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2011.03.22

[書評]日本改革宣言(東国原英夫)

 11日の地震のとき、ちょうど東国原英夫前宮崎県知事による、コンビニ販売の書籍「日本改革宣言」を読んでいた。東国原氏、というか私にはいまだに「そのまんま東さん」という感じなので、東さんと呼ぶかな。東さんは、14日に都知事選への出馬を発表するとのことだったように記憶している。が、発表はなく断念されたか延期された。この大災害を考慮し、別の機会を選ぼうとされたのではないかと個人的には思っていたが、ツイッターなどを見ると石原都知事が4選出馬を表明したので尻込みしたという話もあり、意外にも思ったが、そういう見方もあるのかもしれない。結局、先ほど、立候補された。
 震災前になるが、私は今回の都知事選では石原さんには投票しないつもりでいた。大きな権力を持つ要職に4選なんてするものじゃないし、まして当選したら80歳を越える。輿石東参議院議員じゃあるまいし、80歳まで政治家なんかすることはないだろうと思っていた。
 私が今回の選挙で石原氏を支持していないことくらい、エントリー「石原慎太郎・東京都知事によるとされる「天罰」発言のこと: 極東ブログ」(参照)を読めば普通にわかってもらえるだろうとも思っていた。が、意外にもそうでもない。フェースブックの向こうをはって「これはひどい」ボタンで有名な、はてなブックマークをちらと見るとこんな感じである。


sandayuu これはひどい, 石原慎太郎 こういう風に延々と屁理屈を展開させないと擁護できない時点でどうしようもない。 2011/03/20
hgt 頑張って擁護 2011/03/19
dj19 石原慎太郎 どう擁護したって、”津波で「日本人の心の垢」を「押し流す」必要がある”という愚民視した発言は消えないし、ポピュリズム政治家の代表格である石原がポピュリズムを批判したつもりになっているというのも痛いねぇ 2011/03/19
kanose 不思議 finalventさんって、関心がないと言いながら、擁護すること多いよねー 2011/03/19

 いやあ、どこをどう読むとあのエントリーで石原知事擁護になるのだろう。
 私が言いたかったのは、この御仁、従来から延々と強力失言マシンなんだから、いくら季節柄とはいえ、今回のこんな低レベルの言葉狩りみたいなバッシングしても意味ないし、こんなレベルの言葉狩りしても石原都知事批判にはなってないでしょ、くだらないなあ、ということだったのだが。わからないものなのかな。
 あるいは、石原都知事の「天罰」失言でバッシングの人々に同調してバッシングしないと、バッシングの矛先は同調しない人に向かうということなのか。だったら、それってファシズムじゃないのか。
 震災以降のネットの言論を見ていてもそういう、ファシズム的な傾向が感じられて気持ち悪い。例えば、個別の発言者をデマゴーグ見立てて、寄って集ってバッシングして屠ろうとする傾向がある。これは、その屠り候補にしばしば上る自分としても、実に気持ち悪いものだ。
 開かれたネットなのだから、デマがあれば個別に指摘すればいいし、デマばっかり流すデマゴーグがいるなら、にこやかに無視すればいいだろう。なのにそれができないのは、バッシングの側に参加していないと、こんどは自分がバッシングされるんじゃないかという恐怖が支配しているからではないか。
 また、これこれの発言者の発言は信頼できるといったリストを掲げているネットの御教祖様も出現する。それって仕組みだけみれば、妄信の宗教ではないか。震災や原発事故で不安に駆られてしまうのはわからないではないが、こういう心理的傾向は怖いものだと思う。
 と、話がそれてしまったが、私としては、都知事選に石原氏は外していたので、では誰に投票するかなと、そういう候補のなかの一人として、そのまんま東さんをちょっと考えなおすかなというしだいだった。で、どうか。
 率直なところ悩んでいる。
 この大震災で私は、政局はいったんモラトリアムにすべきだと考えている。国政でいうなら、民主党政権でよいし菅首相でよい。政府があれば御の字の部類。同じ理屈でいうなら、都知事選も延期するのがよいだろうと考えている。
 しかしそれができないなら、とりあえず向こう1年くらいは石原都知事の継続でもいいだろうし、と。なので都知事選が活発になり、その空気に不穏なものを感じたらモラトリアムの意味で石原知事に投票するかもしれないと、考えあぐねている。一回当選したら1年で済むわけもないのが困ったことだが。
 と、また話がそれたが、本書「日本改革宣言」はどうだったか。
 だまされたとは言わないが、都知事選の話はまったく出てこない。というか、これを読む限り、地方分権の話はあるものの、基本線としては国政が意識されている。書名「日本改革宣言」のとおりである。東さん、衆院に出るのが願望なのではないかと思ったほどだ。

