む人が、自分と同じ知識を持っていると期待してしまうのだろうか」(参照)だけど、いやいやそんな一般論じゃないっす。考えすぎ。
 まあ、うかつに転載許可を出しちゃった自分が、まさにうかつでしたねというのもあるけど、BLOGOSさんも炎上マーケティングネタだったのかなという疑念はちらとあった。が、そうではないというお答えもいただいた。素直に受け取っておきました。
 誤解なきように強調しておくと、BLOGOSの編集・運営にはなんら不満はありません。ついでに強調しておくと、BLOGOSに転載したからといって、なにか見返りということはありませんでしたよ。BLOGOS経由のPV(閲覧数)が増えるということはあるけど、このブログの場合、それほど大きな比率ではもない。大きな比率といえば、たまにYahoo!からリンクがあって、それはぐわんと来る。さほど見向きもされなかった過去エントリーにどかんとアクセスがあると感慨もある。よく過去エントリ見つけたね、というか。
 で、この件だが、潮時かなというのもある。このところ、ネット言論の劣化という大喜利があるが、劣化うんぬんというより、今回の事例でも思うのだが、書かれている内容への批判ではなく、書いている人への短絡的な罵倒が多い。率直なところ、私への罵倒だけという内容のコメントも増えてきた。さすがにこれは、公開したら訴訟するのが筋だろうみたなものは非表示にしたが、そろそろあれだなあ、エントリ内容への批判ではなく、私に対する罵倒や揶揄というコメントは、それだけで非表示にするかなと思うようにもなった。
 そうした矢先でもあり、転載先のコメント欄に、私に対する罵倒が並ぶのも、自分のうかつさはあるとして、もうなんか嫌だなと思うようになった。というわけで、罵倒OK牧場の転載はなしとし、またこのブログでも、私に向けた罵倒・揶揄というコメントは承認しないことにします。もちろん内容への批判は多いに受けます。誤解・誤訳の指摘はいただけるとありがたい。
 
 ちょっとおまけ。
 前回のdenden-cafeさん(参照)。


中国は日本からきちんと学んでいる」→国有鉄道の解体は日本から学んだけど、安全設計は学ばなかったって言いたいのかな。やっぱり何が言いたいのかさっぱりだ。このブログを読むには私の知性が足りないんだろう。 2011/08/02

 主語を補うとわかりますよ。「国有鉄道の解体は日本から学んだ」の主語と、「安全設計は学ばなかった」の主語ですね。知性の問題ではないですよ、ご心配なく。
 manga_kojiさんのツート(参照)。

中共が大きくなりすぎた鉄道利権を解体するイイチャンスだと思ってるだろう。とは思ってたよ。借金は方便でしかないでしょ。国鉄と同じで。資本主義では借金こそが財産だから。何で気が重いのかわからない。 / 中国の高速鉄道事故についてさらに気の向か… http://htn.to/V8Jvq

 簡単に「信用の問題」と返信しておいたけど、「資本主義では借金こそが財産」になるのは、信用がある場合。この程度の事態で、中国という信用は揺るがないというのは究極的にはそう。最悪、国家所有の土地を租界で売っぱらうとかいうのは冗談だけど国家にはその手の芸当ができる。それでいいじゃないかというのが、鉄道部。そうじゃなくて、その借金を特定の権力集団に集中させるのではなく、分割して国民の信頼に変更しようというのが今回の北京政府側の遠謀。これ、つまりかつての日本の基本政策と同じ。中国としては、あるべき共産主義を過去の日本に見ているというのが、21世纪网にCaves&Christensenの「The relative efficiency of public and private firms in a competitive environment:The case of canadian railroads」が引かれている理由。
 関連して、zi1chさんのツイート(参照)。

今回の方が何言いたいか分かりづらい気が…まぁ引用が多くて字面が長い、というのが読んでる側にとっては…ねw 要は中国は寄せ集めた鉄道一式を途上国に売りつけたい、のですかね?>中国の高速鉄道事故についてさらに気の向かない言及: 極東ブログ http://ow.ly/5TilG

 すでに返信しておいたけど、北京政府は債務という形であれ、より公平な中国国民が責任を持てる資産の形にしたいのですよ。まあ、それを郵貯みたいなもので吸い上げたらもう完璧かもしれないけど。
 もひとつおまけ。MFさんというかたのコメント。

