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2011.09.08

ウィキリークスの自滅。朝日新聞は批判を公開したか?

 ウィキリークス(WikiLeaks)が2日、25万点余りの米外交公電を未編集でインターネットに全面公開したことに対して、これまでウィキリークスに協力してきた国際メディアが一体となって厳しく批判した。が、私の勘違いかもしれないが、日本側で強力した朝日新聞社はそこに加わっていないように思えた。もしそうなら、なぜなのだろうか。
 前提となるウィキリークスの全面公開だが、NHK「ウィキリークス 実名も公表」(参照)は次のように報道していた。


 アメリカ外交当局の内部文書をインターネット上で公表している「ウィキリークス」は、保有する25万点余りの文書をすべて公表したとみられ、情報提供者の実名が明らかにされていることから、イギリスの有力紙などが「情報源を危険にさらしかねない」として非難しました。
 イギリスの有力紙「ガーディアン」は、2日、ウィキリークスが独自に入手し、保有する25万点余りの外交文書をすべて公表したと伝えました。
 また、ウィキリークスの関係者とみられる人物は、ツイッターに「今までのアメリカ外交の歴史に光を当てる時が来た」との書き込みをしています。
 公表された文書の中には、東京のアメリカ大使館が作成した文書およそ5700点や、中東などでのテロとの戦いに関連する機密情報などが含まれています。また、これまでの公表では機密情報の提供者の実名は伏せられていましたが、今回は、修正されずに明らかにされています。
 これについて、ウィキリークスと提携してきたガーディアンなど複数の欧米メディアは、2日、共同で声明を出し「適切な修正を行わずに文書を公表すれば、情報源を危険にさらしかねない。ウィキリークスとの提携は情報源を保護することが前提であり、今回の公表に我々は関与していない」として非難しました。

 NHK報道ではこのように「ウィキリークスと提携してきたガーディアンなど複数の欧米メディアは、2日、共同で声明を出し」とあり、読み方によっては「欧米」としてあたかも最初から日本のメディアを除外しているかのような印象も与える。しかし朝日新聞社がこれに加わったことは、5月4日の朝日新聞「情報の信憑性確認、厳選し公開〈米公電分析〉朝日新聞社」(参照)から明らかである。

 朝日新聞は在東京米大使館発など日本関連の外交公電をもとにした特集記事を掲載しました。
 公電は内部告発サイト「ウィキリークス」(WL)から入手しました。英ガーディアンや仏ルモンド、米ニューヨーク・タイムズなどは、WLから直接あるいは間接的に25万件の文書の提供を受けました。欧米主要紙誌の報道は世界で大きな反響を呼びましたが、7千件近くに及ぶ日本関連の公電の全容はわかりませんでした。私たちは今回入手した膨大な情報について、信憑(しんぴょう)性を確認したうえで、報道に公益性があるかどうかを基準にし、それらの価値を判断しました。
 私たちは報道内容についてWLから制約を受けていません。金銭のやりとりも無論ありません。私たちはWLを一つの情報源と見なし、独立した立場で内容を吟味しました。文書の信憑性に関しては、ニューヨーク・タイムズの協力も得て米国務省の見解を求めました。国務省は「ノーコメント」としつつ、朝日新聞に情報の削除や秘匿は求めない旨を回答しました。タイムズ側も、同紙が信憑性を確認した公電に、私たちが入手した公電が含まれていることを確認しました。

 朝日新聞はウィキリークス公電の発表時にはこのように、ウィキリークスとどうように協力して公開するかについて、指針を明確にしていた。
 であれば、協力したウィキリークスが逸脱し自滅した今回の事態でも、同等の欧米メディアと批判の歩調を合わせるべきであるように思われる。
 欧米のようすはAFP「ウィキリークス、米外交公電を未編集で全面公開 協力メディアは批判」(参照)が簡素に伝えている。

【9月4日 AFP】内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」が2日、25万点を超える米外交公電を未編集で全面公開したことを受け、これまでウィキリークスに協力してきたメディアが、ウィキリークスを厳しく非難した。
 ウィキリークスは、マイクロブログ「ツイッター(Twitter)」上のメッセージで、米外交公電25万1287点の全てをインターネットに投稿し、パスワードなしで全公電を読めるアドレスを提供。
 これに対し、前年の最初の外交公電の公開時にウィキリークスに協力したメディア5社、英紙ガーディアン(Guardian)、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)、独ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)、スペイン紙パイス(El Pais)、仏紙ルモンド(Le Monde)は共同声明を発表し、ウィキリークスが、公電から情報提供者名を削除せずに全面公開したことを批判した。
 5社は、2日にガーディアン紙に掲載された共同声明で、「未編集の米外交公電を公開したウィキリークスの判断を非難する。情報提供者を危険にさらす可能性がある」と述べ、「われわれとウィキリークスとの間のこれまでの取引は、徹底的な編集・点検プロセスを経た公電に限り公開するという明確な原則に基づいていた」と説明。5社は、全文公開は、ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ(Julian Assange)容疑者が単独で判断したことだと述べた。

