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2011.11.05

現代版・竹島物語

 竹島の住所はというと、島根県隠岐郡隠岐の島町に属するが官有無番地。島根県松江市から北約70kmの隠岐の島町からさらに北西に約157km離れた、北緯37度15分、東経131度52分の岩礁である。人も住まぬと言いたいところだが韓国人が住んでいるらしい。
 韓国にしてみるとこの岩礁は韓国の領土だというのだ。大韓民国の住所もあり、慶尚北道鬱陵郡鬱陵邑獨島里となるらしい。
 ようするに日本と韓国がその領土を争っている地域である。他国から見れば、それだけなら、よくある領土紛争だが、日韓以外の第三者から見ても、そうとも言い切れないものが出てきた。今年の動向から見ていこう。
 6月16日のこと、大韓航空が翌日からのソウル・成田便に欧州エアバス社の「エアバス380」を投入するにあたり、メディア向けのデモンストレーション飛行を実施したのだが、その飛行ルートはというと、仁川空港から日本海方面に飛び、わざわざ竹島上空を通った。搭乗した新聞記者たちが機内から竹島の撮影ができるようにサービスしたのだが、韓国内の「竹島は韓国領土だ」という世論に迎合したかったという面もありそうだ。
 というのも、その前日の15日、韓国孟亨奎・行政安全相が竹島に上陸し、島内の道路・住所名称の整理・変更に伴う新名称表示板設置の記念行事があり、韓国内が竹島の話題で盛り上がっていたからだ。
 突然の盛り上がりというわけではない。4月1日には李周浩・教育科学技術相と李明博大統領側近である李在五特任相が竹島を訪問していたし、5月25日には白喜英・女性家族相が訪問していた。この時期に韓国の閣僚の竹島訪問が続いていたのは、韓国では来年4月に総選挙、12月に大統領選挙が控えており、吉例の選挙絡みのナショナリズムが高揚する時節だからだ。
 とはいえ、当然、日本にしてみるとこれらは自国領土への侵害である。6月15日の件については外務省の佐々江賢一郎事務次官が抗議した。その前の5月25日の件についても松本剛明外相が権哲賢駐日韓国大使(当時)に抗議した。しないわけにもいかない。
 6月16日のエアバス380による竹島上空フライトも、日本国として見れば領空侵犯である。外務相はまたかという感じで事実確認などをしてから5日後の6月21日に、在ソウル日本大使館を通じて韓国政府に抗議した。
 だが自民党からは手ぬるいとの声もあり、外務省は追加措置として公務による海外出張に大韓航空機の利用を一か月間自粛するよう全職員に通知した。その反応で韓国側も外交通商省が遺憾の意を表した。その他いろいろ騒ぐ人もいた。が、日本の外務相は通常、日本航空や全日空を利用するので、大韓航空を使うなという通達は実際には形式的な抗議に過ぎない。
 自民党としてはそれで収まりも付かなかったかのように7月15日、石破茂政調会長を委員長とする「領土に関する特命委員会」の新藤義孝衆院議員ら3名が、8月初旬、竹島に近いとされる韓国領の鬱陵島を訪問する計画を発表した。なぜ鬱陵島なのかというと、同島が竹島観光の拠点でもあり、同島内の「独島博物館」も視察したいということが、”表向き”の理由だった。
 自民党訪問団についての韓国側の反応だが、先の李在五・特任相は「独島を日本領と主張するための訪問なら韓国領土に対する主権侵害であり、絶対に許せない。あらゆる組織を動員し国民の名で鬱陵島上陸を阻止する」とぶち上げた(参照)。
 韓国が法治国家なら、韓国領土への訪問を阻止する法的な根拠は存在なさそうなものだし、7月18日付け朝鮮日報「独島:自民党議員ら鬱陵島訪問を計画」も「自民党の議員たちによる鬱陵島訪問を阻止する法的根拠がない上、訪問を阻止しようとしてトラブルが発生した場合、日本による領有権の主張を国際的にアピールする結果を招きかねないからだ。」と懸念していた。
 だが、韓国外交通商省の金在信次官補は7月29日、「身辺の安全確保が難しく、両国関係に及ぼす否定的影響を勘案し、議員一行の入国を許可できない」(参照)とした。韓国の出入国管理法では、「韓国の利益や公共の安全を害する行動をする恐れがあると認めるだけの相当の理由がある者」の入国を禁止できるらしい。
 自民党も大人げないものだなという印象があるが、この話、毎度お馴染みの騒ぎというのでもないようだ。4月19日に韓国は、鬱陵島に韓国海軍の次期護衛艦(2300〜2500トン級)を配備する案の検討を明らかにしていたからだ(参照)。
 さらにその計画の詳細は9月28日に報道された。共同「鬱陵島に海軍基地建設へ 韓国、竹島の実効支配強化」(参照)より。


