一川保夫防衛相は穏便にひっこめたほうがよさそう
失言・揚げ足取りで閣僚を引きずり下ろすというのは、しないほうがよいと思うし、無能に見える政治家も正当な手順でその地位にあるなら、菅元首相のようにできるだけ職務をまっとうさせたほうがいいと思う。だが、一川保夫防衛相はさすがに防衛相として話にならない。できるだけ穏便にひっこめたほうがよさそうだ。
政治家の資質といったうさんくさい話はさておくとしても、事は国家の安全保障にも関わり、今後難しい交渉を多方面に展開していく職務がこの人にできるとはとうてい思えない。ご老体の北沢俊美元防衛相をわずらわすのも忍びがたいが、ここは北沢さんに頼むしかないのではないか。
話は最近のあたりから。関連ある話題として、一川保夫防衛相が監督責任を負う防衛省沖縄防衛局・田中聡局長の「犯す前に、犯しますよと言うか」発言について触れておく。
まず、オフレコ発言の暴露はジャーナリズムとしてどうかという問題がある。そもそも「報道を前提としない酒席での非公式発言」を取りあげるのはジャーナリズム違反ではないのかという問題だ。
初報道は琉球新報だったが、その後の続報については、時事「おことわり=沖縄防衛局長発言について」(参照)が代表的に弁明している。
防衛省の田中聡沖縄防衛局長の28日夜の発言については、時事通信社の記者も懇談会に出席していました。基地問題の背景を説明するのを趣旨としたオフレコ前提の非公式懇談だったため、記事にするのは見合わせましたが、29日朝、一部報道機関が報じたことから、オフレコの意味はなくなったと判断。発言内容を報じることにしました。
オフレコの意味がなくなった時点以降は、ジャーナリズムの対象となるということだ。それについては、ジャーナリズムのルールのうちと見てよいだろう。
すると問題はまず、口火を切った琉球新報が問われることになる。この件について琉球新報は30日付け「「知る権利」優先 本紙、オフレコ懇談報道」(参照)でこう述べている。
政府が年内提出を予定する環境影響評価(アセス)の評価書提出問題に話題が移った時、本紙記者が「政府はなぜ『年内提出する』と明言しないのか」と問いただした。すると、田中局長は女性を乱暴することに例えて「これから犯す前に『犯しますよ』と言いますか」と応じた。田中局長は、1995年の少女乱暴事件後に、「レンタカーを借りる金があれば女が買えた」と発言し更迭されたマッキー米太平洋軍司令官(当時)の発言を自ら話題にし、肯定する言いぶりもあった。
公表を前提としないオフレコ内容を報道したことについて、沖縄防衛局報道室は「(懇談は)オフレコだ。発言は否定せざる得ない」とした上で、「(公表すれば)琉球新報を出入り禁止することになる」と警告してきた。
ジャーナリズムの問題は、オフレコはすべて報道してしはならないということではない。ジャーナリストの責務においてそれを報道するかという問題である。
つまり、(1)オフレコ内容を公的に知らせるという責務を琉球新報がもっていたか、(2)それに見合うほどの重要な問題であったか。この2点である。
1点目については、琉球新報が沖縄防衛局報道室に打診し、「(公表すれば)琉球新報を出入り禁止することになる」と警告を受けたとのことだから、出し抜けの報道ではない。社を賭けて実施した、まさにジャーナリズムの価値が問われる活動であった。
ではそれがジャーナリズムとして正しい行為であったか。
その評価が難しい。今回の事態は、「犯す前に、犯しますよと言うか」という下品な発言内容が注目されるが、報道価値に関わるのは、誰が述べたのか、つまり、どれだけの権能者が述べたか、という点である。
田中聡氏は沖縄防衛局長であり、政府側のこの問題の前線における最高責任者であると見てよいだろう。つまり、そのような権能者がどのような考えを持っているかを伝えることは、ジャーナリズムとしては基本的に重要な問題だとは言える。
つまり問題は、「犯す前に、犯しますよと言うか」という下品な失言ではなく、その下品な発言の背景にある、政治問題の評価である。これに触れなければ、この問題を論じるに値しない。
