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2011.03.19

ミッション「二階から目薬」の背景

 福島原発事故について事態は依然深刻な状態にあるなか、後の検証ためになるかもしれない気になる点を備忘のためにメモしておきたい。
 気になるのは、福島第1原子力発電所4号機の使用済み燃料プールの水について、米国時間の16日、米原子力規制委員会(NPC)グレゴリー・ヤツコ(Gregory Jaczko)委員長が米下院エネルギー・商業委員会で、すでに無くなっていると証言したこと、日本政府による、あるとする見解が相違しているように見えることである。
 ヤツコ委員長の証言はNPR「No Water In Spent Fuel Pool Of Japan Plant」(参照)からの孫引きだと次のとおりである。


"There is no water in the spent fuel pool and we believe that radiation levels are extremely high, which could possibly impact the ability to take corrective measures,"

「使用済み燃料プールには水が全く存在せず、私たちは、放射能レベルが極めて高いと信じている。この放射能レベルは是正措置を取る能力に影響を与うる。」


 国内の報道では、共同は「福島原発「事態悪化」と米委員長 燃料プール、大半の水なし」(参照)で伝えた。

【ワシントン共同】米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は16日の上院公聴会で、火災が発生した福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールについて、大部分の水がなくなっているとの見解を示した。
 同プール内の水が失われると燃料棒がむき出しになり、放射性物質の放出が加速される可能性がある。
 委員長は原発事故に関し「事態が悪化している」と指摘。こうした認識が、原発から80キロ圏内に滞在する米国民への避難勧告につながったとした。
 NRCは現場に専門家を派遣している。委員長は「情報は限られているが、信頼できる情報を提供するよう心掛けている」と強調した。

 ヤツコ委員長証言と共同の記事と付き合わせると、証言では"no water"が共同では「大部分の水がなくなっている」となっている。その差違はよくわからない。
 読売新聞記事「米原子力委員長「4号機プールに水ないと思う」」(参照)では次のように伝えている。

 【ワシントン=山田哲朗】米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ委員長は16日、米下院エネルギー・商業委員会で証言し、福島第一原発4号機について「使用済み燃料プールの水はすべて沸騰し、なくなっていると思う」との見解を明らかにした。
 使用済み燃料棒が露出した結果、「放射線レベルは極めて高く、復旧作業に影響する可能性がある」とも指摘した。具体的な人体への影響については、「かなり短い時間で致命的になるレベルだ」と述べた。
 ヤツコ委員長の発言は、東京に派遣した米国の専門家チームからの情報を基にしているとみられる。米当局が、日本政府や東京電力よりも、原子炉の状況について悲観的な見方をしていることを示した。
(2011年3月17日10時04分 読売新聞)

 ヤツコ委員長証言を詳細に見ていないので、読売新聞記事の「すべて沸騰し」の由来はよくわからない。
 ブルームバーグ記事ではヤツコ委員長証言の背景にも言及している。「米NRC委員長:福島原発の核燃料プール、水なくなったとの発言確認」(参照)より。

 3月16日(ブルームバーグ):米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は、東日本大震災で被災した福島第1原子力発電所の原子炉の一つで使用済み核燃料プールの水がすべてなくなったとの下院委員会での発言を確認した。
 ヤツコ委員長は上下両院の委員会で証言後に記者団に対し、「問題の原子炉への対応に携わり、原発関係者と協力している米国のチームが日本にいる」と述べ、「それが情報源だ」と説明した。
 AP通信によると、日本の当局は福島第1原発4号機について、水がすべてなくなったことを否定し、安定していると指摘している。

 ヤツコ委員長証言の情報源は在日米国側チームによるらしい。
 これに対して日本側の対応だが、東電は水があったとしている。NHK「“4号機のプール 水あった”」(参照)より。

3月17日 12時38分
東京電力によりますと、17日、自衛隊のヘリコプターが上空から福島第一原子力発電所の状況について調べたところ、4号機の使用済み燃料プールには、水がある様子が確認されたということです。入っている水の量についてはまだ、確認できていないということです。また3号機には蒸気が立ちこめていたということで、16日の自衛隊のヘリコプターを使った上空からの水を入れる作業は、3号機から始めることに決めたということです。

 ブルームバーグ記事「東電:ヘリコプターを飛ばし使用済み燃料プールの水位を確認」(参照)も参照しておこう。

 3月17日(ブルームバーグ):東京電力は17日、記者団に対しヘリコプターを飛ばし福島第一原子力発電所3、4号機の使用済み燃料プールの水位を確認すると発表した。同社社原子力設備管理部の小林照明課長が明らかにした。
  福島第一原発の放水に関しては、同社広報の吉田薫氏によると、4号機の燃料プールのほうが水が少ない可能性があるが、3号機のほうが放水しやすい状態にあるため、3号機の放水を優先するという。

 東電側はヤツコ委員長証言に反論するためにヘリコプターによる確認を取ったとも言えるだろう。どちらが正しいのだろうか?
 日本ではこの問題、つまり東電側の発表と米国議会証言との差違についてそれほど議論にならなかったように思われる。おそらく、ヘリコプターによる確認ができたので、それが正しいとされたのではないだろうか。またヤツコ委員長も東電側の応答をいったん了承したかにも見えた。
 この点について朝鮮日報の記事「東日本巨大地震:核燃料保管プールに水はあるのか」(参照)は疑問を投げかけていた。

 米側の主張に対して東京電力は「4号機の状況は非常に安定している」として直ちにに反論した。東京電力は17日午後にヘリコプターから撮影した4号機の映像を公開した際「プールの水面とみられる部分が映っていた」と主張した。映像によると、4号機は片方の壁に半分ほど穴が開いており、そこから絡み合った鉄骨が露出していた。穴からは燃料棒を移動させるのに使う緑色のクレーンが見え、その後ろには白く光る部分があった。原子炉の構造から推測すると、この光る部分は使用済み燃料棒を保管するプールのある位置だ。東京電力は「この白く光る部分はプールの水面とみられる。4号機のプールには水が残っているため、放水作業は3号機から開始する」と説明した。
 このように日本が強く反論すると、ヤツコ委員長は17日に行われたホワイトハウスでの会見で「プールの水がなくなったとするNRCの見解は、あの時点で入手していた情報に基づくものだ。冷却作業が進められれば、危機的状況になるまではしばらく時間があるだろう」として発言を修正した。
 しかし、4号機の映像を見たソウル大学原子核工学科の黄一淳(ファン・イルスン)教授は「水があるのなら、画面のように明るく光らないだろうし、また蒸気も発生しているはずだが、そのような映像はなかった」とした上で「明るく見える部分は、燃料棒の一部が空気中に露出したものではないか」と指摘した。4号機の使用済み燃料棒保管プールに水はないとするNRCの発表の方が、より信頼できるということだ。黄教授は「この映像を根拠に東京電力が4号機に放水作業を行わないのなら、これは理解に苦しむ」と述べた。

 東電側のその写真をどう判断するかは難しい。日本国内でジャーナリズムによる検証はなされたかについては私は知らない。
 4号機の経緯について振り返ってみよう。15日付け朝日新聞記事「4号機、水が蒸発し水素爆発か 燃料棒露出の可能性も」(参照)より。

 福島第一原発4号機でも15日午前6時ごろに大きな音が発生した。東京電力が確認したところ、原子炉建屋の5階屋根付近に損傷がみられた。さらに午前9時38分ごろ、原子炉建屋4階北西部付近で出火を確認。正午前までに鎮火した。


 通常、プールの温度は40度以下で管理している。ところが、14日午後4時18分時点では約85度まで上昇していた。燃料の周囲を満たしている水が蒸発、燃料棒がむき出しになって水素が発生した可能性がある。ただ、運転停止後時間がたっており、発熱量は小さめだという。実際にむき出しになったかどうかは、確認できていない。

 東電ヘリコプターでは3号機では水蒸気が確認されているが、4号機では水があるとしていながら、写真から水蒸気はないとしている。
 問題が錯綜するのは、朝鮮日報記事にもあるようにヤツコ委員長は17日、考えを「修正」したかに見えることだ。表面的には東電の説明を飲んだかたちにも見える。
 この点について、17日付けウォールストリートジャーナルは「Did NRC’s Jaczko Misspeak?」(参照)で、ヤツコ委員長証言は誤りだったかいう切り口で取り上げている。だが、微妙な記事である。

At a White House briefing Thursday, Mr. Jaczko declined to repeat that statement, but he did not retract it, either.

