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2011.05.31

ムラディッチ被告逮捕で問われる「ジャスティス」

 26日、セルビアのタディチ大統領は、ラトコ・ムラディッチ(Ratko Mladic)被告(69)が拘束・逮捕されたとして、首都ベオグラードで緊急記者会見を開いた(参照)。ムラディッチ被告は、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(1992-95)のセルビア人武装勢力の司令官で、その間のサラエボ包囲と1995年のスレブレニツァでのイスラム教徒8000人虐殺を指揮したとして国際法廷に起訴されていた。
 ムラディッチ被告はオランダ・ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷(ICTY: International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia)で、同セルビアのカラジッチ元大統領とともに裁かれる。5年前、同法廷公判中に死亡したユーゴスラビアのミロシェビッチ元大統領を含め、ようやくお尋ね者の3人が揃ったことになる。
 英米圏では、この事態を「ジャスティス(Justice)」と呼んでいる。例えば、クリントン国務長官はムラディッチ被告についてこう声明を出した(参照)。


The United States welcomes the arrest of Ratko Mladic by Serbian security services earlier today. We commend President Tadic, the Government of Serbia, its security services and all those who have labored for years to bring Mladic to justice. We look forward to his earliest possible extradition to the International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia in The Hague so that justice may be served.

米国はセルビアの警察当局による、今日未明のラトコ・ムラディッチ逮捕を歓迎する。私たちはセルビアのタディチ大統領、警察当局、およびムラディッチを何年もの苦労の後ジャスティにしょっぴきだした人々を褒め称える。ジャスティスの達成が可能になるように、彼が早々にオランダ・ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷に引き渡されることを私たちは心待ちにしている。

This is a great day for justice in the international system. Mladic's arrest serves as a statement to those around the world who would break the law and target innocent civilians: international justice works. If you commit a crime, you will not escape judgment, you will not go free.

これは、国際世界のシステムにあってジャスティスのための偉大な一日である。ムラディッチの逮捕は、世界中で、法を犯し無辜の市民を狙う者対する声明の役を果たす。つまり、国際世界のジャスティスは機能しているのだ。もし人が罪を犯せば、ジャッジメントから免れることはなく、けして逃れることはできない。


 この鼻息粗そうな「ジャスティス(Justice)」ってなんでしょう?
 日本で毎度お馴染みになりつつあるマイケル・サンデル先生は、「ハーバード白熱教室」で「これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学」(参照)をしていたが、原題は「Justice with Michael Sandel」。つまり、「サンデル先生とご一緒にジャスティス」という、なんか午後の紅茶みたいな暢気な話題だった。実際講義録を読んでも、サンデル先生のジャスティスは午後の紅茶のように甘ったるくて、クリントン国務長官のジャスティスの鼻息付きのジャスティスには及ばない。
 鼻息は米国オバマ大統領も同じ。オサマ・ビンライディン暗殺を実施して、ジャスティスと言っていたのだった。「正義」って、伊藤博文の末期のような暗殺のことなのか。
 クリントン国務長官の言明を読むと、文脈的にはジャスティスは、ジャッジメント(judgment)と同じになっている。じゃあ、ジャッジメント(judgment)って何?
 これ、「最後の審判(The Last Judgement)」と同じような含みではないのか。

 サンデル先生の午後の紅茶みたいな「正義」が好きな日本人は、神様がこの世の終わりにドカーンとやる最後の審判みたいな「正義」を理解できるんだろうか。
 少なくとも、私にはすごい違和感がありますね。
 英語としても、こういう"Justice"の意味には若干違和感ありそうなもんじゃないかと、あらためて辞書引いたら、ありました。ロングマン。


6 justice has been done/served used to say that someone has been treated fairly or has been given a punishment they deserve
7 judge

 罰を加える、審判する、というジャスティスは、やや独自の意味としてあるようだ。
 私などは、なんかこういう世界観には今ひとつ付いてけないなと思っていると、とうのセルビアでもそういう動きはあった。AFP「ムラディッチ被告、虐殺関与を否定 セルビアでは1万人抗議集会」(参照)より。

セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)で29日、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦当時のセルビア人武装勢力司令官で戦犯として国際法廷に起訴されたラトコ・ムラディッチ(Ratko Mladic)被告(69)の身柄拘束に抗議する1万人規模のデモがあり、一部が投石するなど暴徒化して治安部隊と衝突、100人以上が逮捕された。

 人によってはいろいろな思いがあるので、ハーグ裁判が公平に進めばいいことなのだろう。
 とはいえ、ムラディッチ被告擁護に見える背景には、ボスニアについての面倒な問題があり、ニューヨークタイムズ「End of the Line」(参照)が少しねじれた希望で突っ込んでいた。まあ、無理でしょう。ついでに余談だが、同社説はICTYとICCを当初混同していた。さもありなん。
 ムラディッチ被告の逮捕は、海外報道を見ていると2つの視点で見られているようだった。1つは、セルビアの欧州連合(EU)加盟の手土産であっただろうというものだ。例えば、WSJ「ムラディッチ被告、セルビアで拘束―ボスニア内戦の戦犯」(参照)より。

 大統領によると、ムラディッチ被告の旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)への引き渡し手続きは既に始まっている。ただ、大統領は同被告がどのようにして発見されたのかについては詳細を明らかにしなかった。拘束のタイミングから、セルビアの当局は同被告の潜伏先を知っていたのではないかとの見方も出ている。

 EUは現在、今年中にセルビアに加盟候補国の地位を与えるどうか検討している。この動きはセルビアが戦犯法廷に全面協力するまで停止されていた。戦犯法廷の特別検察官は先週の報告で、ムラディッチ被告を拘束していないなど、セルビアの協力姿勢を批判していた。また、バローゾ欧州委員会委員長も「夏前に結果を出してほしい」とし、セルビアが加盟候補国の地位を獲得したいなら、戦犯法廷に協力することが「決定的に重要」だと同国に伝えた。



 タディッチ大統領は、EU加盟を目指してセルビア政府は拘束時期を「計算した」のではないかとの記者の質問に対して繰り返し否定。政府は常に戦犯法廷に全面的に協力していると強調した。同時に、95年に同法廷から起訴された同被告を発見するまでにどうしてこれほどの時間がかかったかを調査すると述べた。

 とはいえ、テレグラフ社説「Ratko Mladic: Justice at last」(参照)などを見てもわかるが、概ね手土産説は浸透している。

It has taken an inordinate length of time, but justice is finally being done on behalf of the people of Bosnia-Herzegovina – even if the key to yesterday’s arrest was not the Serbian government’s determination to right a terrible wrong, but rather the EU’s insistence that the arrest was a precondition of the country’s application to join the Union. Realpolitik has its uses, and its successes.

おびただしい時間が費やされたが、ジャスティスは最終的にボスニア・ヘルツェゴビナの人々のために果たされた。昨日の逮捕の要点が、セルビア政府による巨悪の是正ではなく、この逮捕が欧州連合(EU)加盟の前提条件だとEUが主張していたから結果だっとしても、ジャスティスは最終的に果たされたのだ。「現実的政治(Realpolitik)」っていうもののには使い道があり、成功したのだ。


 簡単にいえば、ジャスティスのためなら「現実的政治(Realpolitik)」もありという、サンデル先生には想像できそうにない、薄汚い正義の現実世界がここにある。
 もう1つは、クリントン国務長官もすでに仄めかしているが、他の国際法廷のお尋ね者への脅しになることだ。ワシントンポスト「Making amends in Serbia」(参照)はきちんと名指ししている。

In celebrating Mr. Mladic’s capture, the State Department pointedly noted that it “serves as a statement to those around the world who would break the law and target innocent civilians: International justice works.” But Moammar Gaddafi and Bashar al-Assad might be more intimidated by the Serbian example if the process worked better.

ムラディッチ氏拘束の祝辞として、国務省は「世界中で、法を犯し無辜の市民を狙う者対する声明の役を果たす。つまり、国際世界のジャスティスは機能している」と要点を指摘した。しかし、その手順が機能しているならセルビアの事例によって、ムアマル・カダフィとバシャー・アル・アサドはより怯えることだろう。


 つまり、リビアのカダフィ大佐とシリアのアサド大統領への威嚇。これにスーダンのバシル大統領も加わる。
 しかし、本当に脅しになっているのだろうか。テレグラフ社説「A 'new phase’ in Libya – and a risky one」(参照)は気味の悪い予言をしていた。

In Libya, it is always possible that the regime will collapse in short order and Col Gaddafi will be carted off to occupy a cell next to Ratko Mladic. On the other hand, he may draw an altogether different lesson from the fate that befell the Bosnian Serb – and that is to fight to a bitter and bloody end, because there is no other way out.

リビアでは、体制が短期に崩壊し、カダフィ大佐がラトコ・ムラディッチの独房の隣の独房にしょっ引かれることは、いつでもありえる。他方、このボスニア・セルビア人ムラディッチに下った運命からカダフィ大佐はまったく別の教訓を得るかもしれない。つまり、苦く血まみれの終了まで戦おうとすることだ。ほかに逃げ場を失ったのだから、そうなりうる。


 そういうことだ。「現実的政治(Realpolitik)」だの、ジャスティスだのといっても、ただ流血を増やすだけに終わるかもしれない。
 なぜ流血を減らそうという政策をジャスティスの前に選択しないものなんだろうか。

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2011.05.25

福島第一原発、海水注入を巡るドタバタ

 一昨日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、3月12日の原子炉への海水注入作業が55分ほど中断されたという話を自民党が持ち出し、21日発行の日刊現代(参照)のネタのように、それが菅首相による「中止せよ」との判断・命令であったのかと糾弾していた。
 糾弾としては、海水注入が途絶えたことで原子炉を危機に陥れたと、日刊現代ばりに自民党が理解しているのかもしれないようにも見えた。が、自民党としてはむしろ政府の主導性に疑問を投げかけるのが主旨ではあったのだろう。実際、この糸口をきっかけに政府の対応はズタボロの様相を呈した。関連して、内閣府原子力安全委員会・班目春樹委員長の「再臨界」発言の矛盾なども出て来た。
 とりあえず政府としては、海水注入は東京電力の自主判断だと説明したようだが、首相官邸の意向を東電が忖度した印象も残った。真相は未だにわからない。
 この話題だが、暗黙に危機が仮定されているわりに、実際には原子炉の危機とはあまり関係がない。むしろ海水注入を中断したことで水素爆発が避けられた「可能性もゼロではない」……いやさすがにそれはないか。私はこの話にはさして関心もなかったが、あまりに報道が錯綜しているのでちょっと気になって自分なりに少し追ってみた。
 菅首相が原子炉への海水注入を「やめろ」と言ったかもしれない時点は、後の表で整理するが、12日の午後6時以降であり、今となってはすでに公開されているがこの時点では1号炉はフルコアメルトになっていた。しかも淡水注入時点で炉内は完全な空焚きで、焼け石に水の状態であった。英語が読めるなら誰でも読める、3月26日の米国原子力規制委員会(NRC)のリーク文書でもすでに指摘されているが、海水注入をしたために配管が目詰まりし、水は結局、原子炉には注入されなくなった。海水注入を実施した自衛隊のかたには頭の下がる思いだが、現実的な対処として見ればナンセンスだっただろう。
 とはいえ、12日の朝の時点で完全な空焚きでフルコアメルトしていたことは、経産省原子炉安全小委員会委員としてこの福島第一原発の原子炉の安全性にお墨付きを与え、NHK報道に出ずっぱりだった関村直人・東大大学院工学系研究科教授(参照)もなぜか口にもしなかったことであり、「あの時点で」というなら、海水注入が重要だと想定されていたのかもしれない。
 いや、想定されていたのだろう。12日の午後2時ころには、もうすぐ淡水が切れることは東電側も理解し、海水注入を決定し、保安院にお伺いを出していた。保安院がそれにどう答えたのかわからない。が、その頃国民には知らせてなかったが、1号機は爆発していた。水素爆発であると枝野官房長官が言及したのは2時間後である。その間政府も政府機関も沈黙し、現地の被曝を放置していた。無政府状態の始まりだった。
 政府による放置を食らったのは東電も、だったかもしれない。海水注入の承諾は来ない。かなりの焦りがあっただろう。国を待ってなんかいられないという気分であったかもしれない。菅さんを交えて官邸で海水注入の協議がようやく開始したのは、4時間後、午後6時。
 このあたりの逡巡した手順を見るに、東電側には、政府の指示なしに海水注入はするなというお達しが事前にあったと想定してよさそうだ。
 なぜ、政府が東電側の海水注入決断を結果としてだが、放置したのか。政府側というか菅さんの頭のなかでは、海水注入したら再臨界になるという懸念があったからだろうか。すでに政府側としては、国民には黙っていたけど空焚きのフルコアメルトが想定されていて、そこに水を含んだ海水入れたら再臨界になるかもねと東京工業大学卒の菅さんが思ったか、同大学の誰かから吹き込まれたか。
 これは経緯を整理してみる必要があるな。
 経緯は錯綜しているので、ちょっと表にしてみた。ネタは、日経「衆院復興委主なやりとり」(参照)、「「空白の55分」混乱の連鎖 原発の注水中断問題 」(参照)、産経「海水注入の中断指示 首相は否定 では誰が? 瞬間判断で議事録なし」(参照)、「東電は海水注入を事前報告 菅首相「報告はなかった」と矛盾」(参照)、読売「海水注入、首相指示2時間前に「指示出た」メモ」(参照)、などから拾った。時間前後の都合で私の推測も加えた。


 表にまとめてみて自分なりの推理だが、意外と菅さんに嘘はないように思えた。
 午後6時の協議だが、菅さんの頭のなかは原子炉が爆発したことに怯え、再臨界の恐怖でいっぱいで、それを防ぐためならなんでもいいという状態であったようだ。おそらく地震後早々に米国からあったと思われる淡水の援助の要請を断ったことも祟っていたのではないだろうか。自民党ならほいほいと早々に米国の支援を受けたのに、なんで枝野は断ったんだよ、とか。
 そう推理するのは、菅さんが海水注入の問題性(参照)をよく理解していたなら、午後6時の官邸協議でそれなりの議論になるはずだが、20分ほどのあっけない協議だったからだ。しかも結果から見るに、すでに海水注入という方向で決まっていた。菅さんのことだから、「それも含めて」と毎度の口癖で済ませ、毎度お得意の丸投げにしてしまったのではないか。
 20分ほどのそっけない協議が終わった時点で、枝野官房長官が見たという、首相指示による海水注入のメモというのも作成されていた。経緯に問題があるとすれば、菅さんは、自分が指示したことになっているメモの存在を認識していなかったのではないか。そう考えると、以降の展開に辻褄が合う。
 午後6時の協議で海水注入が決まるという話は、東電側としても海江田経産相とツーカーだったのだろう。すでに現場は海水注入という手順を淡々と進めていたし、準備に必要とされる1時間も待たずに、7時4分には試験的な海水注入を開始した。
 政府が一昨日、海水注入は東京電力の自主判断としたが、菅さんとしても「聞いてないぜ、それ」という思いがあったのかもしれない。が、同時に当然ながら海江田氏は、午後6時の協議後に作成された「首相」指示明記のメモをもとに、これが首相の指示として理解しているのも不思議ではない。
 そのまま事態が進めばさしたることもないのだが、20分後に海水注入が停止される。なぜか?
 一昨日の自民党の糾弾では、形式的にだが菅さんによる海水注入「やめろ」指示の有無を問題にしているが、経緯を表にして眺めていると、丸投げ菅さんの動きにそこまでの緊迫はなく、東電側が勝手にやめたように見える。繰り返すが、衆院東日本大震災復興特別委員会の話からしても、政府としては海水注入は東電が勝手にやって勝手に中断したようでもある。
 東電はなぜ海水注入をやめたのか。追記 26日に実際には注入停止はなかったとのニュースが流れた。
 単に試験注入の様子見だったのではないか。
 試験注入では、試験だからなのか、あるいは慌ててヘマったのか、菅さんが気にしている再臨界抑制のためのホウ酸が入っていなかった。これ、まずいんじゃね、ちょっと停止してホウ酸入れろ、というのはそんなに不思議でもない。ホウ酸を団子にして入れろという話なら不思議だが。
 日刊現代風の読みもできないことはない。東電側が「これ、首相の指示ないんじゃねーの」とイラ菅のイライラを忖度したという読みだ。しかし、そんな存在感ないでしょ、あの菅さんに。
 ことの経緯全体に漂う、菅さんの存在感のなさは際立っている。
 イラ菅としての存在感はあったとしても、なんら菅さんの主導性というのは見えない。そもそも主導性を背景とするような意識も菅さんには感じられない。午後3時に1号機が爆発した時点で、国民に向けて「あれは水素爆発です。チェルノブイリの爆発ほどの影響はありませんが、住民は屋内に避難してください」といったメッセージを政府側が出すべきだった。なのに政府はこの間、国民にだんまり続けた。一国の首相たる菅さんは国民との対話という点で主導性は皆無だったのだったのは明らかだ。
 午後8時20分に海水注入がホウ酸を入れて再開されるのだが、これはその前の8時5分時点の海江田経産相の命令によるものだ。つまり、これが正式な海水注入であり、おそらく事後、菅さんもこれを開始と理解することにして「海水注入してたなんて俺知らねーよ」と自己弁護しているのだろうが、首相たる人なら、自分の名前でどう事態が進んでいることを知らなかったことにまず恥じるもんだろう。

追記
 26日に実は中断していなかったというニュースが流れた。NHK「“海水の注入 継続していた」(参照)より。


東京電力福島第一原子力発電所の1号機で、地震発生の翌日、水素爆発が起きたあと、原子炉を冷やすための海水の注入が1時間近く中断したとされる問題で、東京電力は26日、関係者の聞き取りなどを進めた結果、海水の注入は中断しておらず、継続していたことが分かったと明らかにしました。東京電力によりますと、「海水注入について、総理大臣の了解が得られていない」という連絡があり、いったんは海水の注入を停止することにしたものの、福島第一原子力発電所の所長の判断で海水の注入を継続したということです。

 東電側としては、菅さんの理解が得られない懸念で中断しようとしたが、吉田昌郎所長の判断で継続していたらしい。
 新しい報道でエントリーを読み返してみたが、やはり菅さんに嘘があったというわけもなく、論旨の基本は変わらない。
 もっとも今後、やはり中断していました、しかも菅さんの命令によるものでしたとならないわけでもない。

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2011.05.21

タイ総選挙は実施前から混迷

 タイでは、アピシット政権が10日に下院を解散し、7月3日の総選挙に向けて昨日、政党の名簿登録が始まった(参照)。初日の昨日中に26政党が登録を済ませたが、構図としてはアピシット首相率いる与党とタクシン元首相支持の野党との争い、つまり亡命中のタクシン氏を巡る争いになる。行方についてが、政治の安定という点では現時点でもほぼ絶望的だろう。
 率直なところなんでこんな時期に総選挙をするのかも理解しがたいが、国情上なかなか言及しづらい問題が控えているのかもしれない。
 タイは盛り上がっている。19日は、死者90人、負傷者1900人を出した、タクシン派のバンコク都心部占拠への軍弾圧から1周年の追悼記念日でもあり、当然ながらそのシンボルカラーの赤でバンコクは染まった(参照)。ここに来てタクシン派が盛り返しているというわけではなく、依然勢力は膠着しているだけだ。NHKが伝えた世論調査では、与党・民主党支持が34.1%、タクシン派のタイ貢献党が36%である。
 タイ貢献党はタクシン氏の実妹(9人兄弟の末子)、インラック・チナワット氏(43)を首相候補とした。彼女には政治家としての経験はないく、インラック氏の前にミンクワン元工業相らの名前も上がったが、最終的には亡命先のタクシン氏の意向で決まったらしい(参照)。
 当然インラック氏はタクシン氏の傀儡に過ぎないということになり、そのあたりのタイ社会での受け止め方はどうかと、タイの英字紙The Nationの社説「Can Pheu Thai's nominee really convince the Thai public?」(参照)を覗くと、落胆するほど案の定の話が展開されている。


Yingluck Shinawatra was named the Pheu Thai Party's prime minister candidate because of her last name. It's as simple as that, so the issue of "qualifications" should be out of the question. The most interesting part of her selection as party list "Number One" has to do with the controversial prospect of her big brother's return to Thailand and what she will do about it.

インラック・チナワットがタイ貢献党の首相候補に任命されたのは、彼女の一族姓が理由である。話はそれほど単純であり、首相の器といったことは問題にもなっていない。同党リスト筆頭選抜の重要性は、彼女の長兄がタイに帰国し彼女がどう扱うかという政局面にある。


 世論調査からもわかるように伯仲した構図からはインラック氏が政権に着く可能性もある。義弟のソムチャイ氏に続きタクシン一族からの3人目の首相という筋書きだ。
 いうまでもなくインラック氏が政権に就けば、汚職で禁固2年の判決を受けたタクシン氏が恩赦を受けてタイに帰国という段取りが想定されるが、そうなるのかといえば、なりそうにない。そもそも昨年の軍による過酷な弾圧からして、またこれまでの経緯からして、民主的な権力移行は想定しがたい。インラック氏が首相となればまた流血の惨事が繰り返されることになりかねない。
 ただ、そうした思惑もおそらくタイ国民にはすでに織り込まれていているのではないか。ゆえに実際にはタイ貢献党圧勝という構図にはならないのではないか。そうなればそうなったでタイ貢献党が小政党を織り込んだ脆弱な連立政権となり、依然混迷は続くということになる。
 こうした話につねづね楽観的で、日本政局への言及からするとちょっと知性が足りないのではないかとまで見えるフィナンシャルタイムズも「Thaksin’s shadow falls over Thailand」(参照)もこればかりは匙を投げている。タクシン氏への個人崇拝を克服すべきだとしても、無理だろうとしている。

That will not happen in this election. As such, it is hard to conceive of a happy outcome. The opposition would almost certainly dispute any victory for Mr Abhisit’s Democrats. The army would never allow a Thaksin proxy to assume the premiership. The prospects for a peaceful political reconciliation – never large – have dwindled.

それ(タクシン崇拝の克服)はこの選挙で起きないだろうし、その点で満足のいく結果にはなりがたい。アピシット率いる民主党の勝利に対する反対は手段を選ばないだろう。軍部はタクシン氏の傀儡が首相に就くことを断じて許さないだろう。平和的な政治和解の見込みは、以前も大きくはなかったが、先細りになっている。


 現実問題としてはタイ情勢はどうしようもない。国王の年齢という大きな問題も抱えている。
 理想論からすれば、社会的宥和の落としどころを探すしかなく、穏当なところでは、フィナンシャルタイムズが空しく指摘するように、タクシン氏への個人崇拝を薄め、既存権力と結びついたアピシット政権がタクシン支持派の切り崩しにかかることだろうが、それも厳しい過程を辿るだろうし、これをじっと構えて忍耐できるのは中国くらいなものかと冗談でも言うほかはない。

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2011.05.20

ゴラン高原衝突とその後

 シリアと接し、イスラエルが実効支配するゴラン高原で15日、パレスチナ難民を中心とする数千人規模のデモ隊がシリア側から流入しようとし、その阻止のためにイスラエル軍が発砲。2人の死者、170人の負傷者が出た(参照)。同日は、イスラエル建国によって多数のパレスチナ人難民化を余儀なくされた「ナクバ(大惨事)」の記念日にあたり、シリア側のデモもその一環と見られるが、背景はきな臭いものだった。
 同日の衝突はゴラン高原以外でもなされ、デモは「中東革命」よろしくフェースブックが利用されたらしい。16日付け時事「イスラエル境界各地で衝突=12人死亡-パレスチナの「大惨事」記念日」(参照)より。


 インターネットの交流サイト「フェイスブック」などを通じ、パレスチナ難民が故郷に戻る権利を求めるデモを同日、イスラエル境界地帯で行うよう呼び掛けがあった。

 背景について米側はシリアの煽動と見ている。17日時事「「シリアの扇動」と非難=パレスチナ人デモ隊衝突-米」(参照)より。

 【ワシントン時事】イスラエルが占領するゴラン高原で、シリア側から進入したパレスチナ難民とみられるデモ隊とイスラエル軍が衝突したことに関し、カーニー米大統領報道官は16日、シリア政府が抗議活動を扇動しているとの見方を示し、「受け入れ難い」と非難した。
 同報道官は大統領専用機上で記者団に対し、「ゴラン高原での抗議活動をあおったシリア政府の関与に強く反対する」と言明。「シリア政府が行っている手荒い弾圧から(国際社会の)関心をそらせようとしていることは明らか」と指摘した。(2011/05/17-06:41)

 時事の報道では、何が「受け入れ難い」のか時事の報道は曖昧な点はあるが、17日AFP"Syria's stoking Golan protests 'unacceptable': US"では次のように明確で、米側は背後にいるシリア政府を非難している。

The United States is "strongly opposed to the Syrian government's involvement in inciting yesterday's protests in the Golan Heights," Carney told reporters aboard President Barack Obama's official Air Force One airplane. "Such behavior is unacceptable and does not serve as a distraction from the Syrian government's ongoing repression of demonstrators in its own country," Carney said.

カーニー報道官は、オバマ大統領専用機エアフォース・ワンのリポーターに向かって、「昨日のゴラン高原での反対運動でシリア政府が煽動に関与したことを強く反対する」とし、「このような行為は受け入れがたく、シリア政府が自国のデモ参加者を抑圧することから気をそらすのには役に立たない」と述べた。


 米政府としては今回のゴラン高原での衝突は、シリア政府が自国での過酷な弾圧から世界の目をそらすために仕組んだと見ている。これはイスラエルの視点でもある(参照)。
 イスラエルや米国の見方は正しいだろうか。公正に判断する材料は見当たらない。17日ワシントンポスト社説「Israel’s border bloodshed: Will Syria be held accountable?」(参照)もこの見解を取っているが、説得力はある。

Palestinians demonstrate every year against Israel’s founding, and Facebook organizers helped drum up support for Sunday’s marches in the style of the Arab Spring. But no one can reach the heavily militarized Syrian front with Israel without the consent and cooperation of the Assad regime. That Syria’s allies in Lebanon and Gaza, Hezbollah and Hamas, were visibly involved in the demonstrations was also telling. Like the dictatorship in Damascus, the terrorist groups are profoundly threatened by the Arab demands for democratic change — and trying to switch the subject to Israel is the region’s most familiar political gambit.

パレスチナ人は毎年イスラエル建国反対のデモをしてきたし、フェースブックでの組織者は「アラブ春」方式で日曜日の行進支持を集めるのに手伝った。しかし、アサド政権の同意と協力なしに、イスラエル側で厳重に軍隊が居座るシリアの前線に到達できる者はいない。レバノン、ガザ、ヒズボラ、ハマスといったシリアの同盟者は明白にデモに関与しており、それが物語っている。シリア独裁政権のように、テロリストグループは民主主義の変化を求めるアラブ人の要求で深く脅かされている。だから、主題をイスラエルに切り換えようとすることは、この地域で最もなじみ深い政治的な序盤の一手である。


 パレスチナ人にはイスラエルへの反感があり、その運動も毎年行われてきたことは疑いないが、今回異例にゴラン高原にパレスチナ人を送り込んだのはシリア政府であり、背景に、レバノン、ガザ、ヒズボラ、ハマスがいるという読みはおそらく正しいだろう。
 逆にそうはいっても、喧嘩両成敗という意味ではないが、フィナンシャルタイムズ社説「Trouble in the Golan Heights」(参照)も指摘しているが、丸腰の市民に発砲したイスラエルも当然非難されるべきであることは確かだ。むしろ、イスラエルの失態を米側で被ったように見えないこともない。
 また、パレスチナ人が結果的にシリアの思惑に載せられたかにも見える状況をどう捉えるかも難しい。パレスチナ人側での内部の問題の反映があるのではないかとも疑われる。
 この事件がきっかけとも言い切れないが米国はその後、シリアのアサド大統領と政府高官6人に経済制裁を科す大統領令を発令し(参照)、さらにアサド大統領に民主化できなければ退陣を求めた(参照)。
 米国がどこまで本気なのかは疑わしい。むしろ、19日のオバマ大統領による中東政策演説(参照)も、対シリアという視点より、イスラエルに対して、パレスチナ総選挙を受け入れるように示唆する軟化政策に向けた布石のようにも見える。


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2011.05.19

GE製Mark Iはそもそも欠陥だったのかもしれない

 福島第一原子力発電所の状況について、当初の状況についていくつか気になる海外報道が出て来たのでブログに記しておきたい。福島第一原発のGE製Mark Iはそもそも欠陥だったのかもしれないという疑いがある。
 その前に、日本ではメルトダウンや早期に空焚きになっていたことが話題だが、この件についてはNRC文書を扱ったエントリ(参照)の言及から十分想定された範囲のことでもあり、報道が続くわりにはさほど大きな変化はない。NRCとしても5月16日、24時間体制での監視を解除した(参照PDF)。毎時監視を続けるほどの大きな変化はないとのNRCの予想が含まれていると了解してよいだろう。ただし、NRCが示唆した80キロ圏内の退避については依然解除はされていないようなので潜在的な危険(2号炉の崩壊など)は残っているのだろう。
 当面に気になるのは、3号機と4号機燃料プールだろうか。18日TBS「3号機注水、十分届いていない可能性」(参照)で3号機の最新の報道があった。リンク切れなので資料として引用しておこう。


5月18日(水)12時10分 福島第一原発の1号機では、燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きていることが明らかになっています。 一方、3号機については、先月からたびたび炉心の温度が上がるなど不安定な状況が続いていますが、これについて複数の政府関係者はJNNの取材に、3号機でも「メルトダウンが起きているとみられる」としています。 原子炉には「シュラウド」と呼ばれる壁と圧力容器との隙間を通して水が注がれていますが、底に固まっている燃料に十分に水が届いていない可能性が高いことが分かりました。 専門家は、この状態が続いた場合、燃料が発する高熱によって、圧力容器の底が抜ける可能性がある「深刻な事態だ」と指摘しています。

 4号機の燃料プールについては傾斜して崩壊するのではないかという懸念も一部で話題になっているようだが、この対処はすでに東電の工程表に含まれているので、新しい脅威というものでもない。
 ほかに、1号炉では圧力容器の底が完全に抜けたとの話もネットで見掛けるが、現状そこまで想定するのは難しく、NHKの想定が妥当というところではないか。「時論公論 「原発事故 見えない収束」(参照)より。



一方、1号機の圧力容器には、これまで1万トン以上の水を入れていますが、水位が低いということは、水が大量に漏れていることになります。燃料がメルトダウンした熱で圧力容器の底が溶け、合計すれば数センチ程度になる細かい穴が開き、水が漏れている可能性を東京電力は認めました。同時に、燃料の一部が、水とともに漏れ出している可能性も認めました。この燃料の一部を含んだ危険度のより高い水は、格納容器からさらに漏れ出していると推定されます。

 この話も3月21日時点のアレバの資料(参照)を読むとわかるが、1号炉は2700℃に達した可能性が書かれており、この温度なら圧力容器は溶けると想定してよいものだった。
 以上、前置き。
 ようやく事故時点の状況が報道されるようになったが、まず興味深いのはWSJ「福島第1原発、事故直後の新事実が明らかに―WSJ分」(参照)だった。地震当日の話である。