 中国の鉄道省が上海(江沢民)派の巣窟で、今回の事故を奇禍として北京(共青団)派の胡錦濤等が上海派潰しの権力闘争を仕掛けているなんてことは、チャイナ・ウォッチャーにとっては常識的な見方に過ぎず、なぜ論点ぼかしをする必要があるのか分かりません。
http://melma.com/backnumber_45206_5245350/

 宮崎正弘さんがソースで比較されてもなあとは思うけど、「今回の事故を奇禍として北京(共青団)派の胡錦濤等が上海派潰しの権力闘争を仕掛けている」は全体構図のなかではポイントではないのですよ。なので、そう思われると論点がぼけてしまうのはしかたないでしょう。
 高速鉄道問題は、利権がからみ、言論が歪んでいるのは、かつての原発と似たような構造があって、なかなか発言しづらい。
 繰り返すけど、21世纪网にCaves&Christensenの「The relative efficiency of public and private firms in a competitive environment:The case of canadian railroads」が出てくるあたり、中国さらに大きく変わる可能性を秘めているんだなと、びっくりしていいとは思う。
 
 

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2011.08.02

中国の高速鉄道事故についてさらに気の向かない言及

 中国の高速鉄道事故について言及するのは、あまり気が乗らなかったが、実際に言及してみると予想通りの声援をいただいて、ぐんにょりした。
 「これはひどい」タグで有名な、はてなブックーマークだとこんな感じ。


denden-cafe 中国, 極東ブログ
この人の文章はいつも読みにくい。これを一読で理解できる人はエライ!訳文も地の文も全部読みにくい。読んでてイライラする。あと、「最高速度を30マイル/時に減速したからだった」は恥ずべき誤訳。 2011/07/31 ★(szow)★(szow)★(Desperado)
rhatter
気が向かないなら言及しなきゃいいじゃない。 2011/07/31 ★(dogen)★(nagaichi)
mangakoji
一般市民が利用できないですか。400円じゃなかったっけ? 2011/07/3110

 BLOGOSにも転載したらこんな感じ(参照)。

結局何が言いたいのか、さっぱりわからない。論点がずれていると書きながら、どこがずれているのかという自分の意見もなし。某巨大掲示板より酷い内容。
abendwolf1時間前
「ワロタ」5時間前
「ヒドイ」5時間前
「ヒドイ」6時間前
欧米は人口密度が低いので鉄道網は不要なのだろう。アメリカも渋滞が起きるのは大都市とそのアクセスだけで、そこから外れれば走っているのは見渡す限り自分1台なんていう移動状況なら鉄道経営が成り立つわけがない。
hanami87156時間前
すごい記事だな、新聞記事を並べただけで自説があるわけでもなく、理解できないって自分の馬鹿さをカミングアウトしてるだけ・・・
lpar6時間前
「ヒドイ」7時間前
「フーン」10時間前
「汚職がなんで事故に結びつくのか議論がよくわからないが」> 流れた金の分が要所でケチられるというのはよくある話。「民度が上がると安全性も向上すると言いたいのだろうか。よくわからない。」> 上がる可能性は十分にありますね。作ったのも運転しているのも人なんだから。新聞記事にケチをつけたいだけの空っぽ記事。
sijour10時間前
「フーン」11時間前
「ヒドイ」11時間前
「ヒドイ」12時間前
「フーン」13時間前
なんだこれ?
goo_goo_zzz13時間前
「ワロタ」14時間前
「スゴイ」16時間前
「ワロタ」18時間前
「ワロタ」18時間前
「ヒドイ」18時間前
「ワロタ」19時間前
「スゴイ」20時間前
「ヒドイ」20時間前
「フーン」20時間前
「ヒドイ」20時間前
「ワロタ」20時間前
「ワロタ」20時間前
この人って一般人?
matuyama5121時間前
「ワロタ」21時間前
分からないなら勉強してから記事を書いて欲しいですね。
sweetie100422時間前
「フーン」22時間前
何が言いたい? 含意がありすぎて微妙? それはアンタの訳がおかしいだけだろ。 instead of an accident waiting to happen. は<事故が発生するのを待たないで> つまりこういうことだ。 当然より良きものを知っている西側の人間が、事故発生を待たず、なんでシナの高速鉄道に着目し、それを合衆国のモデルだと考えたのか? と自嘲気味に問うているわけだ。 こんな糞技術、使い物にならんだろ! 誰だ、こんなものを導入しようとしたヤツは! という怒りが言外にある。 アメリカさんは分かりやすいわ。
golgochan1323時間前

