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2011.11.25

豪州米海兵隊駐留計画について

 16日、訪豪のオバマ米大統領は、豪州北部ダーウィンへの米海兵隊駐留計画を発表した。2012年半ばからは200人から250人の海兵隊員が同地に半年交代で駐留し、豪州軍と共同訓練や演習を行うことになる予定だ。駐留規模は最終的に2500人にまで強化される。
 発表の背景として日本では、軍拡でこの地域に脅威を与えている中国に対抗する意味合いがあるといった報道がなされた。NHKの7時のニュースですら、中国が現在増強している対艦弾道ミサイル(参照)の射程外に米軍を分散展開する目的があるとして、図を使って説明していた。間違いではないが、中国はかつてのソ連のような冷戦的な対立を強く意図しているわけではなく、構図はやや異なるかもしれない。
 中国の軍拡に伴う脅威が東アジア諸国に迫り、中国を交えた領海や領土の問題も頻繁に引き起こされる時代になってきたのは確かだが、中国は基本的には、東アジアへの領土拡張の意図を強固に持っている国ではない。とはいえ、もちろん今回の豪州米海兵隊駐留計画は東アジア域の米軍の対中戦略の増強ではあった。
 米軍による対中戦略の視点から見ると、基本となるのは中国側の出方、つまり中国戦略になるが、これは「海上拒否(Sea Denial)」と見られている。中国の対艦弾道ミサイルもこの戦略の一環であり、米軍空母を狙うものである(参照)。
 対する米国は、エアシーバトル(AirSea Battle)と呼ばれる戦略(参照)を採り、衛星からの制御などハイテク技術と最新兵器を総合的に活用して対抗する。豪州米海兵隊駐留計画も、エアシーバトル・ネットワークの一環ともなる。
 だが、以上の基本的な構図に加え、今回のダーウィン米海兵隊駐留について、17日のディプロマット記事「A Cold and Clever U.S. Base Move」(参照)はさらに、米軍のプレザンスによって逆に中国のシーレーンを封鎖する可能性を示すことで中国経済に脅威を与える意図があることを加えていた。中国向けABCD包囲網のようなものであり、同記事でも第二次世界大戦の連想があった。


It’s a strategy out of Washington’s World War II playbook. Indeed, the mere presence of a powerful allied naval contingent along China’s sea-lines will require Beijing to divert considerable resources away from its immediate maritime periphery, much as it did with Japan in the 1940s, diluting the singularity of Chinese efforts in the Western Pacific.

これは、米国が持つ、第二次世界大戦・脚本集から引き出した戦略である。実際、中国のシーレーンに沿って同盟国の強力な海軍力を配備すれば、1940年代に日本がしたように、中国は近隣海域から裂いた海軍力を充てなければならず、西太平洋における中国軍拡が手薄になる。


 日本は特殊な例外かもしれないが、現在中国の軍拡に脅威を感じているアジア諸国にしてみると、米軍のインド洋域での中国シーレーン封鎖の威圧は、自国の安全保障にとって手助けになるものである。同時にこの地域の国々に、中国に従属しなくてもよいという安堵感も与える。このところのミャンマーの民主化も、こうした動向を背景に、中国への従属を避けたいとする均衡的な意味もあるかもしれない。
 ディプロマット記事には言及がなかったが、中国のシーレーン封鎖の威圧は、エアシーバトル戦略の持つ欠点を補完する意味合いもあるのかもしれない。この戦略は巨費がかかる上に、中国と核を挟んだ冷戦的な構図を引き起こしなけない危険性(参照)もあるからだ。
 
 

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コメント

沖縄では日米地位協定の変更がありました。米軍が自由に行動できないという事は撤退以外考えられないと思っています。米国は軍事利権が強いのでかなり手の込んだ方法でないと難しいのでしょうかね。
日米中とも戦争が起こる等とは考えてないと思いますが、文民統制が怪しい中国様としてはお困りといった所の様に思います。

投稿: ヒロ | 2011.11.25 19:17

あの津波を見た後では沖縄への大津波発生による基地機能低下への備えの意味もあるんでしょうか。

投稿: | 2011.11.26 00:41

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