木曜日のホワイトハウスにおけるブリーフィングで、ヤツコ氏は、(4号機プールに水はないとする)言明を繰り返すことは辞退したが、撤回もしなかった。


 これをどう見るかは難しい。政治的な判断かもしれない。枝野官房長官の会見も考慮に入れるほうがよいだろう。まず、17日午前11時半の会見(参照)より。

 ――米国の原子力規制委員会委員長が議会で、福島第一原発4号機について使用済み燃料プールの水はすべてなくなっている、と証言。日本政府の情報に基づいての証言なのか。
 おそらくそのご発言などがあって以降だと思うが、私どもの方から米国の専門家にこちらのより詳細な情報を提供して、すり合わせというか、認識が統一されているのかどうか整理させていただいている。
 この間、米国の専門家の皆さんには、できるだけタイムリーにこちらのもっている情報を提供して、分析をいただいて、そうした分析も参考にしながら対応しているところだ。どうしても若干様々なものをお渡しをするなどについての時間的ずれが生じている。
 特に4号機に現に水があるのかどうかについての情報については、若干米側に伝達するのに時間的な差があったという報告は受けている。

 「そのご発言などがあって以降だと思う」としているが、ヤツコ委員長証言以降を指すのだろう。表面的に読めば、日本側は4号機に水があるとしているが、米側にその伝達が遅れたかのように読める。つまり、日本政府としては4号機プールに水があるとしている情報を米国に伝えなかったために、米国側が誤認したということになる。ヤツコ委員長証言を否定していることになる。
 そうであれば、米側を説得するために東電ヘリコプター写真があったということになる。
 ところで、米側は東電よりも詳しい情報をすでに得ていたのではないだろうか。
 このあたりから時系列が複雑になるのだが、17日に米国は無人偵察機グローバルホークを福島原発に飛ばせた。産経新聞記事「米無人偵察機が原発内部を撮影へ きょうにも投入」(参照)より。

【ワシントン=佐々木類】放射能漏れが深刻化する福島第1原発の建物内部の実態把握のため、米軍が17日にも無人偵察機グローバルホークを投入することになった。現場レベルの原発事故対策としては初めての本格的な日米協力になる。米国防総省高官が16日、明らかにした。

 さらに米国はU2偵察機も投入している。「福島第1原発にU2偵察機も投入 米が内部解析と報道」(参照)より。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は18日、米軍が無人偵察機グローバルホークに加えてU2偵察機を投入、東京電力福島第1原発の原子炉建屋内部の解析などに当たっていると報じた。民間専門家は、スパイ衛星も使われている可能性があるとしている。

 この精密な写真は日本側に渡された。毎日新聞「東日本大震災:福島第1原発事故 米軍無人機の映像、日本政府が公開に慎重」(参照)より。

 日本政府が、米空軍無人偵察機「グローバルホーク」が撮影した福島第1原発上空の映像の提供を受けながら、公開に慎重姿勢を見せていることが関係者の証言で分かった。米軍側は「あくまで日本側の判断」とし、提供した映像の公開を承認している。
 無人機が搭載する高性能のカメラは「車のナンバーが読み取れるほど鮮明」(米空軍)で、映像は原発施設の内部状況をほぼリアルタイムでとらえており、専門家の分析にも役立つ可能性が高いという。


 だが日本側は、映像を保有したまま公開していない。同米空軍基地では、米国の原発専門家らが映像を詳細に分析しているという。

 映像には4号機のプールの映像も含まれているだろうし、水の有無の判断が可能になるはずだ。公開して、東電ヘリコプター写真と付き合わせて見ると、ヤツコ委員長証言と東電のどちらが正しいかはわかるはずだ。
 興味深いのはこうした情報収集は、米側ではこれが初めてではなかったようだ。同記事にはこう指摘されている。

米空軍は日本政府からの要請を受け、グアムのアンダーセン空軍基地に配備されている最新鋭のグローバルホーク(翼幅約40メートル、全長15メートル)を震災の翌12日から、被災地周辺に飛行させている。多量の放射性物質が検知されている福島第1原発上空では自衛隊機の飛行が困難なため、グローバルホークが24時間態勢で撮影。衛星通信を介して映像を米カリフォルニア州の米空軍基地に送信し、日本政府側にも提供している。

 時事「無人偵察機で福島原発撮影=冷却対策、日本と情報共有-米空軍」(参照)も同種の内容を伝えている。

ーク」を投入し、放射能漏れが続く福島第1原発の上空付近を飛行させて撮影していたことが16日、分かった。米空軍筋が明らかにした。

 東電がヘリコプターを飛ばした17日以前から東電ヘリコプター写真より精細な情報を米国側がもっていたと考えてよいだろう。そして、それがヤツコ委員長証言の情報に繋がっていたいたと考えられる。
 この時系列で考えるなら、日本政府側としては、4号機プールの状況がわからず、東電に打診したところ水はあるという応答を得て公式見解としたところ、それに矛盾するヤツコ委員長証言が出てきた。17日、東電はヘリコプターを飛ばして水があるという写真を得た。しかし枝野官房長官が述べたように、この時点ですでに日米両政府で摺り合わせは始まっていて、米国側の写真も存在していた。東電ヘリコプター写真と米側の写真を日本政府は付き合わせたことだろう。米国側は17日にもグローバルホークを飛ばしたのもその背景があったためだろう。
 ヤツコ委員長の対応を考える上で、19日の枝野官房長官の会見(参照)も見ておこう。

――原発4号機の使用済み燃料棒プール。「水が残っている」日本側と、「破損しているから水をためるのは困難だ」とする米国。どちらの見解が正しいのか。
 私は専門家ではないので、私自身の見解はここでは意味がないことだ。そのうえで、我が国の専門家のみなさんが分析した認識と、米国の専門家のみなさんが分析している認識については、これは日々ディスカッションをしてすりあわせをしてきている。今言った米国の認識というのは、ある一定時間前の認識として、そうした認識があったということは聞いているが、時々刻々様々な状況についての情報がはいるなかで、4号機について「一定の水が入っていて、それによって冷却に一定の効果がなされている」ということについては、よりその可能性が高いという報告をこの間受けている。

 従来からの政府の建前上、4号機プールに「一定の水が入っていて」の可能性としているが、可能性に留めて、米国側のとの認識のすりあわせが優先されている。
 米側の対応からすると、4号機のプールには水はないと推論するほうが妥当なようだが、以上の経緯の推定は、東電の意見が日本政府に及ぶのを米国側から強くヴィトーしたかに見えるプロセスなので、4号機プールの状態自体の情報からは独立している。
 19日付け共同「米専門家、4号機プールに亀裂か 冷却困難も、と指摘」(参照)を想定すると、枝野官房長官の建前の可能性は低そうにも思える。

【ロサンゼルス共同】米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、東日本大震災で被災した福島第1原発4号機について、使用済み燃料プールに亀裂が入り、冷却水が漏れている可能性があると報じた。米原子力規制委員会(NRC)の複数の原発専門家の分析として伝えた。
 亀裂の場所などは特定していないが、同紙は、漏えいが事実とすれば放水などによる冷却作業が一層難しくなり、「打つ手のない」(米物理学者)状況に追い込まれると指摘している。
 こうした分析について、枝野幸男官房長官は19日夕の記者会見で「(米側には)以前そういう認識があったと聞いている」と述べた。その上で「時々刻々さまざまな情報が入っている中で、4号機には一定の水が入っている可能性が高いという報告を受けている」と説明した。
 NRCの専門家は同紙に対し「(地震発生から)数日だけで、これほどの量の冷却水が蒸発するのは疑わしい」との見方を示した。亀裂の原因としては、地震の強い揺れや、それによる機材の落下が考えられるという。
 ニューヨーク・タイムズ紙(同)も、原子力企業幹部による同様の分析を紹介。米政府当局者は、4号機の建屋で15日発生した火災が完全に鎮火したかどうか確信を持てていないと伝えた。