 すごいね。
 ちょっと論点をぼかして書いたらこういうことになるんで、もうちょっと明確に書いたらどんなことになるのだろうかと、もうもうちょっと思った。ぐんにょり。
 さて、どうするかな。さらに気が向かない言及でもしてみますか。
 というのも、どうも、中国人なら常識レベルでわかることが、日本のニュースなど見るかぎり、誰も指摘しているふうもないようなので。
 まず前回のエントリだが、どこをぼかしたかというと、ワシントンポスト紙の前回の主張の部分をリンクに留めた点だった。たぶん、リンクをクリックして全体構図を読もうなんていう人はいないだろうなと。
 実は一番重要な点は、そのリンク先、2月16日のワシントンポスト社説「A lost cause: The high-speed rail race」(参照)の以下の部分なのである。

Chinese Academy of Sciences asked the government to reconsider its high-speed rail plans because of the system's huge debts.

昨年、中国科学院は中国政府に対して、高速鉄道建設案の再考を促したが、その理由は、巨額の債務を産むからであった。


 中国政府と中国科学院の関係は存外に難しい。いちおう中国科学院は行政に対する第三者機関であるというタテマエではあるだろうが、おそらく、特定の派にとって有利な政治的な提言として機能している。ということは、中国国内に、「高速鉄道建設案の再考を促」す勢力が存在しているのである。
 ここが、一番のキー。答えを先に言うと、そいつらは共青団、胡錦濤政権。ただ、他の勢力も利権の分散に預かる部分はあるのでグレーっぽい面はある。
 さらに何が問題なのかということを、これも結論から言うと、中国の高速鉄道事故で最大の問題は、技術力でも汚職でもなんでもなく、この高速鉄道事業を、事故をダシにして、体よく正義にかこつけて停止させること。
 さらに言うと、停止というのは、単に菅さんが原発を停止します、という軽薄なものではなく、高速鉄道を含めて現行の鉄道事業の権力集団を解体することにある。
 これでもわからない人が出て来そうだからもっと露骨に言うと、高速鉄道事故を推進している鉄道省を解体させることにある。
 なぜか。
 鉄道省が汚職の巣窟だからではない。この点は前回のエントリでも書いたけど、そもそも高速鉄道事業が利権のネタでしかないからだ。
 もっと重要なことは、ワシントンポストにある中国科学院が、なぜ、高速鉄道建設案の再考を促したかというキーの部分だ。
 なぜか。
 明確にワシントンポストに書いてあるが、「巨額の債務を産む」からだ。
 つまり、すでに中国の高速鉄道というのは、予想される「巨額の債務」をどうするかという問題なのである。
 さらにわからない人がいるかもしれないので、バナナのたたき売りみたいに簡単に言うと、日本の国鉄みたいに売り払ってしまえ、ということなのだ。
 現状の、中国の高速鉄道事故は、そうした政治的なフレームのなかで最適になるように、各勢力が毎度の中国活劇風に、奮闘している図なのである。
 妄想のように思われてもなんだから、もう少し補足しておく。
 矛先が鉄道省というのは、日本のメディアでも読めてきているし、東京新聞記事ではその利権の背景も記している。「「独立王国」高まる批判 鉄道省改革 避けられず」(参照)より。

 【北京=渡部圭】中国の高速鉄道事故で、温家宝首相は原因究明と調査過程の公開を約束したが、鉄道省や政府に対する国民の批判は依然根強い。政府は責任者の処分を迫られると同時に、これまで何度も失敗した鉄道省の改革がどこまで進むかが注目される。
 インターネット上では二十九日、温首相の発言を評価する一方、「高速鉄道は鉄道省だけでなく政府が認めた計画。誰が責任を取るのか」といった批判的な意見が噴出。上海鉄道局長ら三人の更迭だけでは国民の怒りは収まりそうにない。
 高速鉄道建設の巨額投資に伴い、鉄道省の権益は拡大した。同省は行政と企業が同一組織に存在する「政企合一」が特徴。計画も車両もシステムも自分たちで作り、強い独自性と権限から「独立王国」と言われる。一九八〇年代から何度も改革が試みられたが、独立は守られたままだ。
 今年二月、劉志軍・前鉄道相ら幹部が汚職容疑で更迭されたところに今回の事故が起き、国民の批判に拍車をかけた。行政と企業部分を切り離し、航空・道路行政と一体化した「大交通省」をつくる構想があり、政府関係者は「今回こそ改革は避けられない」と話すが、鉄道省側の激しい抵抗も予想される。

