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2011.04.01

安価な男性用ピルの登場で世界が大きく変わる

 経口避妊薬、ピルというと女性のものと思われがちだが、いよいよ男性用ピルが実用化される(米国およびその他の西側諸国では認可は未定)。しかも安価に販売されることになり、特に途上国での普及が望まれている。その開発の背景は生物多様性の問題とも関連して興味深い。
 ピルと言えば、なぜこれまで女性用だったのか。答えは存外に単純である。男性用がなかったからだ。ではなぜ、男性用ピルの開発が進展されなかったのか。理由は意外にも薬学や医学によるものではない。製薬会社の採算の問題である。
 グローバルポスト記事「Indonesia's birth control pill for men」(参照)では、その背景をこう説明していた。男性用ピルには素材の問題があるが、より大きな問題もあるとして。


But the larger impasse to male birth control pills has been pharmaceutical giants, said Elaine Lissner, director of the non-profit Male Contraception Information Project in San Francisco.

しかし男性用ピルの困難は巨大製薬会社にあったと、サンフランシスコNPO男性避妊情報プロジェクトのディレクターのエレーン・リスナーは語る。

Global demand for male birth control appears high, with a 2005 German survey revealing that 60 percent of men in Spain, Germany, Mexico and Brazil are willing to use a new male contraceptive.

2005年にドイツの会社が実施した調査によれば、男性用ピルの国際的な需要は非常に高いようだ。スペイン、ドイツ、メキシコ、およびブラジルでは、男性の60%が新しい避妊薬を使いたいとしている。

But pouring millions into developing a birth control pill for guys still isn’t attractive as a business decision, Lissner said.

しかし男性用ピルに巨費を投じるのは、ビジネスの視点からすると魅力的ではないとリスナーは語る。


 男性用ピルの潜在的な需要は高い。ではなぜ製薬会社がその開発に取り組まないのか。ドイツの製薬会社シエーリング(Schering)は5年前に男性用ピル開発に取り組んだが、打ち切りとなった。他に開発を試みた製薬会社も経営判断から中断させれた。なぜなのか。
 結論から言えば、女性用ピルの売上げを削ぎかねないからである。

A recent study by the U.S. government’s Centers for Disease Control and Prevention indicated that more than 80 percent of women who’ve ever had sex with a man used birth control pills at some point. A male birth control pill could eat into this massive market.

米国疾病対策センター(CDC)による最近の調査では、男性と性交経験のある女性の80%以上が、ある時点からピルを利用していた。男性用ピルは、この巨大な市場を侵食しかねないのである。


 状況を別の言葉で表現するなら、女性にピルを押しつけているのは市場の論理だと言える。経済による構造的な性の非対称性が存在しているとも言えるだろう。女性差別と見てもよいかもしれない。
 その意味で、今回の安価な男性用ピルの登場は、女性に対するピルの負担を減らす可能性がある。
 新しく登場する安価な男性用ピルとはどのようなものか。これはニューギニア原住民が維持してきた「ガンダルサ(gandarusa)」という植物に由来している。

On the remote Indonesian island of Papua, tribesmen have long noticed the curious effect of a shrub called “gandarusa.”

インドネシア辺境パプア島の部族は「ガンダルサ」と呼ばれる低木の奇妙な効果に昔から気づいている。

If you chew its leaves often enough, men say, your wife won’t get pregnant.

男がその葉を頻繁に噛むなら、その妻は妊娠しないであろうと言うのだ。


Gandarusa / Justicia gendarussa

 インドネシア政府はこの薬草に目を付け、海外の製薬会社からの要望を生物多様性を盾にし、自国製薬会社に開発を委ねた。結果、その成分から今回の新しい安価な男性用ピル「ガンダルサ」の製造に成功した。


Gandarusa Rp 150.000

 インドネシア政府のプロジェクトが支援した臨床試験からも、効果は確認されている。機序についても、男性の精子の活力を奪うことなく卵子の結合を阻害することが解明されている。
 気になる副作用はどうか。政府プロジェクトのスギリ・シャリエフ(Sugiri Syarief)氏はこう述べている。


Men taking the gandarusa pills typically regain the ability to impregnate after 72 days, Sugiri said. “There are no side effects,” he said, though his study notes that some men experienced a boosted sex drive.