 福島第1原発に夕暮れが近づくと、技術者たちは取り外した車のバッテリーを使って臨時装置の電力とし、原子炉の中で何が起こっているのか解明しようとした。午後9時21分には危険なサインを発見した。1号機の水位が急激に下がっており、燃料棒がいまにも露出しそうだった。
 冷却装置がなければ水は沸騰し、炉内の圧力が高まる。沸騰した水の量が増えれば、燃料棒は溶け出し、空気に触れて反応する。そして、放射性物質を放出し、爆発を引き起こす危険がある水素ガスができる。
 午後11時頃、最初の発電用トラックが到着した。東京の首相官邸では歓声が上がった。

 これで発電トラックが機能すると思われたのだろう。

 だが、喜ぶのはまだ早かった。発電所の損傷したメインスイッチに、発電機をつなぐことができなかったのだ。ケーブルの一部が短すぎて、発電所の別の部分まで届かなかった。津波警報も発せられ、作業員は高台に避難しなければならなかった。最初の24時間のうちに接続できた発電機はわずか1台だったことを、東電の資料が示している。
 真夜中には、1号機の格納容器内の圧力が、設計時に想定された最大レベルをすでに50%超えていた。放射能レベルが非常に高かったため、東電の清水正孝社長は作業員に建物からの退避命令を出した。
 関係者によると、大胆な手段を取る必要があることが、東電と政府の目に明らかになってきた。すなわち、格納容器が圧力で破損する前に、原子炉内の蒸気を放出しなければならない。

 WSJでは原子炉内の蒸気を放出、ベントに関心を当てている。

 蒸気放出にはリスクがあった。蒸気は放射性物質を含んでいる可能性があり、近隣地域に危険を及ぼす。だが放出しなければ、容器が壊滅的に破壊される危険が非常に大きかった。菅首相と海江田万里経済産業相は、午前1時半頃、公式に蒸気放出を認めた。
 その後何時間も続いたのは、情報の行き違いや混乱だった。3月12日午前2時45分、東電は原子力安全・保安院に1号機の格納容器内の圧力が想定最大レベルの倍になっているようだと伝えた。
 それでも、蒸気放出口は閉じられたままだった。首相官邸から、海江田経済産業相は東電の経営陣に1時間ごとに電話をし、進捗状況を尋ねた。午前6時50分、海江田経済産業相は蒸気放出を命じた。だが、実行はされなかった。
 東電が今週公表したところによると、3月12日朝のこの時点では、1号機の核燃料はすでに溶け落ち、容器の底に積み重なっていたと思われるという。

 翌日の3月12日の朝には、現在メルトダウンと呼ばれている完全コアメルトになっていた。
 遅れた理由をWSJはこう見ている。

 政府関係者らはいま明かす。東電で蒸気放出を決定するのに長い時間がかかったのは、放射性物質を放出すれば事故の重大さが急激に高まると考えられたからだと。東電はなお、蒸気放出をせずに事故を収束させたいと考えていた。なぜなら、大気中に放射性物質を放出すれば、福島の事故は世界最悪のものとなり、チェルノブイリと並んでしまうためだ。
 これに続く記者会見と国会証言で、東京電力の清水社長は、時間がかかったのは周辺住民の避難への懸念と技術的な問題のためだと述べた。この件に関して、清水社長からはコメントは得られなかった。

 WSJの読み筋としては、東電の内情としてベントなしで事態収束ができると想定していたというものである。しかし、東電の公式アナウンスでは、住民退避猶予と技術としている。この部分についての真相は記事からは明確には読み取れない。
 同記事では、ここからドラマが映像的に描かれる。東電・武藤副社長に注目したい。

 グレーの会議用テーブルが二列に並んだ小さな部屋では、東電の原子力事業を率いる武藤栄副社長と発電所長の吉田昌郎氏の正面に菅首相が座った。
 同席した人々によると、菅首相は、白髪長身の原子力技術者、武藤副社長と衝突した。武藤副社長は、発電所の電力の問題があるため、あと4時間蒸気放出はできないと言った。作業員を送り込んで、蒸気排出弁を手動で開けることを検討しているが、原子炉付近の放射線レベルが非常に高いため、そうすべきかどうか確定できない。一時間ほどで決定すると、武藤副社長は言った。

 この部分についてはあとでニューヨークタイムズの記事と比較したい。
 ドラマ的描写は続く。

 菅首相の補佐官によると、「人ぐりが悪い」と武藤副社長は言った。
 同席していた人にようると、菅首相は「悠長なことを言っている場合じゃない、出来ることは何でもやって、早くしろ」と怒鳴った。
 この件に関して、武藤副社長、吉田所長からのコメントは得られなかった。東電の広報担当者は、武藤副社長の発言を確認することはできないと言った。東電は常に、事態収束のために、政府などからの支援を進んで受けてきたと広報担当者は語った。
 菅首相は、このミーティングの後すぐに福島第1原発を離れた。午前8時18分、発電所の技術者が最初に菅首相らに、1号機から蒸気を排出したいと伝えてから7時間後、東電は首相官邸にあと1時間ほどでバルブを開けると伝えた。
 かなり遅れたものの、安全弁はまだ開放が可能だった。問題はこうだ。通常、それは制御室で電動か圧縮空気で開閉するが、いずれのシステムも機能していなかった。
 その結果、高い放射線量の建屋内で作業員が安全弁を手動で開放しなければならなかった。

 一見すると菅首相の指導力でようやくベントに至ったかのように読める。さらにWSJはこの手動開放を行った人的努力を記事のエンディングとしていかにもドラマティックに置いていく。しかし、ポイントはベントの制御が制御室から可能ではなかったという点にありそうだ。
 ここに焦点を当てたのが18日付けニューヨークタイムズ「In Japan Reactor Failings, Danger Signs for the U.S.」(参照)である。先の東電・武藤副社長のドラマはこう描かれている。

The government became rattled enough that it ordered Tokyo Electric to begin venting. But even then, Tokyo Electric’s executives continued to deliberate, according to a person close to government efforts to bring the reactors under control. The exchanges became so heated, the person said, that the company’s nuclear chief, Vice President Sakae Muto, and the stricken plant’s director, Masao Yoshida, engaged in a “shouting match” — a rarity in reserved Japan.

政府はあまりに狼狽し、東電にベントを命じた。しかしその時ですら、原子炉制御に関わる政府関係者によれば、東電幹部は熟慮し続けた。討議は白熱し、東電原子力事業部門の武藤栄副社長と福島第一原発・吉田昌郎所長は怒鳴り合った。慎み深い日本では珍しいことだった。


 武藤副社長と吉田昌郎所長の口論があったらしい。もちろん、ベントの可否である。

Mr. Yoshida wanted to vent as soon as possible, but Mr. Muto was skeptical whether venting would work, the person said, requesting anonymity because he is still an adviser to the government and is not permitted to comment publicly. “There was hesitation, arguments and sheer confusion over what to do,” he said.

吉田氏は即刻ベントを望んだが、武藤氏はベントが機能するか懐疑的だった。この話の出所は、公にできないので匿名を望む政府相談役によるものだが、続けてこう語った、「ためらい、議論、何をすべきかについての混乱がそこにあった」


 WSJ記事からは武藤副社長のためらいが感じられ、またニューヨークタイムズ記事からも武藤社長のためらいが感じられるが、後者の記事では、その背景に技術的な問題としての含みが色濃い。
 私もずっと疑問だったのだが、ブラックアウト後の1号炉のメルトダウン過程は2号炉、3号炉より早い。1号炉には特殊事情があると見てよいのだが、そこがよくわからなかった。現状では、枝野官房長官が「報道で初めて知った」とされる1号機非常用冷却装置の手動停止(参照)がその原因に関係するのではないかと思われる。が、それにしても別の見方をすれば、いずれにせよメルトダウン過程が遅れた2号炉、3号炉でも結局は1号炉と同じ過程を辿っている。1号炉にベントの遅れがあっても、2号炉、3号炉で遅れがなければ間に合ったのではなかったかという疑問が残るが、現実はというと、1号炉の特殊事情があっても、結局全炉揃って同じプロセスとなった。
 この件についてニューヨークタイムズ記事の示唆がある。

The venting system is designed to be operated from the control room, but operators’ attempts to turn it on failed, most likely because the power to open critical valves was out. The valves are designed so they can also be opened manually, but by that time, workers found radiation levels near the venting system at Reactor No. 1 were already too high to approach, according to Tokyo Electric’s records.

ベント機構は制御室から操作するように設計されているが、操作は失敗した。理由は緊急用電源が切れたことだろう。弁は手動でも開くが、東電の記録によれば、この時点で1号炉のベント機構付近は作業員が接近不能なほど放射線レベルが高かった。

At Reactor No. 2, workers tried to manually open the safety valves, but pressure did not fall inside the reactor, making it unclear whether venting was successful, the records show. At Reactor No. 3, workers tried seven times to manually open the valve, but it kept closing, the records say.The results of the failed venting were disastrous.

2号炉でも作業員が手動で安全弁を開こうとしたが、反応炉内の圧力は下がらず、記録からはベントの可否は不明となった。3号炉でも手動で弁を開こうとしたが、記録によれば、開かなかった。ベントの失敗は悲惨なものになる。


 緊急時にはベントそのものがそもそも無理だったという評価も成り立つようだ。
 ということは、この原子炉、つまりGE製Mark Iがそもそもブラックアウトといった緊急時には対応できない欠陥品だったのではないかという疑念が出てくる。
 ただし、注意しなければならないのは、そもそもこのニューヨークタイムズの記事は米国内の同種の原子炉の潜在的な危険性を煽るためのダシとして福島第一原発を見ているので、そうした意図のバイアスはあるだろう。

追記(2011.5.20)
 コメント欄でベント機構について指摘があった。この点についてだが、ニューヨークタイムズは福島第一原発が改良ベントを装備したうえで、なおこの欠陥の指摘をしている。


American officials had said early on that reactors in the United States would be safe from such disasters because they were equipped with new, stronger venting systems. But Tokyo Electric Power Company, which runs the plant, now says that Fukushima Daiichi had installed the same vents years ago.

米国高官は米国のこの種の反応炉は、新式の強固なベント機構があるので、日本のような惨事にはならないと早期に言ってたものだった。しかし、この設備を運用する東電は現状、福島第一原発は同種のベントを数年前に装備してあると述べている。

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2011.05.16

ニューヨークタイムズに掲載されたウィキリークス日本発公電について

 ウィキリークスに日本発の公電が掲載され、政権交代以降の民主党政権の裏面が見えるようになってきた。しかし日本のメディアでもブログでもさほど話題になっているふうには見えない。なぜだろうか。
 昨年、ウィキリークスが国際的に話題になり、引きずられたように日本でも話題になったが、ようやく東京駐在アメリカ大使館発の公電が暴露されてきたのにこのお寒い状況というのはやや不可解な印象がある。暴露公電の点数が多いことや、他の話題に押されているということもあるだろうが。
 日本発公電の話題の乏しさには解説の弱さもあるかもしれない。各国でウィキリークスが話題になったのは、その国の主要新聞社による解説記事の影響があった。ウィキリークスでは各国の、主にリベラル系の新聞社として、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、シュピーゲル、ルモンド、エル・ペイスなどに直接または間接的に暴露公電を提供し、新聞社も独自に分析してきた。
 日本では朝日新聞が選ばれた。現在、朝日新聞が日本発公電を選んで日本語で公開しているが、解説的な記事は弱いように見えるし、翻訳の選択基準もいまひとつ明確ではない。
 朝日新聞によるウィキリークスの取り組みで象徴的な例は、2009年9月21日の公電TOKYO002197である。「外務官僚「日米の対等求める民主政権は愚か」 米公電訳」(参照)である。北朝鮮による拉致問題に触れた部分の第一段落はこのように訳されている。


斎木は、北朝鮮が、2002年に日本国民を拉致したことを認めたことを「誤った判断だった」と信じていることを嘆いた。斎木局長は、まだ40代と比較的若く、国民が最も同情を向けている横田めぐみさんの運命が最も大きい問題だと説明した。

 対応する原文はニューヨークタイムズ掲載(参照)によると次の通りで、朝日新聞訳と対応していない。朝日新聞情報の抜け部分を太字にした。

4. (S) Saiki lamented that the DPRK believes that 2002 was "a mistake"--referring to when North Korea admitted that it had abducted Japanese citizens. The DG said he believed that the DPRK had killed some of the missing abductees, and explained that the fate of Megumi Yokota was the biggest issue, since she was still relatively young (in her forties) and the public was most sympathetic to her case. He believed that some of the abductees were still alive.

 ただし、ウィキリークスサイト(参照)では次のように伏せ字となっているので、朝日新聞としては伏せ字部分を意図的な訳抜けとして対処したのかもしれない。

4. (S) Saiki lamented that the DPRK believes that 2002 was "a mistake"--referring to when North Korea admitted that it had abducted Japanese citizens. The DG xxxxxxxxxxxx explained that the fate of Megumi Yokota was the biggest issue, since she was still relatively young (in her forties) and the public was most sympathetic to her case. xxxxxxxxxxxx

 すでに示したようにニューヨークタイムズ掲載の公電には伏せ字も脱落もない。ウィキリークス、朝日新聞社及びニューヨークタイムズの三者にどのような認識があったのか興味深い。
 朝日新聞としては暴露公電の扱いについて「情報の信憑性確認、厳選し公開〈米公電分析〉朝日新聞社」(参照)で方針を示している。

 まず、欧米メディア同様、公開によって個人の生命、安全を危険にさらす恐れがあると判断できる情報、諜報(ちょうほう)に関する機微に触れる情報は掲載を見送りました。
 外交交渉に著しい打撃を与えるかどうかも考えました。公電に最高機密指定の文書はありませんでした。外交官の内々の解釈や個人的な印象などは、表に出れば当事者を困惑させるだろうと予想されましたが、それらが交渉を著しく阻害するとは判断しませんでした。公開によって社会が得る利益と不利益を真摯(しんし)に比較し、情報を厳選しました。
 そのうえで、(1)政府の国民に対する説明に大きな齟齬(そご)がなかったかどうかを検証する(2)膨大な断片情報を同時代の外交の文脈に位置づける(3)どのように政策が決められ、日米間でどのような交渉が進められ、米国は日本をどう見ていたのかといった点を再整理する――といったことは、報道機関の使命であり、公益に資すると判断しました。

 当然これが先の訳抜けに対応していると思われるが、ウィキリークスのように伏せ字箇所を明記せずに訳抜けとなっていることは、あたかも最初からそこの情報が無かったかのようで、奇妙なものである。
 逆にニューヨークタイムズは該当箇所を公開しており、さらにこの公電はニューヨークタイムズがセレクトした日本発公電の7つのうちの1つに含まれている。つまり、ニューヨークタイムズを読む欧米の知識人は、これらの、朝日新聞が無かったことにした情報を読んでいることになる。
 また、ニューヨークタイムズがセレクトした7つの日本発公電は、日本関連のウィキリークス情報として重視されていると見てよいだろう。この7本から読むとよいとも言える。
 そう考えて、該当7本をこのブログでも独自に試訳してみた。試訳は資料として扱って欲しい意図もあり、ニューヨークタイムズが付けた見出しは排した。おかげで、さほど注目されなかったようだが、ここではニューヨークタイムズの見出しを記してみよう。次のようになっている。

  • Disgruntled Shadow Shogun(ご不満な影の将軍)(参照
  • “Stupid” P.M., Dead Abductees("お馬鹿"な首相、死亡した北朝鮮拉致者)(参照
  • Warnings of Chinese Power(中国軍事力への警戒)(参照
  • Time to Rethink U.S.-Japan Alliance(日米安保再考の時期)(参照
  • Relocation Plan Is “Dead”(普天間基地移設案は"死んでいる")(参照
  • Bigger Role for Japan(日本が担う大きな役割)(参照
  • Could Japan Handle a Disaster?(日本は災害に対処できるか?)(参照

 「ご不満な影の将軍」というのは言うまでもなく小沢一郎であり、そのお小姓役をやっているのが山岡賢次である。公電に描かれた山岡の言動は爆笑を禁じ得ないほど滑稽な姿であるが、ようはこれが米国側に見える小沢という政治家の姿でもある。同時に、民主党の内情というのがここまで笑劇として米側に筒抜けだったのかという侘び寂びの情感も漂う。
 「"お馬鹿"な首相」となれば鳩山由紀夫とならざるをえないが、「お馬鹿」と呼んでいるのは米国ではなく、外務省・斎木昭隆アジア大洋州局長であり、対象も鳩山氏でなく民主党全体と読めないこともない。簡単に言えば、日本の官僚が民主党政府について「馬鹿すぎてやってらんないっすよ」と米国にこぼしているという図であり、この図は「日本が担う大きな役割」にも描かれている。
 不敵な官僚と批判するのはたやすいが、公電の文脈を見れば官僚の愚痴も理解できるだろうし、米側も同情的に了解していることも伝わってくる。
 「死亡した北朝鮮拉致者」については、朝日新聞が結果として隠蔽した情報なので、ニューヨークタイムズのように堂々と見出しにされると国際的には奇妙な絵になってしまう。
 「中国軍事力への警戒」だが、長島昭久などよる民主党の外交戦略と高見沢将林防衛政策局長など官僚の思惑、米側キャンベル国務次官補の、ある意味崖っぷちの意気込みのマリアージュが、どいつもこいも何考えてんだかなあという不条理劇のようで文学的にも味わい深い。
 しかし笑って済ませる寸劇でもない。途中キャンベルさんがぶっち切れてとんでもないことを言っている。この話、なぜかあまり注目されていないようだ。もしかすると、日本のジャーナリズムもわかってないんじゃないかという気もしてくる。こうした点でも日本は終わったなあという荒涼感もある。この件について別途エントリを書いたほうがよいのかもしれない。
 「普天間基地移設案は"死んでいる"」はいわゆる普天間問題の背景の一幕で、この幕の道化役は松野頼久である。道化役を上手にこなしているだけかもしれないが、公電文学の描写にはルース大使の憐憫の視線を含有していると読める。山岡氏といい松野氏といい、公電に描かれる民主党議員の姿は国民に尻向けてあっかんべーでもしているな稚拙な滑稽さがあり、憎めない。
 「日本が担う大きな役割」では、キャンベル国務次官補の焦りがじんわりとにじみ出ている点が、懐かしの日本人12歳論を想起させてしんみりとくる。まじめな部分では「拡大抑止」という大きな問題にツープラスツーのカルテットが暗礁に乗り上げている姿がある。この部分も、先の公電のキャンベルさんのぶっち切れと同様、洒落にならない深刻な問題でもある。
 「日本は災害に対処できるか?」の公電は2008年と古く、自民党時代から変わらない日本国家・日本社会の脆弱さを高校生のレポートのようにまとめている。が、さして面白くもない。ニューヨークタイムズとしては、今回の日本の震災に絡めてネタとして選択したのだろう。
 以上の7点の公電に関連したまとめであるかのようにニューヨークタイムズは「Cables Show U.S. Concern on Japan’s Disaster Readiness」(参照)という記者署名記事を掲載しているが、公電に表現される日本社会の潜在的な危機がこの震災で明らかになったといった、ブログのネタですかね風の無理なひっぱりをしている。他の公電についての概説では、日米外交の文脈、特に対中国の関係からさらっと言及しているが、これもさして興味がわくものでもない。
 この手の解説のつまらさはどうしたことかと思うに、ニューヨークタイムズや朝日新聞といったいわゆるリベラルからはなかなか見えづらい構図がありそうだ。
 ざっくり言えば、ニューヨークタイムズは民主党オバマ贔屓ということがあるのだが、そのオバマ政権がすでにブッシュ政権と同じような、かつてならリベラル派が批判した右派的な政権となっているため、舌鋒が冴えない。同じことが朝日新聞にも言えて、民主党への贔屓感とその政府への配慮、さらには中国様への配慮があるせいか、公電の持つ残酷なほど滑稽な民主党政権のリアリティがうまく掬えていない。
 先ほど朝日新聞のこっそり訳抜けを指摘したが、恐らく朝日新聞はニューヨークタイムズが掲載した7つの代表的とも言える公電の数点は訳さないのではないだろうか。どれが朝日新聞の選択から漏れるかというのが、日本のいわゆるリベラル派の現状の限界を形成している。

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2011.05.15

2008年3月18日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2008年3月18日の公電(参照)を試訳してみた。まあ、ご参考までに。

DATE 2008-03-18 23:00:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION CONFIDENTIAL
C O N F I D E N T I A L SECTION 01 OF 03 TOKYO 000727
SIPDIS
SENSITIVE SIPDIS
STATE FOR S/CT ROBERTSON, EEB, EAP/J WEBSTER
E.O. 12958: DECL: 03/17/2018 TAGS: ASEC, ECON, ETTC, JA, PGOV, PREL, PTER SUBJECT: CRITICAL INFRASTRUCTURE AND EMERGENCY RESPONSE IN JAPAN
日本の重要な社会基盤と危機対処

REF: STATE 6461
Classified By: Ambassador JTSCHIEFFER for reasons 1.4(b/d).

1. (SBU) Summary: Japan has faced a variety of natural disasters and other historical challenges to its critical infrastructure and systems. As a result, the country has developed preparations and capacity for responding to known threats, such as earthquakes, and has a record of willingness to share this information with others to help develop their abilities to prepare for and cope with disasters. Compartmentalization and risk aversion within the bureaucracy, however, could increase Japan,s vulnerability to threats for which it is less prepared, such as a pandemic.

要約:日本では、重要な社会基盤と各種制度が、さまざまな自然災害や歴史課題に直面してきた。そのためこの国は、地震などの既知の脅威に対応する準備と能力を発展させてきたし、災害に国民が対応する能力を高めるために情報を共有する意志を積み重ねてきた。しかし、官僚制の縦割り主義と事なかれ主義によって次第に日本は、感染症の大流行といった対応が手薄になり、脅威に弱くなってきているようだ。

Given the integration of the U.S. and Japanese economies as well as Japan,s status as the world's second largest economy, the potential consequences of a catastrophic event in Japan could be major. It would be useful to develop further bilateral exchanges on the subject of critical infrastructure and its protection and to include Japan in any work on critical infrastructure and emergency response. End Summary.

世界第二位の経済力や日米経済統合を考慮すれば、日本で発生しうる大惨事の顛末は重篤になる。重要な社会構造とその保護という課題で二国間交流を活発にすることや、重要な社会構造と危機対応への作業全般に日本を加えることは有益だろう。以上、要約。

Introduction
導入部
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2. (SBU) Japan and the U.S. are the world's two largest economies, closely linked to each other and to other major world economies. A catastrophic event or major infrastructure failure in Japan, therefore, would negatively affect the U.S., the rest of Asia, and the global economy as well.

主要な世界経済と密接に結び付きつつ、日本と米国は互いに世界の経済の二大大国となっている。従って、日本の大惨事や社会基盤の大規模機能停止は、米国、アジア諸国、さらには世界経済に悪影響を与える。

3. (SBU) The infrastructure and systems that most directly connect the U.S. and Japan include information and communications, transportation and distribution, and financial systems. Japan's industrial and R&D establishments, some of which have become sole providers for extremely specialized high-tech equipment or technologies, mean Japanese inputs are valuable, and sometimes essential, to numerous U.S. industries.

米国と日本を結合する社会基盤と各種制度には、情報、通信、交通、物流及び金融制度がある。日本の産業及び開発研究の企業には、高度に特化したハイテク装置や技術を単独で提供する企業があり、それゆえ日本からの購入には価値があり、時として、数多くの米国企業に必須ともなっている。

Information and Communications Systems
情報と通信システム
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4. (SBU) A failure of information and communications systems would have an immediate impact. These systems are connected globally in real time. A major failure could affect transportation, energy, defense, financial, health care, and other critical industries and services.

情報と通信設備の機能停止は直接的な衝撃になる。これらの設備は常時、世界中に接続されている。大規模な機能停止は、交通、エネルギー、防衛、金融、医療、および他の重大な産業とサービスに影響する。

5. (SBU) The greatest risk to such systems seems to be virtual, from cyber-warfare or cyber-crime. Such attacks are regarded as easier and could have a wider potential impact than attacks on physical infrastructure. Attacks could also be launched against system infrastructure, content or operations on networks, or against individuals or commerce active over such networks. Cyber-security threats seem an inescapable part of life on the Internet and the capabilities of potential attackers and those administering networks are already advanced and growing continually.

サイバー戦争やサイバー犯罪によるものだが、これらの設備への最大の危機はネットワーク上のものとなるだろう。この種の攻撃は比較的容易と見られ、衝撃も広範囲ではあるが、現実の産業設備に対する攻撃に比べて潜在的なものに留まる。攻撃対象は、ネットワーク上の基本設備やデータ、運用のほか、ネットワークを使って活動する個人や企業となる可能性がある。インターネットへの脅威は避けがたく、潜在的な攻撃者とネットワーク管理者の能力は高度な技術を持ち、さらに発展している。

6. (SBU) Still, physical damage to global information networks remains a threat, particularly involving trans-oceanic cables or remote infrastructure. Given the redundancy and ability to reroute signals over networks, however, such an incident might have less severe impact on the U.S, although the time and cost of repairing a transpacific cable could be substantial.

特に太平洋海底ケーブルやクラウドセンターなど、世界的な情報ネットワークへの現実な攻撃は、依然として脅威であり続ける。ネットワークの多重化や迂回ルート機能を考慮すれば、予想される攻撃も米国にさほどの被害をもたらさないかもしれないが、太平洋横断のケーブルの修理にかかる時間と費用は相当なものになりうる。

7. (SBU) Japan is pursuing policies to address risks and improve its cyber-security profile. Japan has both public and private sector entities focused on cyber-security in an effort coordinated by the National Information Security Council (NISC), a cabinet office, and the Japan Computer Emergency Response Team/Coordination Center (CERT/CC). The country is currently in the second year of its Secure Japan three year plan.

日本はこうした危機対応としてネットワーク防衛を強化している。日本にはネットワーク防衛専門の公共機関や民間組織として、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)、JPCERTコーディネーションセンター(CERT/CC)、があり、防衛のための調整を推進している。日本は現在に情報セキュリティ三か年計画の二年目にある。

8. (SBU) The U.S.-Japan Cyber-Security Dialogue, lead by DHS and NISC, also continues to share information and explore areas of cooperation. One example is participation by Japanese observers in the March 2008 CyberStorm II exercise. These efforts should improve international coordination of planning and cyber-security response capabilities, demonstrate best practices and refine national programs.

日米情報セキュリティ対話は、国土安全保障省と内閣官房情報セキュリティセンターが主導し、情報共有や協力分野の割り当てを続けている。その一例には、2008年3月、サイバーストームII演習への日本の視察参加がある。こうした努力を通して、ネットワーク防衛対応の国際協調計画の推進、最善の取り組み提示、各国対応計画の洗練が求められる。

Aviation and Maritime Ports
空港と港湾
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9. (U) Transportation links between Japan and the U.S. too are critical to global as well as bilateral commerce. Two-way merchandise trade in 2006 between the two countries equaled USD 207.7 billion. On average, USD 569 million worth of goods passed through Japanese ports every day on their way to or from the U.S.

日米間を結ぶ物流は、双方のみならず全世界にとっても決定的な意味を持つ。2006年の日米貿易総額は2077億米ドルとなった。平均すると、5億6900万米国ドルの商品が毎日日本の空港・港湾を通過している。

10. (U) Japan's three largest airports with traffic to the U.S. are Narita (Tokyo-Yokohama), Kansai (Osaka-Kobe), and Chubu (Nagoya). In addition to serving passengers to both countries, they are vital hubs for trans-pacific passenger traffic. In terms of passenger traffic to the U.S., 50 flights and 13,000 passengers per day arrive in the United States from Narita (second only to London Heathrow). Disruption of these airports, therefore, would have serious consequences for the U.S. and Asia.

米国便のある日本の大規模空港には、成田(東京横浜)、関西(大阪神戸)、および中部(名古屋)がある。これらは日米間の旅行客が利用するだけではなく、太平洋横断の旅行客にも重要な中継点となっている。米国への旅客便では、1日あたり50便と1万3000人の乗客が成田から米国に到着し、これはロンドンヒースロー空港に次ぐ。従って、これらの日本の空港が使用不能となれば、米国とアジアとって深刻な事態となる。

11. (U) Cargo traffic through these airports is also a vital economic link. In 2007, roughly USD 20 billion of shipments, or almost 13 percent by value of all Japanese exports to the U.S., went as air cargo out of Narita airport. By value, more trade passes through this airport than through any other port in Japan. Narita handles roughly twice the value of global two-way trade as the port of Tokyo. Narita handles 72 percent more than Nagoya port, which processes the most trade by value of any Japanese maritime port.

これらの空港を通る貨物も経済連携として重要である。成田からは、2007年統計だが、日本から米国への輸出として、その13%を占める約200億米ドルの貨物が送出された。金額で見ると、成田空港は他のどの港湾よりも大きく、東京港の二倍にも達するし、一位の湾港である名古屋港より72%も多い。

12. (U) Japan's maritime ports are also vital economic links. Japan's five largest maritime ports are Tokyo, Yokohama, Nagoya, Osaka and Kobe. In 2006, they processed over one million containers (1.43 million TEU) to/from the U.S.

湾港を通る貨物も経済連携として重要である。日本の五大港湾は東京、横浜、名古屋、
大阪及び神戸である。これらの湾港が扱った日米貨物は2006年では100万個を超えるコンテナ(143万のTEU)に達した。

13. (SBU) Japan has established agencies and policies providing for port security, both infrastructure protection and border controls, consistent with international standards, such as the International Ship and Port Facility Security Code. Operational U.S. agencies such as Customs and Border Protection, the Federal Aviation Administration and the U.S. Coast Guard have ongoing dialogue and information sharing programs with Japanese counterparts. Other examples of specific initiatives to strengthen the security of ports and shipping include the Megaport program. Japan looks to launch a Megaports pilot project in Yokohama and is working with DHS and DOE on plans.

日本は港湾保全の部局と政策を設立し、設備保護と国境管理の双方を担わせている。これらは、国際船舶及び港湾施設保安コードといった国際基準を満たしている。税関・国境取締局、連邦航空局及び米沿岸警備隊といった米国の作業部局は、対応する日本の作業部局と対話と情報交換する仕組みを持っている。港湾と海運の安全強化のための特定の構想の例にはメガポート計画がある。日本はメガポートの試験を横浜で開始し、国土安全保障省やエネルギー省と作業中である。

Financial Market Infrastructure
金融市場の設備
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14. (SBU) Financial markets are a clear example of other infrastructures that closely connect the two economies. A failure in Japan's financial system infrastructure, or the interruption of financial transaction clearing, would have serious repercussions for the U.S. and the rest of the world.

金融市場は日米経済を緊密化する明確な仕組みの一例である。日本の金融システムの設備の機能停止や金融取引決済の中断は、米国とその他の世界に深刻な影響をもたらす。

15. (U) Establishment, maintenance, and protection of financial system infrastructure have been left to the private sector, under the supervision of the financial services regulator, the Financial Services Agency, and the Bank of Japan, which is responsible for the payments system.