 老婆心的に言えば、くどいが、高速鉄道の問題は、技術の問題でもなければ、中国のあちこちで普通に発生する悪代官風汚職とかいう問題では全然ない。
 中国科学院が指摘するように、「巨額の債務を産む」だけのネタのお尻にもう火が付いて、中国政府が火消しの権力闘争に繰り出しているという図なのである。
 この事故で資金調達が健在化してボウボウと火が付いてもいる。WSJ「中国鉄道省の資金調達に支障も―高速鉄道事故が追い打ち」(参照)がわかりやすい。東京新聞と同じく、鉄道省と経済面の背景はこう。

死者40人、負傷者191人を出した7月23日の高速鉄道追突事故は、一般国民の怒りを買った。管轄の鉄道省は財務省以外では唯一国債発行を認められている政府機関で、政府内部でも投資家に対しても強大な力を持っていたが、今後は同省の影響力が弱まる公算が大きい。事故を受けて、既存債務を返済し、高速鉄道網建設に必要な追加資金の調達能力に関する疑問が浮上しているほか、一部では鉄道省の再編ないし解体を求める向きもある。

 くどいけど、正確にいえば、この事故をダシにして、胡錦濤政権側は、鉄道省解体を狙っている。
 ケツに火のついている状況に戻る。

 スタンダード・チャータード銀行のエコノミスト、スティーブン・グリーン氏は調査リポートで、「今回の事故で、鉄道省の運営慣行が注目を集めただけに、同省が債券市場に戻れるのはしばらく先かもしれない」と指摘。「資金繰りに困難が生じ、必然的に利払いが圧迫されるだろう」と語った。
 同氏は、鉄道省の鉄道運行によって、債務利子返済に十分なフリーキャッシュフロー(純現金収支、余剰資金)が得られるかどうか疑問だとしている。同氏や他のアナリストは、財務省がある時点で資本注入のため介入せざるを得ない公算が大きいと予想している。

 というか、そもそも、高速鉄道事業には、「資本注入のため介入せざるを得ない」ご事情があり、この機会に露見したということ。

 中央政府にとっては、鉄道省の苦境は、経済浮揚計画に伴う債務をめぐる懸念をさらに大きくするものだ。地方政府によって創設された特別借入機関もまた、膨大な債務にあえいでいる。その額は中国の審計署(会計検査院に相当)によれば、昨年は約1兆6500億ドルと、国内総生産(GDP)(GDP)の27%に達した。民間部門の推定は、これをさらに上回っている。

 この問題はさらに巨大なのでさすがにここでは触れない。鉄道省の実態に戻る。

 北京交通大学のツァオ・チェン教授(経済学)は、究極的には鉄道省は再編の必要があり、鉄道網の商業部分を政府管理から分離すべきだと説いている。
 中国では、鉄道事故以前からでさえ、高速鉄道網は汚職や一般市民の手の届かない高額の乗車料金などを批判されてきた。
 同教授は「高速鉄道を建設しても十分なキャッシュフローは得られない。キャッシュフローは乗客の数から来る」と指摘。「通常の鉄道を建設すべきだったが、市場の需要に呼応しない高速鉄道網を建設してしまった」と述べた。

 当初から採算性は無理だった。そして、「鉄道網の商業部分を政府管理から分離」とは、日本の国鉄のような売却を意味している。
 つまるところ、鉄道省の資産を売却して経営を分割すれば、そもそも高速鉄道なんか作れなくなる。いや、そこは中国だから、メンツは守るみたいなものは作るだろうけど。

 鉄道省の債務は近年、大きく膨らんだ。今年第1四半期末現在、同省の債務は1兆9800億人民元(約3070億ドル、約24兆円)で、中国のGDPの約5%相当と、2007年の約2%を大きく上回っている。
 事故前の7月14日付の鉄道債発行のための目論見書によれば、鉄道省は第1四半期の営業コストが営業収入を38億人民元上回ったと述べており、債務負担がさらに拡大した場合、利払い返済資金を確保するのに四苦八苦するとの見通しが強まった。
 グリーン氏は「営業収入の増加ペースが営業コストのそれを大幅に上回る兆候は全くない。実際にはその逆が真の姿になるかもしれない兆候がある」と述べた。

