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2011.11.14

バカ騒ぎしても、結局、TPPで日本は仲間はずれ

 TPPのバカ騒ぎで苦渋の参加表明をした野田ちゃん日本。血相を変えていた民主党議員の誰一人として離党ということもなく見事にヘタれて、ひとまず一段落つけ、さてハワイの空の下、結果は、というと、仲間外れ、である。繰り返すが、なんだったの、あのバカ騒ぎ。やってもやらなくても、まったく同じ状況だった、というのに。
 12日、ハワイ、ホノルル、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する9か国――米国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、チリ、ペルー――は首脳会合を開いた。日本は、そこに、いない。まだ参加もしてないのだから当然だが、前回横浜で開催されたときは、当時の菅首相がオブザーバーで「いた」ものだった。そして今回、ぼくらの野田ちゃん首相はどうなったかというと、オブザーバーにもなれなかった。日本不在、仲間はずれ、つまはじき、村八分、である。バカ騒ぎで盛り上がった、TPPは日本を取り込んで搾り取るという陰謀論はどうなったんだ? 
 いやそんなことは、昨年の時点でわかり切ったことだった。そもそも菅元首相がTPP交渉でオブザーバー参加した昨年には、これほどのバカ騒ぎはなかった。あの時点で、バカ騒ぎ火付け組が一年かけて念入りに仕込んでいた結果が、今回出ましたというだけのことではないのか。なんだか政権交代と似たような話である。
 今回の野田ちゃん首相の苦渋の決断、実は、苦渋でもなんでもない。実際のところ、なんの決断にもなっていない。というのは、菅元首相は、昨年、TPPの協議開始を正式に表明していたのだった。「TPP参加へ高い壁 首相が「協議」表明 スピード感も欠く」(読売新聞2010.11.16)より。


 菅首相は14日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、環太平洋経済連携協定(TPP)の協議開始を正式に表明した。ただ、参加の前提となる国内の農業改革はこれからだ。菅首相が力を入れた一連の“TPP外交”では、各国首脳の歓迎の声の一方で、今後の交渉の厳しさも垣間見られ、参加実現には悪路が続く。


 各国首脳から、TPP参加のハードルの高さを、改めて突きつけられる場面も目立った。
 オバマ米大統領は、日本のTPP協議開始を歓迎する一方、来年11月の交渉妥結を目指す考えを改めて示し、「TPPは(関税の原則撤廃など)質の高い合意を目指す」と強調することも忘れなかった。
 TPPは現在、米国主導でルール作りが進んでいる。日本がルール作りに参加できなければ、TPP参加が実現しても、各国が決めたルールを“丸のみ”するしかない。
 9か国会合後、チリのピニェラ大統領が、「(日本はTPPへの参加を)すぐに決断しないと、交渉妥結には間に合わない」と述べ、菅首相に早期の交渉入りを強く促したのもそのためだ。

 つまり、昨年と状況になんら変わりない。
 昨年にきっちり予想された事態でもあった。「TPP協議開始表明」(読売新聞2010.11.20)より。

 実際に前途は険しい。日本が議長国だった今回のAPECでは、TPP参加交渉9か国の首脳による会合に儀礼的にオブザーバーとして招かれたが、今後はそういきそうにない。
 カナダはTPPへ意欲を示しているが、正式に参加表明していないため、今回は招かれなかった。12月にニュージーランドで開かれる9か国交渉では、カナダと同様に、日本はオブザーバーとしても参加できない見通しだ。政府が派遣するチームは交渉の合間に9か国から内容を聞き取るなどして、文字通りの「情報収集」にあたる。日本が参加を正式表明するまで、そうした状態が続きかねない。

 それだけのことである。なんにも決められない日本が、首相の顔を取り換えて、一年続いただけである。アンパンマンだったら、顔を取り換える意味もあるけど。
 今回については、朝日新聞「TPP、首相さっそく厳しい洗礼 加盟国会合招かれず」(参照)が仲間はずれ日本を描いているし、昨日のNHKニュースでも報道はあった。

