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2011.04.08

福島第一原発1号炉は地震当日に空焚きが想定される状態になっていた

 福島第一原子力発電所の事故でいろいろと興味深い評価や事実が明らかになるが、今日明らかにされた、3月11日・12日の1号機の状態についてのニュースを聞いたときは思わず声が詰まった。想定外ではない。逆で、あの時点でメルトダウンを懸念した想定に近かったからだ。現状ではまだ詳細は明らかになっていないが、現時点の報道だけでも十分に興味深いので留めておきたい。
 ニュースは午前7時17分のNHK「1号機 震災の夜に燃料露出直前」(参照)である。


 東京電力、福島第一原子力発電所の事故で、1号機では、先月11日の地震当日の夜までに原子炉の水が核燃料が露出する直前まで減り、安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことが、NHKが入手した資料で分かりました。専門家は「その後さらに水が減り、核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。

 1号機の原子炉では、地震当日にすでに空焚きが想定される状態になっていたということだ。NHKのニュースではこの事態を水素爆発の文脈で見ているが、むしろ燃料棒の破損が想定される事態であり、それが球形状の炉の底に貯まれば再臨界が懸念される状態だった。この点はこのタイプの炉の設計に関わった大前研一氏も指摘していた(参照)。
 NHK報道によれば今回の資料はNHKが入手したらしいが、なぜこれまで公開されなかったはNHKのニュースでは触れていない。

NHKが入手した資料には、地震当日の先月11日に福島第一原発の1号機から3号機で測定された原子炉の「水の高さ」や「圧力」などの値が示されていますが、東京電力などは、これまで地震の翌日以降の値しか公表してきませんでした。

 11日時点で1号機原子炉は空焚きが想定される事態になっていたのだが、その理由についても興味深い指摘がある。

資料によりますと、1号機では、地震発生から7時間近くたった午後9時半に、原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていたことが分かりました。1号機から3号機では、地震と津波によってすべての電源が失われ、2号機と3号機では非常用の装置で原子炉を冷やし、水の高さが4メートル前後に維持されていました。これに対し1号機では、地震当日の夜までに、すでに安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことになります。

 1号機の冷却機能は2号機・3号機とは異なる問題があったということだが、これは従来津波によって冷却機能が失われたとする説明以外に、そもそも1号機には冷却機能自体に問題があった可能性も示唆するだろう。

また核燃料が水から露出するまで、2号機と3号機では、地震から1日半から3日程度かかっているのに対し、1号機では18時間ほどしかありませんでした。東京大学の関村直人教授は「1号機では、『冷やす機能』が維持できなくなったあと、さらに水が減り核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。一方、東京電力は「調査はこれからで詳しいことは分からない」と話しています。

 関村直人教授の説明は特に意味のあるものではないが、東京電力側は未調査であるとしている点は気になる。
 類似のニュースだが微妙に異なるニュースが今日10時32分付けで日経Quick「福島原発1号機、3月12日朝に燃料棒一部露出 東電が公表」(参照)で報じられた。

 東京電力(9501)は8日午前、東日本大震災が発生した直後の3月12日朝の段階で福島第1原子力発電所の1号機の燃料棒が露出する事態になっていたことを明らかにした。震災発生後の3月11日19時30分以降、3月13日7時30分までの原子炉内の水位や圧力容器、格納容器の圧力のデータを1~3号機について初めて公表したことで分かった。東電は国のホームページに出ていたデータであることを説明。「隠していたつもりはない」と話している。

 NHK報道では資料をNHKが入手したとあったが、日経報道では今日になっての東電側の公表としている。「東電は国のホームページに出ていたデータである」とし、「隠していたつもりはない」としているのだが、そうであれば「初めて公表した」という文脈とのつながりは理解しづらい。なお、原子力技術協議会では11日22時以降の主要パラメータは公開されている(参照)。

 公表データによると、1号機の原子炉内の水位がマイナスに転じたのは3月12日8時49分。マイナス300ミリメートルだった。マイナスに転じることは燃料棒が一部露出したことを意味するという。その後、水位の低下は進み、3月13日7時30分にはマイナス1700ミリだった。
 データをとれなかった時間もある。3号機の水位は3月12日21時時点でプラスを維持したが、その後は計器不良でデータがなく、3月13日の午前5時にマイナス2000ミリメートルに低下した。