 鉄道省の債務と中央政府の関係は、こうなっている。

 鉄道債は中国政府の資金的な裏付けのあるソブリン債だ。それだけに、鉄道省が発行債券についてデフォルト(債務不履行)に陥るとの懸念はないが、地合いは発行元の鉄道省にとって逆風になっている。
 鉄道省と取引関係のある証券会社の上海駐在アナリストは、鉄道省は今年末までに1400億-1600億人民元の債券を発行し、昨年実績の2倍以上になると予想していた。しかし現在は、鉄道債への需要が弱まっているため発行規模は削減されるとみているという。鉄道省は今年これまでに既に1050億人民元の債券を発行済みで、昨年全体の1155億人民元を上回っている。

 中国政府としては国の建前上、対外的にも、鉄道省が発行債券についてデフォルト(債務不履行)にさせるわけにはいかない。かといって、鉄道省を温存させるわけにもいかないし、カネの問題はどっかでケツを拭かなくてはならない。
 中国国内の識者の世論でも全体方向性の準備を開始している様子は、21世纪网「改掉铁道部」(参照)などでも伺われる。訳はエキサイトを借りた。
 債務問題を明示している。

一旦铁路大建设期完成,必然形成两个局面:一个是大铁路网的完善,一个是债务问题的浮现。前者相当于形成了一个完整结构的路网资产,可以进行有序划分;后者则是改革前的消化,铁道部总负债现在是1.89万亿,几年之后数字会更庞大,利润却很微薄,可能最终需要进行财政的负担消化,从而完成“类银行改革”式的过程。

いったん鉄道の大きい建設期限は完成したら、必然的に2つの局面を形成します:ひとつは大きい鉄道網の完備で、ひとつは債務の問題の浮かぶことです。前者は1つの完備している構造の道路網の資産を形成したのに相当して、秩序がある区別を行うことができます;後者は改革の前の消化で、鉄道部の総括的な借金は今1.89兆で、数年(以)後に数字ができるのは更に巨大で、利潤はとてもわずかで、恐らく最後に財政を行わなければならない負担の消化、それによって“種類銀行の改革”の式の過程を完成します。


 その解決の方向性もちゃんと示している。

自从经济学家Caves和Christensen在JPE发表经典论文《The relative efficiency of public and private firms in a competitive environment:The case of canadian railroads》以来,英美式私有化下的网运分离改革有了对抗性的理由,而日本的成功改革证明了论文所言的“所有权和生产效率是无关的,可以将路网资源划分给不同的客运货运公司,让其先在管辖的区域内优化,然后鼓励跨界竞争(包括渗透到对方公司区域建设新路网),同样达到好的效果”。

経済学者CavesとChristensenからJPE発表のすばらしい論文で《The relative efficiency of public and private firms in a competitive environment:The case of canadian railroads》になるから、英のアメリカンの私有化のおりるネットが分離の改革を運んで対立性の理由があって、日本のみごとには証明の論文の“の所有権の生産効率がなことと関係がないを改革して言った、道路網の資源を異なる旅客輸送貨物輸送会社に区別することができて、初めは管轄の地区の内で合理化することを譲って、それから界の競争(相手会社の地区にしみ込んで新しい道路網を建設することを含む)にまたがることを励まして、同様に良い効果を達成します”。


 自動翻訳なので日本語として読みづらいが、ようするに中国政府は、日本の国鉄売却をきちんと学んでますよということだ。
 そう、中国は日本からきちんと学んでいるということなのだ。

