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2011.04.07

マーキー米下院議員は福島第一原発2号炉の底は抜けていると主張

 福島第一原子力発電所2号機の圧力容器の底が抜け、中の核燃料が格納容器に漏れ出しているという話を民主党エドワード・マーキー(Edward J. Markey)米下院議員が持ち出し、米国で話題になっていた。
 2号機の炉内の核燃料が漏れているのではないかという話題は、3月29日付けガーディアン記事「Japan may have lost race to save nuclear reactor」(参照)が取り上げたことがあるが、同記事は福島原発が設置された時代、ジェネラル・エレクトリック(GE: General Electric)で沸騰型原子炉の安全性研究部門長であったリチャード・ヘイヒー(Richard Lahey)氏のコメントによるもので、国会議員が関与したものではない。その点が今回とは異なっている。なお、ガーディアン記事は共同でも報道されたので参考までに引用しておこう。「福島2号、核燃料が炉外漏出か 英紙で専門家指摘」(参照)より。


 29日の英紙ガーディアン(電子版)は、福島第1原発2号機で、核燃料の一部が溶融して原子炉格納容器の底から漏れ出しているとみられると、複数の専門家が指摘しているとし、現地での大量の放射線放出の恐れが高まっていると報じた。
 2号機では建屋内で高い放射線量のたまり水が見つかった。原子力安全委員会は原子炉圧力容器が破損した可能性があり、溶融した燃料と接触した外側の格納容器内の水が直接流出したとの見方で、燃料自体の漏出までは言及していない。
 同紙によると、福島原発の原子炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で福島原発建設時に同型炉の安全性の研究責任者を務めた専門家は、少なくとも溶融した燃料が圧力容器から「溶岩のように」漏れ、格納容器の底にたまっているようだと説明。
 その上で同紙は格納容器も爆発で破損し、核燃料が容器外に出ている可能性を示唆した。

 今回のマーキー議員の話題の概要は、今日付けの朝日新聞記事「米議員「核燃料、圧力容器破って落下」 専門家は否定」(参照)がマーキー議員のスタンスを含め手短にまとめている。

 米下院民主党の有力者マーキー議員は6日、下院エネルギー・商業委員会小委員会の公聴会で「福島第一原発2号機の核燃料は非常に高温で、おそらく圧力容器を溶かして破って落下している」と述べた。米原子力規制委員会(NRC)からごく最近得た情報としている。
 圧力容器を覆う格納容器側に壊れた燃料が漏れ出ている可能性があるという認識を示した。
 同公聴会に証人として出席していたNRCのバージロ原子炉・防災副部長は、この発言に答える証言はしなかったが、米紙ウォールストリート・ジャーナルなどの取材に対し、「日本に派遣しているチームから今朝あった報告には、そのような内容はなかった」と否定した。ただ、1~3号機の核燃料がかなり損傷しているとの認識は示した。
 マーキー議員は原子力に批判的なことで知られている。(ワシントン=勝田敏彦)

 この話題は、今日付け日経新聞社記事「米NRC幹部「福島原発、安定した状況でない」 」(参照)から窺えるが、同記事には逆になぜかマーキー議員の言及がない。

【ワシントン支局】米下院エネルギー・商業委員会の小委員会が6日に開いた福島第1原子力発電所の事故に関する公聴会で、米原子力規制委員会(NRC)のバージリオ副局長は「状況は安定していない」と証言した。ただ、NRCのクール上級顧問は、「放射線の状況は次第に良くなっている。放射線量は減少してきている」と証言。「現時点では、原発周辺地域は安全だ。日本の一般市民に危険を及ぼす可能性はない」と語った。
 バージリオ氏は、原子炉の炉心が過熱状態になる危険性について「ある」と明言。炉心の冷却状況に関する情報から、「炉心が水に覆われている時といない時がある」と分析。「覆われていない時には過熱の危険性がある」と述べた。また、米ダウ・ジョーンズ通信によると、公聴会後記者団に対して、「事故後これまで、どの原発炉でも炉心が格納容器から溶けて出たとは考えられない」と語った。

 日経新聞の記事をそのまま読むと奇妙な印象受けるだろう。「事故後これまで、どの原発炉でも炉心が格納容器から溶けて出たとは考えられない」という応答の背景となるマーキー議員の話題が抜けているからである。
 話題のバランスとの点では、今日付けのブルームバーグ記事「米原子力規制委:福島2号機圧力容器、溶けて損傷と認識-下院議員」(参照)がわかりやすい。