次に、オフレコ、つまり、密室発言でもあるから、その発言は正確であったかが、前提として当然問われる。発言の正確性についての疑問は、報道各社の報道のブレからも当然起きる。具体的に見てみよう。
朝日新聞「沖縄防衛局長「犯す前に言いますか」と発言 辺野古巡り」(参照)では。
沖縄県名護市辺野古への米軍普天間飛行場の代替施設建設に向け、政府が環境影響評価(アセスメント)の評価書の提出時期を明言しない理由について、沖縄防衛局の田中聡局長が28日夜の報道各社との非公式の懇談で「これから犯す前に犯しますよと言いますか」などといった趣旨の発言をしていたことがわかった。
読売新聞「女性を誹謗する発言…田中・沖縄防衛局長」(参照)では。
沖縄防衛局の田中聡局長(50)は28日夜、沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に向けた環境影響評価書の県への提出時期を一川防衛相が明言していないことについて、女性を乱暴することに例え、「犯す前に『やらせろ』とは言わない」と発言した。
毎日新聞「普天間移設:沖縄防衛局長が不適切発言 厳しく処分へ」(参照)では。
沖縄防衛局の田中聡局長(50)が28日夜、報道機関との非公式の懇談会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先の環境影響評価(アセスメント)の評価書の提出時期を一川保夫防衛相が明言していないことについて、「犯す前に犯しますよと言いますか」と発言していたことが分かった。
NHK「沖縄防衛局長が不適切発言」(参照)では。
防衛省沖縄防衛局の田中聡局長は、28日夜、那覇市で行った記者団との非公式の懇談会の席で、普天間基地の名護市への移設計画に伴う環境影響評価書の提出時期を一川防衛大臣が明確にしていないことについて、「犯す前にこれから犯すとは言わない」と発言しました。藤村官房長官は、29日午前の記者会見で、この発言について「事実であれば看過できない」と述べました。
共同通信「沖縄防衛局長、女性誹謗で更迭へ 辺野古アセスで」(参照)では。
田中聡沖縄防衛局長(50)が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書の提出時期を政府が明言していないことをめぐり「犯す前に、犯しますよと言いますか」と女性への乱暴に例える発言をしていたことが29日、関係者への取材で分かった。
以上三紙およびNHK、共同通信の報道には異同もあり、正確な発言はわからない。
正確な発言について疑念の余地があることは、日経新聞と産経系Zakzakが報道している。
日経新聞「男女関係に例え不適切発言 沖縄防衛局長」(参照)では。
沖縄防衛局の田中聡局長は28日夜、報道陣との非公式懇談で、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に必要な環境影響評価(アセスメント)を巡り、一川保夫防衛相が評価書の年内提出を明言していないことについて、女性への性的暴行に例えて「犯す前に犯しますよとは言わない」と述べた。
田中局長は、防衛省が評価書の年内提出方針を明言しない理由を報道陣から質問されたのに対し発言。「やる前にやらせろとは言わない」とも述べた。
産経系Zakzak「防衛官僚“オフレコ暴言”バレた!女性冒とく「犯す前に…」」(参照)では。
防衛省関係者は「犯す」という言葉は使っていないとしたうえで、「何かをやる前に、いちいち『やる』とは言わないとの趣旨の発言。女性への暴行という趣旨の発言はしていない」と説明している。
日経及び産経系Zakzakからは、「犯す前に、犯しますよと言うか」という発言はなかったかもしれない様相が浮かび上がる。
では、朝日、読売、毎日などは捏造報道をしたのだろうか? あるいは、仮定に基づく煽動を行ったのだろうか?
