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2011.05.20

ゴラン高原衝突とその後

 シリアと接し、イスラエルが実効支配するゴラン高原で15日、パレスチナ難民を中心とする数千人規模のデモ隊がシリア側から流入しようとし、その阻止のためにイスラエル軍が発砲。2人の死者、170人の負傷者が出た(参照)。同日は、イスラエル建国によって多数のパレスチナ人難民化を余儀なくされた「ナクバ(大惨事)」の記念日にあたり、シリア側のデモもその一環と見られるが、背景はきな臭いものだった。
 同日の衝突はゴラン高原以外でもなされ、デモは「中東革命」よろしくフェースブックが利用されたらしい。16日付け時事「イスラエル境界各地で衝突=12人死亡-パレスチナの「大惨事」記念日」(参照)より。


 インターネットの交流サイト「フェイスブック」などを通じ、パレスチナ難民が故郷に戻る権利を求めるデモを同日、イスラエル境界地帯で行うよう呼び掛けがあった。

 背景について米側はシリアの煽動と見ている。17日時事「「シリアの扇動」と非難=パレスチナ人デモ隊衝突-米」(参照)より。

 【ワシントン時事】イスラエルが占領するゴラン高原で、シリア側から進入したパレスチナ難民とみられるデモ隊とイスラエル軍が衝突したことに関し、カーニー米大統領報道官は16日、シリア政府が抗議活動を扇動しているとの見方を示し、「受け入れ難い」と非難した。
 同報道官は大統領専用機上で記者団に対し、「ゴラン高原での抗議活動をあおったシリア政府の関与に強く反対する」と言明。「シリア政府が行っている手荒い弾圧から(国際社会の)関心をそらせようとしていることは明らか」と指摘した。(2011/05/17-06:41)

 時事の報道では、何が「受け入れ難い」のか時事の報道は曖昧な点はあるが、17日AFP"Syria's stoking Golan protests 'unacceptable': US"では次のように明確で、米側は背後にいるシリア政府を非難している。

The United States is "strongly opposed to the Syrian government's involvement in inciting yesterday's protests in the Golan Heights," Carney told reporters aboard President Barack Obama's official Air Force One airplane. "Such behavior is unacceptable and does not serve as a distraction from the Syrian government's ongoing repression of demonstrators in its own country," Carney said.

カーニー報道官は、オバマ大統領専用機エアフォース・ワンのリポーターに向かって、「昨日のゴラン高原での反対運動でシリア政府が煽動に関与したことを強く反対する」とし、「このような行為は受け入れがたく、シリア政府が自国のデモ参加者を抑圧することから気をそらすのには役に立たない」と述べた。


 米政府としては今回のゴラン高原での衝突は、シリア政府が自国での過酷な弾圧から世界の目をそらすために仕組んだと見ている。これはイスラエルの視点でもある(参照)。
 イスラエルや米国の見方は正しいだろうか。公正に判断する材料は見当たらない。17日ワシントンポスト社説「Israel’s border bloodshed: Will Syria be held accountable?」(参照)もこの見解を取っているが、説得力はある。

Palestinians demonstrate every year against Israel’s founding, and Facebook organizers helped drum up support for Sunday’s marches in the style of the Arab Spring. But no one can reach the heavily militarized Syrian front with Israel without the consent and cooperation of the Assad regime. That Syria’s allies in Lebanon and Gaza, Hezbollah and Hamas, were visibly involved in the demonstrations was also telling. Like the dictatorship in Damascus, the terrorist groups are profoundly threatened by the Arab demands for democratic change — and trying to switch the subject to Israel is the region’s most familiar political gambit.

パレスチナ人は毎年イスラエル建国反対のデモをしてきたし、フェースブックでの組織者は「アラブ春」方式で日曜日の行進支持を集めるのに手伝った。しかし、アサド政権の同意と協力なしに、イスラエル側で厳重に軍隊が居座るシリアの前線に到達できる者はいない。レバノン、ガザ、ヒズボラ、ハマスといったシリアの同盟者は明白にデモに関与しており、それが物語っている。シリア独裁政権のように、テロリストグループは民主主義の変化を求めるアラブ人の要求で深く脅かされている。だから、主題をイスラエルに切り換えようとすることは、この地域で最もなじみ深い政治的な序盤の一手である。


 パレスチナ人にはイスラエルへの反感があり、その運動も毎年行われてきたことは疑いないが、今回異例にゴラン高原にパレスチナ人を送り込んだのはシリア政府であり、背景に、レバノン、ガザ、ヒズボラ、ハマスがいるという読みはおそらく正しいだろう。
 逆にそうはいっても、喧嘩両成敗という意味ではないが、フィナンシャルタイムズ社説「Trouble in the Golan Heights」(参照)も指摘しているが、丸腰の市民に発砲したイスラエルも当然非難されるべきであることは確かだ。むしろ、イスラエルの失態を米側で被ったように見えないこともない。
 また、パレスチナ人が結果的にシリアの思惑に載せられたかにも見える状況をどう捉えるかも難しい。パレスチナ人側での内部の問題の反映があるのではないかとも疑われる。
 この事件がきっかけとも言い切れないが米国はその後、シリアのアサド大統領と政府高官6人に経済制裁を科す大統領令を発令し(参照)、さらにアサド大統領に民主化できなければ退陣を求めた(参照)。
 米国がどこまで本気なのかは疑わしい。むしろ、19日のオバマ大統領による中東政策演説(参照)も、対シリアという視点より、イスラエルに対して、パレスチナ総選挙を受け入れるように示唆する軟化政策に向けた布石のようにも見える。


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コメント

"Such behavior
「このような高位 → 行為
かと

投稿: | 2011.05.20 19:42

誤字、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2011.05.20 19:52

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