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2011.08.01

オスロ事件の印象

 もうさほどニュースにも上らなくなったオスロ事件だが、あれはなんだったのだろうか。亡くなられた方を哀悼したい。
 私が当初連想したのは三菱重工爆破事件とテルアビブ空港乱射事件だった。菅首相の世代の日本人が引き起こした事件と言ってよいのではないか。日本人もやりそうな事件だなとまず思った。
 英米圏はどう受け止めているのだろうか。渦中、いくつかニュースにあたってみると、彼らはオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件を連想しているようだった。ティモシー・マクベイがよく引き合いに出されていた。なるほど、類似点はある。
 その後、容疑者がインターネットにアップロードしたとされる1500ページもの文書にユナボマーの引用があるというのも話題になあり、その線の話や、また「ターナー日記(The Turner Diaries)」を引いた論評なども見かけた。なんとか、この事件を物語り的に理解したいということなのだろう。
 日本ではというと、移民排斥の右派思想が暴走したというストーリーが好まれていた。容疑者が会いたい人物として、麻生太郎を上げていたので、これ幸いと右派的な傾向と結びつけている短絡な反応もツイッターなどでよく見かけた。
 容疑者が一番会いたい人物が教皇で、自身もテンプル騎士団になぞられているのだから、まずキリスト教の文脈でもありそうなものだが、人はそれぞれ自分の正義に都合のいい勝手な物語を事件に投げかけていた。不安で思想的に誰かを攻撃したいという心情があるのかもしれないが、それこそがこの事件と相似の印象を与えてもいた。
 そしておそらく、それがこの事件の副作用的な本質なのかもしれないが、そうした物語の読みはたいがい、ハズれている。
 この事件はなんなのか。
 ネットを探ると該当の1500ページの文書は容易く入手できた。ワードで書いたものがPDF化されていた。パラパラと読むだけでわかるが、端的に言うと、コピペ集だった。
 容疑者自身の文章もあるにはあるが、危険思想といったほどの思想的な趣はない。一種の文明史観の亜流のような印象があり、日本でいうと、意外と「ネオリベ」をキーワードに批判している一群の評論のような、反グローバルな思想に近い。
 他、想像の逸脱は諸処にあるものの、神秘主義やオカルトが強く漂うということはないようだった。もっとも、同じく公開されたユーチューブの映像のほうは、寄せ集めた映像のせいか、かなり馬鹿馬鹿しさが漂っている。
 該当文書で多数引用されているのは、Fjordmanというブロガーによる議論である。ブロガーといっても、この人はそれなりに体系的な思索をする人で、日本で言ったら西尾幹二に近い印象を持った。事件後だが、Fjordman自身もこれには迷惑を覚えたようで、自分はこの血なまぐさい事件には関係ないですよといった声明を出していた。
 容疑者の右派思想とされている根にあるものは、多分にこのFjordmanの思想なのだが、大手のメディアでもブログなどでも、それを論じ分ける人は見かけなかったように思う。それも不思議といえば不思議な印象を受けた。みなさん、現物を読まなかったのだろうか。
 つまらない文章だなと思いつつ、私はパラパラと捲っていた。が、さすがにこれは奇っ怪だなと思ったのは、今回利用した爆弾を製造していく日記の部分である。そこには、計画的に、緻密に、素材を集めて、実験して作成していく勤勉な人のようすがあった。これもどことなく業務日誌といった風情に近い。作っているものは市民社会を爆破するとんでもないものなのだが、文章に狂気が漂うというふうでもない。
 巻末近くは、面白いというのもなんだが、想定問答集が載っている。容疑者にインタビューしているといった趣向で、先の麻生太郎の名前もそこにあるのだが、これを読めば、まあ、ご当人有名人物気取りでいる心情がわかって、痛い。
 メディアに流布されている写真も、この文書の巻末に写真集としてまとめられていたもので、それを見ても、普通に立派になったボクちゃん幻想が滲んでいる。