この問題をブログのネタで浅薄に扱ってしまう前に、いくつか前提を考慮しなければならない。
まず、事実は公開されていない。録音がされ、それが暴露されたということではない。おそらく、録音は存在していないだろう。
であれば、事実とは証言による可能なかぎりの推認に重要性が置かれる。つまり、証言の信憑性が問われることになる。
ではまず、証言者とは誰だろうか。それを見ていく必要がある。
琉球新報記事は、証言者たりうる懇談会出席者についてこう記している。
懇談会は各社負担する会費制で、県内外の9社の記者が参加した。午後8時ごろから始まった懇談は、テーブル中央に座った田中局長を記者が取り囲み、飲食を伴いながら、基地問題について意見を交わした。
では、個別に可能なかぎりその出席記者を洗い出してみよう。そしてその後、直接証言の報道社の報道を分類して行こう。
まず時事通信についてだが、先の報道からわかるように出席していた。
共同通信は先の記事で伝聞であることを強調している。出席していなかったことについては、「公益性考えオフレコ報道 防衛局側は戸惑い」(参照)で明示している。
懇親会に参加したのは新聞、放送、通信の約10社。共同通信社は参加していなかった。出席者によると、那覇市内の居酒屋で、記者らに囲まれた田中氏は「今日は何でも聞いて。完オフ(完全オフレコ)だから」と発言し、酒を飲んで懇談した
共同報道には証言性はない。
だが、共同記事からは、出席社に「放送」が含まれているとの指摘が興味深い。
出席する報道機関を選んだ防衛局は、後で触れるが、読売新聞や日経新聞など全国系の本土紙を意識していることから、同じく全国をカバーするNHKが含まれていた可能性はあるだろう。
朝日新聞記者については、出席していなかったことを30日朝日新聞社説「沖縄侮辱発言―アセス強行はあり得ぬ」(参照)で述べている。
地元紙が報じ、表面化した。朝日新聞は発言時は、その場にいなかったが、補強取材をして記事にした。私たちも、あってはならない暴言だと考える。
毎日新聞社も出席していない。「田中・沖縄防衛局長:普天間アセス「犯す前に言いますか」 提出時期巡り発言、更迭へ」(参照)より。
29日付朝刊で発言を報じた琉球新報や防衛省関係者によると、懇談会は防衛局側が呼びかけ、那覇市内の居酒屋で、地元報道機関など約10社が参加して開かれた。問題となった発言は、評価書の提出時期をめぐるやり取りの中で出たという。毎日新聞は懇談に参加していなかった。
沖縄二紙の一つ沖縄タイムス記者は参加していたが、酒席の座の配置から該当発言は聞いていなかったとしている。「沖縄防衛局長更迭 アセスめぐり女性誹謗」(参照)より。
沖縄防衛局が28日夜に居酒屋で主催した懇談会には、本紙を含む県内外の記者約10人が出席し、完全オフレコで行われた。田中氏は酒を飲んでいた。発言時、本紙記者は離れたところにいて発言内容を確認できなかった。29日に複数の出席者に取材し、確認した。
沖縄タイムスは朝日新聞と本土復帰前から記者交換をしているので、おそらく朝日新聞は沖縄タイムスを介して記事確認をしたのではないか。
日経新聞記者は出席していた。「沖縄防衛局長の更迭発表 防衛相」(参照)より。
田中局長の発言があったのは28日夜。沖縄防衛局側の呼び掛けで、那覇市内の飲食店で報道各社との懇談会が開かれ、日本経済新聞も含め9人の記者が参加した。田中局長は各社が報道しないとの前提で沖縄の基地問題などの質問に答えたが、琉球新報が29日付朝刊で発言の一部を報道した。
読売新聞記者も出席していた。先の記事より。
懇親会には、読売新聞を含め記者約10人が出席。報道を前提としない非公式の発言だった。
産経新聞も出席していなかったが、興味深い表現になっている。「田中氏を更迭 女性や沖縄を侮辱」(参照)より。
会合は那覇市内の居酒屋で、報道を前提としない非公式の形式で行われた。県内外の報道機関約10社が参加したが、産経新聞社は欠席した。地元紙、琉球新報が29日付朝刊で報じたことを受け、関係者に取材して発言内容を確認した。
