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2011.10.24

カダフィ氏はいかに殺されたか

 カダフィ氏はいかに殺されたか。シルトにいた英国ジャーナリスト、ベン・ハーマー(Ben Farmer)が今日付けのテレグラフに、参考になる、興味深い記事「Gaddafi's final hours: Nato and the SAS helped rebels drive hunted leader into endgame in a desert drain」(参照)を書いていた。
 シルトに追い詰められたカダフィはすでに観念はしていたらしい。追い詰める者が遠隔の地にいることも知っていただろう。


More than 6,000 miles away, deep in the lunar landscape of the Nevada desert, American specialists trained to their computer screens spotted unusual activity at around 7.30am in District Two. From their windowless bunker, lit by constantly flickering computer screens, the analysts directed their unmanned Predator drones to zoom in on the convoy as it picked up speed and headed west. Nato's eyes were suddenly trained on Gaddafi's convoy.

はるか1万キロメートルも遠く、月面を思わせるネバダ州の砂漠の奥深く、米国人のコンピューター画面監視専門者は、7時半、第二区で、尋常ではない動きを見つけた。不断に点滅するコンピューター画面に照らされつつ、窓もないその掩蔽壕から、監視の評価者は、急速に西に向かうこの部隊について、ドローンとも呼ばれるプレデター(殺傷能力を持つ無人偵察機)で拡大視察するように命じた。NATO(北大西洋条約機構)の目がまさにカダフィの部隊を捉えた時だった。


 カダフィは、イエメンでアンワル・アウラキ師を無人殺戮機で殺害した(参照)時と同様に、米軍の衛星によって発見され、欧州のNATO軍にも伝達されたのだった。後で触れるがリビアの人民には伝達されてはいなかった。

High above Sirte the heavily-armed American USMQ1 Predator drones, which are piloted by satellite link and can provide surveillance or fire missiles in all weather, day and night, had been circling.

シルト上空では、衛星中継で操縦され、いかなる天候でもミサイル発射のための監視ができる、重装備の米国製プレデターUSMQ1が旋回していた。

The aircraft, which can remain "on station" for up to 18 hours, were being remotely flown from Creech air force base in Nevada. One of the predator pilots had now received permission to attack the fleeing convoy.

18時間も空中任務可能なその飛行装置は、ネバダ州にあるクリーチ空軍基地から遠隔操作されていた。このプレデターの操縦者の一人に、今や逃げる部隊を攻撃する許可が与えられた。

Around 40 miles off the Libyan coast a Nato AWAC early-warning surveillance aircraft, flying over the Mediterranean, took control of the battle and warned two French jets that a loyalist convoy was attempting to leave Sirte.

リビア海岸沖65キロメートルの地点では、地中海上空を横断するNATO軍のAWAC早期警報用偵察機が戦闘の指揮を担い、カダフィ派部隊がシルトを脱出させなように、仏軍ジェット機に警告した。

As the convoy sped west, a Hellfire missile was fired from the Predator and destroyed the first vehicle in the convoy.

その車隊が西に急いだとき、ヘルファイア(地獄の業火)ミサイルがプレデターから放たれ、先頭車を破壊した。


 これでカダフィが死亡していたらアンワル・アウラキ師暗殺と似たような結果になっただろうが、そこは米国としても、米国と欧州による戦争であることがもろバレのヘマをするわけにはいかなかった。
 ハーマー記者はどう思っていたか。

By now, the NTC troops had realised that the loyalists were escaping and a small number of lightly armed rebels began to give chase.

今頃になって、国民評議会軍は、カダフィ派部隊が逃走したことに気がつき、軽装の反抗勢力があたふたしはじめた。

To me it seemed like a wild, chaotic situation. But we now know that it had, in fact, been foreseen by the British SAS and their special forces allies, who were advising the NTC forces.

私は乱雑で混沌とした状況だと思った。だがこの事態は、国民評議会軍を指導する、英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)とその同盟する特殊部隊にとっては、予期されたことだったのだと今は理解している。


 リビアの解放を唱える国民評議会軍は、カダフィ殺害の急変時の埒外に置かれていたが、西側特殊部隊はこの事態を想定していたのだった。そりゃそうだ。クリントン米国国務長官によるリビア訪問を見ていたら、そろそろ頃合いだなとわかる。
 英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)は、予定通りの仕事を始めた。

A senior defence source has told The Sunday Telegraph that at this point the SAS urged the NTC leaders to move their troops to exits points across the city and close their stranglehold.