 この部分の日経報道はNHK報道とは異なっている。NHKの報道からは地震当日に空焚き想定される事態が読み取れるが日経記事は伝えていない。従来からの各種報道からすればこの点に触れない日経報道のほうが整合的であろう。ただし、12日午後2時に炉心溶融の可能性に保安院が触れた点について日経報道では水位マイナスが12日午前8時49分であったと注視している点で、保安院の判断の遅れは読み取れる。
 今日の午後になり各種報道機関がこの問題を取り上げた。
 毎日新聞「福島第1原発:1号機初日から水位低下 燃料棒露出寸前に」(参照)では、情報の入手経路は明確にはされていないが、内容はNHKと同じ。だが東電側については興味深い指摘がある。

当日の水位データを発生から4週間近くたって公表したことについて東電は「これまではデータが整っていなかった。国には随時報告しており、隠す意図はなかった」と説明している。

 事実であれば、東電側の問題というより、国側の政治的な判断でこの情報の公開は遮断されていた可能性がある。
 毎日新聞報道と類似の報道が時事「炉水位データ、一部公表せず=地震当日、1号機で急減-福島第1原発」(参照)である。

 東電はこれまで1~3号機の炉内水位や圧力などを示すデータを3月13日午後8時以降について公表してきた。東電は8日、「データに欠けた部分があったため公表しなかった。隠すつもりはなく、国へは報告している」と釈明した。

 これに対して、東京新聞「震災当日に炉水位急減 福島第一のデータ公表」(参照)ではいっそう興味深い話を伝えている。

 公表が遅れたことについて東電は「報道機関に言われたから出した。隠していたように言われるのは心外」と説明している。

 背景ははっきりしないが、経緯から推測すると、NHKの独自報道が問題になり、報道機関が疑問視したので、東電側も出したが、事前に国には公表していたので隠していたわけではないということなのだろう。
 朝日新聞報道「本震7時間後に燃料露出寸前の状態 福島第一原発1号機」(参照)も東電側の弁明を伝えている。

 東電はこれまで13日以降のデータ一覧のみ公表していた。「地震直後のデータは欠落が多かったので入れなかった。個別に聞かれれば答えた。国も公表していた」と説明している。

 東電としては、聞かれなかったから答えなかったので、今回は聞かれたので答えるというのである。ジャーナリストにより仕事するよう叱咤していると受け止めてもよいかもしれない。
 いずれにせよ東電側としては11日の事態を、問われなければ公開する必要もない事態と見ていたことは確かであろう。それはなぜだろうか。共同「福島第1、地震当日夜に水位低下 1号機」(参照)は12日時点に焦点を置いているが、ヒントもあるかもしれない。

 東京電力は8日、東日本大震災が起きた3月11日の夜に、福島第1原発1号機の原子炉の水位が下がり、燃料が露出するまで残り45センチの状態になっていたことを明らかにした。
 通常より100センチほど低い水位という。東電は「水位は燃料よりは上にあり、安定していた。減った原因は分からない」としている。
 水位は11日午後9時半に燃料上端から45センチの高さになったが、圧力容器内の圧力を格納容器内に逃がすことで、12日午前0時半には130センチまで回復した。
 ところが、12日午前7時ごろから、圧力容器内の蒸気を凝縮させて水に戻す「非常用復水器」の弁が開かなくなってシステムが機能しなくなり、再び水位は急低下。同日午前8時半ごろ、燃料が露出したとみられる。

 疑念を持って見るなら、12日に水位回復したので11日時点の空焚きへの危機はなかったことにしようというモチーフがあったのかもしれない。
 実際、12日時点の報道では、空焚きではなく一定の水位が保持されていることを条件に、危機的な懸念の声についてデマや不安をかき立てる不穏な声として非難されていたものだった。
 先の朝日新聞記事でもこれに関連した指摘がある。

 1号機の水位は11日午後9時半、燃料上端から45センチまで下がった。炉内の圧力を減らしたら上昇に転じた。下がった理由は不明だが、その後しばらく水位を制御できたことから、東電は地震での損傷による可能性は低いとみている。

 空焚き想定後に水位制御が出来たので東電側としては大きな問題としていなかったのかもしれない。
 いずれにせよ、空焚きの懸念は国側には伝達され、当然原子力安全委員会にも伝達されていたのだろう。その様子が見えないことは6日の枝野長官もよく認識していた(参照)。原子力安全委員会の動きが見えないことは当然だとも枝野長官は述べていた。

