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2011.04.06

ニューヨークタイムズが福島原発対処の米国秘密文書を報じる

 5日付けニューヨークタイムズが、米原子力規制委員会(NRC)による福島原発についての、3月26日付けの秘密評価書と関連インタビューに基づく記事「U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant」(参照)を掲載していた。なかなか興味深い内容であった。
 共同で一部がすでに報道されている。「米紙、水素爆発の危険を指摘 当局の内部文書に基づき」(参照)より。


 同紙によると、原子炉冷却のために注入している水によって、原子炉格納容器のストレスが高まり、余震によって容器が破壊される危険性が高まっている。同原発1号機は内部にたまった塩により循環が著しく妨げられており、原子炉の中には水がなくなっている可能性もあるという。
 また、原子炉内の水が分解されてできる水素によって水素爆発が再び起きる危険性も指摘した。
 こうした問題に対処するため、NRCは日本政府に水素爆発を防ぐための窒素注入などをアドバイスしたという。

 共同が取り上げた問題点としては、(1)注入した水の重さで容器が破壊する危険性、(2)海水の塩で目詰まりして炉内に水が入らず空焚きになっている危険性、(3)さらなる水素爆発の危険性、が読み取れる。
 三点目の危険性回避には窒素注入が示唆されているが、今日から日本でも検討が進んでいる。6日付け毎日新聞「福島第1原発事故 1号機に窒素封入へ 水素爆発防止」(参照)より。

 東京電力は6日午後から、福島第1原発1号機の原子炉格納容器へ窒素(6000立方メートル)を封入する作業を始める。作業中、1~4号機でのすべての他の作業を中止する。高温で損傷した核燃料の被覆管が水と反応して大量の水素が発生しているとみられ、新たな水素爆発を防ぐための措置で、7日にかけて実施する。同原発では、1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発で損壊している。

 NRCが指摘した海水塩の問題についても、すでに米国からの要請で米国支援の真水に切り替わっている。25日付け毎日新聞「福島第1原発:冷却用真水の補給で米軍がバージ船提供」(参照)より。

 北沢俊美防衛相は25日の記者会見で、東京電力福島第1原発の冷却に必要な真水を補給するため、米軍から真水を積載できるバージ船(はしけ)2隻や給水ポンプ1機の提供を受けることを明らかにした。海上自衛隊の補給艦などと連携し、週明けから冷却作業で活用する。バージ船のうち1隻は25日に米軍横須賀基地を出港し、もう1隻は26日に出港する予定。
 自衛隊は高圧消防車で海水を使って放水してきたが、米側から「(塩水による)機材の腐食を防ぐには真水に変更すべきだ」との強い要請があり、活動のあり方を再検討。東電が復旧を進める「補給水系」の注水ポンプに真水を補給する方向に切り替えた。

 この二点はNRCの指導よるものと見てよく、おそらく福島第一原発の現状の対応はNRCシナリオで進展しているのではないかと思われる。
 そうであるとすると、その対処の背景となったのはNRCの評価文書によると見てよいので、今回のニューヨークタイムズ記事の重要性が理解できる。
 記事を読むと、共同が取り上げていない部分に関心が向かざるをえない。小さな点では、目詰まりを起こしているのは塩以外に半溶解した炉心についても言及されている。大きな点としてはまずプール内の使用済み燃料への言及がある。

The document also suggests that fragments or particles of nuclear fuel from spent fuel pools above the reactors were blown “up to one mile from the units,” and that pieces of highly radioactive material fell between two units and had to be “bulldozed over,” presumably to protect workers at the site. The ejection of nuclear material, which may have occurred during one of the earlier hydrogen explosions, may indicate more extensive damage to the extremely radioactive pools than previously disclosed.

文書はまた、反応炉上部にある使用済み燃料プール内の核燃料の破片や粒子が「3号機から1マイルも」吹き飛ばされ、高い放射性物質の断片が3号機と4号機間に落下しているので、現場作業員の保護にはおそらく「ブルドーザーによる地ならし」を必要としていたと示唆している。初期の水素爆発中に発生した核物質噴出は、従来公開された以上に、極めて放射性の高いプールに対して、より広範囲な損傷を与えたことを示している可能性がある。


 プール内の使用済み燃料の粉塵が1マイルも飛び散っている可能性があるというのだが、1マイルは文字どおり1.6キロメートルということではないとしても、それに近い飛散はあったのかもしれない。
 記事を読みながら疑問がないわけではない。そうであれば、その粉塵が計測されないのは不自然である。あるいは、もしかすると3号機使用済み燃料プールへの放水も単に冷却目的だけではなかったのかもしれない。
 記事に戻る。真水の注入ではホウ酸についても言及されている。理由も明記されている。再臨界の予防である。

The document also recommends that engineers continue adding boron to cooling water to help prevent the cores from restarting the nuclear reaction, a process known as criticality.

文書はまた、炉心が核反応を再開始すること(臨界として知られている過程)の防止に役立てるためにホウ素を冷却水に追加し続けるよう、技術者に勧めている。


 ニューヨークタイムズはこの点について識者のインタビューで現状の資料からは臨界が進展しているデータはないともコメントを引き出している。
 NRCらしくというべきか、4号機の使用済み燃料プールの問題も定常的な放射性物質の発生源として重視されている。

The N.R.C. report suggests that the fuel pool of the No. 4 reactor suffered a hydrogen explosion early in the Japanese crisis and could have shed much radioactive material into the environment, what it calls “a major source term release.”

NRC報告書は、日本危機の初期、4号反応炉の燃料プールが水素爆発の被害を受け、環境に多くの放射性物質を発散した可能性を示唆し、これを「主要な定期放出源」と呼んでいる。



Experts worry about the fuel pools because explosions have torn away their roofs and exposed their radioactive contents. By contrast, reactors have strong containment vessels that stand a better chance of bottling up radiation from a meltdown of the fuel in the reactor core.

専門家たちが、使用済み燃料プールを懸念しているのは、爆発で屋根を引きはがされ放射性物質が暴露されているからである。これに比べれば、反応炉は、強固な収容器があり、炉心の原子炉燃料がメルトダウンしてもその放射性物質を封じ込める可能性が高い。


 記事としての締めは、現状のミスがさらなる問題を生むとしている。依然非常に難しい局面であるとは言えるだろう。

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» 福島第一原発第一号機炉心に窒素の注入が始まった [godmotherの料理レシピ日記]
 昨日のTwitterで、ニューヨークタイムズの「U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant(参照)と言う記事を拾った。興味深く読ん [続きを読む]

受信: 2011.04.07 10:19

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