 4月6日(ブルームバーグ):米原子力規制委員会(NRC)が福島第一原子力発電所2号機について、原子炉の過熱に伴い圧力容器が溶けて損傷している可能性が高いとみていることが分かった。エドワード・マーキー米下院議員(民主、マサチューセッツ州)が6日、下院エネルギー・商業委員会の小委員会の公聴会で明らかにした。
 マーキー議員の広報担当ジゼル・バリー氏は、福島第一原発2号機の状況に関する情報は、議員のスタッフとNRCとのやり取りで明らかになったと説明している。
 一方、NRCの原子炉・危機管理プログラム担当のマーティン・バージリオ副局長は公聴会後に記者団に対し、NRCは「炉心容器が壊れている」とは考えていないと述べ、日本に駐在するスタッフから毎日数回の報告を受けているが、破損について言及はないと指摘。「圧力容器が失われれば、最後の防御壁の格納容器しか残らない」と付け加えた。
 バージリオ副局長は、東日本大震災の余震が続く中で、燃料棒の過熱を防ぐために使われる水によって圧力容器を覆う格納容器が壊れやすくなっているとの米紙ニューヨーク・タイムズの報道について、同紙が引用したNRCの報告は承知していないと語った。

 ブルームバーグ記事からは話題の流れは理解しやすいが、当のNRCがこの問題をどう考えているかについては矛盾してるようにも見える。ただし、記事のトーンとしては漏出の危険性を示唆しているだろう。
 この話題を扱っているダウジョーンズ記事「Conflicting Details Emerge About Status Of Japanese Nuclear Reactor」(参照)は、この矛盾に焦点を当てて話題にしている。

WASHINGTON -(Dow Jones)- There is conflicting information over what details U.S. officials know about a damaged Fukushima Daiichi nuclear reactor in Japan and the threat it poses.

日本の損傷した福島第一原発とその脅威の詳細について米国高官が知る情報に矛盾がある。

On Wednesday, Rep. Ed Markey (D., Mass.) raised alarm bells when he claimed that the U.S. Nuclear Regulatory Commission believes the core of Fukushima's Unit Two had "gotten so hot that part of it has probably melted through the reactor pressure vessel."

水曜日のこと、福島原発2号機原子炉が過熱によって原子炉圧力容器からその一部が溶けだ出た可能があると米国原子力規制委員会(NRC)は見ているとマーキー米下院議員は主張し、警笛を鳴らした。


 当然ながら同記事構成はブルームバーグ記事と同じでバージリオNRC副局長による否定も掲載している。つまり、マーキー議員が情報源としたNRCの見解と、バージリオNRC副局長の見解は矛盾しているということである。
 NRCとしてはどうなのか? 公式には、2号機の原子炉圧力容器から核燃料が溶け出したという言及はないとしてよい。
 実態はどうかについては、限定された情報からわかるわけもないのだが、ニューヨークタイムズは「Core of Stricken Reactor Probably Leaked, U.S. Says」(参照)で、マーキー米下院議員とバージリオNRC副局長との対立だけではなく、識者の検討も加えて検討している。
 2号機原子炉の底が抜けるとしたらそれはなぜなのか。現状の日本の報道では、原子炉の加熱は、核分裂反応が停止した後の崩壊熱として説明されているが、同記事では専門家からの指摘として「a resumption of the nuclear chain reaction(核連鎖反応の再開)」を上げているのが興味深い。原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続すればこれは臨界になるのだが、同記事には臨界(criticality)という言葉は使われていない。また別の専門家に福島第一原発の燃料では連鎖反応は起らないか起こらない(difficult or impossible)というコメントも併記している。
 ニューヨークタイムズ記事では東電側の見解も掲載している。この見解は、NHKなどの報道を通しても聞くものでもある。

Linda L. Gunter, a spokeswoman for Tokyo Electric, dismissed the N.R.C. analysis, saying Thursday morning, “We believe the containment for the reactor is still functioning at Unit 2; however, the damage to the suppression pool may be the source of the radiation.”

東電広報のリンダ L.ガンターは木曜日の朝、「私たちは、2号機の反応炉の封じ込めはまだ機能していると信じている」と延べ、NRCの分析を退けたが、「しかし、サプレッションプールへの損害が放出源かもしれない」とも述べた。


 NRCの見解を退けたというニューヨークタイムズの書きぶりを見ると、同紙からは、NRCが2号機原子炉の底抜けを想定しているという印象がある。それを補強するようなコメントもやや誘導的だが掲載している。

But a spokesman for the Nuclear and Industrial Safety Agency of Japan said that he was familiar with the N.R.C. statement and agreed that it was possible the core had leaked into the larger containment vessel.