金融制度の設備を設立・維持・保護は民間部門に任されていて、こられの部門は金融事業を所管とする金融庁と、決済責任を持つ日本銀行が監督している。

Disasters and Threats in Japan
日本に起こる災害と脅威
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16. (U) Japan's has a history of catastrophic natural disasters. Historically, the greatest natural threats were earthquakes and volcanoes, storms, and fires. The great Kanto (Tokyo) earthquake of 1923 was of magnitude 7.9 and killed roughly 105,000 people; the Hanshin (Kobe) earthquake of 1995 was magnitude 7.3 and killed 6,437. Between 1996 and 2005, 20.8 percent of the world's earthquakes of 6.0 or greater occurred in Japan.

日本には壊滅的な自然災害の歴史がある。歴史的に見て最も大きな自然の脅威には、地震、火山、台風及び火事がある。1923年の関東(東京)大震災はマグニチュード7.9で、約105,000人が死亡。1995年の阪神(神戸)地震はマグニチュード7.3で、6,437人が死亡。1996年と2005年の間で、マグニチュード6.0以上の世界の地震の20.8%が日本で発生した。

Seven percent of the world's active volcanoes are located in Japan and Mt. Fuji, although it last erupted in 1707-08, is still active and a threat to the greater Tokyo area with its 30 million inhabitants. Storms are another problem, with the 1959 Ise Bay Typhoon taking 5,098 lives. There is a clear downward trend in the numbers of lives lost in disasters in Japan, however. Factors contributing to this development include improved technology and engineering, stronger safety standards, and better emergency preparations and response.

世界の活火山の7パーセントが日本にあり、前回1707年-08年に噴火した富士山は、依然活動中であり、3000万人住民もの東京地域の脅威となっている。さらに台風も問題であり、1959年の伊勢湾台風で5,098が死亡した。しかし日本の災害の死亡数には、明確な減少傾向がある。改善要因には、技術、科学、高い安全基準、災害準備・対策の改善がある。

17. (SBU) Japan faces other types of threats, with pandemics one of the most serious. The SARS and Avian Influenza did not greatly affect Japan, but the country is potentially vulnerable to a pandemic. In addition, Japan has also experienced terrorism, for example, with the taking of hostages at the Japanese Embassy in Peru and the Sarin gas attack in the Tokyo subway system. The 1995 Sarin attack killed 12, injured 1,034, and undermined public confidence in the safety of Japan's mass transit system.

日本はその他の危機にも直面していて、中でも各種感染症の大流行が深刻である。SARSと鳥インフルエンザは日本にさほど影響しなかったが、日本は感染症の大流行病に潜在的に無防備である。日本は在ペルー大使公邸人質事件や東京地下鉄サリン事件などテロ攻撃の経験もある。1995年のサリンによる攻撃では12人殺害と1034人損傷となり、交通網の安全性への国民の信頼は薄れた。

18. (SBU) Japan relies heavily on nuclear power for roughly 30 percent of its electricity needs. While Japan has never had an attack on a nuclear facility, several Japanese facilities have experienced safety incidents, some resulting in fatalities and prolonged shutdowns.

日本は原子力発電に強く依存し電力需要の30%にも及んでいる。日本にはまだ原発への攻撃事件はないが、事故死や停止継続となる安全性の問題を起こした原発が数機ある。

In the most recent case, the Kashiwazaki-Kariwa nuclear power plant located in Niigata Prefecture and the world's largest in terms of electrical generating capacity, remains off line following a July 2007 earthquake. Also during summer 2007, the Hokkaido Electric Power Company was criticized for failing to prevent suspected arson at a reactor construction site at its Tomari nuclear power plant.

最近の例では、発電容量世界最大の原子力発電所、新潟県・柏崎刈羽原発は、2007年7月の地震以降操業停止となっている。2007年夏期、北海道電力は、泊原発で原子炉工事現場の放火容疑を防止できなかったと非難された。

19. (SBU) Japan's political leaders and public profess concern about the country's continued dependence on imported food as well as on imported oil. Some Japanese still recall post-war shortages. However, as Japan is less than 40 percent self-sufficient in food production, despite concerns about food security, Japan's only practical resource security will come from stable and reliable flows.

日本の政治指導者と国民は、石油輸入だけではなく食品輸入への依存が続くことも心配している。戦後の食糧難を想起する日本人もいる。しかし食糧安全保障を懸念しても日本の食糧自給率は40%以下なので、現実的な食糧安全保障は安定した交易によるほかはない。

Emergency Preparedness and Response
緊急事態の準備と対応
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20. (SBU) The GOJ has taken steps to prepare for such threats. Japan has established legislative and organizational frameworks for disaster management and emergency response. The GOJ has developed response capabilities at the national, regional, and local levels as well. A Minister of State for Disaster Management oversees disaster management efforts, coordinated by the Cabinet Office, and involving 23 government entities and 63 public and private corporations. The legal basis for Japan's Disaster Management System were set out in 1961 by the Disaster Countermeasures Basic Act.

上述の危機に日本政府は準備として段階的な手を打ってきた。日本は災害対応や緊急事態対応の法的・組織的な枠組みを設立してきた。日本政府は同様に、国家レベル、地域レベル、地方レベルで対応能力を発展させてきた。防災担当相が災害対応の推進を監督し、内閣官房が調整し、さらに23の政府機関、63の公的法人や民間会社が関連している。日本の災害管理制度の法的根拠は1961年の災害対策基本法である。

21. (SBU) Japanese bureaucracy and planning can be inflexible, with the result that Japan may be still vulnerable to threats that are less well understood, or which require different sorts of preparation. A pandemic or a major cyber attack would require different responses from those appropriate to an earthquake, and could catch both the GOJ and private sector unprepared. Such a situation in turn could result in prolonged loss of critical systems or services.

日本の官僚制度と政策は柔軟性を欠くことがあり、理解の至らぬ脅威や既存とは異なる準備を要する驚異については依然、無防備だともいえる。感染症の大流行や大規模サイバー攻撃には、地震対策とは異なる対応が求められるだろうし、日本政府も民間企業も準備不足が罠となりうる。状況が変われば日本は、重要な制度と運用に長期の空白がもたらされることになる。

22. (C) Comment: Highly advanced technology and its application for industrial and consumer use has long been a key factor in Japan's economic growth and a reality for leading U.S. and other companies. Disruption in the supply lines would have significant consequences. Likewise, Japan's role as an international financial services and a communications/transportation hub would mean an attack or other serious development that disrupted these activities here, would likely seriously affect the U.S. and other allies. As the U.S. proceeds with the effort described in ref, it may be useful to consider reaching out to Japan to discuss steps we can take to prevent a possible disruption or to mitigate the negative effects should one occur. End Comment. SCHIEFFER

意見。高度な技術と産業・民間へのその活用は日本の経済成長の重要な要素であったし、米国主要企業やその他の企業にも当たり前であった。日本産業からの提供が途絶えると深刻な事態になる。同様に、国際的金融制度と通信・交通の中継基地としての日本の役割は衝撃にもなりうるし、日本の諸活動停止がすれば、米国やその他の同盟国に深刻な影響を与える深刻な事態となる。参考資料で示した努力を米国が推進する際、発生しうる混乱を予防するため、さらに発生後の悪化状況緩和のための議論に向けて、日本に手をさしのべるよう配慮することが有益であろう。意見終わり。シーファー記す。

DESTINATION
VZCZCXRO8661
PP RUEHFK RUEHKSO RUEHNH
DE RUEHKO #0727/01 0782300
ZNY CCCCC ZZH
P 182300Z MAR 08
FM AMEMBASSY TOKYO
TO RUEHC/SECSTATE WASHDC PRIORITY 2650
INFO RUEHFK/AMCONSUL FUKUOKA PRIORITY 6705
RUEHNH/AMCONSUL NAHA PRIORITY 9097
RUEHOK/AMCONSUL OSAKA KOBE PRIORITY 0378
RUEHKSO/AMCONSUL SAPPORO PRIORITY 7309

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2011.05.14

2010年2月4日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2010年2月4日の公電(参照)を試訳してみた。まあ、ご参考までに。

DATE 2010-02-04 09:00:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION SECRET
S E C R E T SECTION 01 OF 07 TOKYO 000228
SIPDIS
E.O. 12958: DECL: 02/03/2030 TAGS: PREL, PGOV, MARR, JA SUBJECT: U.S.-JAPAN SECURITY SUB-COMMITTEE MEETING
日米安全保障小委員会

REF: SECDEF DTG 292154ZJAN10
Classified By: Deputy Chief of Mission James P. Zumwalt; reasons 1.4 (b /d)

1. (S) SUMMARY: Initiatives for the Security Treaty,s 50th anniversary, updates on the Quadrennial Defense Review (QDR) and Nuclear Posture Review (NPR), Host Nation Support (HNS), Realignment/Futenma Replacement Facility, possible new bilateral exchanges and F-X procurement were the main Alliance issues discussed during the February 2 Security Sub-Committee (SSC) meeting, led by EAP A/S Campbell and ASD Gregson on the U.S. side, and MOFA DG for North America Umemoto and MOD DG for Defense Policy Takamizawa on the Japanese side.

概要。日米安保条約50周年記念構想、4年毎国防計画見直し(QDR)及び核戦略見直し(NPR)、思いやり予算などの接受国支援(HNS)、米軍再編/普天間移設施設、二国新間交流及び次期主力戦闘機導入計画が、2月2日の日米安全保障小委員会で同盟の主要話題となった。出席者は、米国側は東アジア・太平洋担当カート・キャンベル国務次官補及びアジア・太平洋安全保障問題担当・グレグソン米国防次官補で、日本側は外務省・梅本北米局長および防衛省・高見沢防衛政策局長である。

Regarding the 50th anniversary, both sides raised the possibility of a new security declaration, a 2 2 (SecState, SecDef, and GOJ counterparts) meeting, and trilateral engagement with India in 2010. DG Umemoto, however, relayed Foreign Minister Okada,s decision not to form an eminent persons panel to shepherd anniversary activities. In terms of new exchanges, DG Umemoto called for the start of formal bilateral dialogues on regional security (focusing initially on China), extended deterrence, and cyber-security.

日米安保50周年記念について双方が、新安全保障宣言、2プラス2会議及びインドを含めた2010年の三者協議の可能性を取り上げた。しかし梅本局長は、記念行事には盛り立役の著名人を揃えないとする岡田外務大臣の決断を伝えた。新交流については、梅本局長は、地域安全保障(一番に中国が焦点)、「核の傘」などを含む拡大抑止、サイバー攻撃への防衛についての正式な二国間会議を要請した。

2. SUMMARY cont'd: The Japanese side expressed support for beginning HNS discussions at an early point with a view to presenting a more efficient support package to the Japanese public. ASD Gregson pressed for green energy technologies as a possible component of a successor HNS agreement, and A/S Campbell noted the political sensitivities of the HNS issue during a time of FRF-related Alliance challenges.

概要続く。より効率的な接受国支援を日本国民に見せておくために、早期に接受国支援議論の開始を支援すると日本側は強調した。グレグソン米国防次官補は、接受国支援の継続にはグリーンエネルギー技術も含めるように迫り、キャンベル国務次官補は、普天間移設施設(FRF)が絡む同盟の変更期間にあっては、接受国支援問題は政治的に慎重にするように指摘した。

On the realignment of U.S. forces in Japan, A/S Campbell urged the Japanese side to refrain from going public with FRF alternative proposals before consulting with the USG. ASD Gregson expressed concern that politicization of FRF decisions are bleeding into other realignment projects, particularly Iwakuni. DG Takamiza provided an update on F-X procurement, noting that MOD has started a process to brief the Defense Minister on the candidate aircraft, threat assessment and procurement and delivery issues. DG Takamizawa expressed concerns about barriers to F-35 information, Japanese industrial to participation in F-35 production, and rumors of delivery delays. End summary.

在日米軍再編についてだが、米国政府との相談前に普天間移設施設の各種代替案を日本国民に伝えるのは差し控えるよう、キャンベル国務次官補は日本側に勧めた。グレグソン米国防次官補は、普天間移設施設の決定を政治問題にすることで、特に岩国基地などその他の再編計画に悪影響を及ぼしていると懸念を表した。高見沢局長は次期主力戦闘機導入の最新案を提出し、自衛隊は、候補機、脅威の評価及び調達・納期問題について防衛大臣への概要説明を開始したと指摘した。高見沢局長は、F-35の情報障壁、日本の製造業のF-35生産参加、納期の遅れの噂についての懸念を表明した。以上、要約。

3. (U) The United States and Japan held a Security Sub-Committee (SSC) meeting on February 2 hosted by the Ministry of Foreign Affairs in Tokyo. Assistant Secretary of State Kurt Campbell and Assistant Secretary of Defense Wallace "Chip" Gregson chaired the U.S. side, with Ministry of Foreign Affairs Northern American Affairs Bureau Director General Kazuyoshi Umemoto and Ministry of Defense Bureau of Defense Policy Nobushige Takamizawa chairing for Japan. Representatives from Embassy Tokyo, Pacific Command and U.S. Forces, Japan joined the U.S. chairs, with representatives from the Japan Joint Staff filling out the Japan side. A full list of participants is at the end of the cable.

米国と日本は東京で2月2日、外務省主催による安全保障小委員会(SSC)を催した。米国側は東アジア・太平洋担当カート・キャンベル国務次官補及びアジア・太平洋安全保障問題担当ウォーレス・チップ・グレグソン米国防次官補が出席し、日本側は外務省・梅本和義北米局長および高見沢将林防衛政策局長が出席した。在東京大使館、太平洋軍司令部及び米軍からの代表団が米側に、統合幕僚監部の代表団が日本側に加わった。参加者一覧はこの公電の末尾に記載されている。

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Quadrennial and Ballistic Missile Defense Reviews
4年毎国防計画見直しと大陸弾道ミサイル防衛見直し
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4. (C) OSD Director for Japan Basalla drew on talking points in Ref A to provide an overview of the Quadrennial Defense Review (QDR) and Ballistic Missile Defense Review (BMDR). ASD Gregson emphasized that the United States is not reducing its presence in Northeast Asia, but rather expanding throughout the Pacific the presence of its existing alliances. The United States encourages the increase in Japan Self Defense Forces (JSDF) presence and operations around Guam and Asia.

バサラ駐日米国大使補佐官は、4年毎国防計画見直し(QDR)と大陸弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)の概要を記した参考資料Aの要点を説明した。グレグソン米国防次官補は、米国が東北アジアで米軍力を削減するのではなく、むしろ太平洋全域で既存同盟国の軍事力を拡張しているのだと強調した。米国はグアムとアジア周辺の日本自衛隊(JSDF)の軍事力と作戦の増強を奨励する。

This will help protect sea lanes of communication from non-traditional and conventional threats. The USG seeks the expanded use of Guam for U.S. military-Japan Self Defense Force training. This joint training, combined with Japan's increased experience with humanitarian assistance and disaster response (HA/DR),such as with the JSDF deployment to Haiti, will demonstrate to the region Japan's ability to react to humanitarian aid situations and improve its national image. A permanent JSDF presence on Guam to support the training would be appropriate, ASD Gregson noted.

自衛隊の軍事力を増強は、従来存在しなかった中国大陸による驚異からシーレーン(海路)を防衛する支援になる。米国政府は、米軍と自衛隊演習用にグアムの利用を拡張しようと模索している。自衛隊のハイチ展開など、人道援助や災害援助で経験を積んできた日本を交えた合同演習によって、日本に人道問題に対応する能力があることを示せるともに、国家イメージも改善させることになる。合同演習に参加する自衛隊は、グアムに常駐すべきだとグレグソン米国防次官補は指摘した。

5. (C) JSDF Joint Staff Director for Plans and Policy MG Koichi Isobe offered that the HA/DR missions match JSDF capabilities and experience and are supported by the public and politics in Japan, as evidenced by the quick Cabinet decision on the Haiti dispatch. MOD Defense Policy DG Takamizawa noted that a critical factor for Japan's HA/DR operations will be having sufficient quick lift capability.

自衛隊の計画・政策担当・磯部晃一・統合幕僚監部長は、人道援助と災害援助の任務は自衛隊の能力と実績にかなうものであり、日本の国政および国民から支持されていることは、ハイチ派遣でのすばやい閣議決定からもわかると述べた。高見沢局長は、人道援助と災害援助任務で重要なのは十分にすばやく展開できる能力だと指摘した。

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Nuclear Posture Review
核戦略見直し
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6. (S) Basalla provided an update on the Nuclear Posture Review (NPR) using interagency-cleared talking points, noting its release has been delayed until March 1 as a result of serious and sustained U.S. leadership attention on the contents. A key theme will be the U.S. commitment to reduce the number of nuclear weapons and at the same time strengthen deterrence and extended deterrence to reduce the potential for conflict that would threaten the United States, as well as its allies and partners.

バサラは省庁間で論点を調整した核戦略見直しの最新案を示し、内容に配慮し、慎重に維持された米国政府指導の結果として、公開は3月1日まで見合わされていると指摘した。要点は、核兵器削減に向けた米国の意欲であり、同時に米国とその同盟国・友好国を脅かす紛争の可能性を低減するための、強化抑止と拡大抑止である。

The United States is looking to strengthen regional deterrence architectures and deepen security cooperation, including with Japan. A key recommendation in the NPR will be to retire the nuclear-armed, submarine-launched Tomahawk Land Attack Missile (TLAM-N), as it has been deemed redundant and would require a costly replacement program. The United States has sufficient other means to project nuclear power and the NPR will indicate investments into the U.S. strategic deterrent force.

米国は、地域抑止機構を強化し、日本を含め安全保障協力を深化させることを望んでいる。核戦略見直しで推進される要点は、核装備した潜水から発射される陸上攻撃ミサイル (TLAM-N)の削減である。これは従来から無駄だったし、経費削減案に沿ったものでもある。米国には核兵器推進以外にも十分な手段を持っているし、核戦略見直しは米国の戦略的な抑止力への投資を促すものになる。

Non-nuclear strike capabilities and BMD also play critical roles in regional deterrence and the United States seeks continued and additional cooperation with Japan in these areas. The United States is aware of Japan's interest in these issues, as indicated by Foreign Minister Kazuya Okada's letter to Secretaries Clinton and Gates, and is looking forward to continued dialogue with Japan, Basalla stated.

非核兵器による攻撃能力と大陸弾道ミサイル防衛が地域抑止に重要な役割を持つことから、米国はこの地域において継続的かつ追加的な協力を求めることになる。クリントン長官とゲーツ長官に寄せた岡田克也外務大臣の書簡で、米国は、この件について日本の国益を理解しており、日本との対話継続を心待ちにしているとバサラは述べた。

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Extended Deterrence Dialogue
拡張防衛対話
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7. (S) ASD Gregson added that the United States has been consistent and strong in its public messages, such as Deputy Secretary of State Steinberg's statement following North Korea's missile and nuclear activities in the spring of 2009, that the United Stated would take every action possible to reassure and defend its allies. The United States seeks to expand the dialogue with Japan on extended deterrence issues. This should include a GOJ visit to U.S. Strategic Command to ensure Japan understands, to the extent possible, U.S. deterrence plans and concepts, and to allow Strategic Command to hear Japan's interests and concerns, ASD Gregson stated.

2009年春の北朝鮮によるミサイル及び核化活動の後、米国は同盟国を保証し防衛するためにあらゆる活動をするとスタインバーグ国務副長官が述べたように、米国は一貫して強固な主張を公にしてきたとグレグソン米国防次官補は補足した。拡大抑止について日本との対話を広げるよう米国は望んでいる。これには、米国の抑止力と方針について日本が可能な限り了解したことを示すために、日本政府が米国戦略軍を訪問することが含まれているし、米国戦略軍には日本の国益と懸念を傾聴させると、グレグソン米国防次官補は述べた。

8. (S) MOFA DG Umemoto informed the U.S. side that Foreign Minister Okada, who was not interested in the strategic issues associated with extended deterrence when first taking office, is now eager to start a bilateral dialogue on the issue. MOFA would like to send a team to the United States during the week of February 15 to begin formal discussions. A/S Campbell stressed that there are three distinct issue sets that must be managed:

民主党政権になった時点では、拡大抑止に関連する戦略課題を理解していなかった岡田外務大臣だが、今ではこの問題について二国間対話を始めようとせっつきだしたと外務省・梅本北米局長は米国側に報告した。外務省としては、公式議論の開始に向けて、2月15日の第一週に一団を米国に派遣したがっている。キャンベル国務次官補は、解決される必要のある3点の個別問題を強調した。

1. extended deterrence, 2. nuclear history (known as the "secret agreements" in Japan), and 3. the ability of U.S. aircraft and ships to call at Japanese ports without needing to confirm or deny the presence of nuclear weapons.

(1) 拡大抑止、(2) 核兵器履歴(日本では「秘密条約」として知られている)、(3) 核兵器搭載の確認・否認を要さない空港・港湾の利用

9. (S) DG Umemoto said nuclear propulsion is not much of a concern in Japan, especially following the USS George Washington's deployment, but nuclear weapons are very much tied to the "secret agreement" issue. Japan does not want to end up like New Zealand and needs to find a path forward that allows U.S. operations and port visits to continue while also responding to questions from the Japanese public.

核持ち込みは、特にジョージワシントン空母の日本配備もあって、日本ではさほど関心の的にはならないものの、核兵器は「秘密条約」問題に強く制限されていると梅本北米局長は述べた。日本がニュージーランドのような顛末になるのは御免被りたいので、日本の国民からの疑念に対応しつつも、米国の作戦に道を開き、空港・港湾が継続使用できるようにする必要がある。

He also noted that the Japanese public has high expectations following President Obama's Prague speech, and so it will be necessary to reconcile the contradiction between working to reduce nuclear weapons and strengthening deterrence. The public also needs to understand that reducing reliance on U.S. nuclear weapons for Japan's security will mean an increased reliance on U.S. and Japanese conventional forces, DG Umemoto said. Both sides agreed on the need to draw up a terms of reference and begin the extended deterrence dialogue as soon as possible.

彼はまた、日本の国民はオバマ米大統領のプラハでの演説に強い期待を寄せていると指摘し、従って核兵器削減と抑止力強化の矛盾を調整する必要があると述べた。さらに日本の防衛上、米国の核兵器への依存を減らすと、米国と日本の通常兵力への依存が高まることになることも日本の国民に理解させる必要があるとも梅本局長は述べた。双方とも、基準となる条件の作成と、できるだけ早期の拡大抑止についての対話の開始に同意した。

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50th Anniversary: Regional Security Assessment
安保50周年記念:地域安全保障評価
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10. (C) DG Umemoto proposed that a key bilateral activity associated with the 50th anniversary of the Treaty of Mutual Cooperation and Security Treaty should be a Deputy Director General/Deputy Assistant Secretary-led assessment of the security environment in East Asia, with a specific initial focus on China. The work should kick-off in March.

日米安保条約締結50周年記念に関わる双方の活動の要点は、東アジア、特に中国を筆頭においた安全保障状況についての、国務次官補及び米国防次官補による評価であると梅本局長は提案した。作業は3月には開始すべきだ。

Both sides agreed on the benefit of including experts, which should come from the interagency policy community, including the National Security Council and the White House, as well as the armed forces and intelligence community. A/S Campbell recommended State and MOFA lead this assessment.

双方とも専門家を招く利点に同意し、省庁間の政治勢力から選べばよいとした。これには、国家安全保障会議やホワイトハウスが含まれ、同様に軍隊や諜報機関も含まれる。キャンベル国務次官補は、こうした評価は政府や外務省に任せてよいとした。

MOD DG Takamizawa offered that the assessment should incorporate previous dialogues, such as the bilateral airpower dialogue. The results could lead to renewed discussions on Alliance roles, missions and capabilities, and also inform Japan's revision of the National Defense Program Guidelines and drafting of the next 5-year Mid-Term Defense Plan, DG Takamizawa said.

自衛隊・高見沢局長は、空軍の相互対話のように、同盟の評価には従来からの対話を組み入れるべきだと述べた。そうすれば、同盟の役割、任務、能力といった議論が刷新され、日本の防衛計画大綱見直しも衆知され、次の5カ年中期防衛計画を描くことにもなると高見沢局長は述べた。

11. (C) A/S Campbell stated that, given North Korea's activities, China's growing military, and increased non-traditional threats, including extremism, piracy and climate change, the United States and Japan face the most challenging security environment in the history of the Alliance.

キャンベル国務次官補は、北朝鮮の動向、中国の軍拡、さらに過激な原理主義、海賊、気候変動なども含めた従来にない脅威の拡大を取り上げ、同盟の歴史においてもっとも課題の多い安全保障の状況に米国と日本が直面していると述べた。

However, the messages to the public regarding bilateral dialogues often gloss over this reality. DG Umemoto agreed with A/S Campbell's statement that this needs to change with an assessment of the regional security picture so that the public better understands threats to Japan. He also said FM Okada wants to discuss the security environment with his counterparts as well and suggested this topic could be part of a future 2 2 meeting.

両国の対話にもかかわらず、国民に向けとなると、こうした現実をしばしば取り繕って伝えてきた。梅本局長は、キャンベル国務次官補のこの発言に同意し、地域安全保障構想の評価を変更する必要があり、そうすることで日本に向けられた驚異を国民もいっそう理解できるようになるだろうとした。彼はまた、岡田外務大臣も安全保障の状況について米国側の適切な担当者と議論したがっていると述べ、将来の2プラス2会談でこの話題を取り上げるかもしれないと示唆した。

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50th Anniversary: Cyber-security
安保50周年記念:サイバー攻撃への防衛
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12. (S) DG Umemoto said cooperation on cyber-security would be another activity to kick off during the 50th Anniversary year. He expressed appreciation for the U.S. offer to continue discussions on cyber-security issues, including those related to China.

安保50周年記念に併せた活動として、サイバー攻撃への防衛への協力が開始されると梅本局長は語った。中国に関連するサイバー攻撃を含め、サイバー攻撃への防衛について米国と議論できることに梅本局長は謝意を表した。

ASD Gregson noted the importance of getting real experts together, given the highly technical nature of the subject. DG Umemoto suggested having a joint cyber exercise at some point. ASD Gregson agreed, noting that the United States was setting up a military command to defend and combat threats to networks. DG Takamizawa said Japan was not as far along as the United States and has had a hard time assigning responsibility to the right agency, which has hindered Japan's approach to the issue.

グレグソン米国防次官補は、この問題は高度な技術問題だとして、実力ある技術者を集める重要性を指摘した。梅本局長は、時期がきたらサイバー攻撃に対する合同演習を実施しようと提案した。グレグソン米国防次官補も同意し、米国はネットワークを守りその脅威と戦うための軍事機構を設立しつつあると指摘した。日本は米国のようにはいかず、適切な機関に責務を与えるのにも苦労し、この問題への対処がうまくいかなかったと高見沢局長は語った。

A/S Campbell replied that USG coordination on cyber security was not as developed as was believed. He suggested, and all agreed, that the best path forward for progress would be a DOD-MOD-led dialogue. DG Umemoto said Japan is also ready to "upgrade" the until now classified Bilateral Information Security Task Force (BISTF) into a public working group on information security that would build on BISTF's work to date.

米国政府が手を加えても、サイバー攻撃への防衛は想定されていたほどには発展しなかったとキャンベル国務次官補は答えた。彼はまた、米軍と自衛隊が対話することでこの問題は最善の道を取るだると提案し、同意した。日本側では現状、相互情報安全委員会(BISTF)とされる会議を、期日までに公的な情報保全作業会に格上げする用意があると梅本局長は語った。

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Wisemen's Group/Mini-SSC
賢人会と日米安全保障小委員会の分科会
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13. (C) A/S Campbell reiterated the USG,s interest in forming a bilateral & wisemen,s group8 for shepherding events related to the 50th anniversary of the security treaty, an idea originally suggested by the Japanese Embassy in Washington. DG Umemoto pointed out that FM Okada remains firmly opposed to creating a formal group. As a practical matter, the DPJ government is not able to identify sufficient numbers of security experts outside the government with no ties to the Liberal Democratic Party (LDP). Although MOFA had supported the idea at one point, the change in government and the current political environment have rendered it unfeasible, DG Umemoto said.

日米安保50周年記念関連行事の実施に向けた、両国の賢人会を形成に米政府が関心を持っているとキャンベル国務次官補は繰り返し語った。この着想はワシントンの日本大使館が提案したものである。梅本局長は、岡田外務大臣が公式な会の形成には頑なに反対したままだと指摘した。現実問題として、民主党政府では、自民党の支援なしに政府関係者以外で安全保障専門家の頭数を揃えることもできない。梅本局長は、外務省としてもある程度まで助言したが、政権交代と現在の政局では実現不可能となったと述べた。

14. (C) DG Umemoto also called for discussions at the upcoming mini-SSC on bilateral planning and each of the sub-elements. While both sides have achieved considerable progress in moving forward on individual sub-elements, senior Japanese political leaders could not connect them together well in the overall bilateral planning construct, Umemoto noted.

両国の計画と各個別問題について今後の分科会での議論を梅本局長は求めた。双方が個別の問題で前進し相応の進展を達成したものの、両国の計画策定の全体として見れば、日本のお偉方の政治家はこの問題に着いて来れられなかったと梅本は指摘した。

ASD Gregson responded that he supports discussing bilateral planning at the mini-SSC, and suggested that both sides explore and discuss further some of the key takeaways from the recent Keen Edge bilateral exercise. OSD Director for Japan Basalla suggested discussing bilateral training in the mini-SSC, emphasizing that training is an issue that crosses over both strategic and operational issues.

グレグソン米国防次官補は、分科会での両国計画議論を支援すると応答し、最新で効率よく実施された双方に議論による論点について、双方はより深く検討・するように示唆した。バサラ駐日米国大使補佐官は、分科会では二国間訓練を議論するよう提案し、戦略かつ作戦的な問題の両面を扱う訓練を強調した。

15. (C) A/S Campbell suggested that both sides try to schedule another SSC in March, either in Washington or in Hawaii, with perhaps a half-day set aside for a trilateral meeting with India. DG Umemoto expressed support for the idea, noting that the GOJ has been seeking trilateral discussions with India and bilateral discussions with China.

キャンベル国務次官補は、次回の安全保障小委員会をワシントンまたはハワイで3月に開催するよう提案した。おそらくその半日分はインドについての三者会議となるだろう。梅本局長は同意し、日本政府はインドとは三者会議を、中国とは二国間会議を求めてきたと指摘した。

A/S Campbell noted difficulties in pursuing a bilateral summit between the President and Prime Minister Hatoyama in April, adding, however, that considerable interest exists for a Security Consultative Committee (SCC) &2 28 meeting. Scheduling an SCC meeting sometime after the GOJ,s decision on the Futenma Replacement Facility (FRF) in May would be a good opportunity to announce the direction to be taken by the U.S.-Japan Alliance, as well as to celebrate the hard work of both sides on FRF.