 ヤツコ委員長証言以降進められた日米政府間の摺り合わせの間、「おそれいりますがしばらくそのままでお待ち下さい」になることもなくスペクタクルな、決死のミッション「二階から目薬」が実行されていた。対象は3号機である。朝日新聞「陸自ヘリ、水投下4回で終了 今後は陸上から放水」(参照)より。

 放射性物質放出の恐れがある東京電力福島第一原発3号機の使用済み燃料貯蔵プールを冷却するため、陸上自衛隊のヘリコプター2機が17日午前9時48分から計4回、上空から3号機に向け、水を投下した。17日午後には自衛隊と警視庁も地上から放水を始める方向で準備を進めており、原発の外からの冷却作業が本格化する。 
 ヘリ4機は17日朝、仙台市の陸自霞目駐屯地から出発。UH60ヘリ1機が上空から原発周辺の放射線量を調査した結果、1機あたり計40分間まで作業が可能だとして、CH47ヘリ1機が投下を指揮し、同2機が午前9時48分から午前10時まで、バケツ(容量7.5トン)でくみ上げた海水を交互に投下した。
 北沢俊美防衛相は投下を受け17日午前11時半ごろから記者会見し、「今日は限度だという判断で決心した」と、このまま3号機を放置するのは難しい段階にあったとの認識を示し、「3号機に間違いなく水はかかっている。成功を期待している」と述べた。今後、地上からの放水の効果などを見て、必要に応じて上空から追加して水を投下することも検討するという。

 任務に当たったかたにはひたすら頭の下がる思いがする。産経新聞「北沢防衛相、「決断」丸投げ 現職自衛官が悲痛な寄稿」(参照)より。

 福島第1原発への海水投下をめぐり、北沢俊美防衛相が任務決断の責任を折木良一統合幕僚長に転嫁するかのような発言をしたことに対し、自衛隊内から反発の声が上がっている。
 北沢氏は陸上自衛隊のヘリが17日に原発3号機に海水を投下した後、「私と菅直人首相が昨日(16日)話し合いをするなかで結論に達した」と政治主導を強調する一方で、「首相と私の重い決断を、統合幕僚長が判断し、自ら決心した」と述べた。
 この発言について、ある自衛隊幹部は「隊員の身に危険があるときほど大臣の命令だと強調すべきだが、逆に統幕長に責任を押しつけた」と批判する。北沢氏は17、18両日の2度の会見でヘリの乗員をねぎらう言葉も一言も発しなかった。
 首相も最高指揮官たる自覚はない。首相は17日夕、官邸での会議で「危険な中での作戦を実行された隊員はじめ自衛隊のみなさんに心から感謝を申し上げます」と述べたが、地震発生以来、一度も防衛省を激励に訪れたことはない。

 自衛隊のかたのご苦労に感謝したい。効果については、仮に放水まで打つ手がないための無理な策であったかもしれないとしても、私も問えない。
 壮大なるミッション「二階から目薬」は3号機を対象になされた。4号機でなかったのは、政府としてはそこにすでに水があるからであろう。
 もしそこに水を撒いたらどうなったかについては、16日付けのロイター記事「Analysis: Japan nuclear crisis reaches new levels」(参照)では、ヤツコ証言を巡る識者の意見としてこう伝えていた。

Arnie Gundersen, a 29-year veteran of the nuclear industry who has worked on reactors similar to the Daiichi plant and is now chief engineer at Fairewinds Associates Inc, warned that dropping water on the spent fuel pool could make matters worse.

第1プラントに似た反応炉で働いたことがあり、現在フェアウインズアソシエーツ社の技師長をしている、原子力産業で29年の経験を積んできたアーニー・ガンダーソンは、使用済み燃料プールに水を投下すれば事態が悪化しうると警告した。

"It's a bad idea to drop water onto the fuel racks. You could get an inadvertent criticality. That means you could have a nuclear reaction, similar to that in a reactor core, in the fuel pool," Gundersen said.

「燃料棚に水を投下するのはまずい考えです。予想外の臨界になるかもしれない。つまり、核反応を起こしかねないのですよ。燃料プールのなかで原子炉内に似たことになります」とガンダーソンは語った。


 そうなる可能性があるかについて私にはわからない。
 4号機への放水は今日は実施されなかったようだ。19日15時29分更新の日経新聞記事「2号機に電源接続へ 福島第1原発、3号機は放水続行」(参照)には、こう書かれていた。。

一方、防衛省は自衛隊の消防車による4号機への放水作業を19日午後以降に実施する方向で検討を始めた。自衛隊が17、18両日に放水した3号機は東京消防庁などの放水態勢が整ったので任せ、放射性物質飛散の危険がある別の原子炉に放水対象を移す。

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2011.03.15

石原慎太郎・東京都知事によるとされる「天罰」発言のこと

 石原慎太郎・東京都知事によるとされる「天罰」発言には、私には関心がなかった。今でもさして関心はない。理由は簡単で、この人の新しい失言から思想信条を考えるまでもなく、それなら、過去の失言で十分ではないかと当初思えたからだ。問題は、そうした思想信条が公的な立場である東京都知事としての行政に反映されているかなのだが、これまで都知事をされていて、特段に影響を見ないように思う。
 今回の失言の顛末だが、すでに「言葉が足りなかった。撤回し、深くおわびする」(参照)と謝罪したとのことなので、政治的な決着は済んでいると言えるのではないか。本人としても、「天罰」発言が失言であったと認めている(参照)。
 とはいえ、当初の報道のされかたに私は奇妙な印象を受けた。これってきちんとした報道になっているのだろうか。そういう思いから、報道の資料としてブログに残して、それと自分がこの件で思ったことを記しておきたい。
 大手紙と通信社の報道を見ていきたいが、これ以外のバージョンも存在するかもしれない。
 14日付け朝日新聞記事「「大震災は天罰」「津波で我欲洗い落とせ」石原都知事」(参照)は次のように伝えている。


 石原慎太郎・東京都知事は14日、東日本大震災に関して、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。都内で報道陣に、大震災への国民の対応について感想を問われて答えた。
 発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と指摘した上で、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。
 石原知事は最近、日本人の「我欲」が横行しているとの批判を繰り返している。

 朝日新聞ではとりわけ「天罰」発言が問題化するという焦点は当てられていない。「一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた」として、それなりのバランスを取っているようにも見える。
 15日付け読売新聞記事「石原知事「津波は天罰、我欲を洗い落とす必要」」(参照)ではこう。

 東京都の石原慎太郎知事(78)は14日、東日本巨大地震に関連し、「津波をうまく利用して『我欲』を洗い落とす必要がある」「これはやっぱり天罰」などと述べた。
 石原知事は同日午後、都内で「震災に対する日本国民の対応をどう見るか」と報道陣に問われ、「スーパーになだれ込んで強奪するとかそういうバカな現象は、日本人に限って起こらない」などとした。さらに親が亡くなったことを長年隠し年金を不正受給していた高齢者所在不明問題に言及し、「日本人のアイデンティティーは我欲になった。政治もポピュリズムでやっている。津波をうまく利用してだね、我欲を1回洗い落とす必要があるね。積年たまった日本人の心のアカをね。これはやっぱり天罰だと思う」と語り、「被災者の方々はかわいそうですよ」と続けた。
 その後の記者会見で「『天罰』は不謹慎では」と質問が相次いだが、石原知事は「被災した方には非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれませんが、と言葉を添えている」とした。

 読売新聞が朝日新聞と異なるのは、「『天罰』は不謹慎では」と畳みかける「その後の記者会見」についても記事にしている点だ。「天罰」発言は、その後の記者会見で焦点化したことがわかる。
 15日毎日新聞記事「東日本大震災:石原知事「津波は天罰」」(参照)は長い。