 だが、困難だとわかっていても人は、やらなければならない時には、行動を起こさなければならない。このままでは、この国は衰微衰退していくだけだ。現状維持は衰退を意味する。残された猶予は少ない。
 私もそのために、微力ながら、尽力したい。
 世の中も社会も政権与党も変わっていく中で、行政、霞ヶ関だけが変わらないのはやはり異常だ。この国をよくするために、旧来の仕組みや枠組みを早急に変えなければならないというのが私の考えだ。


(前略)日本はこのまま行けば近い将来、確実に崩壊するからだ。この10~20年で国の活力を示す指数は軒並み下がってきている。特に今後の10年、15年が国家存亡の鍵を握ることになるだろう。

 都知事に彼を推す人たちはいるのかもしれないけど、彼自身は地方行政よりも国政に意識が向いているのではないか。
 こういうと悪いけど、それで都知事選挙に出るなら、宮崎県知事はある意味で政治家としての通過点のキャリアなので、都知事もまた同様に通過点のキャリアにして、ペログリ田中さんみたいに国政に挑みたいということなのだろうか。私は基本的に、東さんを支持しているわけでもないので、よくわからないところだ。
 本書での東さんの主張だが、僕の印象では、今は懐かしい在りし日の民主党の主張である。合掌。小沢一郎さんの懐メロ「日本改造計画」とさして変わらない。官僚支配をただしして政治主導にする。私もこの考え方を90年代から支持してきたので、その意味では東さんの言いたいことのは、すらすらと理解できるように思えた。
 で、今や、その夢の残骸を見ている。私は、ブログでも記してきたが、政権交代の前からこの残骸は見えた。それでも、ここまでひどいとは思わなかったし、鳩山前首相があれほどの天才的な人だとも想定しなかった。
 かつての民主党理念、あるいは、小沢さん本人がもう語らなくなった、あの規制緩和・構造改革・減税を掲げてきた小沢イズムと言ってもよいかもしれないが、その理念が今の日本に必要だろうか。率直なところ、これも私にはよくわからない。
 ただ少なくとも東さんの財政タカ派的な考えには賛同しがたい。

 国の借金は後何年かで1000兆円を越える。現在国民の金融資産が1400兆円と言われているが、住宅ローンなどの借金や不動産等を差し引くとおよそ1000兆円になる。つまり、間もなく国と地方の借金が国民の個人の金融資産を越えるということになるのだ。今後、日本はどうなってしまうのか。

 残念ながらまったく同意できない。
 対称的な比較で言えば、舛添要一さんのツイッターの提言に私は同意する(参照)。

このデフレの時期に、震災復興のための増税はダメです。それよりも、20兆円規模の国債を日銀に引き受けさせたほうが効果があります。これは、国会の議決でできますので、全力をあげあす。日銀は反対するでしょうが、日本の命運がかかっています。

 とはいえ、東さんの本を読むとわかるが、彼はかなり頭の切れる人なので、きちんと筋立てていけば舛添さんの提言も理解できるだろう。震災で大きな衝撃を受けた日本について、どのような経済政策が必要なのかということも理解されるのではないか。その意味では、本書の限界でのみ東さんを理解するものではないだろう。
 本書が普通に書籍としておもしろいのは、彼の宮崎県知事時代の体験談である。入札改革、宮崎県品ブランドの普及、鶏インフルエンザ、そして口蹄疫。知事の側から見た興味深い話がある。読み応えがあるし、本人談の結果的な自慢話を差し引いても、この人の知事の手腕は大したものだと思わせる。その意味で、この人なら東京都知事の役はこなせるなという印象は得られる。
 私が本書で関心を持ったのは、しかし、まったく別で、同い年の男としての、共感と嫉妬と悔恨とそういうごちゃごちゃした文学的な思いである。
 嫉妬、と書いたが、同い年の女優、かとうかずこさんと結婚したことだ。コメディアンのくせして「なんとなく、クリスタル」の主役と結婚しやがってうらやましいぞということだ。「美女と野獣」とも言われたものだ。いや、それだけではない。きちんと美女をくどき落とせる男っていうのは偉いな、悔しいのぉと思った。1990年、当時、32歳の東さん、すでに前頭にはその未来も輝いていたんだぞ。
 なのでその離婚にはがっかりした。一男一女のパパだろう。かとうさんが「政治活動する人は生理的に受け付ず、一緒に居るのも嫌」というのがよくわかる。なのになぜ、歯を食いしばり、君は行くのか、というのが私の東さんへの関心のコアのひとつである。その話は、本書には書かれていない。(子供たちから尊敬される父になりたいんじゃないだろうか。)
 もうひとつの関心はいわゆる「淫行事件」である。1998年、東京都内イメクラが16歳の少女、つまり未成年の従業員を使っていたが、彼女がその客として、東さんを供述。東さんとしては、まさか相手が16歳とは知らずということで事情聴取で終わり、犯罪歴にはならなかった。妻のかとうは、まあ、許した。世間の目もあって、東は一年謹慎ということになったが、翌年、仲間の頭を蹴ったとして暴行容疑で書類送検されている。僕は、だめだこいつと思ったものだった。
 本書では通称「淫行事件」も触れられている。まあ、別段事件でもないのだが、世間の目もあって避けるわけにもいかないだろう。