 オバマ米大統領が12日朝にホノルルで開く環太平洋経済連携協定(TPP)交渉9カ国の首脳会合に、野田佳彦首相が招待されない見通しであることが11日わかった。9カ国が積み上げた交渉の成果を大枠合意として演出する場に、交渉参加を表明したばかりの日本は場違いとの判断が背景にあるものとみられ、TPP交渉の厳しい「洗礼」を受ける形だ。
 日本政府の一部には、野田首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前に「交渉への参加」を表明すれば、TPP首脳会合にも招待される可能性があると期待があっただけに、落胆が広がっている。TPP交渉を担当する日本政府高官は「日本(の出席)は少し違うということだろう」と語り、現時点では、出席できない見通しであることを認めた。

 この時点では「見通し」だったが、すでに、粗方終わってる。産経新聞「9カ国が「大枠合意」 野田首相は米大統領に交渉参加表明へ」(参照)より。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に参加している米国、豪州など9カ国の首脳は12日午前(日本時間13日未明)、協定に大枠合意した。米政府筋が明らかにした。日本の野田佳彦首相も12日午後、日米首脳会談でオバマ大統領に交渉参加の意向を伝える。

 あれである、仲間はずれにされた小学校低学年が「センセー!」という感じで、米国に泣きついたのである。だというのに、これに笑話が付く。読売新聞「TPP、日・米政府発表に大きな食い違い」(参照)より。

 米側の発表によると、会談で首相は「TPP交渉への参加を視野に、各国との交渉を始めることを決めた」とオバマ大統領に伝えた。大統領は「両国の貿易障壁を除去することは、日米の関係を深める歴史的な機会になる」と歓迎する意向を明らかにした。
 その上で、大統領は「すべてのTPP参加国は、協定の高い水準を満たす準備をする必要がある」と広い分野での貿易自由化を日本に求めた。首相は「貿易自由化交渉のテーブルにはすべての物品、サービスを載せる」と応じた。


 これに関連し、日本政府は12日、「今回の日米首脳会談で、野田首相が『すべての物品およびサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる』という発言を行ったという事実はない」とのコメントを発表した。
 日本側が米側に説明を求めたところ、「日本側がこれまで表明した基本方針や対外説明を踏まえ、米側で解釈したものであり、発言は行われなかった」と確認されたとしている。

 米政府側発表は「Readout by the Press Secretary on the President's meeting with Prime Minister Noda of Japan」(参照)である。該当部分を太字にしてみた。

The President and Prime Minister Yoshihiko Noda had a good discussion today on a range of issues, including APEC and the upcoming East Asia Summit, and next steps on Futenma relocation. The leaders also talked about Japan's interest in the Trans-Pacific Partnership (TPP) agreement. Prime Minister Noda noted that he had decided to begin consultations with TPP members, with an eye to joining the TPP negotiations. The President welcomed that important announcement and Japan's interest in the TPP agreement, noting that eliminating the barriers to trade between our two countries could provide an historic opportunity to deepen our economic relationship, as well as strengthen Japan's ties with some of its closest partners in the region. The President noted that all TPP countries need to be prepared to meet the agreement's high standards, and he welcomed Prime Minister Noda's statement that he would put all goods, as well as services, on the negotiating table for trade liberalization. The President noted that he would instruct USTR Kirk to begin the domestic process of considering Japan's candidacy, including consultations with Congress and with U.S. stakeholders on specific issues of concern in the agricultural, services and manufacturing sectors, to include non-tariff measures. Prime Minister Noda also explained the steps he had taken to begin to review Japan's beef import restrictions and expand market access for U.S. beef. The President welcomed these initial measures, and noted the importance of resolving this longstanding issue based on science. We are encouraged by the quick steps being taken by Prime Minister Noda and look forward to working closely with him on these initiatives.

 読むに、この米側声明に外務省が難癖を付けるのは、理由なきこともでもなさそうだ。
 ところで、該当読売新聞記事には言及がないが、野田ちゃん首相は、米国牛肉についても言及していたようだが、外務省からこの点についてのコメントはなかったのだろう。
 ということは、TPP議論はさておき、日米間の貿易問題は、米国牛肉の輸入規制の撤廃から始まるということなのだろう。
 結局、国の将来を二分するような大議論のように見えて、大山鳴動、依然変わらぬ米国牛肉の問題だけだったわけだ。
 ちなみに、この関連の話題は、2009年にこのブログの「日本の牛海綿状脳症(BSE)リスク管理が国際的に評価された」(参照)で触れたことがある。
 
 

