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2011.10.28

いい加減にしないと寛大な中国様も切れますよ、と

 「太平洋」、英語でいうと"the Pacific"。形容詞なら"pacific"は「平和な」「紛争を終わらせる」という意味もある。だが、中国四千年、言葉というものは言葉、実体は実体、相和せず。あるいは言葉の端には誤差もある。
 18日、フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海海域で、無人小型艇25隻を数珠つなぎで曳航していた中国漁船に、違法操業の疑いでフィリピン哨戒艇が接近した。中国漁船は振り切るように逃げたが、フィリピン当局は無人小型艇を取り押さえた。その後、中国側は返還を求めたものの、フィリピン側は拒絶(参照)。
 22日、韓国全羅南道・可居島西方約30キロの排他的経済水域(EEZ: Exclusive Economic Zone)で不法操業の中国漁船を韓国海洋警察当局が拿捕。すんなりとは行かなかった。中国漁船船員はスコップや棍棒を振り回して応戦、韓国警察はヘリコプターを出動させ上空から催涙剤を散布。ようやくの鎮圧で、船員31人を拘束(参照)。中国は引き渡しを求めている。
 中国様は大変ご機嫌斜めである。環球時報の社説「东亚离海上冲突越走越近了」(参照)に、ご不満をぶちまけた。
 残念、扶桑の平成の民、中国語はわからん。というわけで、英語版「Don't take peaceful approach for granted(平和的解決手段が当然だと思ってんじゃねーよ)」(参照)を覗いてみる。


Recently, both the Philippines and South Korean authorities have detained fishing boats from China, and some of those boats haven't been returned. China has been increasingly confronted with sea disputes and challenged by tough stances from the countries involved.

最近、フィリピンと韓国の両当局が中国発の漁船を拿捕したが、いまだ返還してない漁船もある。中国は海洋紛争に直面し、関係国から強面の態度で迫られることが増えてきた。


 こういうことされると、いかに寛大な中国様としても、困るんだよねというのである。

China has emphasized its reluctance in solving disputes at sea via military means on many occasions. Peace is vital for its own economic development. But some of China's neighboring countries have been exploiting China's mild diplomatic stance, making it their golden opportunity to expand their regional interests.

中国は海洋紛争の解決に軍事を用いることには不本意なのだと、ことあるごとに強調してきた。平和は経済成長に欠かせないものである。だが、中国の温和な外交につけこんで、自国利益の拡張の好機としようとする隣国がある。


 お困りの中国様。いったいどの隣国が困らせているのか。

What has recently happened in the South China Sea is a good example. Countries like the Philippines and Vietnam believe China has been under various pressure. They think it is a good time for them to take advantage of this and force China to give away its interests.

南シナ海で最近起こったことは、そのよい例だ。フィリピンやベトナムといった国は、中国がなにかと切迫していると思い込んでいる。彼らは、これを好機とし、中国の国益を断念させようとしている。


 フィリピンやベトナムは、中国が、自国民の不満や、地方債務やインフレといった各種の問題で弱体化しているとでも思っているのだろうか、と……。

Their inspiration is illogical and it is rare to see small countries using "opportunistic strategy" on bigger countries. Hard-line response will cause trouble for China, but if the problems and "pains" these countries bring exceed the risk China has to endure to change its policies and strategies, then a "counter-attack" is likely.

こうした隣国の思いつきは辻褄が合わない。小国が大国に対して「日和見戦略」とることは稀なものである。強行な反応は中国を困惑させるが、小国が起こす問題や労苦が危険をもたらすほどになれば、中国としても政策と戦略の転換を余儀なくされ、「反撃」もありうるのである。


 反撃などしたくはないのだ、大国中国は。小国というものは、大国を患わせてはならんである、おわかりかな。おい、そこのシャオリーベン、聞いとるか。

If these countries don't want to change their ways with China, they will need to prepare for the sounds of cannons. We need to be ready for that, as it may be the only way for the disputes in the sea to be resolved.

中国への対応を変えないなら、これらの国は数千の大砲を用意することになろう。海洋紛争を解決する手段がそれしかないようであれば、私たちにはその用意がある。


 しかし、しかしですよ。小国日本の大新聞にして日本国民の良心の証ともいえる朝日新聞などは、常々、話し合いによる平和な解決を求めている。朝日新聞を筆頭として、日本国民の良識の声は、中国様には通じないのものか。
 そこんとこ、どうなんでしょう、中国様、ずばり。

Conflicts and disputes over the sovereignty of the seas in East Asia and South Asia are complicated. No known method exists to solve these issues in a peaceful way.

東アジアと南アジアの海洋に関する主権の衝突と紛争は複雑なものである。平和に解決する手法は存在していない。


 な、なるほど、海洋紛争に平和的な解決はない、と。
 φ(..)メモメモ...
 このお諭し、きっと、朝日新聞や岩波書店など、日本の平和ジャーナリズムも理解することでありましょう。ははははは。
 とま、そういう話でしたとさ。
 中国修辞学のごく初歩でもあったのだが、これ引用以外の全文をよく読むと、さらに含蓄が深い。
 引用部でも、確かにトラブルを起こしているという点では、フィリピンとベトナムの二国もそうなんだが、当面の問題は、どう見たって、韓国。
 中国様、韓国にぶっち切れ寸前というところなのだが、だからこそ、韓国のハの字も出てこない。指桑罵槐のごくごく基本。当然、その後に土下座するのはシャオリーベン。
 では、もう軍事的解決にムキムキの中国様か、というと、そうでもない。
 英語版のこの社説はこれでもかなり抑制されていて、米国や日本の政策担当者には、「そこんところわかってくれよ」というメッセージも含まれている。というのは、最初の段落の末文にはこうある。

These events have been promoting hawkish responses within China, asking the government to take action.

こうした事態は、政府に実行を求める中国国内のタカ派を刺激してきている。


 胡錦濤政府としては、「軍部側の圧力を強くするようなことは、やめてくれよ」というのである。
 「小国は中国が弱体化していると思っているのだろう」と鼻息ふんふんさせているところも、実態は、「おれたち困ってんだよ、わかれよ~」ということである。
 ま、そうこと。
 では、日本としても、従来通り、朝日新聞社説的な鄧小平路線で、紛争は棚上げして共通の利益を目指そう、といけるかというと、そう簡単な話でもない。そのあたりは、また別の機会に。
 
 

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