軍高官は、この時点で、英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)は国民評議会軍指導者に指示して、その部隊を都市の出口に移動させ、カダフィ派を袋のネズミとさせた。

After the Hellfire missile struck its target, the convoy changed direction, possibly hoping to avoid a further strike, before heading west again. It had begun to fracture into several different groups of vehicles.

ヘルファイア・ミサイルミサイルが標的を撃った後、車隊は、これ以上の砲撃が避けられるかもしれないと西に向かう前に方向を変えた。車隊がちりぢりになり始めた。

The French jets were also given permission to join the attack.

仏軍ジェット機もこの攻撃に参加する許可を得た。


 それでもカダフィは仕留められていない。そりゃね。

Col Gaddafi had survived the air strike, but was apparently wounded in the legs. With his companions dead or dispersed, he now had few options.

カダフィ大佐は空爆を逃れたが、足に傷を負った。死んだ同僚やちりぢりになった同僚とともに、彼が選択できることはほとんど残されていなかった。


 ハーマー記者が現場に駆けつけたときはすでにカダフィは殺害されていた。
 そこから先の話は、NHKとかでも報道されていたが、こんなもん。
 20日NHK「ダフィ大佐 攻撃受け死亡」(参照)より。

リビアの国民評議会の複数の幹部は、行方が分からなくなっていたカダフィ大佐について、国民評議会の部隊の攻撃を受け、死亡したことを明らかにし、首都トリポリなどでは、兵士らが喜びの声を上げています。

 
 

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コメント

Hellfireは「地獄の業火となるミサイル」ではなく、http://ja.wikipedia.org/wiki/ヘルファイア_(ミサイル)を見る限り「ヘルファイアミサイル」「ヘリ発射型ミサイル」と訳すのが適当かもしれません。もちろん地獄の意味も込めてるんでしょうが、ニュース用語としてはね。
それとも印象誘導ですか。プレデターを無人殺戮機と訳すのも?

投稿: nanoshi | 2011.10.24 18:55

次にこうなる順番は、「チャングンニム(将軍様)」と「テジャンニム(大将様)」ですかね?

そうなる前に、周囲の三か国(中国、ロシア、韓国)もかなり動揺しないといけないことになるのでしょうが。

投稿: enneagram | 2011.10.25 06:43

nanoshiさん、ご指摘ありがとう。確認用の英文は添えてあるし、Hellfireを「ヘルファイア」と置き換えると英文のニュアンスが伝わらないかと思ったのですが、プレーンな訳文に替えました。プレデターも同様です。こいつについては、カタカナで置き換えたり、「無人偵察機」と訳すのは違和感があったのですが。

投稿: finalvent | 2011.10.25 07:03

finalventさん、難癖みたいになってしまってすみません。記事の内容はこれでも充分に伝わっているのではないかと思ったものですから。

投稿: nanoshi | 2011.10.25 10:11

nanoshiさん、重ねてありがとう。

投稿: finalvent | 2011.10.25 10:14

 私が若いころ、イスラム教の神を冒涜した西側のアホがいるので、中東の宗教指導者が、高額な報酬と暗殺指令を出した。なんてニュースは珍しくなかった。しかし、そういうニュースは、当時高校生だった私にとって、日本のニュース番組の他のコンテンツからシュールに浮いてはいたので「悪魔の詩」の日本語訳ハードカバーなんて購入してワケワカメだった。さすがに、この本が、作者の命に関わる背景などは、理解できなかった日本のティーンズの私だった。
 まあ、世界人権宣言なんてものは、J-POPより空虚な言葉の羅列で、昨日まで生きる資格が人並み以上にあったような”要人”であっても、よくわからないメカニズムを経て、感謝祭のイケニエのようにさばかれる事じたいがフェスティバルだったりする、インボーうずまく国際政治の舞台があったりするんだろうな。
 みなさんおはようございます。ぼくは、今、起きたところです。

投稿: sonesayaharu | 2011.10.25 10:33

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