ボコ・ハラムによるナイジェリアの教会テロ
ナイジェリアの首都アブジャ近郊のマダラとジョス、北部のカノ、北東部のダマトゥルとガダキの5地方のキリスト教会へ爆弾によるテロ攻撃があり、現在の報道では40人が死亡した(参照)。一連のテロはイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」が犯行声明を出しており、ナイジェリア当局もボコ・ハラムによるものと見ている。
ボコ・ハラムは、現地の言葉で「西洋教育は冒涜」とされている。イスラム教のシャーリア法の厳格な実現を目指し、キリスト教を敵視している。ナイジェリアはイスラム教徒とキリスト教徒が人口をほぼ二分している。
ボコ・ハラムによる教会テロは昨年のクリスマスイブにもあり、また8月には国連機関を狙ったテロ、11月にも教会は警察を狙ったテロもあった。今回のテロも想定外であったとは言い難い。日本の外務省も12月14日付けで「ナイジェリア:イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」によるテロ攻撃の広がり」(参照)を公開していた。ナイジェリア政府も軍を投入してボコ・ハラムの取り締まりを強化していたが、昨日の事態になった。
ボコ・ハラムの問題は、米国内では、米国の安全保障上の問題としても提起されていた。11月30日付けの下院国土安全保障委員会の広報「Homeland Security Committee Report Details Emerging Homeland Threat Posed by Africa-Based Terrorist Organization, Boko Haram」(参照)に概要があり、アルカイダ系の組織と同類とする指摘がある。だが、アルカイダとの直接の繋がりについては、「下着爆弾犯」といったテロの類似性はあるものの、現状では不明である。
同委員会の報告書「BOKO HARAM: Emerging Threat to the U.S. Homeland」(参照PDF)にはより詳細が記されている。これを読むとわかるのだが、ボコ・ハラムの脅威の本質は、ナイジェリアが、今後も期待されるアフリカ最大の産油国石油産出国であることだ。
As a member of the Organization of the Petroleum Exporting Countries (OPEC), Nigeria has proven that it can flex its economic muscle and impact global oil production. In short, disruptions to Nigerian oil production can impact domestic refining in the United States and affect global oil markets.石油輸出国機構(OPEC)のメンバーとして、ナイジェリアは、経済力を高め、世界の石油生産に影響を与えることを明らかにしてきた。手短に言えば、ナイジェリアの石油生産が中断されれば、米国内の精製にも影響し、世界の石油市場に影響する。
またしてもこの構図が出てくる。この構図が、リビアとシリアを分かつものでもあった。リビアには石油があり、シリアにはない。
ボコ・ハラムが宗教的な理由からテロを散発することはナイジェリア国内を不安定化するが、石油施設に手を出さないかぎり西側社会が大きく関与することはないとも言えるだろう。
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