 本人談では、数世紀にわたるイスラム教徒によるヨーロッパへの植民地化を終わらせるための革命を準備した先制攻撃だというのだが、一歩一歩念入りに作り上げちゃった幻想なのではないのか。
 なんというのか、地味に着実にポジティブに事業計画を遂行していくことで、せっせと自己幻想がきちんと成長していって、どっかで引き返せなくなっていったのではないかという印象が私にはある。方向性が違っていたら、鳥かなんかを神風特攻隊に模したスマートフォン向けゲーム会社でも作って成功していたかもしれない、といったような。
 BBCには容疑者の学生時代の知人の談話があった(参照)。学生時代の友人は、容疑者の写真を見てご当人だと認めつつも、そんなやつではなかったんだがなあという話になっている。
 重大な犯罪者の過去を探ってもなにもないという類型の一つのようだが、その話を聞きつつ、描かれる青年の凡庸さが、むしろ、あの文書の凡庸さと釣り合っている。
 学生時代の思い出で容疑者で多少変わった点といえば、ウエイトリフティングへの固着があったことだ。そのあたりも、今回の爆弾作りと似ている印象はぬぐえない。他にも「コールオブデューティ、モダン・ウォーフェア2(Call of Duty: Modern Warfare 2)」 といったゲームが好きだと漏らしていたようだし、そのあたり、うへえ気持ちわるいなコイツ、といった像も描けないわけでもない。でも、そんなやつは世界にごろごろしている。
 容疑者の個人史などもいろいろ研究もされるのだろうが、なんとなくの印象だが、大事件を説明する、詰めの決定的な要素というのは出てこないのではないか。
 「継続は力なり」、赤尾の豆単に載っていた言葉ではなかったかと思うが、凡庸な人間でも継続していけば力がつくといった意味だった。今回の容疑者を見ていると、凡庸な人間が、小さな継続していくと大きな狂気になるのではないかとも思える。
 むしろ狂気というのを見るなら、地味にこつこつ1500ページのコピペ集を作ってしまうという律儀さにあるかもしれない。それをいうなら、きちんとブログを何年も書き続けている人間なんていうのも、ご同輩。

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2011.07.31

中国の高速鉄道事故についてあまり気の向かない言及

 中国の高速鉄道事故について言及するのは、あまり気が乗らない。中国を愛する隣国民として、いくらその愛ゆえの叱咤とはいえ、口を開いたらあまりにもきついものになりそうだし。それ以前に被害に遭われたかたにも同情するし、亡くなられたかたには哀悼したい。
 とはいえ、今朝の毎日新聞社説「論調観測 中国の高速鉄道事故 安全軽視に厳しい目を」(参照)を読んでいて、なんとも論点が外れているものだなと思った。同社説は、この間、中国の高速鉄道事故を論じた大手紙社説をブログのエントリ風に俯瞰している。
 読売は「安全軽視論」として、こうまとめられている。


 国内紙の社説では、高速鉄道が国威発揚に利用され安全が後回しにされた、との論調が目立った。例えば「安全軽視が招いた大事故だ」の見出しを掲げた読売は、「北京五輪や上海万博、共産党創設90年などに合わせて、短期集中の突貫工事で進められた」と指摘している。

 当の毎日新聞は「構造的汚職論」である。

 毎日は、国威発揚の体質と構造的な汚職を結びつけ、それが今回の事故の根底にあると論じた。前鉄道相、前副技師長らが総額二千数百億円相当の賄賂を建設業者から受け取った容疑で逮捕された例を紹介。「事故原因の徹底究明とともに汚職体質の改善が必要」と根っこからの改革を求めた。

 汚職がなんで事故に結びつくのか議論がよくわからないが、汚職で安全が軽視されてということなのだろうか。汚職があっても安全は重視される可能性もあるのではないか。汚職が払拭されると安全になるとか、まさかね。
 「日本ならこんなことはない論」としては、読売と産経が上げられていた。そういえば、NHKなどでもこうした識者の声をよく拾っていた。

 日本との違いに言及した社説もあった。「日本の新幹線は、完全に独立した専用軌道上を徹底したコンピューター制御によって走らせる方式で、中国のものとは根本から異なる」(産経)、「日本の新幹線は開業から47年目を迎え、列車事故による乗客の死者がゼロという輝かしい記録を持っている」(読売)といった具合である。

 韓国紙も取り上げていた。「他人事ではない論」ということころだろう。

比べてみると興味深いのが韓国の反応だ。主要紙の朝鮮日報と中央日報は、中国の事故を韓国高速鉄道(KTX)が抱える安全上の不安に引き付ける形で社説に取り上げた。KTXでも故障や事故が多発し、当局が韓国鉄道公社の監査に乗り出す事態になっているからである。

 かくして、この毎日新聞社説のまとめはというと、こうである。

「安全」には報道の厳しい監視と国民の要求度の高さも不可欠。それを抑圧し続けるようでは中国の安全向上は望めないのではないか。

 民度が上がると安全性も向上すると言いたいのだろうか。よくわからない。
 はて? 朝日新聞社説はどうした? 毎日新聞のまとめには朝日が名指しされていない。日経もか。
 25日付け朝日新聞社説「中国鉄道事故―背伸びせず原因究明だ」(参照)だが再読して、なるほどたいして論点もない。読売の「安全軽視論」と同じ。

