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2011.04.11

放射性物質を含む瓦礫の撤去が始まる

 福島第一原子力発電所で放射性物質を含む瓦礫の撤去が始まった。この作業については米原子力規制委員会(NRC)による3月26日付けの秘密(Official Use Only)の評価書でも言及していたので関連を見ておきたい。
 NRC文書のリークは、5日付けニューヨークタイムズ記事「U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant」(参照)のネタ元になっていたものだが、ネットを検索すると(参照)すでにいくつかのサイトで見つかる。しかしアレバ文書(参照)とは異なり、純正との対照もできず、入手経路も明らかではない。

 該当文書に部分的な欠落があるとしても、大幅に捏造されたものとは言い難い印象がある。先のニューヨークタイムズ記事の文言とも対応している。技術的にそっけない記述ではあるが読み進めるとなかなか興味深い。
 リークの理由をニューヨークタイムズは明らかにしていないが、事態の推移と文書内容から容易に想像されることは、3月26日時点で重要な課題だった炉への窒素注入だろう。この対応にぐずっていた日本側への強い要望の意味合いがあったかもしれない。
 米国側からの要望といえば、海水注入から真水注入への切り替えにも存在した。NRC文書では日本が実施した海水注入の問題点も指摘している。一号炉の評価より。


Damaged fuel that may have slumped to the bottom of the core and fuel in the lower region of the core is likely encased in salt and core flow is severely restricted and likely blocked.

炉底に崩落した可能性のある損傷燃料と炉心下部の燃料は結晶塩に覆われていることだろうし、炉内水流は厳しく限定されているか、詰まっているだろう。

The core spray nozzles are likely salted up restricting core spray flow. Injecting fresh water through the feedwater system is cooling the vessel but limited if any flow past the fuel. GE believes that water flow, if not blocked, should be filling the annulus region of the vessel to 2/3 core height.

炉の注水口は結晶塩で固められ、放水流量を限定しているだろう。水供給機構による淡水注入は容器を冷却するが、燃料に流れが当たったとしても限定的である。目詰まりがなければ、炉内容器環状部分の三分の二の高さまで水が流入するとジェネラルエレクトリック社は確信している。

There is likely no water level inside the core barrel. Natural circulation believed impeded by core damage. It is difficult to determine how much cooling is getting to the fuel. Vessel temperature readings are likely metal temperature which lags actual conditions.

炉容器内には水は存在していないだろう。炉損傷によって自然な水流が妨げられていると想定される。燃料にどれだけ冷却が至っているかを見極めることは難しい。容器温度表示によれば現状を停滞させるメタル温度であるようだ。


 誤読しているかもしれないが、NRC文書による1号炉の評価では、日本が海水を注入したことで注水口が結晶塩で固まって目詰まり状態になり、炉内は空焚きとなり、燃料は炉底部に崩落し結晶塩で覆われていると見られている。が、圧力容器の損傷はないとも見られている。
 注意事項にも海水注入の問題が指摘されている。

Hydrogen gas production is more prevalent in salt water than in fresh water. Oxygen from the injected seawater may come out of solution and create a hazardous atmosphere inside primary containment. The radiolysis of water will generate additional oxygen. Maintain venting capability.

水素ガス発生は淡水中より塩水中で優勢である。海水注入により酸素が発生し、一次格納容器(原子炉格納容器)に危険な状態が生じるだろう。水の放射線分解もまたさらなる酸素を発生させるだろう。ベント機能を維持せよ。


 淡水より海水のほうが酸素を発生させやすいという理由は私にはわからないが、正しいのであろう。水の放射線分解についても言及されている。
 NRC文書が指摘する海水注入問題に対応するように、米側の強い要請で米軍のバージ船による淡水が提供された。3月25日付け毎日新聞「福島第1原発:冷却用真水の補給で米軍がバージ船提供」(参照)より。

 自衛隊は高圧消防車で海水を使って放水してきたが、米側から「(塩水による)機材の腐食を防ぐには真水に変更すべきだ」との強い要請があり、活動のあり方を再検討。東電が復旧を進める「補給水系」の注水ポンプに真水を補給する方向に切り替えた。