 あの時、姉に電話をしたら「うちには高校生の娘がおるとよ! あんた、いい加減にせんね!」と、ものすごく怒られた。おふくろがその後ろで、声を殺して泣いているのがわかった。

 美人女優の奥さんがいて42歳にもなって16歳の娘さんと淫行というのは、洒落にもならないなと思うが、そう思う私なんぞはそんな甲斐性がないから世の誘惑から免れているだけだろう。己の卑小さを顧みれば責める気にもならないし、なんだかんだいっても、秀吉の妻みたいに奥さんが許している以上、男としてはたいしたもんじゃないかとも思う。
 東さんは、それが契機となり大学で勉強しなおして政治家になるということだが、私はなんとなく嘘くさい感じがしていたものだったが、本書を読んで、なるほどと、一種感動したエピソードがある。

 そして、謹慎期間中の1999年の大晦日、紅白歌合戦にまた、とんねるず率いる「野猿」が出演した。新しい形で紅白に出演し、ブラウン管狭しと大暴れする彼らのパフォーマンスを見ていると、「この人たちにはかなわない」と思った時のことが鮮明に頭に浮かんだ。
 だが、それはずっと頭の隅にあった小さい頃からのもうひとつの夢がぱっと大きくなった瞬間だった。
 お笑いの世界でかなわないと思う人がいるんだったら、自分は違う世界に活路を見出そう、このままひとつの夢を実現できないまま人生を終えたら必ず後悔する。そんなのは絶対に嫌だ。方向転換するなら今しかない。

 今ふと思ったのだが、43歳というのは後厄ではなかったかな。満年齢で数えるものでもないが、男の人生で、なにかがボキっと折れる時期でもある。私なんかもボキっと折れた。私の場合は、死ぬかとも思った。それを越えても折れつづけて、活路を見出すどころではなく、生きるのがやっとだった。だから、活路を見いだせるだけいいじゃないかと思うし、そこは東さんの偉いところでもあるし、それで成功するなら、天命というものだろうと素直に思う。
 人生のその、なんというのか負けたなあ俺はという山だか谷だか越えない人間に私は共感しない。頭のいい人もいる。強い人もいる。しかし、敗北の意味をきちんと人生に織り込めない人生には意味がないと思う。
 その点では、東さんに共感もしている。まあ、投票するかどうかは別だけどね。

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コメント

宮崎県知事と書くべきところが宮城県知事になっていませんか?

投稿: rocco | 2011.03.22 20:48

「震災前になるが、私は今回の都知事選では石原さんには投票しないつもりでいた。」(でもやっぱり投票しよう)
「とりあえず向こう1年くらいは石原都知事の継続でもいいだろうし、と。」(現状維持なんだから石原がいいよ)
「都知事に彼を推す人たちはいるのかもしれないけど、彼自身は地方行政よりも国政に意識が向いているのではないか。」(だからみんなあんな淫行男に投票しちゃだめだよ)
そんなに石原都知事がいいですか?