産経報道の「欠席した」という表現から察するに、防衛局側からの出席の招待あったとも受け取れそうだ。
以上をまとめると、懇談会出席の確認ができるのは、初報道の琉球新報、オフレコ解除を明示した時事通信に加え、本土大手紙では、読売新聞と日経新聞。さらに地元紙の沖縄タイムスである。
産経新聞「欠席」したことは防衛局が本土紙を意識したと見られ、「放送」も参加していることから、NHKも出席していた印象はある。
逆に出席していなかったことを明示している筆頭は、朝日新聞と毎日新聞だが、前者沖縄タイムス、後者は琉球新報と提携しているためだろう。証言の信憑性の観点からは、出席した記者に近いものと見てもよいだろう。
反対に出席していないことを明示しているのは、共同通信と産経新聞である。よってこの報道は完全に他社記者に依存したことになる。
では、この証言の審級性から報道を見直していこう。
まず、証言者たりうるは出席者である。
すると、琉球新報、時事通信、日経新聞、読売新聞、沖縄タイムスの五者になる。五者は共謀として単一の証言をしているわけではないので、その差違が事実性の認定に重要になる。なお、沖縄タイムスが証言しているように、出席していても直接証言者たりえないことを考慮する必要はある。
分かる範囲で推定を深めよう。
証言者たりうる、琉球新報と時事通信、および読売新聞と日経新聞の報道を見直すと、問題となる「犯す」という表現について、表面的な差違は見られない。
だが、日経新聞と読売新聞では、初報道となった琉球新報とは異なる姿勢は明確になっている。
日経新聞では、「犯す前に犯しますよとは言わない」に併記して「やる前にやらせろとは言わない」という表現を加えている。読売新聞もまた併記に近い、「犯す前に『やらせろ』とは言わない」としている。
証言者たりえる二社報道では、「犯す」の他に「やる・やらせろ」という表現が併存していた可能性を浮かび上がらせている。
他方、問題の発言者である田中聡沖縄防衛局長はどう弁明しているか。
正確な報道はないが、時事通信が要旨を報道している。「田中沖縄局長の説明要旨」(参照)より。
田中聡沖縄防衛局長が29日、自らの不適切な発言について、一川保夫防衛相らに説明した内容は次の通り。
居酒屋での記者との懇談で、(米軍普天間飛行場移設に関する環境影響評価の)評価書の準備状況、提出時期が話題になり、私から「『やる』前に『やる』とか、いつごろ『やる』ということは言えない」「いきなり『やる』というのは乱暴だ。丁寧にやる必要がある。乱暴にすれば、男女関係で言えば犯罪になる」といった発言をしたと記憶している。
ここで言った「やる」とは評価書を提出することを言ったつもりで、少なくとも「犯す」という言葉を使った記憶はない。しかし、今にして思えばそのように解釈されかねない状況、雰囲気だった。
女性を冒涜(ぼうとく)する考えは全く持ち合わせていない。今回の件で女性や沖縄の方を傷つけ、不愉快な思いをさせたことは誠に申し訳なく、おわびしたい。(2011/11/29-21:24)
時事通信による要旨であり、発言は引用ということことになるが、先の読売新聞と日経新聞報道にある「やる」表現の併記と付き合わせると、以下の発言は存在していたと推定できそうだ。
- 『やる』前に『やる』とか、いつごろ『やる』ということは言えない
- いきなり『やる』というのは乱暴だ。丁寧にやる必要がある。乱暴にすれば、男女関係で言えば犯罪になる
「男女関係で言えば犯罪となる」という「犯罪」は、レイプの意味であり、文脈から「犯す」という意味になることは明白である。
つまり、想定される文脈からは、「やる」は「犯る」(犯す)、という解釈は妥当の部類であり、この解釈について報道価値があるかと判断するのはジャーナリズムには問われることになり、捏造といった次元の問題ではないことは、妥当に推測される。
別の言い方をすれば、今回の事態について、「捏造」だとすることや、仮定に基づく煽動と見ることは、失当である。