 「今回の事故については、事態がある程度収束すれば、その時点で第三者的に、客観的に検証いただいて、問題点があれば改善をすべくしていきたいと思っているところだ。ただ、原子力安全委員会が外から見えにくいことについては、この間、特に事件事故の発生当初は、ご承知の通り、まさに日々というより時間単位、分単位で状況が変化する中での対応だった。原子力安全委員会の専門家の皆さんに、ある意味で、情報の共有と分析をまさに同時並行で原子力安全保安院などともしていただき、そこでご意見をいただくオペレーションが数日、あるいは1週間程度続いていた。逆にその間、原子力安全委員会としての動きで見えなかったらある意味、そこは当然だろう。事態がある程度落ち着いて、時間単位、半日単位の段階になったら、原子力安全委員会としての独立した見解はその都度、出してもらうようになってきていると思う。その上で、今回の対応は、100点満点だったのかどうかについては事後的に第三者の皆さんに、政府も含めて検証いただく必要がある

 100点満点かどうかについての検証ならそれほど難しくないが、何点とするかについては、今後非常に難しい問題にはなるかもしれない。

追記(同日)
 NHK報道の「原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていた」は、ほぼ空焚きと見てよいのではないかと思ったが、燃料棒の露出ではないので「空焚き」は言い過ぎではないかとの指摘を受けた。確かにそれもそうで、センセーショナルに語る意図はないので、本文も「空焚きが想定される」と表現をあらため、タイトルもそれに合わせた。なお、その後、1号機の燃料の70%は破損した。

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2011.04.07

マーキー米下院議員は福島第一原発2号炉の底は抜けていると主張

 福島第一原子力発電所2号機の圧力容器の底が抜け、中の核燃料が格納容器に漏れ出しているという話を民主党エドワード・マーキー(Edward J. Markey)米下院議員が持ち出し、米国で話題になっていた。
 2号機の炉内の核燃料が漏れているのではないかという話題は、3月29日付けガーディアン記事「Japan may have lost race to save nuclear reactor」(参照)が取り上げたことがあるが、同記事は福島原発が設置された時代、ジェネラル・エレクトリック(GE: General Electric)で沸騰型原子炉の安全性研究部門長であったリチャード・ヘイヒー(Richard Lahey)氏のコメントによるもので、国会議員が関与したものではない。その点が今回とは異なっている。なお、ガーディアン記事は共同でも報道されたので参考までに引用しておこう。「福島2号、核燃料が炉外漏出か 英紙で専門家指摘」(参照)より。


 29日の英紙ガーディアン(電子版)は、福島第1原発2号機で、核燃料の一部が溶融して原子炉格納容器の底から漏れ出しているとみられると、複数の専門家が指摘しているとし、現地での大量の放射線放出の恐れが高まっていると報じた。
 2号機では建屋内で高い放射線量のたまり水が見つかった。原子力安全委員会は原子炉圧力容器が破損した可能性があり、溶融した燃料と接触した外側の格納容器内の水が直接流出したとの見方で、燃料自体の漏出までは言及していない。
 同紙によると、福島原発の原子炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で福島原発建設時に同型炉の安全性の研究責任者を務めた専門家は、少なくとも溶融した燃料が圧力容器から「溶岩のように」漏れ、格納容器の底にたまっているようだと説明。
 その上で同紙は格納容器も爆発で破損し、核燃料が容器外に出ている可能性を示唆した。

 今回のマーキー議員の話題の概要は、今日付けの朝日新聞記事「米議員「核燃料、圧力容器破って落下」 専門家は否定」(参照)がマーキー議員のスタンスを含め手短にまとめている。

 米下院民主党の有力者マーキー議員は6日、下院エネルギー・商業委員会小委員会の公聴会で「福島第一原発2号機の核燃料は非常に高温で、おそらく圧力容器を溶かして破って落下している」と述べた。米原子力規制委員会(NRC)からごく最近得た情報としている。
 圧力容器を覆う格納容器側に壊れた燃料が漏れ出ている可能性があるという認識を示した。
 同公聴会に証人として出席していたNRCのバージロ原子炉・防災副部長は、この発言に答える証言はしなかったが、米紙ウォールストリート・ジャーナルなどの取材に対し、「日本に派遣しているチームから今朝あった報告には、そのような内容はなかった」と否定した。ただ、1~3号機の核燃料がかなり損傷しているとの認識は示した。
 マーキー議員は原子力に批判的なことで知られている。(ワシントン=勝田敏彦)