 日韓両国が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)の北西にある日本海の鬱陵島で、韓国政府がイージス艦が停泊可能な海軍基地を建設することが28日、分かった。与党ハンナラ党の鄭美京議員が明らかにした。
 鄭議員は新たな海軍基地の建設により、有事の際には日本の艦艇より1時間以上早く竹島に到着できると主張。韓国は、鬱陵島で海軍のヘリコプター基地拡張も計画しており、竹島の実効支配を強める狙いがあるとみられる。
 鄭議員によると、海軍基地は長さ300メートルの海軍専用埠頭を建設する。総事業費は3520億ウォン(約230億円)で、2015年までに完成させる。鬱陵島では、最大5千トン級の船舶を接岸可能とする埠頭拡張計画も明らかになっており、海軍基地と併せて整備する方針。

 日本人としては味わい深いものがある。なかでも「有事の際には日本の艦艇より1時間以上早く竹島に到着できる」というのは、日本国が竹島に海上自衛隊を向けるという想定に備えるものだというのが、率直なところ、奇妙な印象がある。韓国からは日本がそのような国家に見えているのだろうか。
 とはいえ、日韓双方の見解をそのまま付き合わせてもなんなので、国際的な外交誌「The Diplomat」の記事「South Korea’s Misguided Pier Plan」(参照)を参考に引いておこう。

Yet it’s hard not to feel that compared with the threats posed by North Korea and China, South Korea’s perception of Japan’s quest for control of Dokdo – and its response in developing the naval base on Ulleung Island – seem overdone.

北朝鮮と中国からの脅威と比較して、日本による竹島支配の追究と、その反応で鬱陵島に海軍基地を作るという、韓国の認識は度が過ぎると見るに否みがたい。

Sovereignty over the Dokdo islets has more emotive than strategic value for South Korea, and it’s clear that it is bitter historical memories that are shaping South Korea’s defence policy vis-à-vis Japan.

竹島という岩礁への主権は、韓国にとって戦略的であるより、感情的なものであり、韓国の対日防衛を形作っているのは、歴史の苦い記憶であるのは明らかだ。

Yet the fact remains that Japan’s current defence policy shows no sign of reverting to its military expansionist past.

しかし、事実はといえば、日本の防衛政策には、過去の軍拡へ逆行する兆候はまったくない。

With this in mind, South Korea’s security strategists would be far better crafting an approach that’s grounded in present day realities, not those of the past.

この点を留意して、韓国の安全保障戦略担当者は、過去に基づくのではなく、現状に基づいて、その戦略を形成していくほうが、はるかに好ましいだろう。


 まあ、ジャーナリズムの世論やネットの世論みたいなものでナショナリズムをわーわー言いあっていても始まらないが、日本国は民主主義国だし、この民主主義の政府で自衛隊という軍事力も掌握され、そのあり方も白書として公開されているのだから、それらに基づいて、韓国も現実性のある防衛策を検討したほうがいいだろう。鬱陵島に海軍基地を作るのは、現実的には、無意味なのだし。
 
 

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コメント

現代版・竹取物語の方がよくね?国民国家の呪縛。

投稿: tamamusi | 2011.11.07 12:07

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