ただし、報道の本質は、暴行の表現による失言というより、米軍普天間飛行場移設に関する環境影響評価書の準備状況について、政府側が強行するという意識を持っていることが暴露された点にある。
別の言い方をすれば、暴行表現に着目しすぎれば、問題の本質を見失うだろう。
とはいえ、暴行の比喩という文脈が、少女暴行事件のあった沖縄にとっては、本土とは異なる温度差で響くのも当然であり、政府側でも特段の配慮が必要になるのだが、その点で、残念ながら、野田政権は田中聡沖縄防衛局長更迭に手間取り、さらに本題と言えるのだが、一川保夫防衛相の対応は最悪だった。
一川保夫防衛相は、表向きの謝罪の言葉の裏に、沖縄問題を理解していなかったことが暴露された。1日の参院東日本大震災復興特別委員会で、自民党・佐藤正久議員による、1995年の沖縄少女暴行事件の中身の理解を問われた際、一川保夫防衛相は「正確な中身を詳細には知らない」と言ってのけたからだ。
本土側のメディアの反応も一川保夫防衛相の無理解に似たこともあって、事の重大さが認識されていないようだが、田中聡沖縄防衛局長の失言より、この発言ほうが深刻な問題である。沖縄県民はこの件で、一川保夫防衛相への信頼を完全に失ってしまった。このことが野田政権側にまったく理解されていないことが最大の問題であり、この無理解が野田政権の死亡フラグともなりかねない。
この件についての一川保夫防衛相の弁明がまた情けない。毎日新聞社説「一川防衛相 資質に重大な疑義あり」(参照)に同意せざるをえない。
移設問題を担当する閣僚が、沖縄県民にとって癒やしきれない心の傷となっている事件について答弁する内容ではないだろう。一川氏はその後、事件関係者の立場を考慮して説明を控えたという趣旨の弁明をしたが、そう受け取るには無理がある。
また、沖縄防衛局長(更迭)が先月末、普天間移設計画に基づく環境影響評価(アセスメント)の評価書の提出時期について「犯す前に犯しますよと言いますか」と発言したことの監督責任も問われている。「知らない」答弁はこの発言に関するやりとりの中で飛び出した。
一川氏は2日夕、沖縄入りし、仲井真弘多県知事と会談し、前沖縄防衛局長発言を謝罪した。知事は「県民の尊厳を傷つけた」と批判し、会談を約10分間で打ち切って、強い不快感を示した。また、知事は会談前の県議会で、一川氏の「知らない」発言について「極めて遺憾であり、残念だ」と述べた。当然だろう。
苦笑もしづらい笑話も付随した。産経系Zakzak「防衛相モ~辞任して!“少女暴行事件”を“乱交事件”と発言」(参照)より。
一川保夫防衛相の新たな失言が飛び出した。2日午前の記者会見で、沖縄県民の怒りに火を付けた1995年の少女暴行事件について、「少女乱交事件」と発言したのだ。一川氏は午後に沖縄入りし、仲井真弘多知事に陳謝する予定。県民の怒りはさらに高まりそうだ。
一川氏は1日の国会で「(少女暴行事件を)詳細には知らない」と答弁し、改めて大臣の適正を問題視された。このため、2日の会見で「国会の場で詳細に説明する事案とは異なると思った」などと釈明していたが、こうした中で「少女乱交事件」は飛び出した。
記者らはあきれ果てていたが、一川氏は気付かずに知らん顔。会見後、防衛省広報が「訂正したい」と申し入れた。
防衛相広報が、うっかり聞き漏らしていたら、どういうことになっただろうか。もちろん、これについては失言というよりは単純な言い間違いではあるだろうが、「少女乱交事件」はあまりといえば、あんまりである。
一川保夫防衛相が「正確な中身を詳細には知らない」と言うのであれば、どこまで知っていて何を知らないのか、知っていることについてはどういう意味を持つのかということを、声明の形で明確に述べ、野田首相もこれを支持する大芝居でも打って、しかる後に、二人で雁首揃えて沖縄に弁明なり謝罪に行くべきだった。それができなかったのである。