 この話題は、今日付け日経新聞社記事「米NRC幹部「福島原発、安定した状況でない」 」(参照)から窺えるが、同記事には逆になぜかマーキー議員の言及がない。

【ワシントン支局】米下院エネルギー・商業委員会の小委員会が6日に開いた福島第1原子力発電所の事故に関する公聴会で、米原子力規制委員会(NRC)のバージリオ副局長は「状況は安定していない」と証言した。ただ、NRCのクール上級顧問は、「放射線の状況は次第に良くなっている。放射線量は減少してきている」と証言。「現時点では、原発周辺地域は安全だ。日本の一般市民に危険を及ぼす可能性はない」と語った。
 バージリオ氏は、原子炉の炉心が過熱状態になる危険性について「ある」と明言。炉心の冷却状況に関する情報から、「炉心が水に覆われている時といない時がある」と分析。「覆われていない時には過熱の危険性がある」と述べた。また、米ダウ・ジョーンズ通信によると、公聴会後記者団に対して、「事故後これまで、どの原発炉でも炉心が格納容器から溶けて出たとは考えられない」と語った。

 日経新聞の記事をそのまま読むと奇妙な印象受けるだろう。「事故後これまで、どの原発炉でも炉心が格納容器から溶けて出たとは考えられない」という応答の背景となるマーキー議員の話題が抜けているからである。
 話題のバランスとの点では、今日付けのブルームバーグ記事「米原子力規制委:福島2号機圧力容器、溶けて損傷と認識-下院議員」(参照)がわかりやすい。

 4月6日(ブルームバーグ):米原子力規制委員会(NRC)が福島第一原子力発電所2号機について、原子炉の過熱に伴い圧力容器が溶けて損傷している可能性が高いとみていることが分かった。エドワード・マーキー米下院議員(民主、マサチューセッツ州)が6日、下院エネルギー・商業委員会の小委員会の公聴会で明らかにした。
 マーキー議員の広報担当ジゼル・バリー氏は、福島第一原発2号機の状況に関する情報は、議員のスタッフとNRCとのやり取りで明らかになったと説明している。
 一方、NRCの原子炉・危機管理プログラム担当のマーティン・バージリオ副局長は公聴会後に記者団に対し、NRCは「炉心容器が壊れている」とは考えていないと述べ、日本に駐在するスタッフから毎日数回の報告を受けているが、破損について言及はないと指摘。「圧力容器が失われれば、最後の防御壁の格納容器しか残らない」と付け加えた。
 バージリオ副局長は、東日本大震災の余震が続く中で、燃料棒の過熱を防ぐために使われる水によって圧力容器を覆う格納容器が壊れやすくなっているとの米紙ニューヨーク・タイムズの報道について、同紙が引用したNRCの報告は承知していないと語った。

 ブルームバーグ記事からは話題の流れは理解しやすいが、当のNRCがこの問題をどう考えているかについては矛盾してるようにも見える。ただし、記事のトーンとしては漏出の危険性を示唆しているだろう。
 この話題を扱っているダウジョーンズ記事「Conflicting Details Emerge About Status Of Japanese Nuclear Reactor」(参照)は、この矛盾に焦点を当てて話題にしている。

WASHINGTON -(Dow Jones)- There is conflicting information over what details U.S. officials know about a damaged Fukushima Daiichi nuclear reactor in Japan and the threat it poses.

日本の損傷した福島第一原発とその脅威の詳細について米国高官が知る情報に矛盾がある。

On Wednesday, Rep. Ed Markey (D., Mass.) raised alarm bells when he claimed that the U.S. Nuclear Regulatory Commission believes the core of Fukushima's Unit Two had "gotten so hot that part of it has probably melted through the reactor pressure vessel."

水曜日のこと、福島原発2号機原子炉が過熱によって原子炉圧力容器からその一部が溶けだ出た可能があると米国原子力規制委員会(NRC)は見ているとマーキー米下院議員は主張し、警笛を鳴らした。


 当然ながら同記事構成はブルームバーグ記事と同じでバージリオNRC副局長による否定も掲載している。つまり、マーキー議員が情報源としたNRCの見解と、バージリオNRC副局長の見解は矛盾しているということである。
 NRCとしてはどうなのか? 公式には、2号機の原子炉圧力容器から核燃料が溶け出したという言及はないとしてよい。
 実態はどうかについては、限定された情報からわかるわけもないのだが、ニューヨークタイムズは「Core of Stricken Reactor Probably Leaked, U.S. Says」(参照)で、マーキー米下院議員とバージリオNRC副局長との対立だけではなく、識者の検討も加えて検討している。
 2号機原子炉の底が抜けるとしたらそれはなぜなのか。現状の日本の報道では、原子炉の加熱は、核分裂反応が停止した後の崩壊熱として説明されているが、同記事では専門家からの指摘として「a resumption of the nuclear chain reaction(核連鎖反応の再開)」を上げているのが興味深い。原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続すればこれは臨界になるのだが、同記事には臨界(criticality)という言葉は使われていない。また別の専門家に福島第一原発の燃料では連鎖反応は起らないか起こらない(difficult or impossible)というコメントも併記している。
 ニューヨークタイムズ記事では東電側の見解も掲載している。この見解は、NHKなどの報道を通しても聞くものでもある。

Linda L. Gunter, a spokeswoman for Tokyo Electric, dismissed the N.R.C. analysis, saying Thursday morning, “We believe the containment for the reactor is still functioning at Unit 2; however, the damage to the suppression pool may be the source of the radiation.”

