野田内閣の「国家戦略会議」は小泉内閣の「経済財政諮問会議」のふざけた焼き直し
まだ構想の段階で四の五の言うべきではないのかもしれないが、さすがに呆れた展開であり、急速に進む可能性もあるのでとりあえず書いておきたい。ようするに、野田内閣の「国家戦略会議」は小泉内閣の「経済財政諮問会議」のふざけた焼き直しだということだ。どこが「ふざけた」かについては後で触れる。
報道の確認から。4日付け日経「「国家戦略会議」政官民で新設へ 経済財政の司令塔 野田首相方針 日銀・経団連首脳ら参加」(参照)より。
野田佳彦首相は3日、新内閣の経済財政運営の目玉として首相直轄の「国家戦略会議(仮称)」を新設する方針を固めた。野田首相を議長に、関係閣僚、日銀、経済界、労働界などの首脳らがそろって参加。経済財政運営の司令塔となり、予算編成や税制改正、社会保障改革など日本が抱える重要課題で基本方針を示す。小泉内閣時代の経済財政諮問会議をモデルに政官民が知恵を集めて日本経済を再生する体制をめざす。
「国家戦略会議」のメンバーは、首相、古川元久経済財政・国家戦略相、安住淳財務相ら関係閣僚、 白川方明・日銀総裁、米倉弘昌・経団連会長、古賀伸明・連合会長ら。学者や企業経営者も参加する見通しだ。同会議は定期的に開催する。
政府と経済界および日銀のコミュニケーションの場ができるのはよいことであり、これが民主党に存在しなかったのが不思議なほどでもあった。
問題は、「小泉内閣時代の経済財政諮問会議をモデルに」という点で、小泉内閣の「経済財政諮問会議」と、野田内閣の「国家戦略会議」はどこが違うのか。
国家戦略会議を閣議決定で設置するか、強い権限を与えるため法律で規定するかは今後検討する。 経済財政諮問会議は内閣府設置法で定められており、法律上は今も残っている。
諮問会議をそのまま復活させることもできるが、諮問会議の活用には「旧政権色が強い」との指摘もある。
現在でも、法律上、「経済財政諮問会議」は残っている。簡単な話、日経記事が指摘するように、「諮問会議をそのまま復活させることもできる」のにかかわらず、なぜそれを活用しないのか。同記事が触れているのは、「旧政権色が強い」ということだけのようだ。もし、それだけなら、これは、「ふざけた」話ではないか。
産経記事「野田政権の船出 野党時代の批判どこへ 急速に進む「自民党化」」(参照)はこの点に着目している。
背景には「政治主導」「脱官僚」を掲げた鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相が政権を統治できず、あらゆる政策に行き詰まったことへの反省があるようだ。
ただ、実態は小泉政権時代の経済財政諮問会議の看板を掛け替えたにすぎない。民主党はかつて経済財政諮問会議を「財務省主導」と批判し、政権交代後に廃止しただけに会議復活には与党からも異論が出る可能性がある。
だが、実態は自民党政務調査会の仕組みとほとんど同じ。民主党は自民党政調を「族議員の温床」「業界との癒着を生む」と散々批判し、先の衆院選マニフェストで「内閣での政策決定の一元化」を掲げただけに批判は免れない。
率直なところ、事ここに至って民主党批判をしても意味はないので、現実的な話に戻せば、ようするに、早急に「経済財政諮問会議」を開催すればよいのである。
それができないとするなら、その理由に対する説明責任(アカウンタビリティー)を野田内閣は負っている。
自民党化がいやだとかいうお子様みたいな話は鳩山内閣と菅内閣という代償で十分に支払ったのだから、どじょう内閣らしく、現実的に対応していただきたいし、さらに言えば、そうすることで、自民党対民主党という不毛な対立や、「政権交代」という幻影も消し去ることができる。
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コメント
自民党と同じ政治を、閨閥と無縁のポスト団塊世代がする。それが政治改革、政界再編、政権交代の最終解答ですよ。名前なんてどうでもいいんです。
江戸幕府の公武合体開国策を薩長が引き継いだように。
投稿: YT | 2011.09.05 13:24
>>自民党対民主党という不毛な対立や、「政権交代」という幻影
本当に、かぎかっこ抜きで、不毛な対立で、幻影ですね。現在進行形で。
投稿: enneagram | 2011.09.05 16:04
審議会プラスアルファで法律上の位置づけが曖昧だと小渕内閣の経済戦略会議レベルのもので終わってしまうでしょう。
経済財政諮問会議には9年間の経験の蓄積―成功も失敗も―があるからおおいに活用すればよい。野田氏も8月には復活の検討といっていたのだから、それでいいと思います。そのほうが自民党の心証もいいでしょう。そもそも民主党政権も、民間人に労働界の代表者を加えたりしてはじめから活用すべきだったと思います。
まあなまじっか強い会議体が出来ても財務省のじゃまになるだけとも言えますか。
投稿: kky | 2011.09.06 10:05