ガンダルサ錠を服用している男性の場合、72日が過ぎれば、通常は受精能力を回復する。「副作用はまったくない」とスギリは語る。だが、研究によれば男性によっては、性欲の高まりを経験することもある。


 男性がパートナーの女性との間で妊娠を望むなら、ガンダルサ服用を停止し72日を待てばよいというのも朗報だが、男性にしてみると、パートナーを妊娠させることはなく、しかも性欲まで高まるというのはこの上もないメリットに見える。他に副作用はないのだろうか。
 疑問を投げかける研究がある。ニューギニア島とも呼ばれるパプア島はその中央に国境線があり、西側はインドネシアだが、東側はパプアニューギニア独立国である。そこに目を付けた米国の製薬会社がパプアニューギニア独立国の生物多様性の権限を譲渡してもらいガンダルサを独自に調査した。確かに避妊効果は見られるし、性欲の高まりという好ましい副作用もあるが、その勢いで性交した後、とてつもない虚脱感に襲われるらしい。
 未知の副作用と言えるものなのか。伝統的に利用してきた原住民から聞き取り調査をしたところ、それこそまさしく伝統的に知られた特性であり、その特性こそがこの植物の名前の由来なのだという……ガンダルサ。

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コメント

ガンガンにダルさを感じるからでしょうか。

投稿: summercontrail(略して左近) | 2011.04.01 09:57

エープリルにしては、座布団一枚もの.
思わず引っかかって、オオ〜と中出し快感を連想してしまったのはおいらだけだろうか(笑)

投稿: LIST | 2011.04.01 10:13

ま〜、座布団1枚ぐらいは、、、、(ニヤリ

投稿: ナオサン | 2011.04.01 11:19

エイプリルフールねた?

投稿: | 2011.04.01 11:40

エイプリルフールのネタかと勘違いしそうになりました。認可されるといいですね。

投稿: Tammy | 2011.04.01 11:54

今回、地口落ちですか。
バカバカしいけど、面白いや。

投稿: たぬき | 2011.04.01 21:33

4月1日ですね。

投稿: YT | 2011.04.02 00:21

避妊と性交に伴う虚脱感が得られる効果があるのなら、性犯罪者の治療用に応用できそうですね。

投稿: | 2011.04.02 21:45

>状況を別の言葉で表現するなら、女性にピルを押しつけているのは市場の論理だと言える。経済による構造的な性の非対称性が存在しているとも言えるだろう。女性差別と見てもよいかもしれない。
 その意味で、今回の安価な男性用ピルの登場は、女性に対するピルの負担を減らす可能性がある。

女性がピルを押し付けられてる、負担などと、なぜここまで一方的に女性が被害者であるかのように印象操作されるのかわかりません。
主体的に避妊できない男性こそが真の差別被害者ですよ。

投稿: kk75 | 2011.04.09 20:23

Estrak Gandarusa, where are how can I obtain this product?

Sincerely,

Miss Pyke

投稿: Lounetta Pyke | 2011.05.29 16:09

ピルは避妊し続ける間は飲み続けなきゃならんし、金がかかるよ

男向けであってもそれは変わらんだろう

投稿:   | 2011.12.10 21:24

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東京消防庁ハイパーレスキュー隊員を始めとする数多くの自らの命を顧みない無名の人々の献身により,第一の危機は乗り越えることができた.危急の事態に「圧倒」される初期状態からぎりぎりのところで巻き返しに転じ,何とか事態をコントロールできる可能性が芽生えてきた.全世界の注視を浴びる中でここまで踏ん張ることができたことを日本国民の一人として誇りに思う.しかし,依然として前途は多難であり,楽観は許されない. 現場的には大量の放射性汚染水をどうするかというところで関係者の苦悶・苦闘が続いている.基礎技術的に... [続きを読む]

受信: 2011.04.02 21:38

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