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2011.07.26

菅直人首相の資金管理団体は、なぜ特定の政治団体に献金していたのか

 この問題をどう解くべきなのかはわからないが、看過してはいけないのではないかと日に日に思うので簡単に言及しておきたい。テーマの分類としては、菅直人首相の資金管理団体の問題であるが、錯綜しているように見える。
 国会でも論じられているのでマスメディアに隠されているといった話題ではないが、NHKのニュースなどではあまり見かけないし、解説員の言及も聞いたことはない。率直に言えば、産経新聞以外にはほとんど見かけない話題なので、産経新聞特有のネタかと思っていた。が、ニューズウィーク日本語版7・20に「「北朝鮮」と菅「献金」の深い闇」(参照)として記事が上がっていたあたりから、そうなのだろうかと疑問がわいた。
 なにが問題なのか。問題の端緒は、そう難しくはない。
 「政権交代をめざす市民の会」という政治団体に、菅直人首相の資金管理団体「草志会」が6250万円献金していたことだ。ここで多少奇妙な感じがするのは、政治団体が政治家の資金管理団体に献金するというのはよくあることだが、この場合は逆で、菅首相の資金管理団体が、特定の政治団体に献金していたというのだ。なぜ?
 これが慈善団体への献金なら、そういうこともあるだろうと思う。だが、政治団体である。上納金のようにも、貢ぎのカネのようにも見える。弱みでも握られているのかという邪推の余地も残す。なぜなのだろうか。疑問は当然わき起こる。
 この政治団体が、「北朝鮮による日本人拉致事件容疑者の親族が所属する政治団体「市民の党」(東京、酒井剛代表)から派生した政治団体」であるという点に着目し、産経新聞が7月2日「菅首相側、北の拉致容疑者親族の周辺団体に6250万円献金」(参照)が大きく取り上げていた。


 菅直人首相の資金管理団体「草志会」が、北朝鮮による日本人拉致事件容疑者の親族が所属する政治団体「市民の党」(東京、酒井剛代表)から派生した政治団体に、計6250万円の政治献金をしていたことが1日、分かった。年間の献金限度額上限の5千万円を支出した年もあり、大口の献金者だったことがうかがえる。政府の拉致問題対策本部長でもある首相側の献金先としては「不適切」との批判を受けかねない。

 産経新聞としては、北朝鮮に関係する政治団体「市民の党」に関連する政治団体である「政権交代をめざす市民の会」におカネを出したのはよろしくないという主張のようだ。
 いくつか考慮しなければならないことがある。
 菅首相の政治資金管理団体が献金した「政権交代をめざす市民の会」は、「市民の党」の派生なのだろうか。派生とは何を意味しているのか。産経新聞記事はこう説明している。

 菅首相側が献金していたのは、「市民の党」から派生した政治団体「政権交代をめざす市民の会」(神奈川、奈良握(にぎる)代表)。
 「めざす会」は市民の党の酒井代表の呼びかけで平成18年に結成され、奈良代表も市民の党出身。めざす会には、市民の党の名を冠する会派に属している複数の地方議員が年間計1千万円近い政治献金をしているほか、事務担当者が同一だった時期もある。

 派生といってもよさそうではあるが、派生だからといって同じ会だとは言えない。ではどういう関係なのか。関係とは何を意味するか。
 ニューズウィーク記事では、「めざす会」代表の奈良握厚木市市議が「市民の党」に所属していて、またこの二団体の事務担当者が同じ人物だったことがある点から、こう述べている。

 名義上「市民の党」と「めざす会」は別だが、実質的には一体と見たほうが自然だ。

 そうであるなら普通に考えると、菅首相が資金管理団体を通して献金した先の「めざす会」は、「市民の党」の隠れ蓑のようにも見える。
 産経新聞としては、「市民の党」と北朝鮮の関係を解き明かそうとしているし、ニューズウィーク記事もその点についても触れている。同記事によれば、公安も2団体をマークしているとしている。が、決定打はなくこう述べることになる。

 2団体の活動が直接北朝鮮につながっているかは不明だが、公安がマークする不審団体に首相が献金していたこと自体が不適切であることに違いはない。

 ニューズウィークとしても、まずそこが問題だというのだ。
 しかし、それは公安がマークしているから不審というトートロジーに帰してしまうようにも思える。
 ニューズウィークは、しかし、もう一点問題を切り分けている。