 余談になるが、問題発生の3月11日時点で米国が冷却剤輸送を申し出たという話は、ホウ酸以外にパージ船による大量の淡水提供も含まれていたかもしれない。3月12日付け「在日米軍、地震被害の原発への冷却剤輸送は実施せず=米政府高官」(参照)より。

[ワシントン 11日 ロイター] 米政府高官は11日、東北地方太平洋沖地震で被害を受けた原子力発電所への在日米軍による冷却剤輸送は実施しなかったことを明らかにした。これより先、ヒラリー・クリントン米国務長官は、同原発に冷却剤を輸送したと述べていた。
 これについて同高官は、冷却材の供給について日本側から要請があり、米軍も同意し輸送を開始すると国務長官は聞かされていたもようだと説明した。その後、日本側から冷却材は不要との連絡があったものの、国務長官の耳に入っていなかったとしている。
 別の米政府当局者は、「結局、日本は自国で状況に対応できたとわれわれは理解している」と述べた。

 同種の対応だが、4月10日付け読売新聞「原発危機に初動から後手の政府、いらだつ米」では、表題のように米側の苛立ちと日本側の実質的な拒絶を伝えている。

 「米国の原子力の専門家を支援に当たらせる。首相官邸に常駐させたい」
 この日以降、ルース米駐日大使は枝野官房長官らに何度も電話をかけたが、枝野は「協力はありがたくお願いしたい。ただ、官邸の中に入るのは勘弁してほしい」と条件もつけた。

 海水注入の話題が多くなってしまったが、NRC文書にある推奨として窒素注入は注水の次に掲げられていた。1号炉についての推奨より。

2. Restore nitrogen purge capability. When restored, establish purge and vent cycle to minimize explosive potential.

窒素パージ機能を復元せよ。復元時に、爆発の可能性を最小化するためにバージとベントを確立せよ。


 日本側がこの機会に窒素注入を開始したのは、NRC文書の推奨に沿ったことになる。推奨の依拠は、主に注水についてと見られるが、"guidelines of SAMG-1, Primary Containment Flooding, Leg RC/F-4,"という指針である。NRCによる"Emergency Procedure Guidelines"に含まれるようだ。NRCとしては原子炉非常時に取るべき標準手順を状況に合わせてまとめている。
 対応が標準的なガイドラインに沿っているなら、おそらく日本側でも事前に熟知されていると見てよいだろうが、もしかすると米国側は日本が標準手順を踏まえていないと見ていたかもしれない。
 話の前段が長くなったが、ようやく実施されることになった瓦礫の撤去については、NRC文書では3号機と4号機の評価で言及されている。以下は4号機についてである。

Fuel particulates may have been ejected from the pool (based on information of neutron emitters found up to 1 mile from the units, and very high dose rate material that had to be bulldozed over between Units 3 and 4. It is also possible the material could have come from Unit 3).

燃料粉塵が使用済み燃料プールから飛び出している可能性がある(施設から1マイル離れたところに中性子線放射が検出されたとの情報、及びブルトーザーで均しておくべき3号機と4号機の間にある非常に高い線量率の物質による。これもまた3号機から飛び出た可能性のある物質である。)


 NRC文書は、使用済み燃料プールから燃料粉塵が1.5キロ先まで飛び散っている可能性と、使用済み燃料によると見られる高い放射性物質も散乱していることから、これらをブルトーザーで均す必要があるとしている。
 放射性物質を含んだ瓦礫の撤去だが、日本側では3月20日に戦車投入が検討されていた。3月21日付け朝日新聞記事「戦車2両、福島県内に到着 原発のがれき除去へ」(参照)より。

 福島第一原発で復旧作業の妨げとなっているがれき除去のため、防衛省は74式戦車2両を投入した。陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡)を20日に出発し、21日朝、福島県内の待機場所に到着した。今後、がれきの撤去や車の通行が可能になるよう通路を切り開く作業をする。
 戦車の具体的な作業計画を立てるため、自衛隊は同日、化学防護車2台を原発構内に入れ、現地の状況を調べた。
 戦車の派遣は、主に3、4号機周辺に消防車などが入る経路や作業スペースを確保するのが目的。ブルドーザーのように車両前方に土などを排除する「排土板」がついている。放射線の濃度が高い場所でも、隊員が車両内にとどまったまま作業できるという。
 74式戦車は、全長9.4メートルで約38トン。4人乗りで、最高時速は53キロ。