 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災に関連し「我欲に縛られ政治もポピュリズムでやっている。それが一気に押し流されて、この津波をうまく利用してだね、我欲を一回洗い落とす必要がある。積年たまった日本人の心のあかをね。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々、かわいそうですよ」と発言した。蓮舫節電啓発担当相から節電への協力要請を東京都内で受けた後、記者団に語った。多くの犠牲者が出ている災害を「天罰」と表現したことが、被災者や国民の神経を逆なでするのは確実だ。
 石原氏は「天罰」発言の前段として「去年一番ショックだったのは、おじいさんが30年前に死んだのを隠して年金詐取する、こんな国民は世界中に日本人しかいない。日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった」と述べていた。また「残念ながら無能な内閣ができるとこういうことが起きる。(95年の阪神大震災の際の)村山内閣もそうだった」とも語った。【青木純】

 ◇石原氏「受け止め方の問題」
 「天罰」発言について石原氏は、14日夕に都庁で行った記者会見で「『被災された方には非常に耳障りな言葉に聞こえるかも』と(前置きで)言ったんじゃないですか」などと釈明したが、実際には発言していない。
 発言の真意については「日本に対する天罰ですよ。これをどう受け止めるかという受け止め方の問題なんですよ。大きな反省の一つのよすがになるんじゃないですか」と持論を展開。「それをしなかったら犠牲者たちは浮かばれないと思いますよ」と述べ、撤回しない考えを示した。【石川隆宣】


 毎日新聞記事はかなり詳しい。また、朝日新聞や読売新聞になかった、「多くの犠牲者が出ている災害を「天罰」と表現したことが、被災者や国民の神経を逆なでするのは確実だ」とやや誘導的な評価も含まれている。さらに、その後の都庁での記者会見の内容を加えて、「天罰」発言の問題化を明確にしている。
 14日産経新聞記事「石原知事「津波で我欲洗い落とせ」「天罰だ」」(参照)はこうである。

 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災への国民の対応について記者団に問われ、「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり一回洗い落とす必要がある。積年にたまった日本人のあかをね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々はかわいそうですよ」と述べた。
 知事は一連の発言の前に、持論を展開して「日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった。アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等だ。日本はそんなもんない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と語っていた。
 同日、この後に開いた記者会見で「天罰」の意味について「日本に対する天罰だ」と釈明。「大きな反省の一つのよすがになるんじゃないか。それしなかったら犠牲者たちは浮かばれない」と話した。

 産経新聞では、「天罰」発言が焦点化するその後の記者会見で、むしろ、「天罰」の意味を限定し「日本に対する天罰だ」としている。毎日新聞の記事が「被災者や国民の神経を逆なでする」として「被災者」を前面に出すのに比べ、その点を避けていることがわかる。
 14日日経新聞記事「石原都知事「津波は我欲の天罰、被災者はかわいそう」」(参照

 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本巨大地震に関連し「津波をうまく利用して(日本人の)我欲を一回洗い落とす必要がある。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々はかわいそうですよ」と述べた。
 同日、節電対策で蓮舫節電啓発担当相と会談後、記者団に述べた。
 石原知事は日本人の国民意識が「金銭欲、物欲、性欲などの『我欲』になっている」と指摘したうえで、こうした発言をした。

 日経新聞の記事は朝日新聞に似て、さらにさらりと扱っている。「天罰」発言は問題ではあるのだろうが、石原都知事の意図が「国民意識」にあることを簡素に示している。後の記者会見については触れていない。
 14日付け共同通信「大震災は「天罰」と石原知事 「津波で我欲洗い落とせ」」(参照)より。

 東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災への国民の対応について記者団に問われ「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり一回洗い落とす必要がある。積年にたまった日本人の心のあかをね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々はかわいそうですよ」と述べた。
 知事は一連の発言の前に、持論を展開して「日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった。アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等だ。日本はそんなもんない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と語っていた。
 同日、この後に開いた都庁の記者会見で「天罰」の意味について「日本に対する天罰だ」と釈明。「大きな反省の一つのよすがになるんじゃないか。それしなかったら犠牲者たちは浮かばれない」と話した。天罰について発言した際、「『被災された人は非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれないが』と言葉を添えた」としたが、実際には話していなかった。

 共同通信は見るとわかるように産経新聞記事とほぼ同じであり、おそらく産経新聞が共同の記事を購入したのだろう。ただし、産経新聞では共同にあった最後の一文が省略されている。
 14日の時事通信「「津波は天罰」=石原都知事「我欲を洗い落とす必要」」(参照)は次のとおり。

 石原慎太郎東京都知事は14日、東日本大震災に関連し、「津波をうまく利用して『我欲』を一回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と発言した。都内で行われた蓮舫節電啓発担当相との会談の後、記者団に語った。被災者への配慮に欠けるとして、批判を受けそうだ。
 知事は、所在不明高齢者が最近社会問題化したことなどを挙げ、「日本人のアイデンティティーは我欲になった。金銭欲、物欲、性欲」と指摘。「アメリカの国家的アイデンティティーは『自由』。フランスは『自由と博愛と平等』。日本は無い」と強調した。半面、「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。
 知事は同日、都庁での記者会見で発言の真意を問われ、「例えば、減税という耳障りのいい言葉で釣られて国民が歓迎するという心情が、今の政治を曲げている。(今回の震災が)大きな反省の一つのよすがになるのではないか」などと説明し、撤回しなかった。

 時事通信の記事は毎日新聞の記事と同様の骨格をしている。「天罰」発言について「批判を受けそうだ」と問題化を誘導し、さらに「撤回」の言及も添えている。
 問題の元になる蓮舫節電啓発担当相との会談とその際の記者会会見だが、そのオリジナルを私は見ていない。フジテレビなどの報道ソースによるものは、巧妙に編集されているようで返って文脈をわからなくするきらいがある。

 オリジナルはニコニコ生放送で放送されたらしく、これを聞きながらツイッターでツダっていたm_um_uさんのまとめが、Togetter - 「石原慎太郎東京都知事の「洪水は天罰」発言の私的要約」(参照)にある。また、同氏のブログmuse-A-muse 2nd(参照)でも扱われている。完全な書き起こしではないが、逆に文脈がわかりやすい。


 要約すると「民主党は災害が来てからアタフタと対処療法的な夜間コンビニ禁止案とかだしてるけどそれ出すにしても政令できちんとだせばいいし、それ以前にスーパー堤防を事業仕分けでなくしといてなに考えてんだ。。全体的に大局みえてないんじゃないか?」であり
 「そういう大局が見えてない政府や名古屋みたいなところの目先の人気取り減税におどらされてる国民も国民だ」みたいな話
 なので「天罰」は「民主党の底の浅さ」と「底の浅い民主党ほか人気取り政策を支持する国民」にかかる、ということになる
 もうちょっと表現の仕方がうまかったらなぁ。。というところ。被災にあったふつーのじいさんばあさん(弱者)にはむしろ同情的なんじゃないだろうか
 もそっとわかりやすく強調すれば「天罰」は「洪水」にかかり、その洪水はスーパー堤防の話に絡む。
 (擁護的に解釈すれば)「(地震・津波などの被害全般ではなく) スーパー堤防などの準備に対する大局的視点を廃するような思考へのしっぺ返しだ」ぐらいの意味っぽい。

 m_um_uさんの印象では、「地震・津波などの被害全般ではなくスーパー堤防などの準備に対する大局的視点を廃するような思考へのしっぺ返し」として、国民に「天罰」が下ったというふうに捉えているようだ。
 「天罰」発言が焦点化された同日夕刻の記者会見についてはユーチューブにオリジナルがある。