東電広報のリンダ L.ガンターは木曜日の朝、「私たちは、2号機の反応炉の封じ込めはまだ機能していると信じている」と延べ、NRCの分析を退けたが、「しかし、サプレッションプールへの損害が放出源かもしれない」とも述べた。


 NRCの見解を退けたというニューヨークタイムズの書きぶりを見ると、同紙からは、NRCが2号機原子炉の底抜けを想定しているという印象がある。それを補強するようなコメントもやや誘導的だが掲載している。

But a spokesman for the Nuclear and Industrial Safety Agency of Japan said that he was familiar with the N.R.C. statement and agreed that it was possible the core had leaked into the larger containment vessel.

しかし、原子力安全・保安院広報は、NRC声明も馴染んでいるし、炉心がより大きな格納容器に漏れている可能性も同意していると述べた。


 このコメントは私には意外だった。ニューヨークタイムズ記事に掲載されている、各種専門家による可能性の指摘については、そういう考えもあるだろうくらいに読み進めたのだが、圧力容器から核燃料が漏れ出している可能性を保安院が認めているというのは知らなかった。日本では報道されていないように思えるのだが、どうだろうか。

追記(同日)
 コメント欄にて指摘を受けた。30日付け日経新聞記事「福島原発1~3号機「圧力容器に損傷」 原子力安全委」(参照)の以下の記載が対応しているとも理解できる。


経済産業省原子力安全・保安院は30日の会見で「制御棒を出し入れする部分が温度や圧力の変化で弱くなり、圧力容器から(水などが)漏れていることも考えられる」との見解を示した。

追記(2011.11.01)
 事故時のNRC文書の一部が公開された(参照)。
 そのうち、3月30日の文書「March 30, 2011 – Reactor 2 Core Melted Through Containment Vessel – Workers “Lost the race” to save one of the reactors」(参照)から、NRCは、この時点で2号機のメルトスルーを把握していたことがわかる。

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2011.04.06

ニューヨークタイムズが福島原発対処の米国秘密文書を報じる

 5日付けニューヨークタイムズが、米原子力規制委員会(NRC)による福島原発についての、3月26日付けの秘密評価書と関連インタビューに基づく記事「U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant」(参照)を掲載していた。なかなか興味深い内容であった。
 共同で一部がすでに報道されている。「米紙、水素爆発の危険を指摘 当局の内部文書に基づき」(参照)より。


 同紙によると、原子炉冷却のために注入している水によって、原子炉格納容器のストレスが高まり、余震によって容器が破壊される危険性が高まっている。同原発1号機は内部にたまった塩により循環が著しく妨げられており、原子炉の中には水がなくなっている可能性もあるという。
 また、原子炉内の水が分解されてできる水素によって水素爆発が再び起きる危険性も指摘した。
 こうした問題に対処するため、NRCは日本政府に水素爆発を防ぐための窒素注入などをアドバイスしたという。

 共同が取り上げた問題点としては、(1)注入した水の重さで容器が破壊する危険性、(2)海水の塩で目詰まりして炉内に水が入らず空焚きになっている危険性、(3)さらなる水素爆発の危険性、が読み取れる。
 三点目の危険性回避には窒素注入が示唆されているが、今日から日本でも検討が進んでいる。6日付け毎日新聞「福島第1原発事故 1号機に窒素封入へ 水素爆発防止」(参照)より。

 東京電力は6日午後から、福島第1原発1号機の原子炉格納容器へ窒素(6000立方メートル)を封入する作業を始める。作業中、1~4号機でのすべての他の作業を中止する。高温で損傷した核燃料の被覆管が水と反応して大量の水素が発生しているとみられ、新たな水素爆発を防ぐための措置で、7日にかけて実施する。同原発では、1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発で損壊している。

 NRCが指摘した海水塩の問題についても、すでに米国からの要請で米国支援の真水に切り替わっている。25日付け毎日新聞「福島第1原発:冷却用真水の補給で米軍がバージ船提供」(参照)より。