 その後、3月22日付け産経新聞記事「防衛相、原発内での戦車使用「ケーブル切断リスクあり慎重に」」(参照)が問題を伝えた。

 北沢俊美防衛相は22日午前の記者会見で、陸上自衛隊の74式戦車2両による福島第1原発内のガレキ除去作業について「敷地内はさまざまなケーブルがあり、ガレキを排除していくときに切断するリスクがあるので、相当慎重にやらなければいけない」と述べた。
 74式戦車は21日朝、同原発から南に約20キロの放水作業拠点に到着。同日中は中央特殊武器防護隊の化学防護車2両が移動経路などの調査をしていた。
 関係者によると、東京電力側も戦車によるガレキ除去に難色を示しているという。

 戦車が福島原発まで到着したことは報道されたが、その活躍についての報道は見当たらない。3月26日付けNRC文書がブルトーザー利用に言及しているところからすると、大半の瓦礫はその間、放置されていたようにも思える。
 瓦礫撤去の報道はその後長く見かけなかったが、昨日報道があった。共同「福島原発、遠隔操作でがれき撤去 東京電力」(参照)より。

 東京電力は10日、福島第1原発を襲った津波や水素爆発による構内のがれきを撤去するため、モニター画面を見ながら重機を遠隔操作するシステムを導入したと発表した。
 敷地内では2、3号機の間や3号機西側の放射線量が毎時数百ミリシーベルトと高く、放射性物質が付着したがれきが放射線を出している可能性もあるという。東電は「こうした場所でも効率的に作業ができる」としている。

 報道からは、初めて瓦礫撤去活動が始まったような印象がある。また、高い放射線を発している場所は、(1)2号機と3号機の間、および(2)3号機西側とされ、NRC文書の指摘場所とは若干異なる。また、放射性物質が水素爆発に由来するとしても燃料プールからの散乱という指摘は日本側報道にはない。
 日経新聞「東電、遠隔操作でがれき撤去の画像公開 福島原発」(参照)では多少違う角度から報じている。

 東電によると、水素爆発などによるがれきの一部は高濃度の放射性物質が付着、復旧作業の妨げとなっている。特にがれきが多い2.3号機の間と3号機の内陸側では大気中から毎時200~300ミリシーベルトを検出。このためカメラを備えた油圧ショベルやダンプ車、ブルドーザーなどを無線で遠隔操作し、撤去したがれきをコンテナに入れて施設内の一時集積所に保管している。

 NRC文書にある使用済み燃料プールについての言及は日本の報道には見当たらず、むしろ1号機建屋と3号機建屋の爆発と関連付けて報じられている。
 読売新聞記事「重機を遠隔操作、放射能帯びたがれきを撤去」(参照)より。

 周辺は1、3号機で起きた水素爆発で飛び散り、放射性物質が付着したがれきが散乱。放射線量が毎時200~300ミリ・シーベルトに達する場所もあり、復旧作業を妨げてきた。

 NHK「原発 無人重機使いがれき撤去」(参照)も同様である。

福島第一原発では、1号機と3号機で起きた水素爆発で原子炉建屋の屋根や壁などが吹き飛んでがれきが散乱し、場所によっては1時間当たり数百ミリシーベルトという高い放射線量が計測されるなど、復旧作業の妨げになっています。

 撤去された瓦礫に燃料棒破片が含まれていなければ、NRC文書の評価は誤りだったことになる。

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コメント

均すんじゃなくて、本来の敷地地面より上のデブリを排除し、たぶん一箇所に集めて何かで遮蔽ということじゃないでしょうか。

投稿: 一読者 | 2011.04.11 20:28

とうとう評価がレベル7。いままで、原発事故の話題には極力触れないようにしていたけれど、本当は、国民全体でもっと騒ぐべきだったのだろうかと思っています。

平然としている枝野官房長官にはあきれましたけれどね。

投稿: enneagram | 2011.04.13 07:09

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