キャンベル国務次官補は、米国大統領と鳩山首相との首脳会談を4月に実施することは困難であると指摘したものの、安全保障小委員会と2.28会議には大きな関心を寄せているとした。普天間移設施設について日本政府が決断する5月以降に予定されている安全保障小委員会は、日米同盟の方向性を公表するよい機会となるだろうし、双方にとって普天間移設施設という難関を越えた祝福の機会にもなるだろう。

An SCC prior to a resolution on FRF, however, could be difficult. DGs Umemoto and Takamizawa noted difficulties in following such a timeline, as the Diet would be in session in June and Defense Minister Kitazawa would also need to focus on campaigning in the July Upper House election.

そうはいっても、普天間移設施設の解決の前に安全保障小委員会を開催することは難しいだろう。梅本局長も高見沢もその日程は難しいと指摘した。国会は6月の会期中だし、北沢防衛大臣は7月の参院選に注力する必要がある。

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50th Anniversary: End State
安保50周年記念:達成
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16. (C) A/S Campbell asked, given the proposed bilateral activities that include the extended deterrence dialogue, regional security assessment and cyber-security cooperation, what the GOJ sees as the end state for the 50th anniversary of the Security Treaty. DG Umemoto said FM Okada sees the process starting with the current discussions on planning for the 50th anniversary commemoration, followed by the abovementioned dialogues, and culminating in a joint declaration that would articulate the Alliance in the 21st Century.

拡大抑止の対話、地域安全評価及びサイバー攻撃防衛の協力を含め、双方の活動を提案した上で、いったい何をもって日本政府は日米安保条約50周年記念の達成とするのだろうかとキャンベル国務次官補は問いかけた。梅本局長は、日米安保条約50年記念計画の対話が現在開始され、一連の対話を経て、21世紀に向けた同盟の節目となる共同宣言で頂点に達するプロセスをもって岡田外務大臣は達成と見ると語った。

A/S Campbell noted that a joint declaration could be possible, if the Futenma Replacement Facility issue is solved in a timely fashion. FM Okada has the same view, DG Umemoto responded. A/S Campbell noted that President Obama will stop in Guam in March on his way to Australia and Indonesia. The stop should signal to Japan the importance of Guam to Alliance transformation and the realignment of U.S. forces, particularly the FRF plan. A/S Campbell also noted the need to begin laying the ground work for President Obama's trip to Japan in November.

普天間移設施設が時期よく迅速に解決されるなら、共同宣言も可能ではあるだろうとキャンベル国務次官補は指摘した。梅本局長は、岡田外務大臣も同意見だと答えた。オバマ米大統領は3月オーストラリアとインドネシアに訪問する際にグアムに立ち寄るとキャンベル国務次官補は指摘した。グアムへ大統領が立ち寄ることは、同盟改変、米軍再編、特に普天間移設施設案におけるグアムの重要性を日本に示唆する目安になるだろう。また、11月のオバマ大統領訪日の地ならし開始が必要だとも指摘した。

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Host Nation Support
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17. (C) DG Umemoto called for both sides to begin the formal process for conducting a comprehensive review of Host Nation Support (HNS) as agreed in the current Special Measures Agreement (SMA) on Host Nation Support (HNS) for U.S. forces. He stressed that, from the GOJ,s perspective, comprehensive review does not necessarily equate to drastic reductions in HNS, but rather, managing HNS funds more efficiently by examining all areas of use to demonstrate to the Japanese public that HNS contributes to the defense of Japan.

梅本局長は、現行の特別措置協定(SMA)の合意として、米軍に対する接受国支援(HNS)の包括見直し実施の公式手順を開始するよう両国に求めた。日本政府の見方では、包括的な見直しで接受国支援が大幅に削減されることはないが、接受国支援がどれだけ日本の防衛に寄与しているか、全分野の査定が日本国民に示されることで、接受国支援の基金運用はより効率的に管理されることになると彼は強調した。

The focus, DG Umemoto stated, should be on more efficient use of HNS or on slight reductions with greater results. ASD Gregson cautioned against portraying the comprehensive review as &slight reductions,8 as some Washington observers could misinterpret Japanese calls for &slight reductions8 as calls for &less defense.8 He also stressed that the goal for both governments should be to attain the greatest value out of HNS, not to minimize cost.

論点は、接受国支援の効率性かまたは、多くの結果をもたらす僅かな縮小であるべきだと梅本局長は述べた。グレグソン米国防次官補は、「僅かな削減」とする日本の要求が「防衛の削減」要求だと米政府関係者が誤解しされないように、「僅かな削減」という包括的見直しの概要について警告した。両政府の目的は、負担を最小にすることではなく、接受国支援から最大限の価値を得ることだと彼は強調した。

18. (C) A/S Campbell sought DG Umemoto,s views on the idea of extending current levels of HNS by one year and delaying negotiations in order to avoid raising yet another contentious bilateral issue. He pointed out that precedent for such extensions exist, as the two goverments had done so on two other occasions. DG Umemoto rejected the idea, stressing that simple continuation of current levels of HNS would be too controversial.

キャンベル国務次官補は、接受国支援の現行水準を毎年拡張し、これを引き続き二国間問題として殊更に取り上げるのを避けるため、交渉を後回しにしてはどうかと梅本局長に意見を求めた。彼は、こうした拡張ついて、別の機会に二国間政府で実施した先例があると指摘した。梅本局長は、接受国支援の現行水準を単に継続するというのは煩わしい議論になると強調してその考えを拒絶した。

He underscored that, precedent notwithstanding, the new government would not support a plan in which both sides did nothing to address perceived inefficiencies in HNS spending. DG Umemoto noted, however, that immediate changes to current levels of HNS are not necessary, given both sides, respective budget cycles. A five-year agreement, for example, that demonstrates changes either at the end of the five-year period or sometime earlier would allow for continuation of current HNS levels for a short period, DG Umemoto said.

彼は、先例があるとしても、指摘されている接受国支援支出の非効率性に双方がなにもしない支援プランでは、新政府は支援しないだろうと強調した。しかし、梅本局長は、双方それぞれの予算循環で接受国支援の現行水準を早急に変更する必要はないとも指摘した。例えば、5年期間の終了かあるいは早期の時点で変更するとした5年協定によって、現行の接受国支援は、短期間ではあるが継続できると梅本局長は述べた。

19. (C) A/S Campbell stressed that the contents of HNS discussions ought to be kept out of the public. He also noted that USG would integrate Assistant Secretary for Political-Military Affairs Andrew Shapiro and his bureau more deeply in the HNS negotiations, a bureaucratic change in the USG,s approach to HNS.

キャンベル国務次官補は、接受国支援内容についての議論は国民に知らせないようにと強調した。また彼は、接受国支援内容について米国の機構的な変化として、アンドリュー・シャピロ米国務次官補とその事務局が接受国支援交渉により深く介入してくるだろうと語った。

The USG wants to pursue periodic senior-level talks led by the DOS Office of the Senior Advisor for Security Negotiations and Agreements to review progress made at the Director-level SMA negotiations in Tokyo, as well as to address broader, strategic issues. ASD Gregson suggested including renewable energy in the HNS discussions, as utilities costs present a considerable portion of HNS. He offered to send to Japan a DOD briefing team to engage in discreet information exchanges on some of the energy efficiency projects being pursued by DOD, including the Office of Naval Research.

米国政府は、国境や戦略課題などに言及するのと同様、安全保障交渉・条約の上級顧問が局長レベルの在東京特別措置協定交渉の進展を見直しするために、国務省主導の高官者会議を定期的に実施するよう望んでいる。グレグソン米国防次官補は、公共料金は接受国支援の大きな割合を占めるので、接受国支援の議論では再生利用可能エネルギーも含めるよう提案した。彼は、海軍研究事務所を含め、国防総省が求めるエネルギー効率化計画の一部と情報交換をするために、国防総省の概要作業員を日本に派遣しようと提案した。

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Futenma Replacement Facility
普天間移設施設
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20. (C) DG Umemoto underscored that the &entire8 GOJ is committed to finding a solution on FRF by the end of May, as Prime Minister Hatoyama and other senior officials have commented publicly. He noted that the ruling party,s consultations are progressing and stressed that the possible alternatives do not exclude the current plans. He assured the U.S. delegation that any alternative put forth by the GOJ must meet U.S. military requirements and will, therefore, require prior consultation with the USG.

鳩山首相とその他の高官が国民に述べているように、日本政府は普天間移設施設を5月末までに解決すると梅本局長は強調した。彼は与党による打診が進行中であると指摘し、可能な案として現行案も排除されていないと強調した。日本政府が推進する選択肢はすべて米軍要件に合致させ、それゆえ米政府への打診を事前に求めると彼は米国代表団に確約した。

Referring to the results of the Nago City mayoral elections (won by an anti-FRF candidate), DG Umemoto pointed out that decisions on FRF will be made by the GOJ, not local communities. He also asked that the USG support the proposed visit to Guam by members of the Coalition Working Group, with whatever conditions or restrictions it wants to impose on them.

名護市市長選挙が普天間移設施設反対者の勝利に終わったことについて、梅本局長は、普天間移設施設の決定は、地域社会ではなく日本政府が下すものだと指摘した。彼はまた、連立作業部会が条件や制限について何を押しつけたいとしても、会員によるグアム訪問の要請を米国政府が支援するよう求めた。

The members want to examine the current conditions in Guam to inform their own deliberations. While the GOJ understands U.S. concerns about possible ulterior motives of Social Democratic Party (SDP) and People,s New Party (PNP) members of the working group, MOFA would like the USG to agree to support a multiparty delegation in principle, DG Umemoto said.

会員は、彼らの審議に情報を与えるためにグアムの現状を調査したいと望んでいる。作業部会の社民党員や国民新党員の腹の内に米国が関心を持っていることは日本政府も理解しているが、原則として超党派支援に米国が同意することを外務省望むと梅本局長は語った。

21. (C) A/S Campbell said the USG would agree to support the visit in principle. He pointed out that the USG would continue to maintain that the current FRF plan remains the best approach, that the USG is prepared to engage on the issue with the GOJ, that it seeks expeditious results, and that any decisions on FRF must be made bilaterally.

キャンベル国務次官補は、米国政府は原則としてその訪問の支援に同意すると語った。米政府としては、依然現行の普天間移設施設案が最善であると見なしており、この問題について日本政府と関わる用意があるが、迅速な結果が求められており、普天間移設施設は双方の決定に委ねられねばならないと指摘した。

A/S Campbell also noted that the U.S. side would respond strongly if the Japanese side were to go public with unilateral FRF alternative proposals before consulting with the USG. DG Umemoto pointed out that the Realignment Roadmap is not limited to FRF and urged both sides to make progress on other areas of realignment. ASD Gregson responded that while the Roadmap goes beyond Futenma, the politicization of FRF is bleeding into other realignment projects, particularly Iwakuni.

キャンベル国務次官補は、日本側が米国政府と相談の前に一方的に普天間移設施設の選択案を国民に提示することがあれば、米国側は強く反応するだろうと指摘した。梅本局長は、米軍再編手順は普天間移設施設に限定されるものではないと指摘し、双方は米軍再編の他の部分も前進させるよう促した。グレグソン米国防次官補は、普天間問題が手順を逸脱している間に、普天間移設施設の政治問題化が、特に岩国基地など他の再編問題に悪影響を及ぼしていると応答した。

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F-X
次期主力戦闘機
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22. (S) DG Takamizawa reported that MOD had held the first of four internal meetings to bring the Defense Minister and Vice Ministers up to date on the F-X (Japan's next fighter aircraft) procurement. The remaining meetings will focus on why the F-X is necessary, the security environment, candidate aircraft (F-35 Joint Strike Fighter, F/A-18E/F, F-15X and the Eurofighter) and procurement timelines for each aircraft.

高見沢局長は、自衛隊がF-X(日本の次期戦闘機)の調達について、防衛大臣と事務次官に現状を伝えるための4つの内部会議の初回を持ったと報告した。後の会議では、F-Xの必要性、安全保障環境、候補機(次世代主力戦闘機 F-35、 F/A-18E/F、 F-15X及びユーロファイター)及び各機調達スケジュールがテーマとなる。

Meetings will be held every other week until end of March or early April. MOD is planning to reach out to other countries that have the candidate aircraft to determine their rationale for procurement. MOD will be looking at F-X procurement not just from the perspective of replacing the aging F-4 squadrons, but also with a view to replacing Japan's F-15s and countering the growing multilayered China threat. This could lead to fewer resources for the F-X and more for other assets, such as submarines for instance, depending on Japan's assessment of the threat.

会議は3月末から4月初旬まで隔週で開催されることになる。自衛隊は、調達理由を決めるために候補機を持つ各国に接触する予定である。自衛隊がF-X調達を希望しているのは、老朽化したF-4中隊の代替見通しからだけではなく、日本産F-15を置き換えて多面的に軍拡中の中国脅威に立ち向かうためである。これによって、F-Xが少なくても、日本への脅威の評価に合わせて、例えば潜水艦などの軍備が増強できる。。

Domestic industrial participation will also be a factor, as Japan's indigenous F-2 line will soon be shut down, leaving Japan with no domestic fighter production program. MOD's assessment is that, if the F-35 is selected, there would be no room for Japanese industrial participation. Moreover, MOD would also not be able to purchase indigenously produced missiles for the F-35. DG Takamizawa assessed that MOD will request funding for the F-X in the JFY2011 budget, although perhaps without specifying a platform.

国産のF-2製造ラインが早晩閉鎖され、日本は国産の戦闘機製造ができなくなるので、国内産業参加が選択の要素になる。F-35が選択されると、日本製造業の参加の余地はないというのが自衛隊の評価になる。加えて、自衛隊は国産ミサイルF-35の購入もできなくなるだろう。高見沢局長は、プラットフォームの特定はしないが、2011年予算でF-Xの出費を自衛隊は要求するだろうと査定した。

23. (C) A/S Campbell affirmed that the United States is committed to providing as much information as possible so Japan can make the right decision. DG Takamizawa said getting information has been a difficult and frustrating process, while noting the information security issues associated with the Joint Strike Fighter. MOD has accepted that it will not be able to receive radar cross section (RCS) data on the F-35 and will try to determine why other countries decided to purchase the platform prior to receiving RCS data.

キャンベル国務次官補は、日本が正しい決定をするように、米国は可能な限り多くの情報を提供することを約束すると断言した。高見沢局長は、次世代主力戦闘機関連の安全情報に言及し、情報収集が困難でいらだったと語った。F-35のレーダー断面(RCS)データを受け取ることができず、RCSデータの受領前に他国がプラットフォーム購入決定ができる理由を探ろうとしたと自衛隊は認めた。

DG Takamizawa expressed concern about delivery timelines, indicating he had heard rumors that there were two to three-year delays. ASD Gregson said it is important to dispel rumors and have people with accurate information provide Japan with an update on the current status.

高見沢局長は、納期に2年から3年の遅れがあるとの噂を聞きつけ、納期に懸念を表明した。グレグソン米国防次官補は噂を打ち消し、正確な情報を持つ人々が日本に最新情報を伝達することが重要だと語った。

24. (U) Meeting participants:
会合参加者

State Department
----------------
Assistant Secretary of State for East Asian and Pacific Affairs Kurt Campbell Embassy DCM James Zumwalt Robert Luke, Embassy Political Minister Counselor Kevin Maher, EAP/J Director Joseph Young, Embassy Political-Military Unit Chief Nirav Patel, EAP Special Assistant Mark Tesone, EAP Special Assistant Simon Lee, Embassy Political Military Officer Dan Cintron, Embassy Political Military Officer

Defense Department
------------------
Assistant Secretary of Defense for Asian and Pacific Security Affairs Wallace "Chip" Gregson Brig Gen William Uhle, PACOM Deputy J3 Suzanne Basalla, OSD Director for Japan COL Jeffrey Wiltse, USFJ J5 LCDR John Bradford, OSD Country Director for Japan

Ministry of Foreign Affairs
---------------------------
North American Director General Kazuyoshi Umemoto North American Deputy Director General Koji Tomita Embassy of Japan Minister Akiba Japan-U.S. Security Treaty Division Director Funakoshi Senior Japan-U.S. Security Coordinator Arai Japan-U.S. Security Treaty Div. Dep. Director Okazaki

Ministry of Defense
-------------------
Defense Policy Director General Nobushige Takamizawa Japan Joint Staff Policy and Plans Director MG Isobe Defense Policy Deputy Director General Tetsuro Kuroe Japan-U.S. Defense Cooperation Div. Director Serizawa Japan-U.S. Defense Cooperation Dep. Director Araki

25. (U) A/S Campbell's and ASD Gregson's staff cleared this cable. ROOS

DESTINATION
VZCZCXRO6124
OO RUEHFK RUEHKSO RUEHNH
DE RUEHKO #0228/01 0350900
ZNY SSSSS ZZH
O 040900Z FEB 10
FM AMEMBASSY TOKYO
TO RUEKJCS/SECDEF WASHDC IMMEDIATE
RUEHC/SECSTATE WASHDC IMMEDIATE 9205
INFO RUEHUL/AMEMBASSY SEOUL PRIORITY 9631
RUEHBJ/AMEMBASSY BEIJING PRIORITY 2950
RUEHMO/AMEMBASSY MOSCOW PRIORITY 3169
RUEHFK/AMCONSUL FUKUOKA PRIORITY 8678
RUEHNH/AMCONSUL NAHA PRIORITY 1019
RUEHOK/AMCONSUL OSAKA KOBE PRIORITY 2494
RUEHKSO/AMCONSUL SAPPORO PRIORITY 9174
RUEHIN/AIT TAIPEI PRIORITY 7569
RUEKJCS/CJCS WASHINGTON DC PRIORITY
RUEAIIA/CIA WASHDC PRIORITY
RUALSFJ/COMUSJAPAN YOKOTA AB JA PRIORITY
RHEFDIA/DIA WASHINGTON DC PRIORITY
RHHMUNA/HQ USPACOM HONOLULU HI PRIORITY
RUEKJCS/JOINT STAFF WASHINGTON DC PRIORITY
RHEHAAA/NSC WASHDC PRIORITY
RUEHKO/USDAO TOKYO JA PRIORITY
RHMFISS/USFJ PRIORITY

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2011.05.12

2010年1月26日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2010年1月26日の公電(参照)を試訳してみた。まあ、ご参考までに。

DATE 2010-01-26 08:51:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION CONFIDENTIAL
C O N F I D E N T I A L TOKYO 000164
SIPDIS
E.O. 12958: DECL: 05/26/2020 TAGS: PREL, PGOV, MARR, JA SUBJECT: HATOYAMA CONFIDANTE ON FUTENMA, NAGO ELECTION
名護市長選でも鳩山は普天間問題に自信を持つ

REF: TOKYO 151
Classified By: Deputy Chief of Mission James P. Zumwalt per 1.4 (b/d)

1. (C) Summary: The Nago election result will not be a decisive factor in resolving the Futenma issue and a variant of the current plan remains on the table, Deputy Chief Cabinet Secretary and PM confidante Matsuno told Embassy Tokyo January 26. Hinting at current Kantei (Prime Minister's Office) thinking, Matsuno mused whether a move to an existing facility on Okinawa, such as within or adjacent to Camp Schwab, or in the Northern Training Area, would be acceptable to the USG if the new plan were operationally sound and could be implemented as quickly as the currently envisioned plan.

概要。名護市長選の結果は普天間問題の解決にはさほど決定的な要因にならず、現行案の修正案は検討対象になると、首相が全幅の信頼を置く松野官房副長官は東京の米大使館に1月26日、語った。官邸側の現在の思惑を仄めかしつつ、松野は、新案が作戦上問題なく現行案と同程度に急いで実現できるなら、キャンプシュワブ隣接地内または北部訓練場など既存の在沖施設内への移転受け入れは米国として可能だろうかと探りを入れてきた。

He emphasized that the Camp Schwab landfill option is "dead." The Kantei quietly pulled for the pro-base candidate in the Nago election "because this would have preserved more options for us," Matsuno revealed, but added that Mayor-elect Inamine might accept a modified version of the current plan. End Summary.

彼はキャンプシュワブ沖の現行案は「死んでいる」と強調した。名護市長選で、注目されないようにではあるが官邸が基地推進派候補を応援していたのは、「推進派候補擁立で民主党政権の選択肢が増えるからだ」と松根は本音を漏らし、市長に選出された稲嶺も現行案に手を入れれば受け入れる可能性があると言い足した。

2. (C) Deputy Chief Cabinet Secretary and PM Hatoyama confidante Yorihisa Matsuno told Political M/C and Pol Deputy January 26 that the PM's resolve to settle the Futenma issue by May remains "unshaken" by the results of the Nago mayoral election (reftel). While the results to some extent reflect the "will" of the citizens of Nago, the vote was nearly evenly split between the candidate who opposes the Futenma move to Henoko (52%) and the incumbent who supports it (47%). "Even the citizens of Nago aren't unified on this issue," Matsuno observed.

官房副長官及び鳩山が全幅の信頼を置く松野頼久は1月26日、政務担当公使と政務担当次席に対して、5月までに普天間問題を解決するとの首相の決意は、名護市長選(参照あり)の結果でも「揺るがない」と語った。選挙結果にはある程度まで名護市民の「意志」が反映されているが、普天間の辺野古移設に反対する候補(52%)に対して支持派の現職(47%)は事実上拮抗している。「名護市民ですらこの問題でまとまっているわけではない」と松野は述べた。

3. (C) Japan's national security will not be decided by local governments, Matsuno continued. The election result will thus not be a critical factor in the PM's ultimate decision, and a variant of the current Futenma plan remains one option on the table. "PM Hatoyama continues to have a 'free hand,'" Matsuno said several times.

日本の国家安全保障は地方自治体が決めるものではないだろうと松野は言葉を継いだ。従って、この選挙結果は首相の最終判断に決定的な影響をもたらすものではなく、現行の普天間案に手を入れた案はいまだ検討事項となる。「鳩山首相には依然『自由裁量』があると松野はなんども述べた。

In response to Pol M/C's statement that the current Futenma plan remains the best and most viable option, Matsuno wondered aloud whether a new plan that had no operational downsides and could be implemented as quickly as the current Futenma option would be acceptable to the USG.

現行の普天間案が最善かつ最も実現可能な選択だとする政務担当公使の発言に答えて、松野は新案が作戦の不都合にならず、現行の普天間案と同程度に急いで実現できるなら米国として可能だろうかと疑念を呈した。

Hinting at current Kantei thinking, Matsuno mused that perhaps the Northern Training Area or inside/adjacent to Camp Schwab would be suitable options (Note: presumably, "adjacent to" refers to the Central Training Area), noting that these could be "quick" choices because they don't involve moving people or tearing down houses. Matsuno stressed that the Camp Schwab landfill option was "dead," citing the likelihood of protests in and around the construction area.

官邸側の現在の思惑を仄めかしつつ、松野は、住民の移動や家屋の損壊もないことから「すばやい」選択であるとして、北部訓練場かあるいはキャンプシュワブ内または隣接地(隣接というのは中部訓練場のつもりなのだろう)という選択がよいのではないかとつぶやいた。建設地内や周辺の反対者が予想されると言及し、キャンプシュワブ沖案は「死んでいる」のだと松野は強調した。

4. (C) PM Hatoyama and the Okinawa Working Group will have to consider "for form's sake" Futenma options outside of Okinawa, but the only realistic options are to move Futenma to Camp Schwab or another "existing facility," Matsuno continued. Even though Mayor-elect Inamine has expressed his opposition to the current Futenma plan, he might accept a modified version.

鳩山と沖縄作業部会は、沖縄県外という普天間移設選択肢を「体面上は」考慮しなければならないが、現実的な唯一の選択肢は、普天間飛行場をキャンプシュワブかその他の既存米軍施設に移設することだと松野は言葉を継いだ。新選出の稲嶺は現行の普天間案に反対してきたが、手を入れた案は受け入れる可能性がある。

In truth, Matsuno and the PM's office had been quietly pulling for the incumbent's victory in Nago, "as this would have preserved more options for us," Matsuno said. To his knowledge, no senior government official supported Inamine's campaign. ROOS

実際のところ、松野と首相官邸は、「推進派候補擁立で民主党政権の選択肢が増えるからだ」として、注目されないようにではあるが名護では現職を応援してきたと松野は言った。彼が知る限り、稲嶺の選挙応援をしている政府高官は居なかった。ルース記す。

DESTINATION
VZCZCXRO7822
OO RUEHFK RUEHKSO RUEHNH
DE RUEHKO #0164 0260851
ZNY CCCCC ZZH
O 260851Z JAN 10
FM AMEMBASSY TOKYO
TO RUEHC/SECSTATE WASHDC IMMEDIATE 8969
INFO RUEHBJ/AMEMBASSY BEIJING IMMEDIATE 2805
RUEHUL/AMEMBASSY SEOUL IMMEDIATE 9477
RUEHKSO/AMCONSUL SAPPORO IMMEDIATE 8997
RUEHFK/AMCONSUL FUKUOKA IMMEDIATE 8501
RUEHOK/AMCONSUL OSAKA KOBE IMMEDIATE 2317
RUEHNH/AMCONSUL NAHA IMMEDIATE 0842
RHMFISS/USFJ IMMEDIATE
RHHMUNA/HQ USPACOM HONOLULU HI IMMEDIATE
RUEAIIA/CIA WASHDC IMMEDIATE
RHEHAAA/NSC WASHDC IMMEDIATE

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2011.05.11

2009年12月9日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2009年12月9日の公電(参照)を試訳してみた。まあ、ご参考までに。

DATE 2009-12-09 08:56:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION CONFIDENTIAL
C O N F I D E N T I A L SECTION 01 OF 03 TOKYO 002815
SIPDIS
E.O. 12958: DECL: 12/09/2019 TAGS: PREL, MARR, PGOV, JA SUBJECT: FRF: SENIOR DPJ LEADER SAYS "NO DEAL" THIS YEAR
今年の取引はなしと民主党有力者は語る

Classified By: DCM James P. Zumwalt per 1.4 (b/d)

1. (C) Summary: DPJ Diet Affairs Chair Kenji Yamaoka (a close confidante of DPJ Secretary General Ozawa) told Embassy Tokyo December 8 that the Futenma Replacement Facility (FRF) decision was "all about managing the Diet." Until two weeks ago, he thought the Japanese government would agree to an FRF deal by the end of the year. However the PM moved too slowly and now a decision within the year is no longer possible due to coalition partner intransigence.

概要: 民主党国会対策委員長・山岡賢次(民主党幹事長小沢の盟友)は12月8日、普天間移設施設(FRF)の決定は「すべて政局による」と在東京米大使館に告げた。彼は、2週間前までは、日本政府が年末までに普天間移設施設という取引に同意するであろうと考えていた。しかし連立党に協調性がないことで、首相の決断が遅すぎ、もはや不可能になっている。

He said that after the Upper House elections next summer, the Socialist Democratic Party (SDP) and People's New Party (PNP) would no longer be needed in the coalition, and at that point the government would implement the deal. Yamaoka advised the United States to be patient. In the meantime, he promised he would pass the necessary FRF-related budget items so that Japan could reserve its position on realignment.

彼は、来年の参院戦後には社民党と国民新党は連立に不要になり、その時点で普天間移設施設という取引を実現するだろうと述べた。米国は辛抱してくれ、と山岡は助言した。その間に、米軍再編の件で日本のメンツが立つよう、普天間移設施設関連の予算は通過させるからと彼は約束した。

The DCM pressed for an expeditious decision, but Yamaoka dismissed our arguments on the need to move forward this year saying that the decision had already been made and "only FM Okada" was still arguing for an agreement this year.

米国主席公使は迅速な決断を迫ったが、山岡は、決断はすでにできているが、「外務大臣の岡田だけ」が年内決断についてごちゃごちゃ言っているとして、米国による年内進展の議論をはねのけた。

He acknowledged that this would present difficulties for PM Hatoyama's relationship with President Obama and criticized the PM as a "poor communicator." When asked about Okinawa politics, Yamaoka said that Governor Nakaima would go ahead and sign the Environmental Impact Assessment (EIA), but that he could not win the governor's race next year. In summer 2010, the Japanese Government would move forward with the FRF plan, and the new Okinawa governor would have to accept the "done deal" of the realignment package. End Summary.

山岡は、普天間移設施設問題でオバマ大統領と鳩山首相の関係がうまくいかなくなることを認め、鳩山を「話が通じない人」とこき下ろした。沖縄の政治状況が問われたとき山岡は、仲井真弘多知事は環境影響評価調査(EIA)を推進し署名するだろうが、来年の知事選には勝てないだろうと言った。2010年の夏になれば、日本政府も普天間移設施設案を前進させることができるし、沖縄県の新知事も米軍再編計画について「処理済み事案」と認めざるを得なくなるだろうとも言った。

2. (C) In a December 8 meeting with DCM Zumwalt and Poloff, DPJ Diet Affairs Committee Chairman Yamaoka frankly shared his views on Japan's political situation and issues surrounding FRF.

12月8日のズムワルト首席公使及び政務担当者の会合で、民主党・山岡国対委員長は自身の政局観と普天間移設施設関連の持論を気さくに開陳した。

Yamaoka explained that there were precedents that PMs had to resign in order to pass the budget. If the DPJ's coalition partners left the government over the FRF issue, then the DPJ would lose its Upper House majority and be unable to pass budget-related bills; Hatoyama might thus have to resign. Hatoyama's political donation problem is likely to reach a critical point from the end of this year to early next year, and Hatoyama is likely to be attacked in the ordinary Diet session.

山岡は、予算案を国会通過させるために首相が辞任に追い込まれる前例があると説明した。普天間移設施設問題で民主党の連立政権から連立党が離脱するようになれば、民主党は衆院で多数を失い、予算関連法案は国会通過しない。つまり、鳩山は辞任に追い込まれるというわけだ。鳩山の政治資金問題は今年の年末から来年の年初に危機的状況になる可能性があり、鳩山は通常国会で攻撃を受けるだろう。

As the Diet Affairs Committee Chair, Yamaoka said he would try to delay the opening of the session as long as possible in order to deprive the LDP of time to attack Hatoyama's scandals. That means deliberation of key Diet bills, including the supplementary budget and regular budget, will be pushed back and the DPJ will be pressed to handle them all quickly. To manage this process, the party needs its coalition partners in the Upper House.

国対委員長として山岡は、鳩山スキャンダルで自民党が攻撃する余裕を奪うために、可能な限り国会の会期入りをぐずつかせるつもりだと述べた。つまり、補正予算と本予算を含む重要な国会法案の熟議を先送りするということであり、民主党は早急に対処せよと避難も受けるだろう。この状況を切り抜けるには、民主党は参院の連立党が必要になる。

Since the UH election will be held in July, the session cannot be extended. The supplementary budget and the regular budget have to pass before the UH election, and key budget items, such as child allowances and agricultural subsidies must be implemented as well. Therefore Diet management in the next session was critical to Hatoyama's success, Yamaoka explained.

参院選は7月の実施なので会期の延長はできない。補正予算と本予算は参院選前に通過させる必要があり、子ども手当や農業戸別補償といった重要法案も同様に実施されなければならない。だから、次期会期が鳩山政権の命運を決めると山岡は説明した。

3. (C) If the SDP continues to threaten to leave the coalition, the PNP may threaten to do the same to "increase its profile," Yamaoka continued. The PNP hopes to hold the casting vote once the SDP is gone, and that means the PNP will become increasingly vocal about the FRF issue.