 北沢俊美防衛相は25日の記者会見で、東京電力福島第1原発の冷却に必要な真水を補給するため、米軍から真水を積載できるバージ船(はしけ)2隻や給水ポンプ1機の提供を受けることを明らかにした。海上自衛隊の補給艦などと連携し、週明けから冷却作業で活用する。バージ船のうち1隻は25日に米軍横須賀基地を出港し、もう1隻は26日に出港する予定。
 自衛隊は高圧消防車で海水を使って放水してきたが、米側から「(塩水による)機材の腐食を防ぐには真水に変更すべきだ」との強い要請があり、活動のあり方を再検討。東電が復旧を進める「補給水系」の注水ポンプに真水を補給する方向に切り替えた。

 この二点はNRCの指導よるものと見てよく、おそらく福島第一原発の現状の対応はNRCシナリオで進展しているのではないかと思われる。
 そうであるとすると、その対処の背景となったのはNRCの評価文書によると見てよいので、今回のニューヨークタイムズ記事の重要性が理解できる。
 記事を読むと、共同が取り上げていない部分に関心が向かざるをえない。小さな点では、目詰まりを起こしているのは塩以外に半溶解した炉心についても言及されている。大きな点としてはまずプール内の使用済み燃料への言及がある。

The document also suggests that fragments or particles of nuclear fuel from spent fuel pools above the reactors were blown “up to one mile from the units,” and that pieces of highly radioactive material fell between two units and had to be “bulldozed over,” presumably to protect workers at the site. The ejection of nuclear material, which may have occurred during one of the earlier hydrogen explosions, may indicate more extensive damage to the extremely radioactive pools than previously disclosed.

文書はまた、反応炉上部にある使用済み燃料プール内の核燃料の破片や粒子が「3号機から1マイルも」吹き飛ばされ、高い放射性物質の断片が3号機と4号機間に落下しているので、現場作業員の保護にはおそらく「ブルドーザーによる地ならし」を必要としていたと示唆している。初期の水素爆発中に発生した核物質噴出は、従来公開された以上に、極めて放射性の高いプールに対して、より広範囲な損傷を与えたことを示している可能性がある。


 プール内の使用済み燃料の粉塵が1マイルも飛び散っている可能性があるというのだが、1マイルは文字どおり1.6キロメートルということではないとしても、それに近い飛散はあったのかもしれない。
 記事を読みながら疑問がないわけではない。そうであれば、その粉塵が計測されないのは不自然である。あるいは、もしかすると3号機使用済み燃料プールへの放水も単に冷却目的だけではなかったのかもしれない。
 記事に戻る。真水の注入ではホウ酸についても言及されている。理由も明記されている。再臨界の予防である。

The document also recommends that engineers continue adding boron to cooling water to help prevent the cores from restarting the nuclear reaction, a process known as criticality.

文書はまた、炉心が核反応を再開始すること(臨界として知られている過程)の防止に役立てるためにホウ素を冷却水に追加し続けるよう、技術者に勧めている。


 ニューヨークタイムズはこの点について識者のインタビューで現状の資料からは臨界が進展しているデータはないともコメントを引き出している。
 NRCらしくというべきか、4号機の使用済み燃料プールの問題も定常的な放射性物質の発生源として重視されている。

The N.R.C. report suggests that the fuel pool of the No. 4 reactor suffered a hydrogen explosion early in the Japanese crisis and could have shed much radioactive material into the environment, what it calls “a major source term release.”

NRC報告書は、日本危機の初期、4号反応炉の燃料プールが水素爆発の被害を受け、環境に多くの放射性物質を発散した可能性を示唆し、これを「主要な定期放出源」と呼んでいる。



Experts worry about the fuel pools because explosions have torn away their roofs and exposed their radioactive contents. By contrast, reactors have strong containment vessels that stand a better chance of bottling up radiation from a meltdown of the fuel in the reactor core.

専門家たちが、使用済み燃料プールを懸念しているのは、爆発で屋根を引きはがされ放射性物質が暴露されているからである。これに比べれば、反応炉は、強固な収容器があり、炉心の原子炉燃料がメルトダウンしてもその放射性物質を封じ込める可能性が高い。


 記事としての締めは、現状のミスがさらなる問題を生むとしている。依然非常に難しい局面であるとは言えるだろう。

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2011.04.04

[書評]言葉でたたかう技術(加藤恭子)

