[書評]ボードゲームカタログ(すごろくや)
「ボードゲームカタログ(すごろくや)」(参照)は、名前とおり、ボードゲームカタログである。簡素なのに、すごくよく出来ている。
ボードゲームカタログ |
基本は、「ドイツボードゲーム」と呼ばれるタイプのゲームだ。ドイツで10年くらい前から話題になって毎年、各種作成されるようになった、卓上で数名で遊べる創作ゲームである。
ポイントは、大人も面白いということ。頭を使うタイプが多いが、チェスみたいに頭だけというゲームではない。リアルな人間が集まってわいわい、一、二時間を熱中して過ごすことができる。麻雀みたいな面もあるし、僕は麻雀とかやらないけど、麻雀より面白いんではないかと思う。いかが。
著者は「すごろくや」となっていて編著という側面もあるのだろうが、実際に書いたのは、代表の丸田康司氏である。あとがきがふるっている。
私がすごろくやを展開する以前は、15年以上にわたり「MOTHER2」「風来のシレン」など、テレビゲームの開発の仕事に携わってきました。しかしその市場が大きくなるにつれ、次第に黎明期の創作性の豊かさが失われていき、業界は一部の層を対象にしていくスパイラルから抜け出せなくなりつつありました。もともと私は20年ほど前から、この本で紹介されているような、ゲーム本来の魅力溢れる作品の数々に触れてきたこともあり、現状のテレビゲーム業界のズレを特に大きく感じていたのかもしれません。ならばその魅力をひとりでも多くの人に伝えたいと一念発起し、2006年春にボードゲームの専門店・すごころくやをオープンしました。
起業というのはこういものなんだなというのが、ジンと伝わってくる。カネで評価される成功よりも、まず社会的な明確な使命が重要だし、こういう市民社会を豊かにする起業こそ大切だと思う。いや、なにより、ボードゲームが本当に面白いんだということに、人生賭けちゃうっていうのがよろしい。
ボードゲームには、人の顔を見ながら遊ぶというコミュニケーションの面白さがあります。今まで気がつかなかった相手の内面を知ることができたり、みんなエンターテイナーとなって人を楽しませる作用が生まれます。これらは参加者の思考と意思で成り立つ「小さな社会」とも言えるものです。
まさにそれこそが、豊かな新しい市民社会の原点でもあると思う。日本国家の行く末が心配だとかでわけのわからない反TPP議論をしている人、国のことなんかすこしそっちに置いといて、もっと、仲良く遊べ。
というわけで、彼が厳選した「一生手放したくない200タイトル」が収録されてる。カタログというだけあって、かなり網羅的だ。反面、一つ一つの記載はちょっと物足りないなというくらい少ない。が、少ない字数でかなりきちんと書かれている。やっぱ、ネットで拾ってくる情報と、本にまとまっている情報って違うんじゃないかとも思わせる。
ボードゲームだから、トレーディングカードふうの「ドミニオン」(参照)はないかというと、そんなことはない。「ドミニオンパンツ」について知らなかった僕は、これ買おうかと真剣に悩んでいる。
ざっと見ると、名前と概要は知っているゲームが多いなという印象だが、いろいろと考えさせられる。「国富論(Wealth of Common)」なんていうゲームもあったのか。ちょっと難しそうだが、やってみるとどうなんだろう。比較優位もわかならない大学教授が出鱈目な議論をぶちまける日本だと、この手の教育的なゲームがあってもいいし、そもそも学校で採用したらいいんじゃないか、いつまでも陳腐なイデオロギーで騒いでいるんじゃなくて。
超定番の「カルカソンヌ」(参照)や「カタン」(参照)も載っている。「カルカソンヌ」については、「「草原」と「最終未完成得点」の要素を抜いて遊ぶルールをお薦めしています」とあり、たしかに最初やるときはそうしたほうがいいなと思う。ただ、僕個人としては、この二要素が囲碁みたいで気に入って、そこで逆転勝ちに持ち込むのが好き。
本書は写真もきれいなのだが、「カタン」についても最近のこの4月に出た、それなりにしっかりしたバージョンが記載されている。待ち遠しカッタンですよ、これ。早く、海のほうのリメークも出ないか。余談だが、「カルカソンヌ」と「カタン」については、iPad版もけっこうきれいでやりやすい。戦略を試すときに使っている。
Amigo 虹色のへび |
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