 さらにこの献金には、公職選挙法違反を疑わせる要素もある。

 そこが問題なら、たしかに大きな問題だとはいえるだろう。別の言い方をすれば、北朝鮮のコネクションについては、とりあえず切り分けてもよいのではないか。
 では、菅首相に関連する、公職選挙法違反の疑義はどこにあるのか。ニューズウィーク記事の推論はこうである。

 もし仮に2団体が全国の無党派選挙に運動員を派遣し、その報酬が草志会や民主党から拠出されていたとすると、運動員の買収を禁じた公職選挙法に抵触する可能性がある。

 どういうことなのか。ニューズウィークは、政界関係者の言葉としてこう展開している。

「(2団体は)要するに選挙ブローカーだ」と、ある政界関係者は指摘する。全国のいわゆる市民派、無党派の選挙陣営に組織的な選挙運動を展開する「プロフェッショナルな運動員」を派遣していたのではないかと見られている。

 妄想だろうか。興味深い事例が語られている。

 選挙ブローカーとしての2団体の活動は、民主党関係者の証言からも裏付けられる。民主党の鷲尾英一郎衆院議員(新潟2区選出)は、05年の衆院選に初出馬する際、民主党関係者から酒井(当時は別名の「斎藤まさし」で活動)を紹介されたという。選挙運動には、酒井の関係者が多数運動員として参加し、鷲尾は初当選を果たす。
 酒井はその後、鷲尾の秘書となり、2つの資金管理団体を勝手に設立して(既に解散)、市民の党とめざす会へ合計約780万円を献金している。鷲尾の事務所によれば、資金管理団体の設立や献金に関して鷲尾本人は当時はまったく知らなかったという。

 関連する興味深い事例や、2団体を巡るカネの流れや、収支報告書の疑念など各種の問題もいろいろと関係している。
 だが、構図としては、「選挙ブローカー」であり、献金というのは運動員への対価ということになるかもしれない。なるほど、そうであれば、これは問題と言える。
 菅首相の資金管理団体から出された献金が、実際にはこの選挙ブローカーへの対価であったと見なせるなら、これは公職選挙法違反となりうるかもしれない。
 同様の構図は民主党の構造的な問題だとも言えるだろう。民主党から草志会への計1億2300万円の献金もあったらしい(参照)。
 私としては、この構図の真義はわからない。解釈の問題にすぎないのかもしれないとも思う。

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コメント

いい読みです。菅が一番多額献金した年に参院選がありました。更に、市民の党が応援する候補者の周りには、選挙が近付くとゾロゾロ団塊の世代の応援団が集まってくるそうです。菅は初当選の選挙も酒井に手伝ってもらい、酒井は周囲に選挙の神様と言われていました。菅は民主東京の責任者であり、執行部に頼みこんだのでしょう。もちろん相手がどんな人物かは知っての上で(元々思想が近いですから)。

投稿: | 2011.07.27 01:25

 覚えている人もいるだろうし、「マカオ・北朝鮮・マネーロンダリング」で検索すれば分かることだが、アレを筆頭にミンス党が北朝鮮と関係が深い「市民の党」に献金をしていた時期は、まさにアメリカを中心に日本・韓国も協力して北朝鮮への資金ルート(BOA : バンコ・デルタ・アジアによるマネーロンダリング)を締め上げていた時期と重なる。つまり、背景として、日本の公党であるミンス党が、北朝鮮のマネロンの迂回ルートを提供していたのではないか、という疑惑が根本にある。
 資金源が国税(政党助成金)なのか、在日資金あるいは暴力団や左翼による闇資金なのかによっても違ってくるだろうが、いずれにせよ、日本の国家的汚点になることは確かだろう。
 個人的には、産経のスッパ抜きにはアメリカ辺りからのリークがあったのではないかと疑っているが、それだけ国際的な関心も高く(EUも例外ではない)、マスゴミが共犯関係に無いのなら、もっと大々的に取り上げるべき問題であることは間違いない。

投稿: MF | 2011.07.28 19:00

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