 AFP報道を読む印象では、朝日新聞社がこの5社に加わっていないように読めるのだが、どうなのだろうか。あるいは加わってないまでも、ウィキリークスの自滅ともいえる事態について、なんらかの声明を出しただろうか。
 ガーディアンについては、読売新聞「ガーディアン紙、社説でウィキを改めて非難」(参照)がこう伝えていた。

 【ロンドン=大内佐紀】3日付英紙ガーディアンは社説で、内部告発サイト「ウィキリークス」が25万件以上の米外交公電を無修正のまま公開したことについて、「ウィキリークスの信奉者や、極端なまでの情報公開の自由を主張する人は称賛するだろうが、我々は違う」として、改めてウィキリークスを非難した。
 社説は「このような形での公開は不要だった」と指摘。公開を決めた創設者ジュリアン・アサンジ容疑者(スウェーデンでの暴行容疑などで係争中)が「責任を負うべきだ」と強調した。

 該当の社説は「Julian Assange and WikiLeaks: no case, no need」(参照)である。

This paper, and the four other news organisations involved in publishing heavily edited selections from the war logs and cables last year, are united in condemning this act.

昨年来、戦争記録と公電をもとに厳密に編集された選集の報道に関わってきた本紙と他4メディアは、一体となって今回の行為を非難する。


 ウィキリークスの今回の、全公開の事態についてはこう述べている。

Some WikiLeaks devotees and extreme freedom of information advocates will applaud this act. We don't.

ウィキリークス心酔者や情報の自由の極端な主唱者は、この行為を称賛するだろう。私たちはしない。

We join the New York Times, Der Speigel, Le Monde and El Pais in condemning it. Many of our newspapers' reporters and editors worked hard to publish material based on the cables in a responsible, comprehensible and contextualised form.

私たちは、ニューヨーク・タイムズ、シュピーゲル、パイス、ルモンドと共にこれを非難する。私たち新聞記者や編集者の多くは、責任をもって、わかりやすく、文脈を重視した形態で、公電をもとにした題材を報道しようと努力してきた。

We continue to believe in the validity and benefits of this collaboration in transparency. But we don't count ourselves in that tiny fringe of people who would regard themselves as information absolutists -- people who believe it is right in all circumstances to make all information free to all.

私たちは、透明性の点で、この共同作業の妥当性と利益を確信し続けている。いかなる状況でも情報は全員にとって自由であろうとする、情報絶対主義者と見なす人々の小さなサークルに、私たちは加わらない。

The public interest in all acts of disclosure has to be weighed against the potential harm that can result.

開示に関わるすべての活動における公共の利益は、それがもたらしうる潜在的な危険性を考慮しなければならない。


 かくして、ジュリアン・アサンジは(Julian Assange)は、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、シュピーゲル、パイス、ルモンドなど世界の大手メディアと対立する存在となった。

But the organisation has dwindled to being the vehicle of one flawed individual – occasionally brilliant, but increasingly volatile and erratic. There was no compelling need, even with the recent disclosures of the internal leak, for WikiLeaks to publish all the material in the form in which it did.

しかしウィキリークスという組織は、欠陥のある個人を載せる御輿にまで縮こまってきた。彼は切れ者にも見えるが、情緒不安定でミスが多くなってきた。ウィキリークスは、最近の内部告白についてすら、そのままの形態で報道されるべき切実性はなかった。

Julian Assange took a clear decision this week: he must take the responsibility for that.

ジュリアン・アサンジは今週明確な決断をした。彼はそれについての全責任を取らなければならない。


 簡単にいえば、世界の大手メディアがジュリアン・アサンジは裁かれるべきだと見ているということだ。うがった見方をすれば、ジュリアン・アサンジをお縄にするためには、泳がせて自滅するまで待っていてよかったということにもなる。
 世界の大手5メディアとは別に、朝日新聞もこの件について声明を出していたとしたら、ウィキリークスを支持するということはどういう意味を持つのかということを、日本のジャーナリズムに伝えたことだろう。ウィキリークスをいたずらに称賛する人々への警笛ともなっただろう。
 
 


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