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2011.12.15

コンゴ大統領選不正から内戦が誘発されるか

 「アラブの春」や「欧州危機」の話題に隠れて国内では報道されない、というほどことでもないが、コンゴの不穏な状態について、その内情についての報道は見かけない。ざっと見渡したところ、扱っているブログもなさそうだし、想定外の方向に展開する可能性もあるかもしれないのでメモしておきたい。
 コンゴの現状について日本国内報道がないわけではない。11日NHK「コンゴ 大統領選後混乱で4人死亡」(参照)より。


アフリカ中部のコンゴ民主共和国で、選挙管理委員会が現職の大統領の再選を発表したことに野党の支持者が反発し、治安部隊との衝突で、少なくとも4人が死亡しました。

 今回の事態だが、当面の話の発端は11月28日の大統領選挙の投票である。選挙管理委員会は12月9日、現職のカビラ大統領が49パーセントで1位、野党党首チセケディ氏が32パーセントで2位と発表したが、野党側は選管発表を受け入れず、一部が暴徒化した。野党側の不満の噴出というありがちな話にも思えるが、事態の本質はそれではない。もう少し追ってみよう。

ところが32パーセントの得票率で2位だった野党党首のチセケディ氏が選挙に不正があったとして結果を受け入れず、「自分こそが大統領だ」と主張し、混乱が広がっています。10日には、首都キンシャサで選挙結果に反発した野党の支持者が路上でタイヤを燃やしたり石を投げたりして治安部隊と衝突し、これまでに女性1人を含む4人が死亡しました。国際的な人権団体は、一部の投票所の票が開票されないまま投票結果が発表されるなど、不正があったと報告しており、今後、最高裁判所が選挙結果を承認するかどうか判断することになっています。

 当面の問題は、チセケディ氏が敗北を認めず、また現状では選挙の公正さに疑念があるということだ。
 選挙にどの程度の不正があったかが問われることになるし、NHKニュースの流れでは、その疑問は当面は最高裁判所待ちといった印象を与える。
 AFP「コンゴ民主共和国で現職大統領が再選、野党候補は不正を主張」(参照)報道も補足になる。

 最高裁は、12月17日まで選挙結果への不服申し立ての審理や選管が発表した選挙結果の点検を行った上で正式な当選者を宣言することになっているが、チセケディ氏は、最高裁は「カビラ氏の私的な機関」になっているとして不服申し立てはしないと述べた。カビラ大統領は選挙期間に入ってから、最高裁判事を7人から27人に増やしていた。

 NHKニュースの流れに戻ると、コンゴの大統領選挙は、とりあえず17日までは様子見となるはずであった。
 だが事態は国際問題化してきている。米国はこの選挙に不備があるとすでに声明を出した(参照)。
 いくつか疑問がわく。どうすれば選挙不備がただせるのか。米国は17日までの宣言にプレッシャーを与えたと見るべきか。米国を含め西側諸国はチセケディ氏側の言い分をのんだのか(コンゴの最高裁はカビラ氏の私的な機関だと認めたか)。そのあたりが現下問われている。
 仮に選挙結果が正せるとして、その結果を現職カビラ大統領が受け入れるのかという問題にもなる。
 それ以前に、この選挙の実態はどうだったのか。つまり、先日のロシア下院選挙のように不正があるにせよ、大筋は変わらないということなのか。
 実は、それ以前の前提があった。今回の大統領選挙は最初から茶番として実施されていたのだった。フィナンシャルタイムズ「Kabila’s charades cost Congo dearly」(参照)が手の内を明かしている。

Britain funded this charade with £31m, the European Union with €47m, and the UN with $110m. They have all raised concerns. But the international community does not favour Mr Tshisekedi. Instead it is ready to choose the option perceived as safest: supporting the status quo.

この茶番に英国は3100万ポンド、欧州連合(EU)は4700万ユーロ、国連は1億1千ドルを拠出した。これらの国は懸念を表明したが、この国際社会とやらはチセケディ氏を良しとしていたわけではない。それどころか、安全パイを選ぶことになっていた。つまり、現状維持である。


 そもそも不正選挙であっても、カビラ大統領を立て、内乱を誘発しないように抑え込むという筋書きであった。
 西側シナリオの背景には、近隣6か国の介入を招き1998年から5年間も続き、死者400万人も出した「アフリカ大戦」とも呼ばれる大規模な内戦を誘発するのは避けたいという思いがある。
 だが、この虚妄の安定を突いてこの間、中国がコンゴの資源獲得に乗り出し、民主化や富の再配分を妨げてきた。これも潜在的に大きな問題となっていた。
 つまり、西側の茶番筋書きが、米国の口出し後もそのまま維持されるのかが、現下の問題になっていると見てよいだろう。
 米国の思惑といえば、毎度ながら気になるのはワシントンポストだが、これが読みようによっては胡散臭い主張をすでに掲げていた。「Congo at risk」(参照)より。

Mr. Tshisekedi had promised that his followers’ reaction to a loss would mimic the Arab Spring revolts in northern Africa. More likely, the result of taking to the streets would be a bloody contest like those that followed disputed elections in Kenya and Ivory Coast. At worst, Congo’s multi-sided, transcontinental war could reignite.

チセケディ氏は、選挙敗北について彼の支持者の反応は「アラブの春」のようになると約束している。街頭活動の結果は、ケニヤやコートジボアール選挙に続く血みどろの闘争になる可能性が高い。最悪の場合、多勢力に分かれたアフリカ大戦が再燃しかねない。

The United Nations, which has 19,000 troops in Congo, should be prepared to act quickly to prevent a broader conflict, while Western governments and Congo’s neighbors should make clear to Mr. Kabila that excesses by his security forces will not be tolerated.

1万9000人の軍をコンゴに置いている国連は、より広い衝突を防止するよう迅速に行動する準備をすべきだし、他方、西側諸国とコンゴ隣国はカビラ氏に対して、その治安部隊の逸脱行為は許されないと明言すべきだ。

Congo’s election is already a political failure; the challenge now is to prevent it from triggering a humanitarian catastrophe.

コンゴ大統領選挙はすでに政治的な失敗である。現下の問題は、大規模な人道危機を引き起こさないようにすることだ。


 ご立派なことを述べているようだが、良く読むと、ようするに米国は当初の茶番シナリオはすでに失敗しているのだから、放棄せよということだ。そして明確には書かれていないが、カビラ大統領の失脚も想定されていると見てよいだろう。
 では、米国はコンゴの政権交代を操るのだろうか。
 普通に考えるなら無理だ。現状では、国連軍が米国の思惑で動くとも思われないし、リビア内戦のように裏方に回ってこっそり米国の実力を行使するようなことはできそうにはない。
 それでもどうも胡散臭い第二シナリオが展開しそうな雰囲気がある。
 
 

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コメント

毎回、海外から興味深く拝見してます。コンゴの情勢と現地の情報をレポートしたブログ、あります。宇都宮大学 米川准教授のブログです。更新は頻繁ではないですが、最新は12月11日の記事です。ご参考までに。
http://congonokongo.blog.shinobi.jp/

投稿: pirok | 2011.12.17 08:10

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