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2011.04.02

米国エネルギー省スティーブン・チュー(Steven Chu)長官による福島原発の見立て

 米国は福島第一原発の現状をどのように見ているか。昨日、米国エネルギー省のスティーブン・チュー(Steven Chu)長官が興味深い見解を出した。これを受けた国内の報道も多少興味深いので、合わせて記録に留めておきたい。
 結論から言うと概要が掴みづらいのが読売新聞記事「1~4号機は安定…米長官「プールに水ある」」(参照)であった。


 【ワシントン=山田哲朗】米エネルギー省のスティーブン・チュー長官は1日、福島第一原発の使用済み核燃料プールの状態について、「1号機から4号機まですべてのプールに水があると考える」と述べ、安定しているとの見解を明らかにした。
 チュー長官は「すべてのプールで温度計測ができ、(数字は)中に水があることを示している」と述べた。
 燃料プールについては、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長が3月中旬に米下院で4号機で「水がすべて沸騰し干上がっている」と証言したが、チュー長官の発言により日米の見解が一致した形となった。
 チュー長官は、ワシントン市内での米オンライン新聞主催の朝食会で発言した。
(2011年4月2日10時43分 読売新聞)

 チュー長官発言については、これ以外に読売新聞記事があるのかもしれないし、この記事はNRCヤツコ委員長の言明への反論という点に力点を置いたのかもしれない。しかし、以下に見る他ソースとの比較で奇妙な印象はある。「米オンライン新聞」についてもぼかされているが、クリスチャンサイエンスモニターである。
 朝日新聞社記事もこの話題に言及していたが、なぜかウォールストリートジャーナルからの報道としていた。「1号機核燃料「最大で7割損傷」 米エネルギー省認識」(参照)より。

2011年4月2日11時49分
 米エネルギー省(DOE)は1日、福島第一原発1号機、2号機の核燃料について「1号機は最大で70%、2号機は最大で3分の1が損傷している」との認識を明らかにした。米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が同日報じた。
 報道によると、DOEのチュー長官は同日、福島第一原発について「依然、重大な懸念がある」と述べた。燃料の損傷具合については「かなり」としか言及しなかったが、具体的な損傷度合いは同紙がDOEに確認した。
 1979年の米スリーマイル島原発事故では、原発がトラブルで停止してから約1時間40分後に原子炉内の水が減って燃料棒が露出。原子炉の冷却機能が回復した十数時間後までに炉心全体の少なくとも45%が溶融したとされる。福島第一原発で地震発生時に運転中だった1~3号機は、いまだに炉心の冷却機能が回復せず、外部から水を入れて冷やす作業が続いている。
 また、同長官は1~4号機の核燃料プールは「日本政府高官とDOEの科学チームの議論の結果、全基のプールに水があると考えている」との認識を明らかにした。
 米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は3月16日、下院公聴会で4号機のプールについて「水がない」との認識を示したが、東京電力などは反論していた。(ワシントン=勝田敏彦)
     ◇
 東京電力は原子炉建屋の爆発などが続いた3月14~15日時点の1~3号機の燃料損傷の割合について、格納容器内の放射線量のデータから、それぞれ70、33、25%とする推定結果を25日に発表している。ただ、どのような損傷なのか、詳細は明らかにしていない。

 チュー長官の視点の重要性は読売新聞記事とは異なり、原子炉の状況認識について置かれている。元になるウォールストリートジャーナルの記事を見る前に、記事として注意したい点は、チュー長官の発言に対してウォールストリートジャーナルがDOEに確認を取った点を明記していることである。
 朝日新聞記事の元記事は「Energy Secretary Chu Says Reactor Core Is Damaged」(参照)である。すでに全訳が「福島第1原発、一部炉心は損傷=米エネルギー長官」(参照)として公開されている。重要と思われる部分を引用しておく。

 同省の報道官は、朝食会後、長官の記者団に対する発言内容を明確にした。それによると、長官の発言は1号機の燃料棒が70%も損傷しており、2号機の燃料棒は3分の1が損傷しているとの情報に言及したものという。(長官は朝食会では、3号機での「放射線量がかなりのレベル」にあると述べていた。また「米国に提供された日本からの情報」を引用し、2号機については「炉心の70%が損傷して最も深刻なメルトダウン状態」になっていると述べていた)