 確認の意図もあって書き起こしてみた。


記者A 最後に石原知事にお伺いいたします。えー、知事、あのー、今日のですね、 えー、蓮舫大臣との会談のー、後で、えー、日本人のま、我欲についてお話しされて、 えー、「津波をうまく利用して、我欲をうまく洗い流す必要がある。積年に溜まった日本人の心の垢を。これはやっぱり天罰だと思う」とおっしゃいましたけども、これはあの、意味がどうあれですね、被災された方にとってはですね、非常に不謹慎な発言だと思いますが。
石原知事 いや、だから
記者A 撤回されるお考えはありませんでしょうか?
石原知事 いえいえ。あのとき申し上げたように、被災された方には非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれませんが言ったんじゃないですか。口を言葉を添えてますよ。
記者A (沈黙)わかりました。以上です。
石原知事 正確にね、君、人の言うことを聞いて、正確に聞き取って正確に報道してもらいたいね。
司会 各社さまお願いします。 (沈黙)はい、どうぞ、後ろのかた。
記者B 石原知事、ちょっと確認なんですが、その、先ほどの天罰という発言は、ごしっ撤回されるんでしょうか。いや、なかったことにするんでしょうか?
石原都知事:いや、そうじゃないんですよ。あのね、私はね、日本人の我欲がですね、政治を左右している。例えばね、税。減税党なんてのはまかりって出てくる。減税って何をするんですか。それ言い出してる張本人のね、名古屋ってのは、1兆5千億円くらいの借財があるんですよ。それがですね、市民税、住民税、こんなの非常にちゃちな税金でね、ある意味でね。例えばその、どれだけの税金が還ってくるかってこと、その要するに、喜ぶ人たちが知らずにですね、歓迎する。減税って言うとね市民税に限らない。これどんどん演繹していくとですね、これ日本の今の財政状態で、どんな減税ができるんですか。財政もピンチでしょうけどねんじゅ、あなた初めて見る顔だけどね、日本がもしECに属している国だったら、これだけ国債の依存度が高くなってきたら、ECから追い出されますよ。入れませんよ。ユーロ使えなくなりますよ。そこまで来ているのにね、減税っていうね耳のさわりのいいそんな言葉でね、つられてね、国民がですね、歓迎する。私は、そのそういうその心情がね、今の政治を曲げていると思うんだ。これは何も民主党の責任だけじゃないわ。あのね、これはやっぱりね、こういうものを打破しないとね、私たちこの国、立ち上がってこないと思います。と言うことで申し上げたんです。
記者B 民主党に対するという意味なんでしょうか?
石原知事 ええ?
記者B 民主党に対する天罰という意味なんでしょうか?
石原知事 いや、日本に対するいやそれ天罰ですよ。これだけ
記者B (石原知事の言葉を遮りながら)洪水が天罰というのとイコールになってしまうと思うんですが。
石原知事 ええ?
記者B 洪水が天罰というふうにイコールになってしまうと思うんですが。
石原知事 いや、それは、やっぱりこれをどうやって受け止めるかっていうか、受け止め方の問題なんですよ。
記者B (石原知事の言葉を遮りながら)災害に関する受け止め方という感じでしょうか?
石原知事 ええ? 大きな反省のひとつよすがになるんじゃないですか。それしなかったらね、犠牲者たちだって浮かばれないと思いますよ。
記者B ありがとうございます。

 私の印象からすると、石原都知事は今回の天災を「天罰」と理解していることは、疑いづらい。であれば、当然、被災者を思えば、「不謹慎」な発言であるということにもなり、彼が後に謝罪に至ったのも当然であるだろうし、記者としてもそこを追究したのも当然と言えるだろう。
 書き起こしながら思ったのは、共同通信・産経新聞記事が注意を払っているように、何に対する「天罰」かという点である。文脈を理解すると、石原都知事は、これを被災者に限定していないことは明白だろう。
 さらに石原都知事の思想信条に近く読み取るなら、「天罰」の対象は日本国民であり、日本国民はこの天罰を全うすることで、災害の被災者の霊魂が救われるのだと考えていることがわかる。被災者に対して、ざまーみろといった意味合いはまったく読めない。むしろ、自身を天罰の対象に含めているとすら見てよいかもしれない。
 私は系統的に石原慎太郎氏の文学を読んでいるわけでもないが、氏が政治家になる前からの彼の思想的なエッセイを読むことがあり、端的に言えば、彼が熱心な法華経の信者であることを知っている。なので、この「天罰」論は、私には単純に、彼による日蓮の思想そのものに思えた。
 私にしてみると、石原都知事は現代の「立正安国論」を語っているのである。
 「立正安国論」は、法華経を信奉する日蓮が1260年(文応1年)に、駿河国実相寺に籠って執筆した国家論で、当時の鎌倉幕府執権北条時頼に治世の要道として送呈したものだった。日蓮は、この著作で、当時頻発した天変地異は邪法の興隆よるものとし、これに立ち向かうには法華正法を弘めるなければならないとした。
 「立正安国論」は当時の日本国内に広まり、浄土宗信者の怒りを買い、日蓮襲撃事件を招いた。送呈した北条時頼からも幕府批判と見なされ、日蓮は伊豆国に流罪となった。
 時頼が1263年(弘長3年)36歳で死に、5年後の1268年(文永5年)、モンゴルから服従するように国書が送られ、元寇が始まる。また、時頼の遺児北条時宗による幕府内の内紛があり、内憂外患となった。特に、元寇は日蓮にとって天災とも見なされ、自身の「立正安国論」への確信を深めた。
 法華経教派の信者である石原都知事にしてみれば、現下の日本は「立正安国論」の同様の状態、つまり邪教民主党興隆によって天罰を受ける状態に見えるのではないか。日蓮のように、日本を糺すきっかけとしての天罰に見えたのではないか。
 もちろん、それに私は同意するわけではないが、こういう思想も日本が生み出した思想のいち類型にあり、それを、被害者正義の文脈で不謹慎だとバッシングしても、実際のところはその思想信条への批判たり得ないのではないかと考える。

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2011.03.14

停電待ちの一日

 昨日夜の首相官邸の記者会見で菅首相が輪番停電をアナウンスした(参照)。一昨日から言われていたことなので意外感はなかったが、さて、自分はどう影響を受けるのかという情報が皆目わからない。
 グループに分けるらしい。紅組ではないだろう。白組も難しい。黒組か灰色だろう、俺は。ツイッターを見るとみなさん、どうなんの?ということで対応情報も飛び交っている。そのうち、あれよという間に町名までわかる情報が入手できた。親と近所の人には伝えた。
 ツイッターとかしてない人はどうするのだろうか。テレビとかだと町名まではわからないだろうし、市町村レベルの情報では重なりがあってなんだかわからない。明日の新聞に掲載されるのだろうか。しかし、新聞見たときすでに停電という人もいるだろう、と思いつつ、節電で部屋の明かりを落とすと防災無線が聞こえる。その手があったかと、戸外に出てエコーのかかるアナウンスを聞いていると、明日停電があります、ご理解くださいというだけだ。早春の夜は寒いな、へっへっくしょん。
 停電は沖縄暮らしで慣れている。台風が来ると1日は停電で閉じ込められる。本土では台風一過というが、沖縄の台風は一過しない。のろのろとやってきて居座る。一度だったか、本島をぐるっと一周してから本土に向かって行ったことがあった。島の風土を気に入っているのは米軍ばかりではない。
 台風が近づくと、うちなーんちゅうは騒ぎだす。どうなんだよと思うのだけ、台風見物のドライブに出かける一群がいる。かく言う私も台風の目に入ったとき、ドライブに行ったことがある。こうした行動は当然事故に結びつく。経験則は一定以上は効かない。
 台風が近づくと、沖縄でも飛び散るものは家に入れる。買い出しに出る。なんのためにかというと、台風が去ったあとのご馳走のためである。いや、冷蔵庫でくたくたになっている食べ物を処分するのだ。東京の輪番停電でも冷蔵庫は数時間停まることになるので、冷凍品は傷みかねない。それと電源のオンオフは冷蔵庫によくない。これから冷蔵庫トラブルも東京で多発するのではないか。
 沖縄の都市部、那覇や中部だと停電になっても復旧は早いが、そこを離れると復旧は遅くなる。1日はかかる。3日かかっても不思議ではない。夏場、エアコンは効かず、窓も開けることはできない。出生率が高くなるのも頷ける。
 沖縄では単一乾電池4つくらいで光るランタンみたいなものが各家庭にある。私も今回、沖縄から持ってきたのを取り出して、電池チェックした。さて、どんとこい東京大停電、なわけはないな。
 信号も停まるらしい。そうでなくても、信号無視の老人が増えているのでどうなるかと心配になるが、従来から信号無視しているなら、こういう場合にこそ適性と言えるかもしれない。アパートやマンションなどでは、エレベーターは停まるし、水道系も停まるだろう。断水が付随するというわけだ。トイレも使いづらい、と。
 それにしても輪番か。東京電力は、地域ごとに消費電力の統計情報をもっているはずなので、普通に考えれば、それを効率よく配分するほうが合理的ではないかと思うが、なぜか無理だったのだろう。そんな計画をする時間がなかったということかもしれない。ただ、これはあれかな、悪平等というやつかなという気もした。資源を効率よく配分するとなれば、効率性には価値観がどうしても反映する。配分が少なくなる人から弱者を虐めるとか批判が出てくる。それが嫌なら、幼稚園児の組み分けのようにすると文句が出ない。
 して朝が来る。世の中大混乱だろうと思うと、すでに大混乱。電車が間引かれて改札に入れないという状態。しかたないなと思いつつ、ああ、そうかと落胆のような感じもする。東電のお得意といえば鉄道会社なわけで、停電制度を実施するなら鉄道会社との連携が重要になる。つまり、そここから率先して電力削減を実施したのだろう。かくして、夕方まで予定されていた輪番停電は実施されない。
 東京ほどの大都市で名ばかりの「計画」停電を突然実施すれば何が起こるかわからない。バッファが必要になる。誰かが痛みを引き受けてバッファになるとすれば、鉄道会社だったか。なんか、国家の意志というものに直面したような圧倒感があった。

