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2011.07.19

アフメド・ワリ・カルザイ氏殺害を巡って

 アフガニスタン情勢はどうなっているのか。カルザイ大統領の"弟"・アフメド・ワリ・カルザイ(Ahmed Wali Karzai)氏が12日南部カンダハルの自宅で護衛に射殺された。17日夜には、首都カブールでカルザイ大統領の相談役だったジャン・モハマド・カーン(Jan Mohammad Khan)氏とウルズガン州議員および警官の3人が殺害された。両方の事件ともタリバンが犯行声明を出している(参照)。
 2014年に向けて米軍のアフガニスタン撤退及び、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際部隊からアフガニスタン側への治安維持の権限移譲(参照)が始まるなかでの出来事として、今後のアフガニスタン情勢に暗雲が垂れ込めるといったふうに理解されてもしかたがない。
 そうなんだろうか。
 疑問というか奇妙な印象が私にはあった。語るとなると胡散臭い話になるし、陰謀論の類になりかねない。それでも最近のオバマ政権の動向を見ていると、この政権自体の独自の胡散臭さという印象はぬぐいがたい。
 例えば、デービッド・ペトレアス(David Petraeus)アフガニスタン駐留米軍司令官が退任し、中央情報局(CIA)長官に栄転するのだが、さて、ペトレアス氏はアフガニスタンでなにか功績を挙げたのだろうか。ないと言えないこともないが、まあ修辞の部類だろう。少なくともアフガニスタンでの評価といえば、間接的にだが、15日朝日新聞「アフガン民間人犠牲最悪ペース 11年上半期1462人」(参照)が示唆的だ。


 アフガニスタンの政府当局者は14日、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)が南東部コスト州で夜襲を行った際に、民間人6人を殺害した、と語った。AP通信などが報じた。同州では市民ら約1千人が抗議デモを行った。
 また、南部カンダハル州のモスクで同日、何者かが自爆し、内務省によると、5人が死亡、15人が負傷した。モスクでは12日に殺害されたカルザイ大統領の弟アフマド・ワリ・カルザイ氏の追悼式が行われており、同省は式を狙ったテロと見ている。
 国連は14日、アフガンで今年上半期に戦闘などに巻き込まれて死亡した民間人が1462人に上り、2001年以降最悪だった昨年の同期に比べ15%増加したとの報告書を発表した。(カブール=五十嵐誠)

 奇妙なのはイラク戦争のときは、民間人誤爆でブッシュ元大統領批判が日本ですら批判的に報道されたものなのに、さほどオバマ政権への批判の声も聞かないように思える。
 当の、大統領候補の声もあったペトレアス氏だが、マクリスタル司令官辞任後は、功績を挙げるか泥を被るかのいずれかとも思われていたものが、どうもいずれでもない。修羅場を逃げたんじゃないのかという展開にしか見えないし、栄転させることでオバマ大統領の再選側に取り込んむ手打ちでもあったんじゃないかという印象も残る。
 こうした状況下でのカルザイ大統領の"弟"・アフメド・ワリ・カルザイ氏の殺害というのだが、彼は長年にわたって米中央情報局(CIA)から定期的にカネを受け取っていた人物である。2009年10月28日のニューヨークタイムズ「Brother of Afghan Leader Said to Be Paid by C.I.A.」(参照)が報じていた。
 もちろん米政府に協力するのだからその見返りがあって何が悪いということでもあるだろうが、そこまでで話が済めば、である。そうもいかない。麻薬の密輸に関わってきた。CIAとしても事実上、黙認してきたし、そうせざるを得ない状況というものがあった。
 この話はアフガニスタン情勢を見る人には常識の部類とされてきたが、言わないお約束の部類でもあった。日本も民主党政権になってインド洋上給油を止めるという歌舞伎の演出と国際社会のペナルティで鳩山元総理が多額の資金援助をアフガニスタンに拠出するということでもあったが、まさかそれがずるずると麻薬密輸にまで繋がっているというのでは洒落にならないでしょ。言うなよ、それ。
 アフメド・ワリ・カルザイ氏に関わる暗部について、2009年10月28日のニューヨークタイムズが報道したときもタイミング的にこれはどういう意味なのかという疑問があったものだが(参照)、今回の暗殺もどうもタイミングというか文脈がないとも思えない。
 というわけで、思考実験的にかつ自覚的に陰謀論的な読みを読みをすると、CIAによる、アフメド・ワリ・カルザイ氏の口封じとカルザイ大統領への威嚇ではないのだろうか。
 しかし、犯行声明を出しているのはタリバンではないか?
 その疑問は当然で、ちょっと無理筋な読みになるのかもしれないけど、CIAおよびオバマ政権は、タリバンとなんらかの手打ちをしているのではないか。もちろん、露骨なものではないけど、麻薬利権のシフトの容認くらいでアフメド・ワリ・カルザイ氏は吹っ飛ぶだろう。
 日本では、アフメド・ワリ・カルザイ氏はカルザイ大統領の"弟"と報じら、間違いでもないが、異母弟であり、カルザイ大統領からしてみると、暗殺に涙するくらいの人情の関係とはありながらも、部族の利権のネットワークを介した関係にあり、そう近しいというものでもない。
 もうちょっと言うと、アフメド・ワリ・カルザイ氏の口封じというより、カルザイ大統領のフリーハンドの領域を広げるために、問題となりそうな部分をこの機に排除したということかもしれない。
 陰謀論的な読みはここまでとして。
 いずれにせよ、西側諸国はアフガニスタンを民主化するというより、タリバンと共存していくという選択しかないし、NATOが壊滅するよりはましではないかという合理的な選択とみるなら、さすがに切れ者だなあ、オバマ米大統領とも思える。
 そして、この方式は、たぶん、リビアにも適用するのだろう。

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