投稿: | 2011.03.22 21:16

いつもたのしみに読ませてもらってます
今回はとてもむねにしみたので
コメントしてしまった
都知事選か…石原閣下には
ガッカリした

投稿: hampuku | 2011.03.22 21:44

roccoさん、ご指摘ありがとう。訂正しました。

投稿: finalvent | 2011.03.22 21:52

バッシングを受けられているという部分に同情を覚えます。
今回の地震に関して海外では日本人の「がまん」強さ,冷静さに驚嘆の声が上がっています。東電社員などのがんばりに対しては賞賛の声とともに、多額の(億単位の)お金が届けられているそうです。中国人の昔年の日本嫌いが解消しそうだとも言われています。私もそうだと思います。
復旧に向けた自衛隊や行政や民間会社のがんばりもたいしたものです。
しかし私には一方で日本人のバッシング体質・批評家体質がとても気になります。自らは二番煎じの報道を行いながら、東電、保安員、政府などをあからさまにバッシングしたい気持ちがマスコミの言葉の端々に出てきます。例えば「政治主導が出来ていない」「連携が出来ていない」などと勝手なことを言っています。今はまだどさくさですのでそれほどではないにしても、落ち着いてきたらきっとバッシングの「嵐」になるのでしょう。マスコミ以上に政治家にはバッシング体質が強そうで心配です。
(注:原発報道に力を入れていたテレビ朝日からはバッシング発言が聞こえてきませんでした。報道姿勢に感心しながら毎日見ていました)
また、ほうれん草を買わないなどの風評被害もひどいものです。いくら旗ふりの政治家や専門家が安全で大丈夫だと言っても言うことを聞かないのですが、これも日本人の負の面と思われます。そもそも原発が大故障しているのだから、多少の放射線が漏れ出るのは当たり前なのだし、X腺検査やCTスキャンやジャンボジェットの被爆には鈍感な人間が急にほうれん草を買わなくなるなどは、どこかおかしい。
「ただちに健康に影響するレベルではない」という言い方を気持ち悪く感じる人もいるらしいけれど、これも変なのです。そもそも放射線はゼロならゼロが一番望ましいし、その意味では専門家の立場で「全く問題ない」とは言えない。しかし長い間(一生?)食べ続けるのは如何なものかというのが基準の原点でしょうから、そのレベルに達したものは一切食べないと言うのではあまりにも「もったいない」のです。賞味期限が来たらすぐ捨てるというのと同じです。体に悪いと頭では十分理解しながら美食をしたり煙草を吸う人が文句をいうのはどうみてもチグハグなのです。
日本の政治がうまく機能しないのは行列には並んで待つがまん強さを持つ日本人が、他の(とくに政治的な)話しになるととたんに「モンスター市民」に変わるからだと思われます。もっと政治的な冷静さ、寛容さ、我慢強さが必要だと思います。政治家の失言に右往左往するのも如何なものかと(マスコミに乗せられている....)。
備考:石原サンはそろそろリタイアしたら、という気分は私にも分かります。誰が良いかは私にはこれからの話しですが。

投稿: kappnets | 2011.03.22 21:59

 都知事選については、「たしかにそろそろ隠居してもいい年」とは思ってましたよ。うちの両親と同い年だからね。
 しかしフタを開けたらロクなのがいない。猪瀬でもだすのかと思ったら違う。後継は松沢なのかしょうがないなーと思ってたら、松沢が変な事いいだしておやおやと思ってたら慎太郎がまた出ると。

 ほんとうなら、都庁のなかから後継になりそうな人材が出てきてくれるのを祈ってたんだけど、誰も出ないんだね。慎太郎は自分の力で立って行くのを旨をする人間なんだろうとも思うので、他人を後継とする為に育てるタイプじゃないしね。
 となれば「かわいそうだが、慎太郎もう一期やれるかねえ」となる。

 東については、なんで4年一期なんだと。あそこで「かつて九州には”大分に平松あり”と言われたが、いまは”宮崎に東国原あり”だ」と言われるまで頑張らなかったのか。国政なんか歯車にしかならないのに。だからこそ民主でぞくぞくと国政から知事職や政令指定市長になる人間が出てるのに。と思わんでもない。
 少なくとも、東じゃ都庁の人間はいうこときかないと思うね。青島とどっこいどっこいだろう。カリスマ性ないし。
 宮崎で4期もやれば、国政だろうがなんだろうが良かったんだろうがねえ。やれやれ。

投稿: とおりすがりの | 2011.03.23 00:26

松沢さんが立候補してくれれば、松沢さんに投票したかった。

たぶん、しかたなく、石原候補に投票すると思います。

自衛隊がんばれ!

投稿: enneagram | 2011.03.23 09:44

不思議な書き出しだなと思っていたら、東国原さんと同い年でしたか。私も自分と同い年の有名人はすごい気になります。

斉藤和義、エレカシ宮本浩次、大槻ケンヂ、吉川晃司、川嶋紀子、絲山秋子、ペレルマン

などが同い年の丙午生まれです。丙午生まれは人数が少ないので、勝手に連帯感を持っております(笑)。

投稿: ピンちゃん | 2011.03.24 19:02

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