 書名に「言葉でたたかう技術」(参照)とあり、帯には「ビジネスで、外交で、日常で勝つための弁論術」とあるので、そういう技術を習得したいと思って読む人もいるかもしれないし、私もそういう本なのかと思って読み始めたが、そういう本ではなかった。そういう小手先の技術の本ではないというべきだろう。むしろその技術の奥義に触れた書籍であり、一読すればなるほどこうすれば欧米人と議論しても負けることはないという秘訣を知ることができる。

cover
言葉でたたかう技術
加藤恭子
 あえてひと言でも言えないこともない……苦労。あるいは、努力。あるいは、根性。ど根性というべきかもしれない。第一章「アメリカでのけんか修行」ではその苦労がエキサイティングに語られている。おしんアメリカに行くといった風情でもあり、江藤淳の「アメリカと私」(参照)や須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」(参照)なども思い出す。戦後の焼け野原のなかで学問を志した青年たちは異国の地にあって歯を食いしばってがんばったものだった。戦後の日本の知の最高の水準は彼らよってなしとげられ、そして今その遺産をほとんど食いつぶしつつある。
 医学者を父に持ち昭和4年に生まれた著者は、日本女子大学演劇部時代に東京帝国大学演劇部の、後に夫となる加藤淑裕の弟と知り合い、その縁で20歳で結婚した。夫の淑裕は25歳で大学院を中退したが学問が忘れられず、二人で赤貧の米留することにした。恭子はメイドもした。淑裕は季節労働者にもなった。米国社会の本音の部分にからだごとぶちあたってきた。生き残るためには強くなければ無理というものだろう。第一章の苦労譚だけでも読む価値のある本である。すごいことが淡々と書いてある。ある程度欧米というものにぶつかる人生を予感する若い人なら、ここに描かれている挿話を知らないと無駄に痛い目をして学ぶことになる。
 第二章は「アリストテレスの弁論術」である。しかし、特にアリストテレスの弁論術が解説されているわけではない。米留の体験談を通して、アリストテレスの弁論術を知らなければ、その社会を生き抜くことはできないと知ったという話である。極意もさりげなく書かれている。言語を使って説得するにはどうするか。第一は語り手を知るということ。第二は聞き手の心情をゆさぶること、そして第三はもっともらしく語ること。それだ。
 第二章では、現代欧米の文章術の基本がマルクス・ファビウス・クインティリアヌス(Marcus Fabius Quintilianus)による「弁論家の教育(Institutio Oratoria)」(参照参照)にあることも説明されている。読みながら私は、自分の無教養さ加減に、あ痛たたたと苦笑してしまった。自分はギリシア語・ラテン語のとば口で引き返しまともに学問やってこなかった。悔やまれるのである。言葉でたたかうお相手はそういう教養をしこたま詰んでいる。アホでマヌケなアメリカ人ばかりではない。
 第三章以降は、著者の異文化経験のお話が続く。異文化経験といっても欧米型であり、どちらかというと古いタイプの欧米だなという印象が深い。へこたれるな日本人、白を黒とでも言い通せという印象でもある。が、著者も近年の欧米文化の変化は読み込んでいて、欧米の言語技術が対立型から協調型に変わっていることにも触れている。むしろ現代日本人はその新型の言語技術を学ぶほうがよいかもしれない。だが、かといって、そこだけ上澄みで学ぶわけにもいかず、本書のような、がつんとした話も知っておくほうがよいだろう。
 終章にあたる第五章の「日本の未来のために」は、震災後の今、読み返すと、ある種、胸にぐっと迫る思いがする。日本の美点や誇りをどうすべきか。若い世代を正攻法に教育していくにはどうあるべきか。そこに当てる光が今となってはがらりと変わってしまった。そのことが骨身にしみてくるのはあと二年後くらい先のことかもしれない。また苦難な時代が始まる。戦後の苦難とは質が違うだろうと思うが、日本を再生するにはこうした書籍で先達の苦難を学ぶことは益になる。

追記(2011.4.6)
 初出時に最終段落に「サマーズは"It is unfortunate that Japan will become a poor country."と言ってのけたが」と書いたが、ソースの確認が取れず、また、この発言がなかったという確認も取れなかったので除いた。

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2011.04.03

米国にせっつかれて福島第一原発20キロ圏内でようやく放射線測定始まる

 原発事故について現下はまだ緊急事態であり、人災的要因などの追究は後日でもいいように思うのだが、さすがにこれはがっくりきたので記しておきたい。ようやく福島第一原発から半径20キロ以内大気中の放射線量の測定が開始になったことだ。しかも、米国からの要請なのである。
 ニュース記事を拾っておこう。3日5時4分NHK「20キロ内でも放射線量測定」(参照)より。