社民党が離脱すると脅すなら、国民新党も同様に脅しで「目立ちたがり」を増長するだろうとも山岡は話を継いだ。社民党が離脱すれば国民新党はキャスティング・ヴォートを握りたくなり、そうなれば普天間移設施設問題について国民新党がわめきだすだろう。

Yamaoka explained that the most important issue for the SDP was Okinawa, for the PNP was the postal issue, and for DPJ SecGen Ozawa was Diet reform. In order to position themselves favorably, all three parties will use whatever political cards they have. If the United States continues to pressure Hatoyama on the Futenma issue, the Hatoyama Cabinet could possibly collapse.

重要課題ということでは、社民党は沖縄、国民新党は郵政、小沢幹事長は国会改革であると山岡は説明する。この三者がそれぞれ優勢になろうとして、持ち駒をなんでも使う。米国が普天間問題で引き続き鳩山政権に圧力をかけると、鳩山内閣はたぶん崩壊する。

If the SDP leaves the coalition, Diet management for the DPJ would be extremely difficult. FM Okada and MLIT Minister Maehara have no experience in Diet management, and they cannot be where they are now without being supported by the "ship called a coalition." They do not understand the politics of the Diet affairs. If they could put themselves in the PM's position, their judgment would be different, said Yamaoka. In his view, it is better for the United States to wait for the political situation to calm down until after the budget passes and the DPJ's victory in the July 2010 UH election.

社民党が連立を離脱すれば、国会運営は民主党にとって極めて困難になる。岡田外相と前原国交相には国会運営の経験はなく、「連立という船」を支えなければ彼らの立場もなくなる。彼らは国対のなんたるかがわかっていない。彼らも首相になってみれば判断も変わってくるだろうにと山岡は言った。彼の考えでは、予算が国会を通過し、7月の参院選で民主党が勝利して政局が一段落するまで、米国は辛抱したほうがよいとのことだ。

If the United States continues to apply pressure, reiterated Yamaoka, the situation could further deteriorate. Yamaoka said that haste makes waste, and stated that waiting, in the end, is the best way to ensure the plan's implantation. Once the DPJ wins the UH election, the FRF issue can be solved said Yamaoka. Yamaoka has been discussing the FRF issue with the PM and Chief Cabinet Secretary Hirano and advising them on the Diet situation. Yamaoka told the PM if he could meet with the President in Copenhagen, he should fully explain the current political/Diet situation and gain his understanding.

米国が圧力を加えると政局はさらに悪化すると山岡は繰り返した。普天間移設施設案を着実に実現する最善の方法について、せいては事をし損じる、とも語った。民主党が参院選に勝ちさえすれば、普天間移設施設問題は解決できると山岡は言う。山岡は、普天間移設施設問題について首相や平野官房長官とも議論してきたし、国会の状態についても助言してきた。山岡は首相に対して、コペンハーゲンの環境会議で米大統領と会談できれば、政局と国会の現状について十分に説明し、大統領の理解を得るべきだと告げている。

4. (C) The DCM underlined the need for an expeditious decision, particularly in light of local Okinawan politics and our own budget process. Yamaoka said that a decision had already been made; the only issue that remained was how to explain to the United States that, by earmarking FRF-related funds in the budget, Japan was making a de facto commitment to move forward with the FRF plan as currently envisioned. Yamaoka made it clear that Hatoyama was not planning to commit political suicide in order to implement the FRF this year.

首席公使は、沖縄の現地での政治状況と米国の予算審議を重く考慮に入れると、迅速な決断が必要だと強調した。山岡は、決断はすでにできていると語った。普天間移設施設関連予算の確保することで、表向きとは裏腹に、現行の計画どおりに普天間移設施設案の前進に専念しているということを、米国に分からせる手法がただひとつ残された課題なのだそうだ。鳩山には、政治生命を絶っても普天間移設施設を年内に実施する気なんかないと山岡は明言した。

FM Okada may think it's okay for Hatoyama to quit if the FRF deal could be pushed forward, but Hatoyama does not think so. The more that Okada -- who may think he can replace Hatoyama -- presses the PM, the more Hatoyama will consider the political situation and how best to protect his position. He will not give up the prime ministership for Futenma, Yamaoka said.

岡田外務大臣は普天間移設施設問題が前進できるなら、鳩山は辞任してもよいと思っているようだが、鳩山にはその気はない。鳩山の後釜になってもよいとする思惑のある岡田が鳩山に強く迫れば迫るほど、鳩山も政局と最善の保身に走ろうと考え込むだろう。鳩山は普天間のために首相職を辞す気はないと山岡は語った。

5. (C) That said, Yamaoka repeated that he told Defense Minister Kitazawa to make sure to earmark the FRF and Guam expenses in the regular budget. Yamaoka said that as the manager of the Diet business, he would make sure these government requests passed. Yamaoka hoped that the United States would implicitly understand that earmarking meant that the plan would be implemented eventually.

それはそれとして、普天間移設施設とグアム移転の費用を本予算に箇所付けしておくよう北沢防衛相に伝えたと山岡は繰り返し述べた。山岡は、国対の担当者として、この政府要求を必ず通過させると述べた。この箇所付けをもって、本音では普天間移設施設案が実現されるのだという話を米国に汲んで欲しいものだと山岡は期待した。

Yamaoka also stated that relevant Cabinet members were being called to the Kantei not to be told that a decision on the implementation of the current plan would be made in December, but to be told that the implementation would not be announced before the end of the year, although the budget would be earmarked. According to Yamaoka, PM told this to Okinawa Governor Nakaima as well; for his part, Nakaima has been pressuring the PM to move forward with the current plan for the sake of his own political position, Yamaoka said.

官邸に招集された閣僚には、予算は箇所付けされるが、年内には普天間移設施設実施の発表はしないと告げられていて、現行の普天間移設施設案を12月に実施するとの決断は伝えられていないとも山岡は語った。山岡によれば、首相はこのことを仲井真・沖縄県知事にも告げている。他方、仲井真は彼の政治的な保身から現行案推進を首相に推してきたと山岡は語った。

6. (C) On Okinawa politics, Yamaoka said that Okinawa would oppose base issues whenever they are discussed. "It's all about opposing for its own sake," Yamaoka stated. The Okinawa gubernatorial election will be held next fall and incumbent governor Nakaima will lose for sure.

沖縄の政治では、基地問題が議論されれば沖縄はつねに基地に反対すると山岡は言った。「反対のための反対なのだ」と山岡は述べた。沖縄県知事選が次の秋にあるが、現職の仲井真は落選は確実だ。

Once the new governor is elected, the FRF issue could hit a real wall, so the GOJ needed to resolve it before then. If the base decision were a fait accompli, then the new governor would be forced to accept that decision. Nakaima knows that he has to stick the current plan and that's the only way for him to have a chance to survive politically.

新沖縄県知事が選出されれば、普天間移設施設問題は現実の壁に当たるだろうから、日本政府はその前に解決する必要がある。基地問題の決断が既成事実となれば、新知事といえどもその決断を受け入れざるを得ない。仲井真は現行案に固執すべきだし、政治的に生き残るにはそれに賭けるしかないことを知っている。

As for the Nago mayoral election, regardless of the outcome, the government must stick to its plan to implement the realignment agreement. If Okinawa's will is respected, "nothing will ever happen." The issue of Okinawa politics, therefore, is not a big deal as long as the government's decision is made before the gubernatorial race.

名護市長選については、結果がなんであれ、政府としては再編合意の実施に固執しなければならない。沖縄の意志を尊重するなら「なにも生じないだろう」。よって、知事選前に政府の決断がなされれば、沖縄の政治問題が大問題化することはない。

7. (C) On PM Hatoyama's "trust me" statement, Yamaoka explained that PM meant to say that he would surely move forward with FRF "at some point." Yamaoka expressed his understanding that the United States took this to mean that the PM would make a decision within this year, and that President Obama had "lost face."

鳩山首相の「トラストミー(ボクを信頼して)」発言について、「ある時点で」普天間移設施設を確実に前進させるという意図だったのだと山岡は説明した。米国は年内中の決断と受け止めたからオバマ大統領がメンツを失うことになったのだと山岡流の解釈を強調した。

Yamaoka believed that Hatoyama exercised the wrong political judgment. In Yamaoka's view, Hatoyama should have clearly promised President Obama when they met that his government would implement the current plan. Yamaoka revealed that around that time, the SDP was under a great deal of political pressure, as Yamaoka had told them that once out of the coalition, the SDP would vanish as a political party in the upcoming election.

鳩山は間違った政治判断を下したと山岡は確信している。山岡の考えでは、鳩山はオバマ大統領との会談の際に、鳩山政権は現行案を実施すると明確に約束するべきだった。山岡の暴露によればという話だが、その時分、連立を離脱すれば次回の選挙で社民党は跡形もなくなると山岡は社民党に語ったとして、社民党は政治的な重圧を感じていた。

SDP president Fukushima seriously considered accepting the DPJ's position; however, when PM and others moved slowly on FRF, the SDP took the initiative by holding an anti-base rally in Okinawa. This created the political momentum for the anti-base elements in the SDP to oppose the Futenma relocation even if it meant putting the coalition at risk. Yamaoka critically said that the PM's lack of leadership and determination led to the current mess. He lost the opportunity to make a political decision by moving too slowly, Yamaoka said.

社民党・福島党首は、民主党の政治的立場を受け入れるべきか深刻に悩んでいた。にもかかわらず、普天間移設施設についての首相と取り巻きの動きがにぶい間に、社民党は沖縄の反基地運動で主導を握った。連立解消の危険性になるとしても、これで社民党内の反基地分子は普天間移設反対の政治的な弾みを付けた。首相に指導力と決断力がないことで現在の混乱が生じたのだと山岡は批判した。のろますぎて首相は政治決断の機会を逸したと山岡は語った。

8. (C) In Yamaoka's view, the best way to break through the current stalemate is for Washington to understand the current political situation in Japan and to tell Japan what it would like to do in search of mutually acceptable "next best way." If PM Hatoyama cannot meet President Obama on the matter, Yamaoka thought that Japan should send a special envoy to deliver the message and seek U.S. understanding. He thought a phone conversation between PM Hatoyama and President Obama would not be sufficient, as their "true feelings" would not be adequately communicated by telephone.

山岡の考えでは、膠着した現状打開の最善策は、米国政府が日本の政治状況を理解し、双方に受け入れ可能な「次善策」を探すために何をしたいかを日本に語りかけることだ。鳩山首相がこの件でオバマ大統領と会談が無理なら、米国の理解を求めるために真意を伝えるための特使を日本は派遣すべきだと山岡は考えていた。電話では鳩山首相とオバマ大統領の間に「本音」は伝わらないから、電話会談は十分ではないと彼は考えていた。

9. (C) Yamaoka added that even if the current plan were implemented, the Japanese public would not necessarily be favorable towards U.S.-Japan relations, as the media and other "agitators" would focus on the issue of the coral reef and environmental destruction caused by the landfill. The negative image could shake the DPJ government. Implementation of the current plan meant reduction of the burden on Okinawa, but politically it could be viewed negatively.

現行案が実施されても、メディアやその他の「扇動家」が埋め立てによる珊瑚礁や環境破壊の問題に着目し、日本国民は日米関係に好感を持つとは限らないだろう。否定的なイメージは民主党を動揺させる。現在の計画の実施は沖縄の負担縮小の意味があるが、政治的には否定的に見られる。

In order to avoid such a situation, Yamaoka said it was critical to discuss the future direction of the alliance and make the FRF/Henoko issue as but one of many issues in the alliance. In doing so, it is also important to explain to the Japanese public that it is the time for Japan to reduce its dependence on the United States and try to assume a greater defense burden.

そうした状況を避けるため、同盟の将来性を議論するしかないし、辺野古への普天間移設施設は数多くの同盟問題のひとつにすぎないよう見せかけしかないと山岡は語った。また同盟全体を問題にすることで、日本の米国への依存を減らし、より多く防衛負担を担おうとする時期が来ていることを日本国民に説明することも重要になる。

10. (C) On the DPJ's position on the future of the alliance, Yamaoka explained it had three stages. First, the DPJ should make it clear to the United States that it intends to bear much more responsibility in the alliance. Second, the United States should explain what kind of roles it expected from Japan within its global strategy. Third, Japan should then decide its direction and what it can do.

山岡は、同盟の将来について民主党の政策を三段階で説明した。(1)日本が同盟により多くの責任を持つことを米国に対して民主党が明瞭すべきだ、(2)米国側は、その世界戦略において日本に期待している役割を説明すべきだ、(3)その上で日本に何が出来るかを日本が決断すべきだ。

The process may take some time, but Yamaoka said that was what Ozawa wanted to do. Japan needed to continue to stay under the U.S. nuclear umbrella and needs to bear more of a burden.

この段階を踏むには時間がかかるかもしれないが、これこそ小沢が実行したいことなのだと山岡は語った。日本は米国の核の傘の下に居続けるべきだし、より多くの負担を必要とするのだと山岡は語った。

The current public feeling between Japan and the United States is that while Americans feel overburdened, the Japanese public feels negative about foreign military forces stationed in Japan. Yamaoka understood that Japan was very "spoiled" and dependent on the United States and was taking U.S. protection for granted. Some Japanese think that Japan's security is none of their business, and therefore, no bases were needed.

現状の日米の国民感情としては、米国民は負担が多いと感じ、日本国民は在日米軍に否定的だ。日本は「甘やかされてダメになっている」し、米国に依存しているし、米国による保護を当然だと思っていると山岡は理解していた。日本の安全保障などどうでもいいから軍事基地は不要だと考える日本人もいる。

Once the UH election is over, Yamaoka thinks the DPJ can remove the SDP and the PNP from the coalition. The DPJ will have three years before another national election, and within the three years, the DPJ should be able to step up discussions on how to advance the alliance from the post-war relationship to future-oriented relationship without any obstacles.

参院選が終われば、民主党は社民党を連立から放り出すことができると山岡は考えている。次回の国政選挙まであと三年あるし、邪魔者が消えて、この三年以内に、民主党は、日米軍事同盟を戦後の関係から未来志向の関係へと前進させる手法について議論を深めることができると山岡は語った。

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2011.05.09

2009年10月15日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2009年10月15日の公電(参照)を試訳してみた。まあ、ご参考までに。なお、朝日新聞に「中国めぐる有事に備え「滑走路3本必要」 米公電訳」(参照)が掲載されていたので対照し、朝日新聞が報道を欠落させたと思われる部分を太字にした。

DATE 2009-10-15 07:08:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION SECRET
S E C R E T TOKYO 002378
SIPDIS
DEPARTMENT FOR EAP/J NSC FOR RUSSELL DOD FOR OSD/APSA - GREGSON/MITCHELL/SCHIFFER/HILL/BASALLA/HAMM PACOM FOR J00/J01/J5 USFJ FOR J00/J01/J5
E.O. 12958: DECL: 10/15/2029 TAGS: PREL, PGOV, MARR, JA SUBJECT: A/S CAMPBELL, GOJ OFFICIALS DISCUSS THE HISTORY OF U.S. FORCE REALIGNMENT
キャンベル国務次官補と政府高官は米軍再編問題の経緯を討論する

Classified By: Deputy Chief of Mission James P. Zumwalt; Reasons 1.4 (B ) and (D)
Summary
概要
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1. (S) A State-DOD delegation led by EAP A/S Kurt Campbell engaged October 12 with Parliamentary Vice-Minister of Defense Akihisa Nagashima and officials from the Ministries of Foreign Affairs and Defense on the historical background on realignment of U.S. forces and plans to relocate Futenma Air Station in Okinawa.

東アジア・太平洋担当カート・キャンベル国務次官補が率いる国務省・国防総省代表団は10月12日、長島昭久防衛副大臣及び外務省・防衛省担当員に、在沖米軍再編と普天間飛行場移設案の背景となる経緯について協働した。

Nagashima stated that Defense Minister Kitazawa supported current Futenma Replacement Facility (FRF) plans, and that bilateral cooperation on three issues would help to achieve successful implementation of current realignment plans:

北沢防衛大臣は現行の普天間移設施設(FRF)計画を支持していると長島は述べ、以下三点についての双方の協力は現在の再配置計画の実現が成功するのに役立つだろうとも述べた。

(1) noise abatement at Kadena Air Base; (2) risk mitigation at MCAS Futenma; and, (3) establishment of environmental standards for U.S. military facilities in connection with the Status of Forces Agreement (SOFA), to be based on an agreement not subject to U.S. Congressional approval.

(1)嘉手納空軍基地の騒音緩和、(2)普天間海兵隊飛行場のリスク緩和、(3)米国議会承認を必要としない協定に基づく、駐留米軍地位協定(SOFA)に関連した米国軍事施設のための環境基準の策定。

Members of the U.S. delegation countered Ministry of Defense (MOD) Bureau of Local Cooperation Director General Motomi Inoue's suggestion that U.S. Marines presence in Guam alone would provide sufficient deterrence capability in the region, and the airstrips at Ie and Shimoji islands might be a sufficient complement to Kadena's two runways in a contingency.

米海兵隊はこの地域においてグアム単独駐留で十分な防衛能力を持ち、有事には嘉手納基地の二本の滑走路を伊江島と下地島の滑走路で補えるかもしれないと示唆する防衛省・井上源三・地方協力局長に米国代表団員は反論した。

They stressed that relying exclusively on Guam posed time, distance, and other operational challenges for U.S. Marines to respond expeditiously enough to fulfill U.S. treaty obligations. They also underscored that the Chinese military build-up since the 1995 formulation of FRF plans necessitated access to at least three contingency runways.

グアムにのみ頼ることは、日米安保条約が定める米国義務履行を迅速に対応するために、時間、距離及びその他の作戦上の困難を米海兵隊にもたらすと彼らは強調した。また1995年の普天間移設施設案策定以降、中国軍拡への対応として有事に3本の滑走路の利用が必要になると彼らは強調した。

MOD Defense Policy Bureau Director General Nobushige Takamizawa suggested that the U.S. Government incorporate changes since 2006 on U.S. capabilities, war plans, and increased coordination with the Japan Self Defense Force when briefing on the continued validity of realignment plans to Japanese government officials and politicians. He also urged the U.S. Government to cooperate with the Japanese government in explaining realignment issues to the Japanese public.

2006年以降、米政府には米軍能力や戦時計画で変化があると高見沢将林防衛政策局長は示唆し、日本政府高官や政治家に再編計画の確認を継続すると説明する際には、日本自衛隊による米軍との協調活動も増えるということも示唆した。彼はまた、日本国民に向けて米軍再編を説明する際に、米政府は日本政府と協調してよしいとも促した。

2. (S) Takamizawa stressed in a lunch meeting subsequent to the briefing (excluding Nagashima and others) that the U.S. delegation ought not to take Nagashima's assessement of current realignment plans at face value and cautioned against premature demonstration of flexibility in adjusting the realignment package to be more palatable to the DPJ Government.

説明会後の(長島らは参加してない)昼食会のことだが、高見沢は、現行の再配置案に対する長島の評価を額面通りに受け取らないようにと強調し、また民主党政府にとってもっと口当たりのいい再配置案に調整するような柔軟性を早まって示さないようも警告した。

Ministry of Foreign Affairs (MOFA) Director General for North American Affairs Kazuyoshi Umemoto pointed out that the DPJ Government had not yet finished crafting its decision-making process for realignment issues, as stakeholders such as Foreign Minister Okada, Okinawa State Minister Maehara, and Chief Cabinet Secretary Hirano were each focusing on different angles. He also noted that DPJ President Ozawa might possibly involve himself in the realignment review process.

米軍再編問題について、岡田外相、前原沖縄担当相、平野官房長官といった関係者がそれぞれ異なった視点に執着していることから、民主党政府には意思決定の仕組みができていないのだと外務省・梅本和義北米局長は指摘した。また、もしかすると米軍再編成の見直し協議に小沢代表自身が関わってくるかもしれないとも指摘した。

Separately, in an October 13 breakfast meeting, the DCM, EAP/J Director Kevin Maher, OSD Senior Country Director for Japan Suzanne Basalla, and Embassy Tokyo POL-MIL Chief presented the same realignment briefing to Executive Assistants to the Prime Minister Tadakatsu Sano and Kanji Yamanouchi, stressing that the U.S. Government shared Japanese concerns on aviation safety risks, and would continue to demonstrate publicly a patient attitude on realignment even as it conveyed strong messages to the Japanese government in private on the implications on the Alliance from changes to FRF plans. End Summary.

それとは別に10月13日の朝食会で、米国大使館首席公使、ケビン・メア東アジア・太平洋・日本部長、スザンヌ・バサラ駐日米国大使補佐官、駐日大使館・政務・軍事担当が、総理大臣秘書官の、佐野忠克及び山野内勘二に、同内容の米軍再編案概要を説明した。
この際も、海路の平和的航行について米政府は日本政府と懸念を共有していることが強調され、米軍再編について表向きには忍耐強い態度を継続して示すとはいえ、私的なルートでは、普天間移設施設案の変更による日米安保条約の意味合いについて、日本政府についてきついメッセージを送ることになる。

Presentation on Realignment/FRF
在日米軍再編と普天間移設施設についての説明
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2. (C) On October 12, EAP A/S Kurt Campbell, EAP DAS David Shear, and Deputy Assistant Secretary of Defense (DASD) for East Asia Michael Schiffer led a State-DOD delegation in discussions with Parliamentary Vice-Minister Akihisa Nagashima and a team of Ministry of Foreign Affairs (MOFA) and Ministry of Defense (MOD) officials on the history of negotiations on plans to move Futenma Air Station in Okinawa to the proposed Futenma Replacement Facility (FRF) site at Camp Schwab/Nago.

東アジア・太平洋担当・カート・キャンベル国務次官補、デービッド・シアー国務次官補代理、マイケル・シファー国防次官補代理は、国務省・国防総省代表団を率いて、長島昭久防衛副大臣及び外務省・防衛省担当員チームと、普天間飛行場移設施設として名護キャンプシュワブに提案されている普天間移設施設案の交渉経緯について議論した。

A/S Campbell noted that the U.S. delegation aimed to provide detailed background on the FRF in support of the Democratic Party of Japan (DPJ) Government's ongoing review of U.S. force posture realignment. He elaborated that he had worked on Okinawa issues since the mid-1990s and that, for the first time in that span, prospects for significant progress had emerged. Reasons for confidence included:

米国代表団の目的は、普天間移設施設の詳細な背景を説明し、民主党政府による検討中の在日米軍再編見直しを支援することだとキャンベル国務次官補は述べた。彼はまた、1990年代中頃から沖縄問題に取り組み、この間で最初の出来事として有意義な進展が期待できると詳説した。その理由はこうである。

(1) a strong consensus within the U.S. Government and U.S. military; (2) Congressional budgetary commitment to realignment plans; and, (3) support from local elected leaders in Okinawa.

(1)米政府と米軍間の強い合意、(2)再編成案に議会が予算を配慮している、(3)現地沖縄指導者の支援がある。

A/S Campbell added that the DPJ Government had the right to review details of realignment as an integral component of the Alliance, and he offered the U.S. Government's best judgment as to the way forward. Vice-Minister Nagashima thanked the U.S. delegation and expressed hope that both sides would seize the opportunity to build a more robust relationship.

日米軍事同盟の統合要素として民主党政府は在日米軍再編成の詳細を見直す権利があるとキャンベル国務次官補は述べ、さらに前進に向けて米政府が最善とする判断を提供するとした。長島副大臣は米国代表団に謝意を示し、双方ともより強固な関係構築の機会を得たいと期待した。

3. (S) The discussion shifted to an interagency-coordinated presentation by OSD Senior Japan Country Director Suzanne Basalla on the history behind FRF plans. Basalla's briefing focused on the strategic context for U.S. force posture realignment, ranging from commitments under the U.S.-Japan Security Treaty through efforts to transform the Alliance with the Defense Policy Review Initiative (DPRI). She included an explanation as to the necessity of maintaining U.S. Marine aviation capabilities in Japan and, in particular, Okinawa.

普天間移設施設案の背景となる経緯について、スザンヌ・バサラ駐日米国大使補佐官よる、省庁間で調整されたプレゼンテーションに話題が移った。バサラの説明は、米軍再編の戦略的な全貌に焦点を置き、防衛政策見直し協議(DPRI)の改変努力を経て日米安保条約下での関与にまで及んだ。彼女は、日本及び特に沖縄における海兵隊航行能力維持の必要性も説明した。

The presentation then turned to reasons that the proposed consolidation of Marine and U.S. Air Force air capabilities at Kadena Air Base (now favored by several DPJ Government leaders) was unworkable, due to operational and political factors. Basalla also reviewed the rationale for the planned FRF's V-shaped runways. She concluded by discussing the continuing validity of assumptions that underlay the decision to locate the FRF at Camp Schwab on the outskirts of Nago City.

プレゼンテーションでは、米海兵隊と米空軍を嘉手納空軍基地で統合する案(現在民主党政府指導者が賛同)が、運用上及び政治上の要因で実行不可能ある理由説明に移った。バサラは普天間移設施設でV字型滑走路案が合理的であるとも評価した。名護郊外のキャンプシュワブに普天間移設施設を設置する想定が堅実であるという議論で説明を終えた。

Nagashima's Response: Three Items for a Realignment Package
長島氏の応答。再編案のための三項目
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4. (S) Following Basalla's presentation, Vice-Minister Nagashima noted that internal MOD assessments on FRF resembled conclusions drawn by U.S. Government. He added that Defense Minister Kitazawa was a "realistic person who was one of the strongest supporters" of current FRF plans among Ministers involved in the realignment review.

バサラのプレゼンテーションの後、普天間移設施設についての自衛隊内部評価は米政府が引き出した結論に似ていると長島副大臣は指摘した。彼はまた、北沢防衛相は移設問題再検討に関わる大臣のなかでは、普天間移設施設現行案について「最強の支援者として現実的な人物である」と付け加えた。

Nagashima added that he and Kitazawa had recently visited Okinawa, where they learned of difficulties with proposals to move the FRF either off-island or out of Japan. The Vice-Minister explained that, whereas the DPJ Government had not decided its direction on realignment, bilateral cooperation on three issues would help to achieve current realignment plans. These issues included:

彼はさらに北沢と一緒に最近沖縄を訪問した述べ、そこで二人は普天間移設施設は日本国外でも沖縄外でも困難であると知ったとした。民主党政府が再編成の指針を決断してないとしても、日米双方の協調は、現状の再配置案達成に役立つと長島次官は説明した。次三点である。

(1) noise abatement at Kadena Air Base; (2) an "out-of-the-box" approach to risk mitigation at MCAS Futenma; and, (3) an environmental package connected to the Status of Forces Agreement (SOFA).

(1)嘉手納空軍基地での騒音緩和、(2)斬新な手法による普天間海兵隊飛行場リスク緩和、(3)駐留米軍地位協定(SOFA)に関連した環境について総合案。

Nagashima observed that the Okinawan people "strongly desired" progress on the third issue and that the Hatoyama Administration had a significant "environmental orientation." He elaborated that Japan wished to establish environmental standards for U.S. military facilities that would be based on an agreement not subject to U.S. Congressional approval. This agreement could use the U.S.-Germany SOFA and the U.S.-ROK environmental protocol as precedential models.

第三点目の環境問題進展に沖縄の人々は「強い要望」があり、鳩山政権も「環境志向」を重視していると長島は述べた。また彼は、米国議会承認不要の協定による米軍施設の環境基準策定を日本が望んでいると説明した。この協定は米独地位協定と米韓環境基準を前例にできるだろう。

Political events over the coming year would also bear upon realignment, according to Nagashima. He explained that the January 2010 Nago City mayor's election, the July Upper House election, and the November Okinawa Prefectural Governor's election would make clear "what Okinawans think on basing issues." Of these three events, the Nago City mayor's election would be critical.

長島によれば、来年の政治日程も再編成に影響するとのことだ。2010年の名護市長選挙、7月の参議院選挙、及び11月の沖縄県知事選挙によって、「沖縄の人々の米軍問題の考え」が明確になるだろうとも説明した。この三点のなかでは、名護市市長選挙が決定的である。

Nagashima observed that the Japanese government would have to set a clear direction on the Alliance, inclusive of the three issues he mentioned, prior to the mayoral election in order to realize current realignment plans.

日本政府は、現行の再編制案の実現には名護市長選の前に、先述の三点を含めて日米軍事同盟の方向性を明確化する必要があるだろうと長島は述べた。

5. (S) A/S Campbell and DASD Schiffer responded that the U.S. Government, like the Japanese government, cared about environmental stewardship and energy efficiency. A/S Campbell pointed out that U.S. allies regarded the U.S.-Japan SOFA as the gold standard among basing agreements, and he counseled against moves to review simultaneously every aspect of the Alliance.

米国政府は、日本政府同様、環境保全とエネルギー効率に配慮しているとキャンベル国務次官補とシファー国防次官補代理は答えた。キャンベル国務次官補は、米国の同盟国は各種軍協定のなかでも日米地位協定は厳格な基準だと見ていると指摘し、日米軍事同盟をいちどきに全面見直しなどしないよう忠告した。

He added, however, that the U.S. side would be able to demonstrate flexibility on the three issues raised by Nagashima if Japan were to decide that this approach to realignment were correct. He offered to take back to the U.S. Government the Japanese recommendation to work together on environmental issues, an area in which "much good could be achieved."

そうはいっても彼は、日本が再編成手法を正しいと決めたなら、長島が提起した三点について米国側は柔軟性を示すことができるだろうと言った。また彼は、共同作業が可能な環境問題については「最善を達成したい分野」として、日本による推奨を米国政府に持ち帰って検討するとも受けた。

DASD Schiffer added that there were ways to address environmental issues without SOFA revision. The U.S.-ROK process for environmental assessments and base returns, for example, stood outside the SOFA. He concluded that the U.S. Government would be willing to explore similar potential approaches with Japan and to be a good partner on the environment.

シファー国防次官補代理は、日米地位協定の見直しをせずとも環境問題を取り組む手法はあると述べた。例えば、米韓での環境評価と基地返還の過程では、地位協定を外した。彼の結論では、米政府はそれと同等の手法を模索できるし、環境についてもよいパートナーとなり得るというものだった。

Reasons to Stay in Okinawa
在沖米軍の必要性
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6. (C) Japanese citizens often debated the reasons that the U.S. Marines remained in Okinawa, remarked Motomi Inoue, Director General of the MOD Bureau of Local Cooperation. Would not the U.S. Marine presence in Guam be sufficient to maintain deterrent credibility in East Asia and to respond to Taiwan contingencies, he asked hypothetically.

日本の市民はしばしば米国海兵隊が沖縄に居続けた理由を討論すると防衛省・井上源三地方協力局長は述べた。彼はまた、グアムの米国海兵隊駐留をもって、東アジアに抑止的な信頼性を維持し台湾有事の対応するのに十分でないのだろうかと、仮説的な疑問を提出した。

Inoue noted that a military helicopter pad was under construction at Andersen Air Base in Guam, where, he believed, up to 60 rotary wing aircraft could redeploy temporarily. He commented that this facility, plus high-speed naval vessels, might enable the U.S. military to respond with sufficient speed to regional emergencies.