 しかし中国の高速鉄道には、安全性に問題があるとの指摘が続いていた。
 肝心の技術が長年をかけて培ったものではなく、各国からの寄せ集めのため、不具合が起きやすいという見方があった。また、突貫工事で架線や信号などのシステムの安全性を軽視している、との声も出ていた。

 日経新聞社説「理解しがたい中国の高速鉄道事故対応」(参照)も似たようなもの。

 時速250キロ以上という高速鉄道が中国で本格的に運行し始めたのは2007年。それからわずか4年で運行距離は日本の新幹線の3倍にまで伸び、最新の区間では時速300キロ以上も達成した。当局者は「いまや日本の技術を上回る」と豪語し、海外輸出にも乗り出していた。
 一方で、車両技術の混在のほかにも安全面の不安を指摘する声が出ていた。国威発揚を兼ねて突貫工事を進めてきたうえ、今年2月の劉志軍・鉄道相解任が示したように汚職がまん延しているため、手抜き工事を疑う声も多かった。

 たいした論点でもないが、「海外輸出にも乗り出していた」は、ポイント。
 どこに? 米国へである。
 米国と高速鉄道網といえば、いろいろ誤解も受けて閉口もしたが、「新幹線など高速鉄道はどこの国でも重荷になるだけらしい: 極東ブログ」(参照)が連想される、というか、ワシントンポストは、この事件をどう見ているかな、と。
 28日付け「The politics of China’s high-speed train wreck」(参照)がそれなのだが、さすがに辛辣極まる。

Many of those who questioned the economics of high-speed rail in China also argued that authorities were cutting corners on safety in their rush to build the world’s largest bullet-train network. Those accusations, too, received tacit confirmation when China announced in April that it would cut the trains’ top speed by 30 miles per hour.

中国の高速鉄道の経済性に疑念をもった人の多くは他面、中国当局が、世界最大の高速鉄道網構築に際し、安全面の抜け道をしていたと非難していた。こうした非難がこっそりと受け止められていたのがわかったのは、中国が列車の最高速度を30マイル/時減速したからだった。


 中国が理論上の最高速度から、華人商売らしく、安全に対する分だけ速度の値引きをやってのけた。そこに、事前に律儀なメッセージ性があったわけだが、ワシントンポストの論調で重要なのは、「those who questioned the economics」というあたりだ。先のエントリでもロバート・サミュエルソンらの論にあわせて触れたけど、そもそも高速鉄道は経済性がないということだった。
 どういうことなのか。

After a minimum of public discussion and despite contrary expert advice, the nation’s unelected rulers decided to spend hundreds of billions of dollars on a mode of transportation that many, if not most, ordinary Chinese cannot afford to use. As the cash flowed, well-connected officials lined their own pockets.

ろくに議論もせず、専門家の助言に反してまで、選挙を経ない中国為政者たちは、「大半の」とまでは言わないにせよ、一般の中国市民が利用できないような輸送手段に数千億ドル使うと決めたのだった。現金が流れるにつれ、コネのある役人が私腹を肥やした。


 もともと採算性がなく、一般市民が利用できない高速鉄道に巨費を投じたのは、そもそもこれをカネヅルにして儲けるという、よくある中国ビジネスのネタだったからだ、とまでワシントンポストは言うのである。きついな。
 さらに言葉がきつい。

In short, the high-speed rail program operated pretty much as you would expect in a one-party state with a controlled media and no effective checks and balances.

手短に言えば、一党独裁でメディアを統制し、市民の目が届かなような状況で、ご期待通りの結果になりましたというのが、高速鉄道計画なのである。

The only mystery is why people in the West who should have known better looked at high-speed rail in China and saw a model for the United States — instead of an accident waiting to happen.

不思議なことは、分別をわきまえている西側諸国の人々が中国高速鉄道を注視して、米国のモデルになると見たのはなぜかということだ。こういうことが起きるんだろうと見るのではなくて。


 含意がありすぎて微妙なんだが、高速鉄道に対する"effective checks and balances(効果的なチェック&バランス)"というのは、文脈上、経済性ということでもある。高速鉄道の採算性というのが、安全性の確保を含むのだと理解していいだろう。
 ワシントンポストとしては、高速鉄道網というのは、日本が例外的にできる不思議なものというくらいの認識なのだろう。

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