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「時事」カテゴリの記事

コメント

仲間外れは、無条件締結前のお約束事でしょう。
国内では既に地ならしは始まっていますしね。
例えば、震災復興のPPPやPFI(民間活力利用)の枠組み作り。
一回イケズして、次は笑顔で飲ませる。
オバマの笑顔、クリントン女史のこれ以上ない笑顔が物語っていますよ。

投稿: 通りすがり | 2011.11.14 13:24

牛肉・オレンジ自由化もウルグアイ・ラウンドの米輸入問題もなんとかなったから、TPPに参加しても絶対何とかなります。日本の農業は、生産性も高付加価値化の達成も世界一なんだから。

でも、牛肉・オレンジのときも、ウルグアイ・ラウンドのときも、ごねれば、ごねるほど得したでしょ。こんどもそれ。

日本の外交交渉は、江戸時代から貿易問題には、徹底的に、タフ・ネゴシエート。だから、日本と民間貿易できた清朝は、明朝をはるかに超える版図を手にし、日本と公式に貿易できた李氏朝鮮は王朝を500年間も維持し、条約締結して対日正式貿易を実質上独占したオランダは、対日貿易を独占している間、ヨーロッパの覇権を長く手にした。

日本と有利な貿易ができるということは、その国が発展できることを歴史が証明しています。

まあ、TPPもごねるほどごね得ですよ。たぶん。

投稿: enneagram | 2011.11.14 13:53

こんにちは。
引用の読売新聞記事の日付は、2010年ではありませんか?(2箇所)

投稿: | 2011.11.14 16:05

> 「TPP参加へ高い壁 首相が「協議」表明 スピード感も欠く」(読売新聞2011.11.16)より。

> 昨年にきっちり予想された事態でもあった。「TPP協議開始表明」(読売新聞2011.11.20)より。

日付が間違ってますよ

投稿: うぐいすパン | 2011.11.14 16:19

日付誤記のご指摘、ありがとうございました。訂正しました。

投稿: finalvent | 2011.11.14 16:41

えーと、実は外務省がアメリカに抗議したけど訂正されてない、という情報も流れてます。

米「発表はそのままだ」…TPP発表食い違い : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111113-OYT1T00394.htm?from=tw via @yomiuri_online

 まあ去年の11/9付閣議決定のペーパーに「全ての品目は原則自由化」って書いちゃってますから、「なにすっとぼけてるんだ」って米国は思ってんのかもしれませんが。

投稿: とおりすがりの | 2011.11.15 01:14

日本が交渉参加を表明した翌日、カナダ、メキシコ、台湾が「自分も」と手を挙げたわけですが、これはどう理解されますか。日本がどう出るか、「態度待ち」だったとしか思えませんが。もちろんだからといってこの三つの国が、かねて「仲間」として日本と事前協議を重ねていたとは思いませんが。(その可能性はなくもないけど)

投稿: | 2011.11.18 00:16

カナダなどのTPP参加希望についてですが、カナダについては、以前から検討されていたので、日本がという文脈はないと思われます。また、アジア圏では基本的に対中的なシフトです。実際のところ、カナダと米国が刷り合う過程で日本の対応も決まってくるので、手順としては逆になるでしょう。

投稿: finalvent | 2011.11.18 17:22

私は日本が大ッ嫌いな日本人ですが、日本が実質的に「参加表明」したので、事態が一気に動いたことは間違いないと思います。カナダとアメリカが擦り合せをしているにせよ、その「擦り合せ」の目的は「日本の参加」でしょう。日本が「仲間外れ」のわけがありません。
いずれにせよ「仲間外れ」という表現が気になります。ファイナルベントさんは「仲間外れ」は避けなければならないという意味で、「仲間外れ」という言葉を使っているのですか? それがわからないのがなんともじれったい。

投稿: | 2011.11.18 22:14

TPPについて現状米国が日本を入れる意図はないですよ。基本的にTPPは日本や中国に西欧ルールを強いる下準備なので、それを固めてからでないと意味はないです。つまり、現状では日本を「仲間はずれ」ではずしておくし、現実、それ以上のことはできないはずです。慌てる話ではありませんし。


「TPP?反対ですよ。総選挙のときマニフェストで国民に問えばいいじゃないですか?: 極東ブログ」 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2011/10/tpp-13db.html

投稿: finalvent | 2011.11.19 11:34

仲間はずれじゃねぇぜ。

てめぇ馬鹿だろ。

投稿: あほ | 2013.09.15 02:00

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