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2011.04.15

原子力安全調査専門委員会が福島第一原発原子炉状況をまとめた

 日本原子力学会の原子力安全調査専門委員会が福島第一原子力発電所原子炉現状を分析しその結果を14日にまとめたという記事が、14日付け読売新聞記事「溶融燃料「粒子状、冷えて蓄積」1~3号機分析」(参照)に掲載されていた。なんと言っていいのか、ある種の沈黙を強いられるような話であった。


 それによると、圧力容器内の燃料棒は、3号機では冷却水で冠水しているが、1、2号機は一部が露出している。1~3号機の燃料棒はいずれも損傷し、一部が溶け落ちている。溶融した核燃料は、冷却水と接触して数ミリ以下の細かい粒子に崩れ、燃料棒の支持板や圧力容器下部に冷えて積もっていると推定している。

 記事には図が添えられている。注釈を外し、縦に少し潰すとこんな感じである。

 ちょっと見には底のほうに団子のように固まっているかのようにも見えるが、遠近感の都合で描かれているだけ、絵の意図としては粉状の物体が上面を平らに降り積もっているということなのだろう。
 もちろん、底部は半球である。球体に近い。球体の形状に原子炉燃料(数パーセントのウラン235)が集積されている状態を見て、さてと、私はなんと言ったらいいのか考え込んでしまう。ある種の沈黙を強いられるよう話というのはそういうことだ。
 記事には専門家のコメントがある。

沢田隆・原子力学会副会長は「外部に出た汚染水にも、粒子状の溶融燃料が混じっていると思われる」と説明した。

 さすが専門家ですね。間違ってはいない。そこがポイントなのかとは疑問に思うが。
 同テーマと思われるが産経新聞記事「福島原発1~3号機、燃料の一部溶け落ち 原子力学会が見解」(参照)では「事故調査委員会」として報道されていた。

 東京電力福島第1原子力発電所事故について、日本原子力学会が設置した事故調査委員会は14日、1~3号機の炉心燃料棒の一部が溶け落ち、原子炉圧力容器の下部にたまっているとの見解を示した。溶け落ちた燃料は注水で冷やされ、固体状に固まり、原子炉に穴が開くなどの損傷の恐れはないとしている。
 同委員会では、各号機の原子炉の表面温度や内部の放射線量などのデータから、燃料棒を覆う「被覆管」が溶け、内部の放射性物質(放射能)が漏出するだけでなく、燃料の一部が、数ミリの粒状になり、溶け落ちる高温になったと推計した。
 原子炉の損傷は回避されたが、注水が2、3日間途絶えると危険な状態になるため、余震への注意が必要としている。

 注水が途絶えると、どんなふうに危険になるかについての言及はない。
 その点、NHK14日付け「原子力学会 安定に2~3か月」(参照)には若干の言及がある。なお、NHKは発表を「日本原子力学会に所属する専門家チーム」としている。

それによりますと、1号機から3号機の原子炉にある核燃料はいずれも一部が損傷して溶け出し、原子炉の底にたまっていると推定されるが、このまま水で冷やし続ければ今の状態を保つことはできるとしています。しかし、強い余震などによって核燃料が2~3日冷やせなくなると、事故が発生した直後のように原子炉の温度や圧力が不安定になり、予断を許さない状態に戻るということです。

 事故直後の状況に舞い戻りする可能性はあるということだ。
 15日付け共同通信記事「原発安定化まで2、3カ月 学会見解、燃料溶け底に蓄積」(参照)は、もう一歩踏み込んで書いている。

 溶けた燃料が圧力容器の底にたまりすぎると熱がこもり、容器を損傷する恐れがあるが、圧力容器の底部の温度データから、現状ではそこまでたまっていないとみられるという。

 記者による表現の苦労が忍ばれるというところかもしれない。
 そりゃ、熱がこもるでしょうし、容器も損傷するでしょうというか、容器が損傷するかもしれない温度にまで上昇する可能性があるということだ。なんの熱? 崩壊熱ですね、常考。
 NHK報道では「日本原子力学会は、この結果を学会のホームページで公表するほか、今後、具体的な対策や放射線の影響についても東京電力などに提案したいとしています」ともあるのだが、現状では同ホームページ(参照)には見当たらなかったようだった。
 総じて言えば、米原子力規制委員会(CRC)のヤツコ委員長が言うように、安定というより膠着(the situation as static but not yet stable)ということだろう。
 ところで、最初の読売報道に戻ると「圧力容器内の燃料棒は、3号機では冷却水で冠水しているが、1、2号機は一部が露出している」とあるが、なんで1号機と2号機は冠水してないのだろうか?
 それと、私がデータを読み違えているのかもしれないが、福島原発原子炉の状態 原子炉の水位(参照)を見ると、3炉ともに水位はマイナスのように見える。「地震被害情報(第94報)(4月15日08時00分現在)及び現地モニタリング情報(METI/経済産業省」(参照)を見ても3号機でも冠水していなように受け取れるのだがどうなのだろうか。
 話を戻して、読売報道の通りとして、その含みから、1号機と2号機も、3号機のように燃料棒を冠水させたほうがよいように受け取れるのだが、なぜ冠水しないのだろうか。つまり、なぜ注水しているのに水位が上がらないのか?
 この点について、14日付けブルームバーグ記事「東電:福島第一原発冷却に3カ月見込む、「水棺」拒否-関係者」に興味深い言及がある。