グアムに建設中の軍用ヘリコプター離着陸場では、最高60機までの回転式翼航空機が一時的に配置転換することができると井上は確信していると述べた。この設備に加え海軍の高速船があれば、米軍は地域の緊急事態に十分に即応できるのではないかと意見を述べた。

U.S. Forces Japan (USFJ) Deputy Commander Major General John Toolan explained that the Guam option presented time, distance, and other operational challenges, using the example of disaster relief. Following the recent Indonesian earthquake, U.S. Marine helicopters based in Guam would have been unable to reach disaster-hit areas, and helicopters placed on ships would have taken four days to arrive, he noted. The Marines in Okinawa, however, had been able to self-deploy to the disaster area.

在日米軍副司令官のジョン・トゥーラン少将は、災害救助を例として挙げ、グアム拠点という戦略では、時間・距離及びそのほかの戦術的に困難になると説明した。最近のインドネシアの地震の場合でも、グアム拠点の米海軍ヘリコプターは災害地に到達できなかったし、軍船上のヘリコプターでは到着に四日を要しただろうと指摘した。しかし在沖米海兵隊はこの災害地に単独展開できた。

Contingencies
有事
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7. (C) Inoue also posed hypothetically that, if the U.S. military required three airfields in a contingency (a point raised by A/S Campbell), airstrips at Ie and Shimoji islands might be a sufficient complement to Kadena's two runways, obviating the need for the FRF at Camp Schwab. MajGen Toolan responded that the Japanese government was still assessing the needs of the Japan Self Defense Forces (JSDF) regarding airstrips, particularly in the context of China's military build-up. Until the Japanese completed that assessment, the U.S. side would have difficulty knowing the facilities that would be available for use.

井上はさらに仮説を出した。米軍が有事に滑走路を三本必要とするなら(キャンベル国務次官補が提起した論点)、キャンプシュワブへの普天間移設施設は回避しつつ、伊江島と下地島の滑走路が嘉手納の滑走路二本を補うに足るのではないか。トゥーラン少将がこれに答えた。日本政府は、特に中国軍拡の状況下で、自衛隊に必要な滑走路の評価中である。日本がこの評価を終えるまで、米国側はどれだけの施設が使用可能なのかを知る事は困難だろう。

EAP/J Maher observed that the runways at Ie and Shimoji would not be sufficient on their own, but would require the full complement of support facilities, including for refueling and maintenance, to be useable by U.S. forces. Japanese discussion of contingency air fields often overlooks this requirement, he added. Naha Consul General Greene noted that, as Japan worked through its National Defense Program Guidelines (NDPG), it would be important for both sides to de-conflict expectations on Shimoji options.

メア東アジア・太平洋・日本部長は、伊江島と下地島の滑走路だけでは十分とはいえず、米軍が使用可能とするためには、燃料補給と保守管理を含め、万全体制の支援設備が必要になるだろうと述べた。日本人による有事飛行場についての議論はしばしばこの要求が見落とされるとも加えた。那覇在グリーン総領事は、日本は防衛計画大綱策定中であり、日米双方とも下地島という選択肢を争点にしないことが重要であると述べた。

9. (S) A contingency would dictate that all U.S.-controlled airfields in Japan be used at maximum capacity, not just two or three, remarked DASD Schiffer. He elaborated that there might be contingencies related not just to Situations in Areas Surrounding Japan (SIASJ), but also to the defense of Japan itself. This possibility was clear in war plans that the U.S. side had earlier provided to select Japanese officials, and Schiffer offered to provide those briefs again to appropriate counterparts.

有事には、滑走路二本、三本といった問題ではなく、在日米軍滑走路の最大能力が発揮されるとシファー国防次官補代理は述べた。彼はまた、有事というなら、周辺有事に限らず、日本本土防衛も関連しうると詳説した。この可能性は戦争計画で明瞭化されており、米側としても日本の高官を選んですでに説明してあるものであり、日本側に話がわかる者がいるならば再度説明してもよいとシファーは申し出た。

He also related this issue back to realignment, noting that the redeployment of Marines in their entirety to Guam would not give the U.S. military the flexibility and speed necessary to meet its Security Treaty obligations to Japan. MajGen Toolan added that the briefs cited by DASD Schiffer required additional information from the Japanese government, an issue that could be addressed through improved bilateral planning.

彼は、海兵隊全体をグアムに配置転換するほどまでの柔軟性は米軍にはなく、日米安保条約の義務を果たすにはてきぱきと事を進める必要性があるとも述べ、話題を米軍再編に戻した。トゥーラン少将は、シファー国防次官補代理の説明には日本政府からの追加情報が必要であり、提起された事案は双務計画を改善させると言及した。

10. (S) The dramatic increase in China's military capabilities necessitated access to at least three runways in a contingency, noted A/S Campbell. In the 1990s, it had been possible to implement contingency plans for South Korea and China using only two runways in Okinawa, Naha and Kadena.

急激な中国軍拡のため、有事には三本の滑走路が必要になるとキャンベル国務次官補は述べた。1990年代であれば、沖縄の那覇と嘉手納の二本の滑走路だけで韓国と中国についての有事計画を立てることができた。

The most significant change between 1995 (when the Special Action Committee on Okinawa (SACO) plans for the relocation Futenma Air Base had been formulated) and 2009 was the build-up of Chinese military assets, explained A/S Campbell. This fact, which was now a driver of U.S. military assessments for the region, was implicit in Basalla's presentation and could not be discussed publicly for obvious reasons, he added.

1995年(普天間飛行場移転関する特別行動委員会SACOの沖縄計画が公式化された時点)から2009年までの最も重要な変化は、中国軍拡であったとキャンベル国務次官補は説明した。実際のところ、この地域における軍事力評価の要因が中国軍拡であり、このことはバサラのプレゼンテーションに明示的ではないが組み込まれており、考えれば誰でもわかることだが公に議論することではないとも彼は述べた。

Incorporating Changes
変化への対応
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11. (C) DG Takamizawa recommended that the U.S. briefing on the FRF should incorporate changes since 2006 regarding U.S. capabilities and war plans. New factors, such as the planned deployment of MV-22 (Osprey) aircraft, high-speed vessels, and increased military coordination with the Japanese side, should be taken into account in explaining the continuing validity of realignment plans.

高見沢防衛政策局長は、普天間移設施設についての米側の説明には、2006年以降の米軍能力と戦争計画を含めることが好ましいと述べた。MV-22(オスプレイ)航空機、高速船、及び日本側に増える協調軍事行動などは、再編計画が引き続き重要であるという説明で配慮されるべきである。

As a second point, he noted that the DPJ Government placed a premium on information-sharing and transparency. The understanding of government officials and politicians is not enough, said Takamizawa. The Japanese government also sought cooperation from the U.S. Government in clarifying the contents of realignment to the Japanese public.

二点目として、民主党政府は情報共有と透明性を重視していると彼は指摘した。政府高官と政治家の理解は十分ではないとも高見沢は言った。日本政府としても国民に対して米軍再編内容を明瞭する際、米政府の協力を仰ぎたいとしている。

MOD and MOFA Read-out on the Presentation
米側プレゼンテーションに対する防衛相と外務省の腹の内
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12. (S) In a private read-out over lunch immediately following the FRF presentation, MOD DG Takamizawa cautioned the U.S. side not to take excessive comfort in Nagashima's assessment of current realignment plans. The Vice-Minster had been much tougher in his questions on FRF during internal MOD sessions, and he was aware that A/S Campbell had spoken about realignment the previous evening with State Minister for Okinawa Seiji Maehara (a proponent of Kadena consolidation).

普天間移設施設についてのプレゼンテーション直後の昼食会でなされた腹の内の探りだが、高見沢防衛政策局長は、現行の再編計画に対する長島の評価で安堵しすぎないよう米側に警告した。長島副大臣は、防衛省内の議論では普天間移設施設に根強い疑念を持ちづけているし、キャンベル国務次官補が前夜、前原誠司沖縄担当相(嘉手納統合案の提案者)と再編について語ったことも知っている。

Takamizawa added that the U.S. Government should also refrain from demonstrating flexibility too soon in the course of crafting an adjusted realignment package palatable to the DPJ Government. On environmental issues, for example, perceptions of U.S. Government flexibility could invite local demands for the U.S. side to permit greater access to bases and to shoulder mitigation costs for environmental damage.

米国政府は、民主党政府にとってもっと口当たりのいい再配置案に調整するような手順を拙速に示すのを控えるようにとも高見沢は述べた。環境問題では、例えば、米国政府が柔軟性を理解することで、沖縄県側は基地への立ち入り権をより拡張し、環境破壊緩和の負担要求をするようになりかねない。

13. (S) MOFA DG Umemoto noted that the DPJ leadership was still working out internally its process for deciding on realignment. Foreign Minister Okada had been rigid in his reservation on FRF, and Okinawa State Minister Maehara had been aggressive in ministerial discussions (the latest occurring on October 9), given his claim as an expert on Okinawan issues.

再編の決断については、民主党の政治指導はまだまだ党内で作業中なのだと外務省・梅本局長は指摘した。岡田外務大臣は普天間移設施設には保留で固まったままであり、前原沖縄担当相も、自称沖縄問題通ということで、閣議(10月9日と最近)では持論を戦わせていた。

The Ministry of Land, Infrastructure, Transport, and Tourism (MLIT), which Maehara also led, would be a significant player on the realignment review, though less so in terms of budget outlays for Okinawa.

前原大臣が率いる国土交通省は、沖縄に支出される予算の点ではさしたるものはないが、再編の見直し作業では重要な要素となりうる。

According to Umemoto, the role of Chief Cabinet Secretary Hirofumi Hirano in the ministerial discussion was also increasingly significant, in light of his close relationship with Prime Minister Hatoyama. Hirano, however, was not versed on Okinawan affairs and appeared to be taking a more legalistic view of the responsibilities shared by the ministries in reaching a decision on realignment.

梅本によれば、鳩山首相との関係の点で、閣議においては平野博文官房長官の役割が重要性を増してくるとのことだ。しかし、平野は沖縄問題に精通しておらず、再編問題の決定に関与する各省庁間の名目的な区分けに腐心しているように見える。

Umemoto added that although Foreign Minister Okada did not wish DPJ power-broker Ichiro Ozawa to play a role on realignment, Ozawa was pondering his possible involvement in the realignment review, given the serious political implications of possible blunders on FRF.

岡田外務大臣は民主党の陰の実力者である小沢一郎が米軍再編に一枚噛むのを好んでいないが、普天間移設施設が起こしかねない失策の政治的な波及もあるため、小沢は米軍再編見直しにちょっかいだすかと思案中である、と梅本は言う。

Another important factor in the review was the Social Democratic Party (SDP), whose influence in Okinawa would suffer if FRF location issues were resolved. DG Takamizawa added that Ozawa was the only person who could persuade the SDP to change coalition agreements on Okinawa and give the party something in return.

米軍再編見直しでもうひとつ重要な要素は社民党の存在であり、普天間移設問題が解決されると、同党の沖縄への影響力低下で困窮することになる。高見沢防衛政策局長によれば、沖縄問題についての連立協定で変更を社民党に説得できるのは小沢のみであり、彼はまた同党にその見返りを与えることができるとのこと。

Briefing for Prime Minister's Office
首相官邸への説明
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14. (C) In an October 13 breakfast, OSD Senior Country Director Basalla, EAP/J Director Maher, the DCM, and POL-MIL Chief also presented the FRF briefing to Tadakatsu Sano and Kanji Yamanouchi, both Executive Assistants to the Prime Minister.

10月13日の朝食会で、バサラ駐日米国大使補佐官、メア東アジア・太平洋・日本部長及び大使館の政務・軍事担当は、佐野忠克と山野内勘二に普天間移設施設についての説明を行った。両氏は総理大臣秘書官である。

Sano focused on the fact that land returns south of Kadena as a part of realignment would reduce the area controlled by U.S. military bases from 19 percent to 12 percent of Okinawa's total land area. He also noted that although the majority of the Japanese public recognized the strategic value of the Alliance, the immediate social challenges and safety concerns faced by the Okinawan people regarding the bases would weigh significantly on the DPJ Government's realignment review.

佐野は、米軍再編成の一部として嘉手納以南の土地返還によって、米軍基地として支配された領域を沖縄全体面積の19%から12%に削減されるという事実に強い関心をもっていた。日本国民の大多数は同盟の戦略的な価値を認識しているが、沖縄の人々が基地について直面している直接的な社会的課題と安全への懸念は、民主党政府による再編見直しでかなりの重荷となるだろうとも彼は指摘した。

Sano argued that a more immediate solution was required to prevent the possibility of aviation accidents in urban areas, similar to the 2004 U.S. military helicopter crash at an Okinawan university. Sano added that there was "aggravation" at the perception created by the Japanese media that the U.S. side had become inflexible in realignment discussions.

佐野は、2004年沖縄大学への米国軍用ヘリコプター墜落のような、都市部の航空事故の可能性を防ぐために、より緊急の解決案が求められると主張した。日本の報道機関が作り出したものだが、米国側は再編協議に柔軟性がないとする理解の点で「深刻な状態」にあるとも佐野は述べた。

The U.S. participants at the breakfast responded that the U.S. Government shared Japanese concerns on aviation safety risks. DCM also commented that U.S. officials would continue to express patience in public about realignment, while relaying private messages to the Japanese government about the serious implications that changes to FRF plans would have for the Alliance.

米政府は航空安全リスクについえの日本の懸念を共有したと朝食会の米側参加者は答えた。首席公使はまた、米軍再編について表向きには忍耐強い態度を継続して示すとはいえ、私的なルートでは、普天間移設施設案の変更が日米安保条約にもたらす深刻な意味合いについて、日本政府についてメッセージを送ることになると述べた。

Participants to October 12 Briefing
10月12日説明会の参加者
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15. (U)
U.S.:
A/S Kurt Campbell, EAP DCM James Zumwalt, Embassy Tokyo DAS David Shear, EAP DASD for East Asia Michael Schiffer, OSD/APSA MajGen John Toolan, Deputy Commander, USFJ Japan Director Kevin Maher, EAP POL M/C Robert Luke, Embassy Tokyo Senior Country Director for Japan Suzanne Basalla, OSD/APSA Consul General Raymond Greene, ConGen Naha SA Mark Tesone, EAP COL Jeffrey Wiltse, Director, J-5, USFJ POL-MIL Chief Joseph Young, Embassy Tokyo (notetaker) Interpreter
Japan:
Akihisa NAGASHIMA, Parliamentary Vice-Minister of Defense, MOD Nobushige TAKAMIZAWA, Director General of Defense Policy, MOD Motomi INOUE, Director General of Bureau of Local Cooperation, MOD Kiyoshi SERIZAWA, Director, Japan-U.S. Defense Cooperation Division, MOD Takafumi FUJII, Director, Director, Okinawa Local Cooperation, MOD Taro YAMAOTO, Director, Strategic Planning Office, MOD Notetaker Interpreter

Participants to October 12 Lunch
10月12日ランチミーティングの参加者
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16. (U)
U.S.:
A/S Kurt Campbell, EAP DCM James Zumwalt, Embassy Tokyo DAS David Shear, EAP DASD for East Asia Michael Schiffer, OSD/APSA Japan Director Kevin Maher, EAP POL M/C Robert Luke, Embassy Tokyo (notetaker) Senior Country Director for Japan Suzanne Basalla, OSD/APSA
Japan:
Kazuyoshi UMEMOTO, Director General of North American Affairs, MOFA Nobushige TAKAMIZAWA, Director General of Defense Policy, MOD Takehiro FUNAKOSHI, Director, Japan-U.S. Security Treaty Division, MOFA Kiyoshi SERIZAWA, Director, Japan-U.S. Defense Cooperation Division, MOD Hiroyuki NAMAZU, Director, Japan-U.S. SOFA Division, MOFA

Participants to October 13 Breakfast
10月13日朝食会の参加者
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17. (U)
U.S.:
DCM James Zumwalt, Embassy Tokyo Japan Director Kevin Maher, EAP Senior Country Director for Japan Suzanne Basalla, OSD/APSA POL-MIL Chief Joseph Young, Embassy Tokyo (notetaker)
Japan:
Tadakatsu Sano, Executive Assistant to the Prime Minister Kanji Yamanouchi, Executive Assistant to the Prime Minister

18. (U) A/S Campbell has cleared this message. ROOS
この公電は、キャンベル次官補も目を通している。

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2011.05.07

2009年9月21日の日本発公電 その2

 ウィキリークスに公開された2009年9月21日の公電(参照)をもうひとつ簡単に試訳してみた。まあ、ご参考までに。

Date 2009-09-21 21:28:00
Source Embassy Tokyo
Classification SECRET
S E C R E T SECTION 01 OF 03 TOKYO 002197
SIPDIS
E.O. 12958: DECL: 09/18/2019 TAGS: PREL, PGOV, JA, PINR, KS, KN SUBJECT: EAP ASSISTANT SECRETARY KURT CAMPBELL'S MEETING WITH MOFA DG AKITAKA SAIKI
キャンベル国務次官補が外務省・斎木昭隆と会談

TOKYO 00002197 001.2 OF 003
Classified By: Deputy Chief of Mission James P. Zumwalt, Reasons 1.4 (b ) and (d)

1. (S) SUMMARY: Assistant Secretary of State (A/S) for East Asian and Pacific Affairs Kurt Campbell met with Japanese Ministry of Foreign Affairs (MOFA) Director General (DG) of the Asian and Oceanian Affairs Bureau Akitaka Saiki at the latter's Tokyo office on September 18. DG Saiki praised MOFA's new leader, Foreign Minister Katsuya Okada, but warned that the new administration's threat to tame the Japanese bureaucracy would end in failure.

概要。アジア・太平洋担当・カート・キャンベル国務次官補は、外務省・斎木昭隆アジア大洋州局長と9月18日後段の東京事務所で会った。斎木局長は新任の外務大臣岡田克也を賞賛したが、日本の官僚制を懐柔しようとする新政権の威嚇は失敗に終わるだろうと警告した。

A/S Campbell and DG Saiki discussed former President Bill Clinton's mission to Pyongyang to free two U.S. journalists, the current situation regarding the Six Party Talks, the unresolved issue of North Korea's abduction of Japanese citizens, and the humanitarian situation in North Korea.

カート・キャンベル国務次官補と斎木局長は、北朝鮮ピョンヤンに捕らわれている米国ジャーナリスト二名を解放するためのビル・クリントン前大統領の派遣や、六か国協議の現状、未決の北朝鮮による日本人拉致事件、北朝鮮の人道的状況などについて議論した。


Saiki said he was disappointed in regional architecture initiatives such as ASEAN and did not understand why China decided not to participate in a U.S.-Japan-PRC trilateral, but was optimistic about an upcoming trilateral summit involving Japan, South Korea, and China. Saiki concluded by speaking about U.S.-Japan and U.S.-ROK relations under the new Democratic Party of Japan (DPJ)-led government. END SUMMARY.

斎木局長は、ASEAN(東南アジア諸国連合)など地域構想の主導的役割で落胆したと述べ、中国がなぜ米日中三国関係への参加に決断できないのかが理解できなかった。とはいえ、彼は日本を含めた近々の三カ国首脳会議には楽観的であった。斎木は、民主党の新政権下での日米関係及び米韓関係を語って終えた。

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The New Administration and the Bureaucracy
新政権と官僚組織
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2. (C) Speaking about the new DPJ government, DG Saiki said he was glad to have Katsuya Okada heading the Foreign Ministry, as he is "very intellectual" and "understands the issues." Saiki explained that Okada did not pose any problems in his areas of responsibility--North Korea, South Korea, and China. Although some bureaucrats were worried about the DPJ government's threat to diminish their power, Saiki warned that if the DPJ tried to crush the pride of professional bureaucrats, it would not succeed.

民主党による新政権に話が及ぶと、斎木局長は、外務省大臣となる岡田克也を「非常に知的で」かつ「諸問題を理解している」として、その任命を喜んだ。北朝鮮、韓国、中国への責任範囲で岡田は問題を抱えてないと斎木は説明した。官僚のなかには新政権の威嚇が彼らの力を削ぐのではないかと懸念する者もいるが、もし民主党が専門官僚らを潰そうとしても成功しないと斎木は警告した。

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Six Party Talks
六か国協議
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3. (S) Saiki expressed his appreciation for USG cooperation and close consultation related to North Korean issues. The DG mentioned that he had confirmed with Foreign Minister Okada that UN sanctions on the DPRK should be maintained.

北朝鮮問題に関連して、米国政府とその親密な相談について斎木は謝意を表した。また北朝鮮制裁を堅持すべきことは岡田外務大臣に確認したと彼は述べた。

Saiki spoke about China's nervousness about the North's recent behavior, its desire to avoid seeing instability or collapse in the neighboring country, and its continuing preference to see a divided Korean peninsula that provided a geopolitical buffer.

北朝鮮の最近の活動に中国がいらだっているのは、隣国の不安定や崩壊を避けたいと思っているからだろうし、地政学的緩衝を求めることから朝鮮半島の分断を従来どおり好ましいとしていると斎木は述べた。

He then talked about the DPRK's dislike for the Six Party Talks (so much as to insist on avoiding the word "six" and instead calling it "multilateral" talks) and concluded that whether or not the North Koreans return to the table would depend on U.S.-DPRK bilateral talks.

北朝鮮は六か国協議を好まないと斎木は語り(なお北朝鮮は「六カ国」を避け「多角的」協議としたい)、協議への復帰は、米国と北朝鮮の二か国協議によるだろうとまとめた。

Saiki relayed that when he asked the North whether they preferred to have one of the six parties removed from the framework, the answer was no. A cosmetic change such as the addition of Mongolia, which had expressed an interest in joining the Six Party process, may be a possible way out of the current stalemate, Saiki conjectured.

北朝鮮は六か国協議から一国抜きたいのだろうかと斎木が取り次ぐと、答えはノーであった。斎木のアイデアとしては、化粧直しとして協議参加に興を添えるためにモンゴルなどを加えみるもの現状打開にはよいのかもしれないというものだ。

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Abductions Issue
拉致問題
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4. (S) Saiki lamented that the DPRK believes that 2002 was "a mistake"--referring to when North Korea admitted that it had abducted Japanese citizens. The DG said he believed that the DPRK had killed some of the missing abductees, and explained that the fate of Megumi Yokota was the biggest issue, since she was still relatively young (in her forties) and the public was most sympathetic to her case. He believed that some of the abductees were still alive.

北朝鮮は、2002年に日本人拉致を認めたことは「失策」であったと思い込んでいると斎木は嘆息した。北朝鮮はすでに未確認の拉致者の数名を殺害していると斎木局長は自身の確信を語り、横田めぐみの運命が最大問題となるのは、彼女が比較的若く(40代である)、大衆がもっとも彼女の事件に感心を寄せているためだとも説明した。斎木は、拉致者の数名は生存しているとも確信している。

Saiki was concerned that the new minister in charge of abductions, Hiroshi Nakai, was a hardliner. Saiki concluded by saying the Japanese needed to sit down with the North Koreans to decide how to make progress on the abductions issue, and that the new Japanese government would be just as attentive as the Liberal Democratic Party was to the problem.

斎木は、新拉致担当相中井洽が強硬論者であることを懸念していた。拉致問題の行方を決めるには、日本はまず北朝鮮と同席する必要があるとした。また、日本の新政権はこの問題について自民党と同程度に注意深いだろうとも述べた。

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Humanitarian Issues
人道問題
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5. (C) With a harvest coming up in one month, the North faced a fertilizer problem and a drastic decrease in food production, said Saiki. As a result, the black market was very active. In this context and because of the effects of UN Resolution 1874, DPRK leaders were only concerned with themselves, according to Saiki.

1か月後の収穫についてだが、北朝鮮は肥料問題と食糧生産の激減に直面していると斎木は語った。結果、闇市が横行していた。状況に加え国連決議1874の影響で、北朝鮮指導者は自分たちのことにしか関心を持っていないと斎木は語った。

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Regional Architecture
地域構成
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6. (S) Saiki confessed that he was "very disappointed" with initiatives such as ASEAN and ARF, where leaders tend to talk about the same topics using the same talking points. Despite the frustration stemming from the need to form a consensus on all decisions between ten countries with "unequal economies," Saiki stated that "we must continue" and cannot allow China to dominate in Southeast Asia.

ASEAN(東南アジア諸国連合)やARF(ASEAN地域フォーラム)の指導性の点で斎木は落胆していると告白した。指導者たちは同じ要点で同じ話題のみ語る傾向があるからだ。「不均衡経済」について十か国間で全決定に合意を要するために生じる不満にもかかわらず、日本は継続しなければならないし、中国に東アジアを支配させてはならないと斎木は述べた。

At the same time, Saiki admitted that ASEAN countries were calculating in their own ways, and often played Japan and China against each other. Saiki said that Indonesia was Japan's most reliable partner in ASEAN.

同時に、ASEAN諸国は彼らなりに抜け目がなく、日中をそれぞれ敵対させていた。斎木よれば、インドネシアは日本がASEANでもっとも信頼できるパートナーである。

7. (C) He spoke more optimistically about the trilateral summit planned for October 10 between Japan, China, and South Korea. Saiki said that Japan wanted China to be more responsible and transparent and hoped the upcoming trilateral would help nudge it in that direction.

斎木は、10月10日に予定の、日本・中国・韓国の間の三か国首脳会議には楽観的であると語り、中国は責任と透明性を持つよう日本が要望すると述べた。三か国会議はその方向に進むよう促すとも述べた。

8. (C) On the possible trilateral dialogue between the U.S., Japan, and China, Saiki wondered why the Chinese had changed their minds and cancelled their participation at the last minute. Campbell replied that despite the USG's best efforts to confirm Chinese participation, we received no reply from China.

米日中三か国対話が可能であるのに、土壇場で中国がキャンセルしたのはなぜなのか斎木は疑問に思っていた。キャンベルも、米国として最善を尽くしたが中国からの応答はなかったと斎木に答えた。

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U.S.-Japan Relations Under the DPJ Government
民主党政権下での日米関係
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9. (S) Regarding DPJ leaders' call for an "equal relationship" with the U.S., Saiki confessed that he did not know what was on the minds of Prime Minister Yukio Hatoyama and FM Okada, as the bilateral relationship was already equal.

日米間の双務関係はすでに対等であるのだから、民主党指導者の言う米国との「対等な関係」の要望について、鳩山由紀夫首相や岡田克也外務大臣がなにを考えているのかわからなかったと斎木は告白した。

Saiki theorized that the DPJ, as an inexperienced ruling party, felt the need to project an image of power and confidence by showing it had Japan's powerful bureaucrats under control and was in charge of a new and bold foreign policy that challenged the U.S. Saiki called this way of thinking "stupid" and said "they will learn."

斎木の考えでは、民主党は政権政党としての経験がないので、権力と自信のイメージを得る必要性から、日本は強固な官僚制度の支配下にあるとか、米国に挑戦しているのだという新規で大胆な外交政策に関与していることを見せつけているとのことだ。斎木はこの手の考え方を「ばか」呼び、「彼らも学ぶことになるだろう」と語った。

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Japan-ROK Relations
日韓関係
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10. (C) Saiki said the Lee Myung-bak government in South Korea was good for Japan because it was forward-looking. He pointed out that 2010 was a critical year for the two nations because it marked the centennial anniversary of the Japanese annexation of Korea.

韓国の李明博政権は未来志向の点で日本に好ましいと斎木は述べた。2010年は、日韓併合百周年記念なので二国間重要な年であると指摘した。

Saiki stated that historical issues such as Takeshima-Dokdo may cause tension between Japan and the ROK in the near future, with guidelines for teachers regarding high school textbooks scheduled to be revised, and recommended that the U.S. not get involved.

改訂予定の教師向け高校教科書指導書の件で、竹島・独島といった歴史問題が日韓関係の近未来に緊張をもたらすだろうと斎木は述べ、米国はこれに関係しないように薦めた。

On the other hand, ROK President Lee Myung-bak's strong desire to have Hatoyama visit Seoul on or around the date of the trilateral summit between Japan, South Korea, and China, may strengthen bilateral relations between the neighboring countries. Saiki continued that the Foreign Minister supported such a visit, but there was no reply as of yet from the Prime Minister's Office.

他方、李明博韓国大統領が、日韓中の三か国会議の日取りに併せて、鳩山を訪韓させたいと強い意欲を持っていることは、隣国間の二国関係の強化となるだろう。このような訪問を外務大臣も支持したが、首相官邸からの返信はいまだないと斎木は語った。

11. (U) Participants: DG Saiki Director Tarumi (Chinese and Mongolian Affairs) Director Shimada (Northeast Asian Affairs)

A/S Campbell DOD PDAS Derek Mitchell DCM Jim Zumwalt Japan Desk Director Kevin Maher Tokyo POL M/C Rob Luke Special Assistant Mark Tesone Tokyo POL Andrew Ou (notetaker)

12. (C) This cable has been cleared by Assistant Secretary Campbell. ROOS
この公電は、キャンベル次官補も目を通している。

追記
 朝日新聞に「外務官僚「日米の対等求める民主政権は愚か」 米公電訳」(参照)が掲載されていたので対照し、朝日新聞が報道を欠落させたと思われる部分を太字にした。

追記
 ウィキリークスの公式サイトの該当公電(参照)では、該当二個所について、朝日新聞のように痕跡を残さない欠落ではなく、xxxxxxxxxxxxと伏せ字になっている。


4. (S) Saiki lamented that the DPRK believes that 2002 was "a mistake"--referring to when North Korea admitted that it had abducted Japanese citizens. The DG xxxxxxxxxxxx explained that the fate of Megumi Yokota was the biggest issue, since she was still relatively young (in her forties) and the public was most sympathetic to her case. xxxxxxxxxxxx
Saiki was concerned that the new minister in charge of abductions, Hiroshi Nakai, was a hardliner.

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2011.05.05

2009年9月21日の日本発公電

 ウィキリークスに公開された2009年9月21日の公電(参照)を簡単に試訳してみた。まあ、ご参考までに。

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DATE 2009-09-21 21:28:00
SOURCE Embassy Tokyo
CLASSIFICATION CONFIDENTIAL
C O N F I D E N T I A L SECTION 01 OF 03 TOKYO 002196
SIPDIS
E.O. 12958: DECL: 09/18/2019 TAGS: PREL, PGOV, JA, PINR SUBJECT: EAP ASSISTANT SECRETARY KURT CAMPBELL'S MEETING WITH DPJ DIET AFFAIRS COMMITTEE CHAIRMAN KENJI YAMAOKA
キャンベル国務次官補が民主党国会対策委員長・山岡賢次と会談

TOKYO 00002196 001.2 OF 003
Classified By: Deputy Chief of Mission James P. Zumwalt, Reasons 1.4 (b ) and (d)

1. (C) SUMMARY. According to DJP Diet Affairs Committee Chairman Kenji Yamaoka, the new DPJ government's primary goal will be to strengthen the U.S. alliance despite tactical differences with the previous government. Japan will not extend Indian Ocean refueling missions but is open to other ideas for how Japan could contribute to U.S. efforts in Afghanistan and Pakistan.