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2011.03.13

2011年3月11日の地震のこと

 地震被害に遭われたかたにお見舞い申し上げます。
 
 一昨日、石原都知事が知事選にまた出馬するという話を聞いてげんなりしながら、コンビニ販売の東国原英夫「日本改革宣言」(参照)を読んでいたら、ぐらっと来た。
 またかと思っていると、揺れは激しくなる。これはひどい。私が経験した地震の大きな揺れのなかでも二回目くらいだ。これは震度四を越えているな、しかし直下型ではないから神戸震災のようにはならないなと思いつつ、震度五を越えるかな、いよいよ我が人生の終わりの時かと、崩れる書棚を見ていると、ようやく揺れが終わった。二度目が来た。余震という大きさではないように感じられた。怖いものだ。
 テレビを付けると、震源は東北沖。あそこかと思う。岩手・宮城内陸地震と宮城県沖地震(参照)のことを思い出した。東南海地震(参照)も連想した。スマトラ島沖地震津波(参照)のようになるとも思った。
 その日は終日、ゆらゆらとした余震で船酔いのようでもあったし、パソコンに触れたくもない感じだった。翌日もそうだった。余震が多いのでNHKの音声を流し、ツイッターとかしていた。
 その間、福島原発の問題を知った。私としては、大きな地震が来ても原発は安全だというふうに考えていたので、何事かと興味を引かれた。当初の報道では特段に危機感はなかったようにも思えた。
 昼過ぎからだが、NHKの報道や解説はおかしいのではないかと疑念を持つようになった。個々に間違っているとかいうのではない。4気圧に想定されている原子炉内の圧力が8気圧まで上がっているのは設計時想定外の相当に危険な状態ではないか、核分裂停止後の崩壊熱として想定される温度の上昇はここまで高いものだろうか、セシウムが検出されたがどこから出て来たのか、など、個々の話を聞きながら自分なりに筋立てて考えると、1号機では核反応の制御ができてない・制御棒が機能していないという仮説が立ちうる。その仮説が整合的なのではないかと思えたのである。であれば、これはスリーマイル島のメルトダウンのような事態が想定されるのではないか。制御棒が機能しているなら冷却に専念するしかないが、制御棒に異常が想定されるのであれば再臨界を防ぐために制御棒の代替となるホウ酸を注入すべき事態なのではないか。
 とはいえ、ツイッターを見ていると、デマを飛ばすな、原発は安全な状態で問題はない、NHKの解説を信頼せよという意見が多く、疑念でも書こうものならバッシングのネタにされそうでもある。が、まあ、疑念は疑念である、言論が統制された戦中の日本ではあるまいし、ということで、ぽつぽつと書いてみる。案の定、核反応は止まっている・崩壊熱であるといったレスをいただく。再臨界という疑念でも出そうものならトンデモさんに思われるかとためらっているうちに、1号機の外壁が吹っ飛んでいた。後の報道から午後3時半のことだった。



 このNHKの報道が奇妙なものだった。すでに吹っ飛んでから1時間以上経って、爆破前の建物と比較してみましょうという話が唐突に切り出された。そのわりに専門家としては事態の解説はできない。建屋の外壁が吹き飛ぶ前に、炉のベント弁は圧力調整のために開放されていて、炉内の水蒸気とともに微量の放射性物質は屋内に貯まっているはずだ。無理もないのだが、建家が崩壊すれば内部の放射性物質は放出されることは確かなので、そのあたりがわかるNHK側の担当者の苛立ちが伝わってくる。
 そうこうしているうちに、海外報道で爆破の写真も見られるようになる。なんでNHKは爆発状態の写真を出さないのだろうか。このあたりで、NHKの報道への疑念が高まりだした。結論からいえば、NHKとしてもこれをどう出したものか思案していたのだろう。
 疑念が政府にも向くのは避けがたい。菅さんも枝野さんもよくやっているなと思うし、この国難に民主党政権でまとまるしかないというのは了解できる。が、それと情報開示とは別で、この爆発をどう説明するのかと待っていたが、かなり遅れた。爆発が3時半だが、政府発表は5時45分であった。2時間は遅れている。
 炉内からの水蒸気による爆発と見ることは避けがたい。が、水素爆発であるという話も流れていた。確かに、NHKが報道しない爆発の状態を見るとそれも頷ける。ではその水素はどこから。冷却用の水素ガス(参照)という話もあった。あるいは燃料棒に使用するジルコニウムからかもしれない。この件で、ようやく枝野さんの会見が出て来たのだが、水蒸気が水素になったという説明で要領を得ないものだった(参照)。


 爆発理由は炉心にある水が足りなくなって少なくなったことによって発生した水蒸気が格納容器の外側の建屋との間の空間に出て、その過程で水素になって酸素とあわさって爆発した。ちなみに、格納容器内には酸素はないので爆発することはない。実際、東電から格納容器が破損していないことが確認されたと報告を受けている。

 水蒸気は水から発生するのだから、水蒸気によって水が足りなくなるのだが、事態はそうではなく、水蒸気化が進み炉心を冷やす水が足りなくなり、炉心の過熱が進みさらに水蒸気化が進み高圧になっているということだろう。それが「外側の建屋との間の空間に出て、その過程で水素になって」というので、水素化したのは建家に出てからという話になっている。私には理解できなかった。
 結果論からすると、つまり今日の3号機の説明から類推してみると、1号機もジルコニウムによるものだったと見てよいだろう。炉内の現象である。つまり、燃料棒を覆うジルコニウムが反応していたということで、燃料棒は溶解していたことになる。推測なのだが、枝野さんの曖昧な説明も、またあの時点のNHKの説明もそうだが、スリーマイル島的な「炉心溶融」を避けたいということではなかったか。しかし、その後、NHKも炉心溶融を明確に打ち出してきた。
 1号機の爆発で驚いたもう一点は、随伴する高い放射線量である。爆発後のNHKで報道された。明確には言えないものの、爆発に伴う放射性物質の放出によるものだろうと推測される。ただし、高いといってもこの時点で報道された量はそれほどは多くはなく、水蒸気爆発は想定しづらい。
 この時点でNHKの報道担当者の苛立ちはさらに伝わってきた。本来ならこの時点で政府発表があると想定していたのだろう。なかった。NHKは偉いなと思ったのだが、NHKがおそらく独断で、政府発表以前に、この放射性物質を避けるよう、屋内にいるように実質的な指示を出した。原子炉建家が崩壊された現状、建家内の放射性物質が放出されたと考えるのは常識であり、それは危険を意味している。どの程度の量か厳密に見極めてからでは危機管理として遅すぎる。
 爆発を認めた5時45分枝野さんの説明では、放射性物質について、NHK報道とは異なる見解を出した。