そもそも普天間飛行場移設問題は、自民党と沖縄県知事や名護市議が苦労してようやく合意の端緒についたところで、民主党がぶち壊した経緯がある。
仲井真沖縄県知事は本心では移転容認派というように本土では見る向きもあるが、名護市の承認のあるうちでなければ事は進まないという認識をかつて示していただけに過ぎない(参照)。
別の言い方をするなら、「辺野古移設をするなら自民党時代までの合意を民主党さんは形成してください」ということでもあり、それができそうにもないし、容認派と誤解されても困るので仲井真沖縄県知事は、合理的に反対を表明している。
話を少し戻すなら、先日の今回の問題は、先日のTPPバカ騒ぎとまったく同じ構図をしていることがわかる。
TPPにオブザーバー的に参加するというのは、菅政権時代に決まっていたことで、この秋にはただそれをスケジュール的に進めるだけのことだったのだが、APECが迫る際、仕掛け人に釣られて土壇場で決断するかのようなバカ騒ぎに引っかかった。
同様に、今回の環境影響評価書の提出も、米国オバマ政権にせっつかれたから、米国の手前、土壇場で押し出して来たものである。
そして事後に「理解してください」と沖縄に押しつけるのは対話だろうか。沖縄県民にしてみれば、政府の対米政策をきっちり理解するための対話が先行していなければならない。
この件で馬鹿の上塗りをしたのが玄葉光一郎外相である。
地位協定の運用改善がさも沖縄県民のために野田政権が尽力したのだから評価してくれという態度に出たのである。
地位協定というのは国家と国家が結ぶものだということを、外相たる人物が理解していないことが露呈しただけだった。
地位協定の不備が問題になるのは、Yナンバー自動車が行き交うように米基地を沖縄に押しつけた随伴事象に過ぎない。
そしてそもそも沖縄県民が少女暴行事件で求めたのは、地位協定の改定であって、運用改善はそれなりに地味に自民党も積み上げていた。なにより、2009年の政権交代の民主党マニフェストでは地位協定の「改定を提起」するとしていた。
民主党のマニフェストは壊滅したとも言えるが、関係者である沖縄にそのことをきちんと伝えようとしたことはない。子ども手当は雲散霧消したが看板だけは残せばいいというような話ではないのである。
さて、本題だが、一川保夫防衛相はあまりにダメすぎる。
「安全保障については素人です」発言も唖然としたが、補佐する人がいたらなんとかなるだろうとは期待した。
ブータン国王招いての宮中晩餐会に欠席して、「私はこちらのほうが大事」と自分の政治資金パーティー出席したのは、まあ、自民党でもそういうのがあったけど、随分と素直に言うものだとは思った。
だが、その後、「ブータンの領事館に伺っておわびしたい。(ブータン国王に)手紙を出すことを含めてしっかり対応したい」(参照)という釈明には、なんというのだろ「これ、大臣なのか?」というか落胆を通り過ぎて、へなへなな気分になった。
ブータン国王は小国とは言え、国王である。だから天皇の宮中晩餐会に招かれるわけだが、その国王に対して、別の国の大臣が直接「ブータン国王様、ごめんね、日本の大臣より」って手紙出しちゃうものか。
このケースだと天皇の不備とも言えないから、無礼に当たるなら、野田首相が「私の内閣の不届き者が」と対応するのが筋ではないのか。
そういう常識を持ち合わせた人が内閣や一川保夫防衛相のまわりにいなかった時点で、一川保夫防衛相はすでに終了していた。
後は、すみやかに穏便に幕引きさせたほうがいいだろう。
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コメント
> 無能に見える政治家も正当な手順でその地位にあるなら
嘘八百のマニフェスと「生活が第一」のでまかせ
スローガンで票を集めたのだから, そもそもの
正当性はいかがなものか.
嘘をついても当選すれば勝ちと言うのは「道理」
に合わないし, 日本ではそれは正当性がない
と言うことになる.
投稿: ちび・むぎ・みみ・はな | 2011.12.04 12:37