概要。民主党国会対策委員長・山岡賢次によると、新しい民主党政府の第一の目標は前政府との戦術的な違いにもかかわらず、米国同盟を強化することだ。日本は、インド洋上補給作戦を延長しないつもりだが、アフガニスタンとパキスタンでの米国努力に貢献する方法について聞く耳をもたないわけではない。

Base relocation efforts in Okinawa should proceed from a dialogue with the U.S. on how Japan should fit into the overall U.S. strategic vision. Opposition to the bases from local communities is real and the GOJ must make the case for the U.S. bases as playing an important role in the defense of Japan. However, simply defending the status quo will weaken rather than strengthen the alliance.

在沖米軍移転努力は、米国の全体的な戦略計画に日本がどのように調和するかという対話の過程で解決されるべきである。現地の社会が米軍に反対にしていることは真実であり、日本政府は、在沖米軍が日本の防衛に重要であることについて説得しなければならない。しかし、単に現状維持を求めるなら同盟の強化よりも弱体化を招くだろう。

There must be transparency concerning past "secret agreements" on the introduction of nuclear weapons, but these will not affect current practices regarding U.S. declaration of nuclear weapons introductions or the kinds of propulsion systems allowed in Japanese ports.

過去の核兵器持ち込み「秘密協定」については公開が求められるが、日本の港湾への米国核兵器持ち込みや核関連の推進システムの明示について、現行作業への影響はないだろう。

Japan's three anti-nuclear principles are unlikely to be enshrined in law. Party General Secretary Ozawa is the strongest DPJ member and will likely become even stronger after the next Upper House election. Ozawa will maintain discipline among new party members to prevent issues such as the nuclear principles from damaging the alliance. END SUMMARY.

日本の非核三原則が法制化されることはないだろう。民主党幹事長・小沢は最強の民主党員であり、参院選後にはさらに強力になりうる。小沢は、核原則など日米同盟の毀損を回避するために、民主党の新議員を統率するだろう。

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USG Strategy for Engaging the New DPJ-Led Government
民主党政府に対応する米国政府の基本政策
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2. (C) Over dinner with DPJ Diet Affairs Committee Chairman Kenji Yamaoka, Assistant Secretary Kurt Campbell laid out the USG strategy for engaging the new DPJ-led government and asked for advice on how best to proceed. He stressed that the USG would be in listening mode, was willing to be flexible in a number of areas, but in a limited number of areas, had less flexibility requiring us to proceed with caution.

山岡賢次民主党国会対策委員長との晩餐会で、カート・キャンベル国務次官補は、民主党新政府に対応する米国政府の基本戦略を示し、最善へと進む手法について示唆を求めた。彼は、米国政府が相手の話を聞く状態にあることを強調し、各種領域で柔軟に対応する用意があると述べたが、用心してことにあたる必要があるので、限定された領域ではさほど柔軟性は持っていない。

Through a series of high level engagements culminating with the President's visit in November, our overall goal will be to show that the alliance is moving forward, focused on common interests and cooperation, and not bogged down in disputes.

11月の大統領訪問で頂点に達する一連のハイレベル協議で、同盟を前進させ、共通の国益と強調に焦点をあて、討論で明け暮れることないよう、明示することが私たちの全体的な目標となるだろう。

In public we will support the DPJ's stated goal of an equal partnership with the U.S. and encourage a strong independent Japanese foreign policy including better relations with the ROK and China. We will also focus on preparations for the 50th anniversary of the security alliance.

民主党の説く米国との対等のパートナーシップという目標を私たちは公的に支援し、外国政策でも、韓国と中国との良好な関係も含め、日本が強く独立することを勇気づけるだろう。また私たちは日米安全保障条約50周年記念の準備に焦点を当てるだろう。

A/S Campbell flagged as areas of concern MOFA's announced intention to pursue historical issues related to the so-called secret agreement on the introduction of nuclear weapons into Japan, implementation of the base realignment agreement in Okinawa/Guam, revisions to the SOFA agreement, host nation support, and Japan's decision to suspend the SDF's Indian Ocean refueling missions.

キャンベル国務次官補が警告するのは次の諸点である。日本への核兵器持ち込みについて秘密協議と呼ばれる歴史問題を追究しようと外務省が発表したこと、沖縄・グアムの基地移転協議の推進、駐留米軍地位に関する協定の見直しや思いやり予算の見直し、加えて自衛隊によるインド洋上補給作戦を日本が中断する決定。

A/S Campbell noted Yamaoka's close relationship with DPJ General Secretary Ozawa and said he hoped to develop a close relationship with Ozawa going forward.

キャンベル国務次官補は山岡が民主党幹事長小沢と親密な関係にあることに注目し、彼は小沢と今後も親密な関係を築きたいと述べた。

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Indian Ocean Re-Fueling
インド洋上再補給
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3. (C) Yamaoka said due to political sensitivities, the government could not extend the refueling missions beyond the January 2010 expiration of legal authority. However, he noted that he and others in the DPJ had long felt something else could be done to assist U.S. led efforts in Afghanistan and Pakistan.

政治的に微妙な問題であることから、民主党政府は法的期限の2010年1月を越えてまで燃料再補給任務の延長はできないと山岡は述べた。しかし、彼とその他の民主党議員は、アフガニスタンとパキスタンでの米国主導の努力を援助するために何かなすべきだと切実に思っていた。

But whenever he proposed something, MOFA bureaucrats opposed it because of perceived risks to the SDF. That is why they favored the refueling mission, he said. Yamaoka said both he and Ozawa felt that if the SDF was unable to risk any casualties, they were useless. He said Japan's contributions to the U.S. efforts to date had been largely empty for this reason.

しかし、彼が何かを提案した時はいつも、外務省官僚は自衛隊に危険が及びうるとして反対した。彼らが燃料補給作戦を好んだのはこうしたわけだったと彼は語った。山岡によれば、彼と小沢の両氏は、もし自衛隊が犠牲者を伴う危険に挑めないなら、自衛隊は無用であると述べた。これまで米国努力への日本の貢献の大半が空手形であったのはこうした理由だと彼は述べた。

Yamaoka advocated in depth discussions to develop alternatives for Japan's contribution, which he hoped could be completed by the end of January when the leagl authority expired. A/S Campbell noted it would be far better if such discussions could lead to agreement in advance of the President's visit. Yamaoka appeared somewhat taken aback by this earlier timetable but he then said he would try his best.

日本が貢献できる代案に向けて突っ込んだ討議すると山岡は述べた。それを期限切れになる1月末までには遂行したいと望んでいた。米大統領訪日前にそのような討議から合意ができるなら非常に好ましいとキャンベル次官補は述べた。山岡はスケジュールが急を告げていることで面食らったようだったが、最善を尽くすと述べた。

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Okinawa Base Issues
沖縄基地問題
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4. (C) Commenting on the FRF implementation, Yamaoka said that the anti-base sentiment in local communities was very high and the best way to proceed was for the new government to make clear to the Japanese public the vital role the U.S. bases perform in defending Japan, and that they are not forced on Japan.

在沖米軍基地移転縮小実施について、山岡は、沖縄社会の反基地感情が非常に強く、最善の対処方法は日本防衛における米軍基地が果たす重要な役割を日本の公衆に明示することだと述べ、日本に強要されないとも述べた。

To maintain the full function of the bases, Japan needs to clarify its own strategic role. To do so, the U.S. and Japan should engage in a broad strategic discussion where the U.S. lays out its overarching foreign and security policy and explains how it sees Japan fitting into it.

米軍基地の十分な機能を維持するために、日本は自国の戦略的な役割を明確化する必要がある。そのためには、米国と日本は広範囲な戦略議論を展開すべきであり、その議論で米国は包括的な外交・安全政策を示し、そこに日本がどのように収まるかが説明されることになる。

Maintaining the status quo will damage our relationship and lead to a slow decline in support for the alliance. We need to adopt a new approach that will ultimately enhance the U.S.-Japan alliance, he said. Although this approach may seem difficult at first, ultimately, it is best for the alliance.

現状維持は私たちの関係を損い、同盟支持を次第に弱体化させるだろう。私たちは日米同盟を最終的に強化する新手法を採用する必要があると山岡は言った。この手法は当初は難しいだろうが、最終的には、同盟にとって最善である。

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Nuclear Secret Agreement and Japan's Three Non-Nuclear Principles
秘密核合意と日本の非核三原則
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5. (C) Yamaoka stated that the DPJ won the election because it promised a change in the way the LDP conducted business. Therefore, it is important to be transparent about the "secret agreements" struck in the past.

自民党のやり方を変えると民主党が約束したから、民主党は選挙に勝てたのだと山岡は述べた。だから、過去に結んだ「秘密協定」を公開することが重要なのである。

For political reasons, some in the DPJ like Hatoyama and Okada might want to take this a step further by enshrining Japan's three non-nuclear principles into law. However, Yamaoka said, he and Ozawa believe the goal should be to convince the public to accept that the introduction of nuclear weapons may be necessary from time to time.

政治的理由から、この公開を鳩山や岡田といった民主党員は非核三原則を法制化するための一歩と望んでいるかもしれない。しかし、山岡と小沢は、核持ち込みが必要かもしれないと日本の公衆が受け入れるよう、折を見て、説得することが民主党の目的だと確信していると山岡は述べた。

The DPJ has no intention of allowing this issue to impact current declarative practices or the choice of propulsion systems on U.S. vessels entering Japanese ports, he said. Ozawa has the real power to control the DPJ's course on this issue via his discipline over the new members, he declared.

民主党としてはこの問題で、現行の明白な実施や日本の港湾に入る米軍船舶の推進システム選択に影響を与える意図はないと山岡は述べた。この問題については、小沢は新議員を統率することで民主党を意のままにする実力を保持していると山岡は明言した。

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China
中国
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6. (C) Yamaoka said the DPJ had long cultivated good relations with China, and that he had played a key role in Ozawa's successful visit to China when Ozawa met Chinese President Hu Jintao "and was treated like a future leader of Japan."

民主党は長期にわたり中国との良好関係を築いてきたと山岡は述べ、小沢の中国訪問成功で山岡が主要な役割を果たしたとも述べた。訪問では、小沢は胡錦濤主席と会談し、未来の日本の指導者として扱われた。

In contrast, he said, the USG had not accorded Ozawa similar treatment and, had in fact, refused to arrange meetings in the U.S. for him earlier this year.

対称的に、米政府は小沢を同等に待遇せず、それどころか、この年始めに小沢との会談に一席設けることを拒んだのだと山岡は述べた。

Ozawa thus has not developed reliable channels of communication with the USG. A/S Campbell promised to talk frequently with Ozawa and invited him to visit Washington. Yamaoka also noted that the DPJ has long-standing ties to the U.K. where Ozawa will visit later this month. Yamaoka said he chaired the Japan-U.K parliamentary league.

だから、小沢は米政府と信頼できる対話手段を持ち得なかった。キャンベル次官補は小沢と頻繁に対話すると約束し、彼にワシントンを訪問するよう招待した。山岡はまた、小沢が今月末訪問する英国に対して、民主党は長年の絆を持っているとも述べた。日英の議会連盟の座長をしているのは私だとも山岡は述べた。

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Ozawa Still Smarting over Failed U.S. Visit
小沢は訪米の失敗に拘っている
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7. (C) Confident of a DPJ victory in this summer's Lower House election, Ozawa had hoped to engage U.S. leaders ahead of the election in a broad strategic discussion foreign policy priorities and possible new roles for Japan under a DPJ government.

この夏の参院選挙で民主党の勝利を確信しつつ、小沢は、選挙前に、広範な戦略的議論と優先外交政策、さらに民主党政権下の日本の新しい役割の可能性について米国の指導者を関与させようとしていた。

That is why he agreed to meet Secretary Clinton during her visit to Japan earlier this year, Yamaoka said, and tried to follow up with a visit to the U.S.

年初クリントン国務長官の訪日時に小沢が面会を同意したのはこうしたわけだったし、訪米もまたその継続として試みられたと山岡は語った。

However, that trip didn't materialize and Ozawa was forced to resign as party president due to financial scandal. Yamaoka claimed that the failure to be seen as engaging with the U.S. at high levels may have contributed to pressure for Ozawa to resign as party president.

しかしその旅行は具体化せず、小沢は、資金疑惑で党の総裁を辞任するよう強いられた。米国とのハイレベルの関係構築が失敗したことが、小沢の総裁辞任への圧力になったのではないかと山岡は語った。

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Ozawa's Role
小沢の役割
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8. (C) According to Yamaoka, Ozawa is the most powerful figure in the DPJ and will likely become even stronger if, as expected, he engineers a DPJ victory in the next Upper House election. There is a good possibility that Ozawa will return as Prime Minister after Hatoyama. He would probably be PM today had he not been forced to resign the Party presidency. Now it will take some additional steps.

山岡によれば、小沢は民主党で最強力の人物であり、期待通り彼が次の参院選挙で民主党を勝利を工作できれば、さらに強くなるだろう。鳩山後に小沢が総理大臣として返り咲く可能性もかなりある。彼が民主党総裁辞任を強要されなければ、今日総理大臣であったかもしれない。今となってはその実現までにさらなる段階を要する。

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The Style of DPJ's Leadership
民主党指導者のスタイル
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9. (C) Hatoyama and Okada have quite different personalities and communication styles, which can make it difficult to interpret their messages. Hatoyama tends to be softer, while Okada can come across as stiff and will often tersely say "I cannot answer that."

鳩山と岡田はまったく違う性格と対話のスタイルを持っていて、このスタイルで彼らの意図を解釈することが難しくなっている。鳩山は柔和になろうとするが、岡田は堅物の印象を与え、しばしばぶっきらぼうに「僕には答えられません」と言ってしまう。

Ozawa is informal and values substance over form. He is not particularly rank conscious as long as he is able to engage in productive discussion. But he often has trouble communicating his ideas, since he often jumps directly to his conclusions without explaining his reasoning. I can often explain his ideas better than he can, joked Yamaoka.

小沢は形を廃し、実利を取る。彼は実りある議論に参加できるなら、地位を問わない。しかし、彼は自身の考えの伝達に失敗してきた。彼は理由の説明もなく直接結論を持ち出すからである。山岡の冗談ではあるが、山岡のほうが小沢本人よりもその考えを説明できるとのことだ。

All three are very pro-U.S. and understand the critical role of the U.S.-Japan alliance. Despite tactical differences with the former government, there should be no doubt, Yamaoka said, our intention is the same as yours--to strengthen the alliance.

この三人とも非常に親米的であり、日米同盟の重要な役割を理解している。前政府との戦術的な違いにもかかわらず、疑念を持つべきではない。山岡によれば、民主党の意図は米国と同じで、同盟の強化にあるとのことだ。

Yamaoka said both he and Ozawa believe the problem with Japanese diplomacy is that it was run by MOFA bureaucrats, and there has been very little contact at the political level between the U.S. and Japan regarding foreign policy.

山岡によれば、日本外交の問題は外務省官僚が仕切っていることだと山岡と小沢は確信しているとのこと。おかげで外交問題について日米間で政治的レベルの接触がほとんどなかった。

10. (C) Participants: Kenji Yamaoka Yuka Uchida, DPJ International Division Kurt Campbell Jim Zumwalt, DCM Kevin Maher, Japan Desk Director Rob Luke, Political M/C Mark Tesone, Special Assistant Yumiko Miyazaki, interpreter

11. (U) This cable has been cleared by Assistant Secretary Campbell. ROOS

この公電は、キャンベル次官補も目を通している。

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2011.05.04

[書評]光と風と夢(中島敦)

 高校の教科書には今でもおそらく収録されているだろう「山月記」の作者・中島敦の主要著作は何かと問えば複数の回答があるだろう。絶筆となった「李陵」、独自のユーモアで描かれる「南島譚」、処女作の才気溢れる「古譚」。しかし、どうしても外せないのは、長編小説といってよいと思うが、「光と風と夢」である。

cover
中島敦全集〈1〉
ちくま文庫
 当時芥川賞に落選したことからも評価の難しい作品でもあるだろう(参照)。私も十代にたしか角川文庫で読み、後、ちくま文庫の全集が出た頃にも読んだが(参照)、華麗な文体と衒学的な趣味に惑わされ、今ひとつ全貌が理解しづらい作品に思えた。が、先日から、iPhoneアプリのi文庫で嘗めるように読み返し、昨日読み終えて圧倒的な感動を覚えた。
 不思議な構成の作品でもある。「宝島」で有名な英国作家スティーヴンソン(Robert Louis Balfour Stevenson)の、オセアニアのサモアで暮らす死に至るまでの数年間を描いているのだが、一人称で書かれる日記と三人称で書かれる描写とが、だいたい交互に章で入れ替わる。今回読み返してはっとしたのだが、この構成は、人間の想像力というものを多元的に描こうとする村上春樹作品の先駆的な実験であるようにも思えた。
 本書が取っつきづらいとすれば、まずこの構成によるものだろう。現代の読者はすでに中島敦の名声と、漢文にも見えるような華麗な文体を想定している。この作品でもそうした文体の妙技は息づいているのだが、微妙に、これはなにか英文の原作を翻訳したのではないかという錯覚にとらわれてしまい、奇妙に期待をはぐらかされた気分になりがちだ。
 スティーヴンソンのサモアでの生活は、実際にスティーヴンソン本人が書いたものに過ぎないではないか。この作品はそれに中島敦の批評的なコメントを混ぜ合わせただけではないか。そう思えてくるほどに、確固たる世界が最初から打ち立てられてくるのを、どう受け止めてよいのか。困惑がまず迫ってくる。
 おそらく原典は存在しないだろう。可能なかぎり、スティーヴンソンの史料は駆使されているだろうが、これはスティーヴンソンになりきった中島敦による虚構の日記なのだろう。そこで、愕然とする。なぜこんな完璧な虚構が描けただろうか。
 困惑するのはそれがいかに完璧であっても、ただの偽装的な趣味であってはつまらないし、そう読まれうる危険性は孕んでいる。しかし、中盤を越えて、本作品に仕組まれている大きなプロットがうごめきだすあたりから、じわじわと本格的な文学の衝撃波が伝わってくる。なんという巧緻な虚構か。なんという壮大な想像力か。こんな巨大な文学的な試行があの時代の日本文学でどうして可能だったのか。

一八九一年五月×日
 自分の領土(及びその地続き)内の探検。ヴァイトゥリンガ流域の方は先日行って見たので、今日はヴァエア河上流を探る。
(中略)
しばらく進むと、纍々たる溶岩の崖に出くわす。浅い美しい滝がかかっている。下の水溜りの中を、指ぐらいの小魚の影がすいすいと走るざりがにもいるらしい。朽ち倒れ、半ば水に浸った巨木の洞。渓流の底の一枚岩が不思議にルビイのように紅い。
 やがてまたも河床は乾き、いよいよヴェニア山の嶮しい面を上って行く。河床らしいものもなくなり、山頂に近い台地に出る。彷徨することしばし、台地が東側の大峡谷に落ち込む縁のところに、一本の素晴らしい巨樹を見つけた。榕樹だ。高さは二百フィートもあろう。巨幹と数知れぬその従者ども(気根)とは、地球を担うアトラスのように、怪鳥の翼を拡げたるがごとき大枝の群を支え、一方、枝々の嶺の中には、羊歯・蘭類がそれぞれまた一つの森のように叢がり茂っている。枝々の群は、一つの途方もなく大きな円盤だ。それは層々纍々と盛り上って、明るい西空(すでに大分夕方近くなっていた)に高く向い合い、東の方数マイルの谿から野にかけて蜿蜒と広がるその影の巨きさ!

 中島敦はこれをただ想像力だけで描いている。しかもその描写は完璧といっていいほど正確であり、SF的だとも言える。南方世界の描写以外に、スティーヴンソンの故地であるスコットランドの風土も同様の筆力で描かれる。ただただ美しい。
 こうした描写に圧倒的な力を感じたのは、ふと振り返ると、私も南方の生活でこれらの奇跡的な色彩と圧倒的な自然を経験したからだと言える。気がつけば、中島敦がその生涯で渇望した自然のなんたるかを自分でもなぞっていたのだった。
 物語は中盤からサモアの政争に移る。ここは率直にいって、退屈な歴史書を読むような単調さもあるのだが、これがこの物語のバックボーンを形成していくからくりがわかると、なんというのか、アシモフ的な巧緻なたくらみが見えてくる。
 スティーヴンソンに憑依したかに見える中島敦だが、やがてスティーヴンソンを食い破るように、能の世界の亡者のように自分の舞を踊り出す。

満十五歳以後、書くことが彼の生活の中心であった。自分は作家となるべく生まれついている。という信念は、いつ、また、どこから生じたものか、自分では解らなかったが、とにかく十五、六歳ごろになると、すでに、それ以外の職業に従っている将来の自分を想像して見ることが不可能なまでになっていた。


彼はほとんど一日としてものを書かずには過せなかった。それはもはや肉体的な習慣の一部だった。絶え間なく二十年にわかって彼の肉体をさいなんだ肺結核、神経痛、胃痛も、この習慣を改めさせることは出来なかった。肺炎と坐骨神経痛と風眼とが同時に起った時、彼は、眼に繃帯を当て、絶対安静の仰臥のまま、囁き声で「ダイナマイト党員」を口述して妻に筆記させた。

 中島敦の文学とは何か。あえてひと言で言えば、人がものを書くということの妄念の姿である。これが自身と死の形を決定していくなら、受け入れるほかはあるまいという壮絶な生の覚悟の姿でもある。むしろ、そうした中島の姿に近似な虚構としてスティーヴンソンが選び出された。

 私は長く生き過ぎたのではないか? 以前にも一度死を思うたことがある。ファニイの後を追うてカリフォルニア迄渡って来、極度の貧困と極度の衰弱との中に、友人や肉親との交通も一切断たれたまま・桑港の貧民窟の下宿に呻吟していた時のことだ。その時私は屡々死を思うた。しかし、私は其の時迄に、まだ、我が生の記念碑ともいうべき作品を書いていなかった。それを書かない中は、何としても死なれない。それは、自分を励まし自分を支えて来て呉れた貴い友人達(私は肉親よりも先ず友人達のことを考えた。)への忘恩でもある。それ故、私は、食事にも事欠くような日々の中で、歯を喰縛りながら、「パヴィリヨン・オン・ザ・リンクス」を書いたのだ。所が、今は、どうだ。既に私は、自分に出来るだけの仕事を果して了ったのではないか。それが記念碑として優れたものか、どうかは別として、私は、兎に角書けるだけのものを書きつくしたのではないか。

 中島敦はおそらくこの小説をそうした気概をもって書いていた。結局のところ33歳で死ぬことになる彼は自信の死をそう見つめるしかなかった。
 終盤、サモアの事件の惨めな結末と、病苦のなかで打ちのめされそうになるなか、最後の恍惚が訪れる。それは中島敦が希求したものなのか、彼自身が人生の最終に得ようとした、あるいは得たものだったのか。
 43歳で死と恍惚に取り憑かれたスティーヴンソンを描く、33歳でこの世を去る目前の中島敦。その思いを、さらに十年ほど人生の渓谷を越えてしまった53歳の私は、奇っ怪に、さみしく思う。だらだらと生き延びてしまった私の人生とはなんだったか。
 いや、比べようとしているのではない。生というものが魅せる、恐るべき閃光の真実がそこにあったのだと、彼らの文学の前で立ち尽くすのである。「トファ(眠れ)! ツシタラ。」と私も言おう。
 この小説は、発表時「ツシタラの死」であったが、それだけでは意味がわからないとのことで出版社と折り合って現在の表題となった。経緯は「李陵」にも似ている。ある明確な文学的なコンセプトが表題を拒絶してしまうのだ。
 「ツシタラ」とはサモアの言葉で「物語の語り手」を意味する。「物語酋長」と言ってもよいかもしれない。スコットランドのカルバンの精神風土に育った西洋人が、オセアニアの島の物語酋長として死んでいく物語である。
 それを以前は、私は、異国情緒としての小説の小道具のように思った。今回、南方の神話と活動を読み返して、日本人の遠い原初の精神の形のようにも感じられた。中島敦は日本のもっとも古層なる物語に接近することになっていたのだった。
 すでに書いたが、今回の再読にはiPhoneアプリのi文庫を使った。電子書籍にはだいぶ抵抗があったが、おかげで自然にこの読書スタイルに慣れた。便利なのは大辞林と連携していることだ。気になることはいちいち辞書引きした。また全集ももっているので気になる部分は、その注にもあたった。注や辞書解説といったものを本文テキストにどれだけ仕組みとして反映させるかは難しいところだが、簡便な仕組みがあることが大きな助けになった。電子書籍とはよいもだなと初めて思えた。

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2011.05.03

オサマ・ビン・ラディン氏殺害

 オサマ・ビン・ラディン氏が殺害されたという話を最初見たのはツイッターだった。誤報だろうと思い、ニュースを確かめることもしなかったが、しばらくして米政府の発表を聞いた。
 ツイッターではこうした事件にありがちなことだが、不確かな情報が流れる。本人の確認は出来ていないとか、DNA鑑定は怪しいものだとか、既に死んでいたのだとか。私はその類の疑念は持たなかった。米国が全威信を賭けた点でさほど疑う必要もないもないだろうと思った。
 それでもすぐには詳細を追う気にはならなかった。何の感慨もなかったということではない。鈍い嫌な感じがしていた。無益なことをするものだという思いも多少あった。そのうち、オバマ米大統領が「我々は正義をなしたのだ」と高らかなる演説をしたとの話を聞いて、うんざりした感じが加わった。他国から軍隊がやってきてさらりと人間を殺害するのが正義というものか。
 ツイッターではいろいろな意見も見た。これでオバマ米大統領の再選が決まったという人もいた。再選については、今回の作戦がなくてもすでに決まったに等しい。右派論客で鳴らすクラウトハマーも先日悔し紛れのコラムを書いていたほどだ(参照)。対テロ戦の功績をさらに積み上げる必要もないが、アフガン戦争の撤退口実になると言うなら、名目的にはそうかもしれない。CIA長官となるペトレイアス司令官への前祝いと言えないこともない。
 実際には英国王室への配慮くらいはあっても、機を逸する危険を想定すればそれほど政治的な構図を読む事態ではないだろう。今朝になって読んだフィナンシャルタイムズ社説(参照)も「オバマ氏の政治的な展望について、ビン・ラディン殺害から多く読み解こうとすることは愚かしい("As for Mr Obama’s political prospects, it is unwise to read too much into the killing of bin Laden.")」と指摘していた。
 昨日夜七時のNHKニュースではこの話題がトップに来ていた。漫然と見ていると、ビン・ラディン氏殺害現場の映像が現れ、錯覚に気付いたような意表を突かれる感じがした。首都イスラマバードに近い市街の邸宅であったからだ。蓋を開けてみれば臆断にすぎなかったのだが、険しい山中で空爆かあるいは地上部隊であれ専門部隊の爆撃による惨状から、ごろりと死体が転がり出たような印象を私は持っていた。
 私兵が武装した市街の邸宅という状況なら、オバマ大統領はためらわずに殺害命令を下すだろう。ビン・ラディン氏はなお潤沢な資金と私兵とその指令・広報のシステムを抱えていたのだった。放置するか手間をかければ衆目のなか余計な惨事を招きかねない。現地の権力ともなんらかの関係も持っていただろうことも懸念材料だ。本来なら引っ捕らえて裁判にかけるほうがよいとしても、この構図では難しい。ジミー・カーター大統領のヘマを繰り返すわけにはいかない。
 後にBBC報道で知ったが、邸宅はパキスタンの陸軍士官学校に近く、その関連への疑念や攻略も懸念されていた。フィナンシャルタイムズ社説も同様の懸念を「パキスタン諜報機関がビン・ラディン潜伏を知らなかったとは想定しづらい("It appears inconceivable that no one in Pakistani intelligence knew of bin Laden’s hide-out.")と書いていた。パキスタン政府または軍部に反米的な勢力が存在すると見てよく、むしろそれこそが問題でもあっただろう。
 ビン・ラディン氏は殺害されるべしという米国の意志を了解しても、率直なところ、2001年9月11日の米国テロの首謀者だからという理屈は、私の思いのなかでは直接には結びついていない。日本国と同盟にある米国が、彼こそがテロの首謀者であると公式にいうのなら、それを殊更否定するものでもないという程度である。テロの資金供給は事実であろうが、計画を策定した首謀者かはわからない。
 ニューヨークのテロの後、ビン・ラディン氏による犯行を臭わせる映像を見たことがある。彼は実行犯について愚直な思い込みでテロを遂行した知恵足らぬ者と嘲笑していた。この事件に彼が強く関連しているかもしれないと思わせる雰囲気もあった。だが、テロの顛末を小気味よく語ったとしても、直接的な関与を示唆するものではない。実行犯にしても巨大ビルへの衝突は計画の内であっても、壮絶な倒壊まで想定してとは思えない。偶発的な要素もあった。
 あの大規模テロを憎むかと問われるならと、無辜の市民や日本人を巻き込む殺戮など許されざることだと答えるほかないし、今回の米国作戦に狂喜乱舞する米国市民を見てもそういうものだろうと理解はする。ただ私自身の心にはそう割り切れない何かが残る。
 その思いに奇妙な形を与えているのはひとつの記憶である。私が傾倒した思想家・吉本隆明が、あのテロを日本の神風特攻隊に模して問う人に、即座に否定せず、正確な言葉ではないが、自分ならば飛行機の乗客を降ろしてから突入しただろうと語ったことだ。奇妙な共感を覚えた。吉本氏の脳裏には、米国を生涯の敵とするとして三島由起夫にひどく遅れて自決した友・村上一郎氏の死に姿もあっただろう。
 米国を憎む情念は理知的に考えれば愚かしいとはいえ、私ですら残滓を払拭できない。それはアルカイダという旗に群がっていく多数の人々への奇妙な共感の通路をもなしている。
 ビン・ラディン氏がいなくても、アルカイダという旗さえあれば、自らの死を厭わず神風決死隊に参加する人々は絶えない。その後のロンドン爆破テロにビン・ラディン氏の組織が直接関与していたかは知らない。関与してないだろうとしても、憎悪の旗のもとに累々と人が引きつけられてしまう情念の構図はあそこにもあった。
 これらに対抗して「テロとの戦い」と呼ぼうが「正義」と呼ぼうが、情念のぶつかり合いがもたらす惨事には終わりはない。逆に憎悪への共感の止揚なくしてこの地上に平和などないだろう。
 とはいえ冷静に見れば、この直裁的な処罰を機にアルカイダの活動は弱化するだろうと思う。ナンバーツーで実力を持つザワヒリ氏が残るとはいえ、ビン・ラディン氏ほどのカリスマはない。カリスマがなければ多数の人間に宗教的な行動を強いる集約的なエネルギーは生じない。カリスマは歴史に現れる希有な存在である。
 ビン・ラディン氏は54歳だった。私と同い年である。サウジ王家と関係も深い富裕家系でカネに困ることなく英国でも教育を受けた。青年時代の痩せた、慎み深い印象の浅黒い相貌の写真は印象深く記憶に残る。彼と面識などありようもないが、私ですらそういう非西欧国のお坊ちゃんの類型は想像できる。仮に青年時に共に語ることがあれば非西欧文明に生まれた知性の限界と自身の欺瞞について共感もありえただろう。彼がそれをどのように精緻な反米情念に仕立て上げたのか、その内面の展開はわからないが、テロ事件を重ねるにつれ、落ち着いた態度ではいても狂信者にありがちなぞっとする雰囲気を漂わせるには至った。突き詰めればカリスマというものの作用だろう。
 彼の死体は、読売新聞記事「ビンラーディン遺体は海へ投棄、DNA確認後」(参照)では、表題からもわかるが「投棄」と語られてた。それではイスラムの人々への侮蔑になろうかと懸念したが、BBCの報道からは簡素ながらイスラム法に則っとった埋葬儀礼がなされたようだ。
 埋葬といっても海に流すということに変わりない。生前に周恩来や鄧小平のように海への散骨を命じるほどの余裕も静謐さもこの「聖者」には無縁だっただろうし、米国の思惑は、レーニンや毛沢東のような聖なる遺体への信仰や埋葬地への信仰を絶とうとするものだっただろう。
 ビン・ラディン氏殺害を国際的な事件として見るなら、対パキスタン情勢との関連が問われる。パキスタン政府が今回の事態にどうように関与したか。印象でしかないが、関与していないわけもないが、関与は公言されることもないだろう。
 米国の関心も、現実的にはビン・ラディン氏の始末より、パキスタンが保有する核の管理にあり、パキスタン国内の反米的勢力に懸念を抱いている。その点で今回の事態は、彼らへの強い威嚇にもなり、米国の戦略の駒を上手にひとつ分だけ進めたことになる。。
 国によっては威嚇も感じない剛胆なる独裁者もいるが、我が隣国の小心なる独裁者は身震いしただろうし、中東にいるその友人の独裁者も悪寒くらいは感じただろう。