 このたびの爆発は、格納容器内のものではなく、従って放射性物質が大量に漏れ出すものではない。
 東電と福島県による放射性物質のモニタリングの結果も確認したが、爆発前に比べ放射性物質の濃度は、上昇していない。報道された15時29分の1015マイクロシーベルトの数字だが、この時点の数字はその後、15時36分に爆発したが、15時40分の数字が860マイクロシーベルト、18時58分の数字が70.5マイクロシーベルトとなって、むしろ少なくっている。

 率直なところ、これはかなりまずい事態になったと思った。これでは政府が信頼されない事態になりかねない。案の定その後、被曝した人が確認され、政府側も事実上訂正するに等しいことになった。やや意外だったのは、こうした点について、政府への批判はあまり見られないことだった。私としても、特段にこれで政府批判をしたいわけでもないので、そういう空気なのだろう。
 1号機の過熱はその後も止まらないらしく、ついに原子炉格納容器にホウ酸入り海水を入れるという。ここでまた私の疑問が浮かんだ。原子炉圧力容器にホウ酸を入れるというならわからないでもないが、なぜ格納容器になのか。もちろん、海水が冷却を意図したものであるのはわかるが、なぜ燃料棒に接しないのにホウ酸(中性子を吸収することから制御棒的な機能をする)なのだろう。これはすでに格納容器に異変があることを暗示しているのではないか。とはいえ、このあたりはおいそれとは言えないかと逡巡する。
 報道でもツイッターでも識者のまことしやかな説明があり、御傾聴しましょう的に感心されている人も多いのだが、どうにも私の各種の疑念は晴れない。戦時下でこの戦争は負けるのではないかと思った人に同情する。疑念を持ちながらも、圧倒的な世間の空気にげんなりして何も言う気力も失われたのだろう。
 一晩して、1号機の原子炉格納容器にホウ酸入り海水は注入されてめでたしめでたしふうななか、3号機で同種の問題が発生。こちらは、原子炉圧力容器に真水を入れ、さらにその後、海水を入れた。枝野さんも今度は、炉内から水素が発生しているかもしれないと述べてもいた。3号機については炉内の圧力も調整でき、それに伴って段階的に水素の放出もなされているのでむしろ爆発はないだろうし、水も燃料を覆っているのでかなり安定している状態になっているようだ。(追記:その後不安定化し、1号機と同じくホウ酸入り海水を注入した。なお、3号機はMOX燃料だが、蒸気内に含まれる放射性物質という点では特段の差違はないと理解している。14日11時1分、3号機建家も水素爆発。エントリーでの楽観的な予測は外れた。)
 疑問は、1号機のほうだ。原子炉格納容器にホウ酸入り海水が入っているのはわかったが、原子炉圧力容器にまで入って、過熱が制御されているのだろうか。どうなのかと思っているうちに、そういうツイート発言を辞めたらという示唆をもらい、それもそうだなと疑問を放置。
 いろいろ考えてみたが、私の推測では、1号機の炉内では燃料の溶解で制御棒が損傷し、制御棒の機能がうまく働かず、それで燃料の制御もできていないというあたりではないかと思う。原子炉圧力容器にまでホウ酸入り海水が入っているなら、これも安心なのだが、率直なところ報道を見てもそこがわからない。いやな懸念がまったくないわけでもない。まあ、しかし、と。(追記:既に炉内にも注入されているという情報をいただく。ソースの確認はできないが追記しておく。他、事実的な事柄などについては本文に追記した。)
 水素が燃料棒のジルコニウムから発生したとなると、他の原発にも影響を与えるようにも思うが、3号機でなんとか爆発を抑制できれば、今回の日本の事態で、このリスク管理も世界で共有されたことにはなるだろう。つまり、原発の安全性に寄与できる。
 そういえば、水素爆破時の枝野さんの説明では、原子炉圧力容器に問題はなかったということが強調されていた。科学的に考えるなら、近くで爆発を起こしてストレステストをしたようなもので、逆に原子炉の安全性の確認ができたとも言えそうだ。
 が、それを今後のエネルギー政策や海外原発ビジネスに載せていくのは難しくなるだろう。そう考えて、こりゃ「絶望的」とついツイートしたら、誤解された。私としては原子炉の安全性は前提的なんだが、そう思わない人もいる。避難住民の苦労を思えば当然でもある。


追記(3月18日)
 読売新聞で興味深い報道があった。「原発事故直後、日本政府が米の支援申し入れ断る」(参照)より。


 東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡り、米政府が原子炉冷却に関する技術的な支援を申し入れたのに対し、日本政府が断っていたことを民主党幹部が17日明らかにした。
 この幹部によると、米政府の支援の打診は、11日に東日本巨大地震が発生し、福島第一原発の被害が判明した直後に行われた。米側の支援申し入れは、原子炉の廃炉を前提にしたものだったため、日本政府や東京電力は冷却機能の回復は可能で、「米側の提案は時期尚早」などとして、提案を受け入れなかったとみられる。
 政府・与党内では、この段階で菅首相が米側の提案採用に踏み切っていれば、原発で爆発が発生し、高濃度の放射性物質が周辺に漏れるといった、現在の深刻な事態を回避できたとの指摘も出ている。
 福島第一原発の事故については、クリントン米国務長官が11日(米国時間)にホワイトハウスで開かれた会合で「日本の技術水準は高いが、冷却材が不足している。在日米空軍を使って冷却材を空輸した」と発言し、その後、国務省が否定した経緯がある。
(2011年3月18日08時12分 読売新聞)

  政府側としてはこの話を否定した。「枝野氏、米政府の原発支援拒否報道「事実まったくない」否定」(参照)。

 枝野幸男官房長官は18日午前の記者会見で、米政府が福島第1原発の原子炉冷却に関する技術的支援を申し入れたものの日本政府が断ったとする読売新聞の報道について、「少なくとも政府、官邸としてそうした事実は全く認識していない」と否定した。

 読売新聞記事の真義はわからない。仮に正しいとしても、米国側が「原子炉の廃炉を前提に」何を提案したかもわからない。が、それがホウ酸注入であれば、米国側の専門家の想定と自分の当時の疑念はだいたい同じだったことになるのではないかと感慨深く思った。


追記(3月19日)
 関連の報道が読売から出ていた。後の検証の資料のために追記しておく。「政府筋「東電が米支援は不要と」…判断遅れ批判」(参照)。


 東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故で、米政府が申し出た技術的な支援を日本政府が断った理由について、政府筋は18日、「当初は東電が『自分のところで出来る』と言っていた」と述べ、東電側が諸外国の協力は不要と判断していたことを明らかにした。
 政府関係者によると、米政府は11日の東日本巨大地震発生直後、米軍のヘリを提供することなどを申し入れたという。政府は、各国からの支援申し出は被災地での具体的な支援内容を調整したうえで受け入れており、「(断ったのではなく)いったん留め置いた」と釈明する声も出ている。
 枝野官房長官は18日午前の記者会見で「政府、首相官邸としてそうした事実は全く認識していない」と否定する一方、米政府からの原子炉冷却材提供の申し入れなどについて「詳細は把握していない。確認してみたい」と述べ、事実関係を調査する考えを示した。
 政府・与党内では、政府の初動対応について、「米側は早々に原子炉の廃炉はやむを得ないと判断し、日本に支援を申し入れたのだろう。最終的には廃炉覚悟で海水を注入したのに、菅首相が米国の支援を受け入れる決断をしなかったために対応が数日遅れた」(民主党幹部)と批判する声が出ている。
 高木文部科学相は18日午前の閣議後の記者会見で「事実関係は把握していない。しかし、姿勢としてはあらゆることを受け入れるのは当然だ。内外の声をしっかり聞くことは非常に重要だ」と語った。
 一方、自衛隊が17日午前に行った大型輸送ヘリによる海水投下の背景には、米側の強い要請があったことも新たに分かった。
 日米関係筋によると、自衛隊の大型輸送ヘリによる海水投下に先立ち、今回の事故を「最大級の危機」ととらえる米側は、「まず日本側がやるべきことをやるべきだ」などとして、再三にわたり日本側の行動を強く要請していた。17日午前に予定されていた菅首相とオバマ米大統領の電話会談でも、大統領からの要請があると予想されたため、首相は防衛省・自衛隊に会談前の海水投下実施を求めたという。
 日本政府への懸念や不満は、米国以外からも出ている。
 今回の事故に関する情報収集や日本政府との意思疎通のため、急きょ来日した国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は、「(日本政府は)情報伝達を質量ともに改善して欲しい。改善の余地はある」と述べており、18日午後に行われる松本外相との会談などでも、こうした問題が取り上げられる可能性がある。
(2011年3月18日15時11分 読売新聞)