しかし、原子力安全・保安院広報は、NRC声明も馴染んでいるし、炉心がより大きな格納容器に漏れている可能性も同意していると述べた。


 このコメントは私には意外だった。ニューヨークタイムズ記事に掲載されている、各種専門家による可能性の指摘については、そういう考えもあるだろうくらいに読み進めたのだが、圧力容器から核燃料が漏れ出している可能性を保安院が認めているというのは知らなかった。日本では報道されていないように思えるのだが、どうだろうか。

追記(同日)
 コメント欄にて指摘を受けた。30日付け日経新聞記事「福島原発1~3号機「圧力容器に損傷」 原子力安全委」(参照)の以下の記載が対応しているとも理解できる。


経済産業省原子力安全・保安院は30日の会見で「制御棒を出し入れする部分が温度や圧力の変化で弱くなり、圧力容器から(水などが)漏れていることも考えられる」との見解を示した。

追記(2011.11.01)
 事故時のNRC文書の一部が公開された(参照)。
 そのうち、3月30日の文書「March 30, 2011 – Reactor 2 Core Melted Through Containment Vessel – Workers “Lost the race” to save one of the reactors」(参照)から、NRCは、この時点で2号機のメルトスルーを把握していたことがわかる。

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コメント

例えば30日付けの以下の記事な程度のことは報道されています。
福島原発1~3号機「圧力容器に損傷」 原子力安全委 (http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E1E2E2E38B8DE1E2E2E1E0E2E3E39793E3E2E2E2)

「圧力容器から核燃料が大きく漏れ出している可能性」と限定するとそこまで名言しているわけではないので微妙ですが。

投稿: yetanother | 2011.04.07 19:44

こんばんは。突然で恐縮ですが、最後の

> ...the core had leaked into the larger containment vessel.

は「炉心が格納容器に大きく漏れている」ではなく、
「炉心が、より大きな格納容器に漏れている」ではないでしょうか。

投稿: game | 2011.04.07 21:47

gameさん、誤訳、ご指摘ありがとうございました。訳を定しました。

yetanotherさん、情報ありがとうございました。確認しました。訳を訂正したように、大きな漏れでなければ保安院も認識していると理解できました。

投稿: finalvent | 2011.04.07 22:14

 あなたのブログは、英文和訳教室なのですか?
 それとも、日本のメディアが取り上げない海外メディアのこぼれ話(というのも変ですが)の紹介コーナー?
 繰り返しますが、横を縦に、と感じます。

 例えば、NUREGのレポートでもサマライズして、紹介して頂ければ、助かりますね。
 何で、趣味のブログをやっているのに、そんなことまでやらないとならんのだ?でしょうか。

 ならば、今は亡き、NUPECがどういうことをやっていたか、など、望むらくはありませんね。
 それとも、NUPECは海外メディアが取り上げていないから、紹介なさいませんか?

投稿: 永作 | 2011.04.08 01:42

今回のことは、日本の大きな問題で、確かに日本政府は、ダメダメでどうしようもないですが、
かといって、英米のメディアの見方が、必ずしも、日本の議論より、より真実に近いのかどうか、
極東ブログの「ビジネスモデル」が問われた形になっていますね。
当初の英米のマスコミの報道は、どうも、とんちんかんな部分が多かったように考えます。
英米の日本についての報道をウォッチしている加藤氏も指摘しています。
http://dictionary.goo.ne.jp/study/newsword/wednesday/20110322-01.html
その後、東洋経済のピーター・エニス記者は、ホワイトハウスと米国原子力委員会の微妙な関係について、記事を書いていますが、極東ブログも、米国原子力委員会の、米国における政治的な立ち位置についても、考察を深められた方がよろしいのではないかと思いました。
http://www.toyokeizai.net/business/international/detail/AC/9671cb6c2bb086f5434a24bf55b2af0a/page/1/
そうじゃないと、上杉隆氏とあまり差別化できないかもしれませんね。
http://diamond.jp/articles/-/11596
だいたい、いつもは英米の情報の方が日本より信頼できるという一般論はあると思うんですが、今回の話は、
日本のマスコミがいかにダメダメでも、言葉の問題も含め、ニュースソースは豊富なわけだし、地の利もあると
思います。

投稿: yunusu2011 | 2011.04.14 22:17

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受信: 2011.04.08 06:06

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