 福島第一原子力発電所の周辺での放射性物質の拡散状況について、政府と東京電力は、これまで調査を行っていなかった、原発から半径20キロ以内の地域についても、新たに大気中の放射線量の測定を始めました。

 これまで公式には調査がなされていなかったというのが事実、というのを確認しておきたい。
 なぜこれまで測定しなかったのか。

 福島第一原子力発電所の周辺での放射性物質の拡散状況について、政府と東京電力は、これまで、原発の敷地内や、「避難指示」が出されている半径20キロより外側の地域で、大気中の放射線量の測定を行っていますが、半径20キロ以内では、ほとんどの住民が避難を終えていることや、測定には被ばくの危険性が高まることなどから、詳しい測定を行っていませんでした。

 理由は2点とされている。

 (1) すでに20km以内は住民が避難しているので測定する必要はない
 (2) 測定すると被爆の危険性が高まる。

 理由になっていないと思われる。(1)については、一定期間の測定があれば、一時帰宅の可能性の検討できるし、該当環境の被害の累積的な状況がわかるはずだ。明らかに有益な情報となる。
 被爆の危険性とする(2)だが、すでに原発現場で作業されている方との比較で考えても対応は可能であろうし、原発近くの線量が高いのであれば、例えば5km圏内は測定しないということでもよいだろう。
 陰謀論的に考えたくはないが、これまで計測してこなかった理由は、緊急時ということは当然あるとしても、それ以外にも避けたい理由はあったのだろう。
 ではなぜ実施されるようになったかというと米国からの要請である。


しかし、福島第一原発の対応を検討する日米協議の中で、アメリカ側は「放射性物質の拡散状況を調べるためには、調査が不十分だ」と指摘し、これを受けて、政府と東京電力は、原発から半径20キロ以内でも、およそ30の地点で、新たに大気中の放射線量の測定を始めました。

 米国側からの要請がなければ、こうした政治決断ができなかったというのが、一番がっくりくるところだ。
 新しく計測される結果も公表される見通しは低そうだ。

調査結果は公表されていませんが、これまでの測定では、原発の北西方向にある福島県浪江町の調査地点で、1時間当たり50マイクロシーベルトを超える、やや高い放射線量を計測した一方、原発の北の方向にある南相馬市の調査地点では、1時間当たり1マイクロシーベルトを下回ったということで、半径20キロ以内でも地域によってばらつきがあるということです。政府は、よりきめ細かいデータを把握し、アメリカ側と情報共有を進めるとともに、今後の対応策の判断材料に役立てたいとしています。

 20km圏内の情報を開示するかについては、政府判断もあるだろう。逆にいえばそう問われるのがいやで計測しなかったのかもしれないと穿って考える余地を残してしまう。
 米国がこのちょっかいを出した背景は、すでに米国エネルギー省(DOE)が米軍機や地上観測データから算出した福島第一原発周辺の放射線量の推定値を公表しており、セシウム137など今後累積していく放射性物質の問題を含めて、このまま日本側が沈黙し、米国側だけの情報となっては、日米共同作業および世界に向けての公報という点で問題があると判断したためだろう。日本政府はその判断ができそうにないと見切ったということでもある。
 DOEの公開データは「The Situation in Japan」(参照)で誰でも閲覧できる。現状では29日更新された24日と26日のデータが公開されている。


The Situation in Japan

 DOEの地図には福島第一原発から同心円状の円が2つ描かれていているが、内側が13海里(約24km)、外側が25海里(約46.3km)ということで、大ざっぱに25km圏内と45km圏内と見てよいだろう。
 地図上色分けされた放射線量の単位、mR/hrは10マイクロシーベル/時である。北西方向40km圏内に黄色からオレンジ色の2mR/hrの領域があることが見て取れる。ミリシーベルト/年に換算すると(24時間×365日)、約175.2ミリシーベルト/年となる。なお、国際放射線防護委員会(ICRP)は緊急事態発生時の一時的な緩和基準として20ミリシーベルト/年を日本政府向けに声明を出している(参照)。
 日本政府側からは原発周辺放射線量の情報は出てこない可能性が高いが、現状のDOE情報を見るかぎり、現状については居住については、問題がありそうだ。
 原発の状況を見て、政府は今後も慎重な対応が必要になることは言うまでもないが、安定的に推移していけば、一時帰宅などの対応も求められることはあるだろう。

追記
 コメント欄にてご指摘いただき、mR/hrの計算を勘違いしていたことに気がついた。居住の安全性についても誤解していたので本文を訂正した。併せて、マイルを海里に直し換算しなおした。

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