追記(3月20日)
 18日23時付け読売新聞記事「政治主導空回り…「危機の連鎖」に対応し切れず」(参照)より。


 米国が申し出た支援を断ったことが、その後の事態の深刻化を招いたという見方も出ている。
 米国のクリントン国務長官は地震発生直後、ホワイトハウスでの会合で原発事故に触れ、「日本の技術水準は高いが冷却材が不足している」と懸念を示した。
 民主党幹部は「米側はその後、原発事故への支援を申し出たが、日本側は辞退した」と語る。首相周辺は「支援の話は首相や官房長官には届いていない」としているが、「東電が原子炉を廃炉にせず、自力で収拾できると考えていたことが政府の判断に影響を与えた」(政府筋)という声もある。核分裂の反応を抑える効果から原子炉の冷却に使われるホウ酸と海水を注入すれば、運転再開は難しくなる。これを東電が嫌がり、政府も追認したというわけだ。
 結局、12日になって福島第一原発1号機で水素爆発が発生し、東電は海水とホウ酸の注入に踏み切った。
(2011年3月18日23時27分 読売新聞)

 読売新聞の文脈では、米国が申し出た冷却剤はホウ酸であるようだ。

追記(2011.3.24)
 安定したかに見えた1号機だったが、エントリで懸念を想定したように、実はこの間、問題を抱えたままだったようだ。
 「福島第一原発1号機、核燃料溶融の可能性も」(参照)より。


 国の原子力政策の安全規制を担う、原子力安全委員会の班目春樹委員長は23日夜、東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所の事故後初めて記者会見を開いた。
 原子炉の被害について尋ねられた同委員長は「(水素爆発した)1号機の核燃料はかなり溶融している可能性がある。2、3号機に比べて、最も危険な状態が続いている」と指摘。原子炉内の温度、圧力の異常上昇が続き、危険な状況にさしかかっているとして、「(炉心が入っている)圧力容器の蒸気を放出する弁開放を行い、炉の破壊を防ぐ検討をしている」ことを明らかにした。
 同原発1~3号機の原子炉の燃料棒は露出し、海水の注水作業が続けられている。23日、1号機の炉内の温度は一時、400度と設計温度(302度)を上回ったが、注水によって温度が下がっている。しかし、圧力の上昇が続き不安定な状態になっているため、班目委員長は「24日にも、圧力容器内の蒸気を放出するかの判断をする」と述べた。
(2011年3月24日01時21分 読売新聞)

追記(2011.3.24)
 興味深い事実が公開された。エントリで触れた時期を挟んで、12日から14日かけて中性子線が放出されていたらしい。量としては微量なのでエントリで想定したスパイクの証拠になるとまでは言えないが、リアルタイムで公開されていたら議論の空気は変わっていたのではないだろうか。
 「中性子線検出、12~14日に13回」(参照)より。


 東京電力は23日、東電福島第一原発の原子炉建屋の約1・5キロ・メートル西にある正門付近で、これまでに2回だけ計測されたとしていた中性子線が、12~14日に計13回検出されていた、と発表した。
 観測データの計算ミスで見落としていたという。
 中性子は検出限界に近い微弱な量だった。東電は、「中性子は、(核燃料の)ウランなど重金属から発生した可能性がある。現在は測定限界以下で、ただちにリスクはない。監視を強化したい」としている。
(2011年3月23日13時10分 読売新聞)

追記(2011.3.30)
 IAEAが再臨界の可能性に言及していた。「IAEA原子力安全局:福島第一原発、局所的に再臨界の可能性も」(参照)より。


 3月30日(ブルームバーグ):国際原子力機関(IAEA)は30日のウィーンでの記者会見で、東京電力福島第1原子力発電について、「再臨界」の可能性もあるとみて、分析作業を進めていることを明らかにした。
 IAEA原子力安全局担当のデニス・フローリー事務次長は30日、「最終判断ではない」と発言。「局所的に起こる可能性があり、放出が増える可能性もある」と述べた。

 オリジナルのブルームバーグ記事が見当たらないが、Time「Has Fukushima's Reactor No. 1 Gone Critical?」(参照)に以下がある。

Update 2: The IAEA has said that the Fukushima nuclear power plant may have achieved re-criticality. “There is no final assessment,” IAEA nuclear safety director Denis Flory said at a press conference on Wednesday, according to Bloomberg News. “This may happen locally and possibly increase the releases.”

 ネットには以下のテキストがあるが真正であるかは判断しづらい。

Fukushima Atomic Fuel May Have Reached New Critcality, IAEA Says

By Jonathan Tirone
March 30 (Bloomberg) -- Fuel in reactors at the stricken Fukushima Dai-Ichi nuclear power plant may have achieved “re-criticality,” the International Atomic Energy Agency said today at a press conference in Vienna. “There is no final assessment,” IAEA nuclear safety director Denis Flory said today. “This may happen locally and possibly increase the releases.” In a paper published yesterday, James Martin Center high-energy physicist Ferenc Dalnoki-Veress said that Chlorine traces and neutron beams reported in water samples taken from unit-1 pointed toward “localized criticality.”

To contact the editor responsible for this story:
Jonathan Tirone at +43-1-513-266-025 or
jtirone@bloomberg.net


 元になっていると思われるDalnoki-Veres氏の1号炉についての考察は「WHAT WAS THE CAUSE OF THE HIGH Cl-38 RADIOACTIVITY IN THE FUKUSHIMA DAIICHI REACTOR」(参照)にあり、結論としては、局所的な再臨界がないとも言い切れないないとしている。

This analysis is not a definitive proof but it does mean that we cannot rule localized criticality out and the workers should take the necessary precautions.

追記(2011.4.9)
 4月8日付け「福島原発1号機、3月12日朝に燃料棒一部露出 東電が公表」(参照)で、3月12日の朝には燃料棒が露出していたことが明らかになった。


 公表データによると、1号機の原子炉内の水位がマイナスに転じたのは3月12日8時49分。マイナス300ミリメートルだった。マイナスに転じることは燃料棒が一部露出したことを意味するという。その後、水位の低下は進み、3月13日7時30分にはマイナス1700ミリだった。

 燃料棒がこの時点で損傷しているなら、制御棒挿入機能が作動していても制御棒が中性子を制御する機能が保たれていたとは限らず、当初想定していた事態はより裏付けられてきた。

追記(2011.4.20)
 4月20日に公開された「タービン建屋地下階の溜まり水の核種分析結果の再調査」(参照PDF)で、cl-38は「検出限界未満」となった。これでこの時点、つまり、3月25日時点のスパイクの可能性は大きく否定されたと見てよいことになった。

追記(2011.11.02)
 2号機で燃料のウランが核分裂した際にできる放射性物質のキセノンが検出された。結論からすると、この事態は自然分裂であった。しかし、制御棒が効かない可能性は検討事項に上がった。
 NHK「かぶん」ブログ「原発2号機で何が起きたのか」(参照)より。太字はオリジナルのママ。


2号機では事故で核燃料がメルトダウンし、原子炉の底や格納容器まで散乱している状態だとみられています。このため、東京電力は制御棒が効かないことに加え被覆管が溶けてなくなったことで燃料がむき出しの状態となり核分裂が起こり、一時的に一部の場所では臨界が継続した可能性もあるとみています。

 2号機についてではあるが、1号機についても同様の推定はなりたちうる。

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