 ウォールストリートジャーナル記事ではDOEから確認を先行させ、クリスチャンサイエンスモニターでの話を括弧に入れている。
 ウォールストリートジャーナルとしての記事の重要点は以下になる。

 長官のこの発言は、3月11日に発生した東日本大震災で被災した同原発での深刻な事故をめぐり、日本の事故対策の評価が交錯していることを反映している。一方で、長官は使用済み燃料棒については、温度測定や計算などから一時貯蔵プールには水があることが示されており、1~4号機まで「制御されているようだ」と述べた。

 「日本の事故対策の評価が交錯している」の部分がわかりづらい。原文は"Dr. Chu's comments reflect a mixed assessment of Japanese efforts to halt a disaster at the plant"である。日本側からの情報をDOEとしても評価しづらいということだろう。
 読売新聞が取り上げた4号機プールについては、水があるとの認識だが、これが米原子力規制委員会(NRC)ヤツコ委員長発言後の放水によるものかについてもわかりづらい。なお、DOEのチュー長官とNRCのヤツコ委員長の意思疎通は良好と見られる。産経新聞記事「反原発運動も熟知 米原子力委のヤツコ氏 言動に注目集まる」(参照)より。

 コンビを組むエネルギー省のチュー長官の信任も厚い。米政治専門誌ポリティコ(電子版)は、「ヤツコ氏がNRC委員長を務めていること自体が、大統領の安全への強い思いの表れ」とするホワイトハウス高官の話を伝えている。

 元になるクリスチャンサイエンスモニター記事は「Is Japan crisis becoming a slow meltdown? No, says US Energy secretary. (video)」(参照)にあるが、ビデオの内容がメインで論評は少ない。
 ニューヨークタイムズもこの話題と「Reactor Core Was Severely Damaged, U.S. Official Says」(参照)で取り上げている。

Japanese officials have spoken of “partial meltdown” at some of the stricken reactors. But they have been less than specific, especially on the question of how close No. 1 — the most badly damaged reactor — came to a full meltdown.

日本政府の役所員、損傷した反応炉によっては「部分的なメルトダウン」があると説明してきた。しかし、最も損傷した反応炉である1号機について、完全なメルトダウンにどれほど近いのかという疑問に絞れば、まったく具体性はなかった。


 ニューヨークタイムズの視点としては、米国民としては部分的なメルトダウンというのだから、どれほどなのかということに関心があり、これにDOEが答えたという構図になっている。加えて言えば、結果的にスリーマイルと比べてどうかということへの答えにもなっている。メルトダウンの点で、福島原発(70%)はスリーマイル原発(45%)を越えたことも明確にされたことになった。
 チュー長官による現状の評価については、ニューヨークタイムズ記事には触れられていない。

“First and foremost, we are trying to make sure that fuller damage is not done,” he said.

「なりよしも、私たちは、これ以上の損傷がないかどうか確認しようとしているところだ」と彼は語った。


 これに対して、先のウォールストリートジャーナルでは他の部分の言及を当てている。

 長官によると、日本の当局者は米国の科学者とエンジニアらの支援を受け、放射性物質を含む蒸気を放出させずに原子炉を冷却する方法を模索している。
 長官は「望まれるのは、安定した状態に達することだ。炉心の腐食物はエネルギーを放出するが、そのエネルギーを除去することが必要だ。最初の1週間は最も重要な時期だ。それが過ぎた現在は、緩やかな段階に入りつつある」と述べた。

 別の言い方をすれば、蒸気が放出されれば放射性物質も放出されることであり、現状ではこれがまだ継続している。
 また現状は、危機的な1週間が経過し、「緩やかな段階に入りつつある("now you're entering a slower stage.")」としているので、慎重に対応すれば大きな惨禍は避けられるという含みはありそうだ。

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コメント

この見方ってどうなんでしょうか?

「今、福島で何が起きている?何故起きたのか?これからどうなる?」
http://bit.ly/gWnq85

3号炉の設計に実際に関わった方のようですが、ある程度合理性があるように感じられます。

投稿: hori412 | 2011.04.05 22:10

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