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2011.05.02

[書評]日本復興計画(大前研一)

 本書「日本復興計画(大前研一)」(参照)は、一昔前の言葉でいうと緊急出版というのだろう。英語だと"hot off the press"という感じか。それだと普通に新刊というだけか。公衆に意見・思想を伝えるのは、出版としてのthe pressであった時代があった。だから、市民のその権利を守るために"Freedom of the press"が問われ、その時代は「出版の自由」と呼ばれたものだった。今でも古い時代の文書にその言葉が死語になって残っている。

cover
日本復興計画
大前研一
 現代で"Freedom of the press"をいうなら「報道の自由」であろう。そして、現代で「報道の自由」というなら、sengoku38さんの顰み倣うまでもなく、ユーチューブということになるだろう。オピニオンリーダーである大前研一さんも、そうした。「東日本巨大地震 福島原発半径20km以内の住民に避難指示(3月13日収録)」(参照)である。
 これが本書の言葉を借りれば、こうなった。

ホリエモンや、池田信夫など、いわゆるアルファブロガーと呼ばれる人たちが、ツイッターやブログで紹介をし、あっという間に放送の評判は広まった。

 かくしてそれを元に本書が出来たということらしい。
 大前さんのこのユーチューブ講義が掲載されたのは3月14日のことだった。私もその日にツイッターで知って見た記憶がある。印象はというと、「ああ、私と同じこと考えてら」というものだった。その前日、震災と原発事故についてのエントリを書いたところ、よくわからないバッシングを多数いただき、私の考えというのはそんなに変なものかと疑問に思っていたので、大前さんだって同じ事、考えていたではないかと安堵したのだった。
 例えば、スリーマイル事故から映画「チャイナ・シンドローム」をひいて、

まあ、あれは虚構の物語であったけれど、ウラン酸化物が摂氏二七〇〇度の超高温で溶けて火の塊になり、それが鉄をも溶かしてしまうのは事実である。そうした臨界事故、いわゆる核暴走を防ぐためにボロンを含む大量の水を注ぐ必要があるのだ。

 あの時点で臨界事故の可能性を想起し防ごうというのはごく普通のことだよねと私は思った。大前さんは言及してないが、後に見たアレバの資料では、あのとき2700度には達していた。
 本書にも収録されている19日の講義ではこうも言及されている。燃料被覆のジルコニウムについて。

 ジルコニウムに関しては、さらに深刻な懸念もある。ウランの酸化物を入れた容器はジルコニウムで出来ていて、そのジルコニウムがボロボロになると、ウラン酸化物入りのペレットが圧力容器の底にバラバラと落ちてきてしまう。底は丸いフラスコ状になっているために、ウラン酸化物が底に溜まると、これは再臨界(核暴走)となる惧が出てくるのだ。燃料というものは、丸いかたちに集まると臨界状態になりやすく、暴走しやすい性質をもっているからだ。中性子のふるまいは、球状の場合が最も効率よく、活発になる。

 これも普通にそういうことだと思っていたので、そうだよねと思ったものだった。
 14日の講義の原子力の見通しについても、共感した。

民主党政権は、日本国内では二〇三〇年までに少なくとも十四基以上の原子炉の新増設を行うことと、新興国を始めとする電力需要の多い国へ原子炉を輸出していくことを宣言していたが、この段階でそれは全て終わったということだ。
 まず、国内に新しい原子炉を建設することは、もう不可能だ。

 そう私も思った。私が12日に「絶望的」とつぶやいてしまったのはこのことであったからだ。
 次のような指摘も興味深い。

 以上は私の現時点(三月十九日)での各種データからの推測だ。福島第二原発のほうは津波の被害を受けていないので、炉が停止しても非常用電源が立ち上がった。外部電源は福島第一と同じ変電所から来ているので、これは津波の前にすでに地震で落ちてしまっていたと考えられる。なぜ福島第一の非常用電源施設が使用不能になったのかは、被曝の惧れなく炉に近づけるようになってから詳しく調べれば判明するだろう。

 だいたい予想は付きますがね、これは。
 本書で文章の形で大前さんの当時の話を読みながら、あの時点のことをいろいろ想起した。この本は重要史料となるだろうとも思った。
 かくして本書の大半は、福島原発事故の解説と原子力問題の展望が中心に描かれ、表題の「日本復興計画」についてはそれほどの言及はない。
 あるいはその部分については、皮肉な意味はないつもりだが、大惨事に関わらず基本的には、いつもの大前さんの持論が書かれているに留まっている。もう20年以上もまえから変わらない、ゼロベースの日本改造論とも言える。もちろん、災害対策のための立法などの議論がまったくないわけではなく参考にはなる。
 象徴的な部分としては、あるいは私もへえと思ったのは、次のような言及である。

 また、子どもを私立にやるために投資して、それでペイすると思えるだろうか。幼稚園から大学まで私立に通わせると二千四十七万円。すべて国公立なら七百九十三万円(いずれも文系)。両者の差が千三百万円。子どもがふたり居たら二千六百万円。それよりも、私立にやる代わりに、親が家で子どもの勉強を見てやる時間を作る。すなわち、授業料ではなく時間で投資する方が、よほど実りは大きいのではないか。人生観や将来観を共有した親子、このほうがはるかにリターンは大きいと考えるべきだろう。だいたい、子どもは金をかければかけるほどスポイルされる。

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。なかなか微妙な話ではある。が、時間は投資だというのは、概ねそうかもしれない。金はないが時間はあるなら、金持ちならぬ時間持ちだ、えっへんというのも悪くはないだろう。いや、それだと、大前さんの主張される日本の成長とはちと違うか。
 大前さんはおそらく私と同じく、どっちかといえばリバタリアンであろう。

 個人は最小経済単位だ。あるいは家族が最小の経済単位だ。政治家に頼ってはいけない。政府に頼っていてもいけない。国がなんにもしてくれないおとは、すでに明らかだ。自分自身だけが頼みの綱として覚悟を決める。そうしなければ、この日本も元気になりえず、復興もありえない。

 これも概ね同意する。
 ただ、私が今回の大震災・原発事故で思ったのは、大前さんの気概とはずれていて、緩和で穏健なナショナリズムというのを構築するしかないんじゃいかなということでもあった。海外から「ニッポン、がんばれ」と言われて、「うん、ニッポン、がんばる」くらいは普通に言えてもいいように思えた。助けにきた米軍とそれを支える家族の方にもっと謝意を伝えるべきだったとも思った。
 それには、「ニッポン」の政府・行政にもう少しくらい、国民が信頼を置かなければいけないだろう。さて、それをどう確立するんだろうか。そのあたりに、日本復興計画の精神基盤がありそうにも思えた。それが見えるかというとよくわからないのだが。

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2011.05.01

メア氏問題の背景

 この問題は表層的に論じられている奥のほうに、つまり米国政府内になんらかの問題がありそうなわりにそこが見えないので言及しても意味がないと思って控えていたけど、さすがに連続するとばっちりにうんざりしてきたので、少し補足しておこうかと思う。
 とばっちりというのは例えばこういうのである(参照)。


usi4444 沖縄, finalvent 講義を聴いた英語のネイティブ・スピーカーである学生達や准教授が差別的だと感じたのに、finalventさんは何で必死に誤魔化そうとしているの? 2011/05/01

 「これはひどい」で悪名高きはてなブックマークコメントのひとつであり、コメント先は「メア氏講義メモ私訳: 極東ブログ」(参照)である。私訳したのは、「ごまかしとゆすり」というメディアの訳語が一人歩きしているので、この時点で可能なかぎり妥当な文脈を捉えてみようとしただけにすぎない。私のメディアに対する警戒感がわかる人なら、またやってるねくらいの話である。
 このコメントだがツイッターに連動しているわけでもなく返信もできないので、ブログのお作法としてはスルーしとけばいいだけのことなのだが、それにしても「finalventさんは何で必死に誤魔化そうとしているの?」は、呆れた。あれを思い出す、「ねえ君、最近は奥さんを殴るのやめた?」
 さて、どう答えますか。イエスかノーかで答えるとすると、イエスなら「うん、やめた」、ノーなら「いや、やめてない」。どっちも殴ってるんやんかぁ、である。つまり、そういう愚劣な修辞疑問であり、こういうのを匿名に近いコメント欄に書くのはどうなんでしょというだけのことではある。
 だからそんなことはどうでもいいし、私はなにも「必死に誤魔化そう」としているわけでもないが、こう書くと「ほら内心では誤魔化そうとしている」「信仰告白」「山本七平メソッド」とか愉快な展開になりそうだが、関心はそちらではなく、「講義を聴いた英語のネイティブ・スピーカーである学生達や准教授が差別的だと感じたのに」のほうにある。実はそこにも問題がある。このノートの信憑性についてだ。
 私の評価としては、このノートの信憑性は低い。理由は簡単で、このノートはメア氏の講義を聴講した5人の共同作業の合議で出来ているからだ。証言の信憑性を問うなら、合議は排除されなくてはならない。後で述べるが、今回のメア氏問題の最初の報道であり、おそらく報道を開始したのは共同通信であると思われるが、共同通信がジャーナリズムたろうとするのであれば、まずこの5人への聞き取りをして、さらに他の聴講者からの聞き取りもしなければならない。次にジャーナリズムの観点でそれを共同通信の責任で提出しなければならない。そこがなされずして、この合議の他方だけの証言が出て来たことに、私などは恐怖を感じざるを得ない。
 特定の集団から合議で出された証言は、比喩的に言うのだが、共謀のような性格をもちうる。その点ですでに信憑性が低いのである。こんなことは聖書の編纂史を多少なりとも知っている人間には常識であって、多数の写本が同じことを語っていても、それは、同一教団の内部文書か、ただのコピー的な写本でしかなく、たった1つの別系列の写本が原典に近いことがありうる。
 さらに問題なのは、これも裁判を想定してもらえばわかることだが、メア氏本人からの釈明がこの時点では一切登場していないことだ。メア氏からの証言は出ていない。なのにこの一方からの証言だけが真実であるかのように喧伝されるのは、魔女裁判と同じ構造をしていることになる。これは私などにはぞっとする事態であり、finalventさんが必死であるかのように見えるなら、魔女裁判の構図を避けたいがためであり、誰も進言しないのなら、私がDevil's advocate(参照)になるかというわけである。かくして、福島居住者の差別のように放射能汚染ではないえんがちょ汚染で私もバッシングされることになった。というか、こう考えてみると私がバッシングされなければ、この魔女狩りの構図は見えてこない。
 幸いというかメア氏本人の証言がようやく出て来た。WSJの「【ビデオ】沖縄発言は誤解=米国務省メア元日本部長が反論 - Japan Real Time」(参照)である。これで形なりでも双方の証言が登場したとほっとして、次のように私は感想を書いた(参照)。

 実際の講義がどうであったかは、依然わからないが当人談話が聞けるのはよいことだ。
 びっくりしたのだが、あの流布された、5人で作成された講義ノートは講義後2か月後に作成されたとメア氏が述べていることだ。
 私はあのノートの信憑性はかなり薄いと見ている。いつ作成されたかもわからないし、作成された経緯、つまり原資料がどういう構成になっているかもわからないからだ。

 するとこれに対してこう、はてなブックマークコメントが付く(参照

kanose 国際 なんでメア氏を積極的に擁護しようとしているのか、よくわからん…。誰か解説を! 2011/04/26
zu2 「私自身もA4判のノート10ページにわたってびっしりとメモを取っており....一字一句とまでは言わないが、重要な部分は間違いなくメア氏の発言通りだ」 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-176165-storytopic-3.html 2011/04/17
a-lex666 2011/04/17
Cujo これはひどい, blog 『5人で作成された講義ノートは講義後2か月後に作成された』つまりその必要があると彼らがその時期に考えたということくらいだわな信ぴょう性とまったく無関係に言えるとするならば。 2011/04/17
Tez アレな人シリーズ メアが罪滅しとばかりにUSAIDの調整役を買ってでてそのごひっそりと依願退職したことを以て擁護するのかと思ったら斜め上だった.富田メモ状態. 2011/04/177 clicks
lakehill 端的に言ってこの人のダメさがなんなのか判った気がする 2011/04/16
custardtarte これはひどい, ブロガー, finalvent 七平メソッド…でいいのかしら? 2011/04/16
Apeman 信仰告白乙。 2011/04/1694 clicks
opposer 詭弁当おじさんの殺活孔芸が炸裂というお話 2011/04/16
buhikun 沖縄, 基地, 日米関係, ブロガー, これはひどい, 呆れた ポジショントーク乙/※欄必死やな(嘲 2011/04/166 clicks
Cunliffe あほか, これはひどい 事実に反してまで誰に肩入れするかでその人の政治的立場がわかる。これはそのいい例。 2011/04/16
dj19 メアの発言を鵜呑みにしてるが、同席していた指導教官のデービッド・バイン准教授が「私も丁寧にメモを取ったが、報道の根拠となった学生作成の発言録は極めて正確だ」とすでに指摘済み。 2011/04/16 16

 双方の意見から事実を考えようという発想はこれらのコメントには見られない。信仰告白乙は誰に言うべきか。ごらんのとおり、私へのバッシングの文言が目立つ。
 以上は前振りであって、メア氏発言の発言の背景ではない。すでにメディア関係者には既知のことではあると思うが、知らない人もいるかもしれないので、厳密なものではないが、簡単に背景まとめておこう。言うまでもないが、私はメア氏を擁護したいのではなく、ジャーナリズムのありかたに関心がある。
 メア氏発言報道の構図がわかりやすいのは3月11日付け読売新聞記事「「ゆすり」発言 米、異例スピード更迭 沖縄、怒り収まらず」である。ネットには掲載されていなかったようだ。

 「今朝の一連の会談は、いろいろな理由で、ほろ苦いものだった」
 キャンベル米国務次官補は10日、松本外相、北沢防衛相らに陳謝を重ねた後、在京米大使館で記者会見に臨むと、冒頭、力無く切り出した。
 春の大型連休中の開催で最終調整中の「日米安保協議委員会(2プラス2)」に向け日米同盟の修復を急ぐ米政府にとって、メア氏が起こした騒動は「米側が同盟を機能まひさせる原因を作ったという意味で、耐え難いものだった」(日米関係筋)という。
 異例のスピードでの「メア更迭」の決断は、普天間移設問題をはじめとする日米間の懸案に対する影響を最小限に食い止めるための苦肉の策だった。
 米政府は当初、報道されたメア氏の発言は「正確でない」(キャンベル次官補)としていた。だが、10日の会見で「国務省はメア氏の実際の発言内容を確認したのか」と尋ねられると、キャンベル氏は「この場では詳細に立ち入らない。我々の望みは、この一件を乗り越えることだ」と答え、報道内容の真偽の確認より、日米関係の早急な立て直しを最優先させている様子をにじませた。
 メア氏は駐沖縄米総領事時代の2009年、当時の小沢民主党代表が「米海軍第7艦隊で米国のプレゼンスは十分だ」と発言した際、「空軍、海兵隊、陸軍の役割をわかっていない」と記者会見で発言。米側で唯一小沢氏に公然とかみつくなど、外交官らしからぬ率直な物言いで知られていた。
 メア氏側は昨年12月に行った大学生への講義について「オフレコだった」としているが、結果的に発言内容は外部に流出した。一部の米メディアは、一連の動きの背景には、学生らが参加した沖縄への学習ツアーは、沖縄の在日米軍基地の閉鎖を呼びかける市民団体代表を務める日本人大学院生による企画だったことと無関係でないと指摘している。周辺によると、メア氏は、学生たちと反基地市民団体とのつながりについて、報道が出た後に知り、絶句したという。
 国務省筋によると、報道後の聞き取り調査で、メア氏は「私の発言の趣旨と全然違う」と釈明したという。
 発言録を作った米大学生は読売新聞の取材に、「5人の学生がとったそれぞれのメモを突き合わせており、間違いない」とする一方、「発言録は沖縄でのツアーを取材した通信社からの再取材を受け、1月から2月にかけて作成した」と述べ、講義から約2か月後に学生たちの記憶やメモに残っていた部分を再構成したものだったことを認めた。しかし、すでに日本国内でメア氏の発言が事実として伝えられ、沖縄県民の反米感情には火が付いている。
 米民主党外交筋はこう指摘する。「どんなに釈明しても、後の祭りでしかない。脇が甘かった」

 読売新聞報道が正確かどうかはわからないが、メア氏発言の真偽は米政府による政治判断から検証されていないとしてもよいだろう。
 興味深いのは、次の2点の指摘である。(1)一部メディアがメア氏発言の元になった学習ツアーが、沖縄の在日米軍基地の閉鎖を呼びかける市民団体代表を務める日本人大学院生による企画だったとしていること、(2)メア氏発言として流布された文書は沖縄でのツアーを取材した通信社からの再取材を受け、5人の学生によってメア氏の講義の2か月後に作成されたこと、である。
 一点目については「一部の米メディア」がなにかが問題となるが、有名どころで対応するのはForeing Policy「State Department Japan hand loses post as Campbell goes on Tokyo apology tour」(参照)であろう。

What Maher didn't know at the time of his meeting was that this was no ordinary group of American University students. One leader of the group was a Japanese activist who works hard to build opposition to any U.S. basing on Okinawa. That activist, Sayo Saruta, was one of two student leaders for the group of mostly American AU students and participated in the meeting at the State Department. Maher didn't know that the group was led by an anti-base activist until the memo was leaked this week.

メアが彼の講義の会合時に知らなかったことは、これがアメリカ大学生グループとしては通常からかけはなれていたことだった。グループのリーダーのひとりは、沖縄に米軍基地を作らせないように活動する日本の活動家であった。この活動家、猿田佐世が、アメリカ大学の米人学生大半をたばねる二人のリーダーの一人であり、国防省会合に出席した。メアは、今週メモがリーク報道されるまで、このグループが反基地活動家によって導かれたことは知らなかった。

The State Department could have known Saruta's agenda had they just done a little research. She is a very public critic of U.S. military bases in Japan. The website for the students' Japan trip identifies her as "the leader of the Network for Okinawa, an organization calling for the closure of bases in Okinawa."

国務省が多少なりとも事前調査をしていたなら、猿田の行動計画も知る事になっていただろう。彼女は日本で米軍基地の非常に公的な批判者である。学生らの日本への旅行のためのウェブサイトは、彼女のことを「在沖米軍基地閉鎖を求める組織、沖縄のネットワークのリーダー」としている。


 この米報道は本当だろうか。昨年12月10日の琉球新報に対応する記事「米軍基地戦跡訪問へ 米大学生ら意欲的討論」(参照)がある。

 【米ワシントン=与那嶺路代本紙特派員】ワシントンDCにあるアメリカン大学の学生ら15人が18日から27日まで沖縄を訪れ、米軍基地や戦跡を回る。沖縄に関心のある学生らが発案した手作り企画で、同大でも沖縄のスタディーツアーは初めて。出発を前に学生らは沖縄の情報収集、討論などに意欲的に取り組んでいる。
 アメリカン大学はDCの首都3大学の一つで、学生が世界各地の社会問題を体験する企画を積極的に推奨する。学生が立案した企画が大学に承認されると、単位が認められる。帰国後も関連ボランティア活動を続けることが義務付けられている。大学からの補助がないため、立案から資金集め、実行、帰国後の取り組みまで全て学生のみで行う。
 同大学に通う猿田佐世さん(大学院生)が、米国で沖縄の基地問題の関心の低さに驚き、学生らに知ってもらおうと発案した。賛同者を集め、6月に大学に企画を提案、競争率の高い試験に受かり承認された。
 沖縄では南部戦跡や普天間飛行場、嘉手納基地などの米軍施設、辺野古の座り込み現場などを訪れる。沖縄国際大学の学生との意見交換も予定している。
 日本語を勉強し、沖縄のことを知ったというエリン・チャンドラーさん(大学院生)は「環境問題、特にジュゴン保護を気に掛けている。米国に、沖縄の平和への闘いを妨げる権利はない。米国の民主主義を信じている」と強調。県系4世のミヤギ・トーリーさん(3年)は「ワシントンと東京には沖縄が見えていない。日本が重要な同盟国であるなら、沖縄もパートナーとして扱うべきだ」と話す。
 引率するデービット・バイン准教授は「外国軍の基地と隣り合わせで生活するということをどう思うか、学生に考えてほしい」と期待を込める。学生らは毎週金曜日に集まり、議論や旅程の調整などを行っている。旅費を稼ぐため構内でピザを売ったり、寄付金集めに奔走している。最近はウェブサイトも立ち上げた。アドレスはhttp://altbreakokinawa.blogspot.com/

 意図といい期日といいその他の詳細についても対応しているので、メア氏講義の元となったツアーがこれに相当すると見てよいだろう。Foreing Policyの報道はこの部分で正しいだろう。
 その上で、Foreing Policyが挙げている猿田氏以外のリーダーは「引率するデービット・バイン准教授」と見てよいかもしれない。いずれにせよ、デービット・バイン准教授が、メア氏発言の元になった講義参加ツアーの指導者であることは確かであり、当然ながら猿田氏との考え方の合意は取れていただろう。
 デービット・バイン准教授はWSJに映像メディアとして掲載されたメア氏本人の反論に対して、4月17日の共同通信「「信じがたい発言」バイン准教授 メア氏「捏造」に反論」(参照)で次のように語っている。

 「沖縄はゆすりの名人で怠惰」などの発言で米国務省の日本部長を更迭され、退職したケビン・メア氏が米紙の取材に「発言録は捏造(ねつぞう)」などと述べたことに対し、アメリカン大のデービッド・バイン准教授は共同通信に「メア氏は再び信じ難い発言をした」と述べ、発言の詳細をさらに明らかにして反論した。バイン准教授は昨年末、学生を引率して国務省を訪れ、ともにメア氏の発言を聞いている。
 まず学生たちが作成した発言録(A4判3ページ)について「私自身もA4判のノート10ページにわたってびっしりとメモを取っており、それに照らして慎重に確認した。一字一句とまでは言わないが、重要な部分は間違いなくメア氏の発言通りだ」とあらためて強調した。
 また、自身のメモに基づくメア氏の発言の詳細として「日本人全体がゆすり文化の中にある。まさにゆすりであり、それが日本文化の一面だ」と述べた後に「沖縄はその名人であり、沖縄戦における犠牲や米軍基地の存在に日本政府が感じている罪(の意識)を利用している」と述べたと指摘した。
 さらに、メア氏は沖縄を米領プエルトリコにたとえ、沖縄の人はプエルトリコ人のように「肌が浅黒くて背が低く、(言葉に)なまりがある」と差別発言をしていたことも明らかにした。
 発言録を作成した学生もメア氏の「捏造」発言に「うそをついているとしか言いようがない」「今後も日米外交に関与しようと画策しているのではと懸念する」などと述べている。
 メア氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に「なぜ発言が歪曲(わいきょく)されたかは分からないが、反基地運動が関わっている」「沖縄の人が怠惰などという言葉は使っていない。発言録は捏造」などと述べている。(共同通信編集委員 石山永一郎)

 デービッド・バイン准教授が、共同通信によって報道された合議証言に対して中立的な立場であれば、その信憑性は高いが、以上の経緯を見ると、デービッド・バイン准教授と共同通信はこのリーク報道の関係者であり、よってここからは信憑性の議論はできない。
 読売新聞が指摘している二点目について、その報道の経緯だが、一連の報道の開始は6日である。6日付け共同通信「メア米日本部長が差別的発言 「沖縄はごまかしの名人で怠惰」」(参照)が、初報道のように見える。

 米国務省のメア日本部長(前駐沖縄総領事)が昨年末、米大学生らに国務省内で行った講義で、日本人は合意重視の和の文化を「ゆすりの手段に使う」「沖縄はごまかしの名人で怠惰」などと発言していたことが6日までに分かった。
 メア氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題など日米交渉に実務者として深く関与、移設先を同県名護市の辺野古崎地区とした現行案決着を米側で強く主張してきた人物の一人。発言は差別的で、日本と沖縄への基本認識が問われる内容だ。
 沖縄については、日本政府に対する「ごまかしとゆすりの名人」「怠惰でゴーヤーも栽培できない」などと発言。
(共同通信)

 7日付け共同通信「米国務省:和の文化「ゆすりの手段」 メア日本部長が発言」(参照)はこのロングバージョンのようだ。

 米国務省のメア日本部長(前駐沖縄総領事)が昨年末、米大学生らに国務省内で行った講義で、日本人は合意重視の和の文化を「ゆすりの手段に使う」「沖縄はごまかしの名人で怠惰」などと発言していたことが6日までに分かった。
 メア氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題など日米交渉に実務者として深く関与、移設先を同県名護市の辺野古崎地区とした現行案決着を米側で強く主張してきた人物の一人。発言は差別的で、日本と沖縄への基本認識が問われる内容だ。
 講義を聞いた複数の学生がメモを基に作成した「発言録」(A4判3ページ)によると、メア氏は「日本の和の文化とは常に合意を追い求める」と説明したうえで「日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをしながら、できるだけ多くの金を得ようとする」と述べた。
 沖縄については、日本政府に対する「ごまかしとゆすりの名人」「怠惰でゴーヤーも栽培できない」などと発言。普天間飛行場は「(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港と同じ」で特別に危険でないとし、日本政府は仲井真弘多・沖縄県知事に「お金が欲しいならサインしろ」と言うべきだと述べている。
 メア氏は共同通信の取材に、講義は「オフレコ(公開しないこと)で行った」とし、発言録は「正確でも完全でもない」としている。
 講義は米首都ワシントンのアメリカン大の学生ら14人に対し、彼らが東京と沖縄へ約2週間の研修旅行に出発する直前の昨年12月3日、大学側の要請で行われた。
 発言録を作成した学生たちは「メア氏は間違いなくこのように言った」と証言。「米政府の地位ある人物の偏見に満ちた言葉にとても驚いた」「人種差別的発言と感じた」などと話している。(共同)

 これらの共同通信による報道およびその後に、朝日新聞など大手紙の報道が続くことから、メア氏発言問題は、共同通信が掘り出した報道であると見てよいだろう。
 先の読売新聞報道と付き合わせると、メア氏発言は、猿田氏やバイン准教授らによるツアーを取材した共同通信が「再取材」を行い、メア氏発言の元になった講義の二か月後に共同通信の求めで作成されと見てよいだろう。つまり、共同通信も報道に関わる第三者ではなく当事者なのである。
 以上の経緯からすると、先の共同通信編集委員石山永一郎氏の署名記事も、証言の信憑性や評価を考える上では、重要性の低い証言となる。「再取材」という点からはおそらく、石山氏と猿田氏、バイン准教授の事前の関連も疑われる。
 メア氏発言の信憑性を問うのであれば、共同通信が猿田氏らのツアーにどのように関わり、再取材がどのように成されたか、また、メア氏発言とされるテキストがどのように作成されたか(人選および原資料の提出)が先行されるだろう。次に、メア氏への、共同通信以外によるジャーナリズムによる追究が当然求められるはずだ。
 しかし、この事件の全貌は、共同通信でも問題視されていないだろうし、おそらく解明もされないだろう。冒頭述べたように政治的な問題が関係しているからだ。4月21日付け産経新聞「ポトマック通信 「栄転」より退職」(参照)にその示唆がある。

 沖縄県民を侮辱したとして米国務省日本部長を更迭され、4月6日付で同省を依願退職したケビン・メア氏。15日、来日中の同氏に米国から国際電話で話を聞くことができた。
 “侮辱発言”を否定したメア氏は「日本で一番嫌われ者の米国人になるのが耐えられなかった」と語った。電話口から伝わってきたのは「米軍基地再編を妨げようとするグループ」への憤り以上に、事実関係を確認しないまま早期の幕引きを図った国務省のスタインバーグ副長官への不信感だった。
 記者証があれば役所の中を比較的自由に歩ける日本と違い、国務省や国防総省内では記者会見以外で取材対象に肉薄するのは容易ではない。役所内の人間模様を探るのは至難の業で、退職したとはいえ、ここまで内実を赤裸々に明かしてくれたのには正直驚いた。
 メア氏は、欧州の米大使館への「栄転」を条件に口止めされていた。にもかかわらず、プロ外交官としての立場を捨ててまで依願退職の道を選んだのは「汚名を返上するには退職するしかなかった」からだ。
 中国寄りで知られたスタインバーグ氏は近く国務省を退任し、大学教授に「栄転」する。メア氏には日本人の妻がおり、娘がいる。今回の一件では、家族が一番つらい思いをしたのではないか。(佐々木類)

 私自身は、はてなコメントで私をメア氏の擁護者だと罵倒するコメントに反して、この記事執筆の佐々木氏のようなメア氏への同情的な感想は持たない。真相がまったく解明されていない時点で、どちらかに肩入れすることはできない。
 しかし興味深いのは、「国務省のスタインバーグ副長官」のスタンスである。先のForeing Policyに示唆があるが、今回の「失態」の原因は脇の甘いメア氏というより(言うまでもないがメア氏の失言は今回に限らない(参照))、国務省としては在沖米軍反対活動家の身元調査もせずメア氏の講義に参加させたことを基本的な失態と見ている可能性があり、それが問題であれば責が問われるのは、スタインバーグ副長官であろう。その意味では、構図としては、メア氏への対応は、国務省が責任を被らないようなツメバラでもあったようにも見える。


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