 関係者によると、福島第一の原子炉で最も危険なのは温度と圧力が依然として高い1号機だという。圧力容器とこれを包む格納容器の間を水で満たすことで、温度は数日で下がると関係者は述べた。
 さらに、消防用ホースとポンプで注水する方法では水の量が足りないとしている。13日には内部の温度がセ氏204.5度に達し、注入した水が蒸発し冷却効果が得にくい状態になったという。
 東電の発表データによれば、13日は一号機の炉心の水位が下がり燃料棒が1.65メートル露出した。露出した燃料棒は溶解し圧力容器内に放射性物質が漏れる恐れがある。東電の危機解決計画は燃料棒を水没させることを安定化の1つの目安としているものの、事故後の35日で注水によって水位が20センチ以上上がったことはないという。
未知のリスク
 米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は今週、水位が上がらないことを1つの理由に福島第一原発の状況は「足踏み」しているとの見解を示した。

 記事から窺えるのは、1号機についてだが、本来なら圧力容器と格納容器を満水にしてしまえばよいのだが、炉内の温度が高く、注水しても蒸発してしまうらしいということだ。なお、該当記事の英文「Fukushima Radiation Leaks Will Continue Through June, Tokyo Electric Says」(参照)は日本語版と多少異なる。
 1号機に限定されるが、炉内温度が冠水を阻止しているのだろうか。そこがよくわからない。ヤツコ委員長がそこに着目しているのかも、いまひとつ不確かな情報のようにも思える。
 奇妙なのは、この記事の描写と比べると、原子力安全調査専門委員会の発表には炉内温度の推定が含まれていないように見える点だ。「圧力容器下部の水温が低い」されているのだが、圧力容器の下部は水温が低いが、上部は水温が高いということなのだろうか。

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コメント

絵としては省略されてますが
底部には燃料棒間への制御棒挿入の操作のための貫通孔があり、制御棒駆動部を覆うような金属のチューブが相当数底面から付き出して並んでいます。
ですので、溶け落ちた燃料が図のように集積されることはないと思っていただいて大丈夫です。

ただし、海水注入により塩がこびりついてたりする場合、それらがどのような働きをするのかはよく分かりません・・。

投稿: | 2011.04.15 22:13

共同通信の記事を素直に読むと


> 溶けた燃料が圧力容器の底にたまりすぎると熱がこもり、容器を損傷する恐れがあるが、圧力容器の底部の温度データから、現状ではそこまでたまっていないとみられるという。


温度のことではなく、溶けた燃料の量を言ってるように読めます。
いわく「容器を損傷するほどには、溶けた燃料はたまっていない」
「現状では」という条件付ですが。

投稿: | 2011.04.16 08:28

熱による蒸発というよりは、注水した水が漏洩している可能性を疑っていて、積極的な注水ができないのではないかと思います。

投稿: | 2011.04.16 16:53

原子炉内の水位計でしたら、ここ2,3週間ほとんど動いていません。保安院会見において、何度か水位計の値がおかしいといわれていたので、私は水位計は破損しているものと考えています。もちろん専門家ではないので、明確な証拠、根拠は提示できませんが、全原子炉において、「注水量=蒸発量+漏えい量」となっているとは考えにくいと思います。

投稿: | 2011.04.16 18:31

 ブログに掲載されている図ですが、この図の出所って判りますか? 探してみたのですがどうも読売新聞のURLのものしかないようです。
 ひょっとして、この図は原子力安全調査専門委員会が公開したものではなく読売新聞で用意したものではないでしょうか。元の図には「燃料棒の上部が破損」などの重要そうなことが書いてありますが、発表自体の方では触れられていないようで、ちょっと不自然な気がしました。図にはなってますが「降り積もっている燃料」の量についても発表では触れられてないような。もし触れられてたら絶対記事にされてると思うので。

投稿: | 2011.04.16 22:15

stableにもっていくのは至難のわざです。
現場の人は応急処置のみを行っています。
先が見えない状況です。

投稿: fx | 2011.04.17 02:19

失敗学会会員の吉岡律夫さんからすると、そもそも原子炉内部の測定機器が現在正常に動作しているか、疑わしという見解だそうです。

そうかなと思う部分もありますし、冗長で構成していないの?と感じる部分もあります。

投稿: hori412 | 2011.04.17 11:34

私もうろ覚えなのですが、後藤政志氏が講演(の動画)のなかで一号機の給水がうまくいっていない理由につて格納容器の図面を示しながら解説していたような気がします。
なにか配管の仕組みのせいで炉の中心まで水がいかず、途中で漏れていてしまっている可能性があるというようなことだったような気がします。

投稿: 坂本雅晴 | 2011.04.17 22:41

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